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大ブームを巻き起こした「ポケモンカードゲーム」の魅力とは? 開発者とポニータ石井氏に話を聞いた
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印刷2019/03/23 12:00

インタビュー

大ブームを巻き起こした「ポケモンカードゲーム」の魅力とは? 開発者とポニータ石井氏に話を聞いた

画像集 No.005のサムネイル画像 / 大ブームを巻き起こした「ポケモンカードゲーム」の魅力とは? 開発者とポニータ石井氏に話を聞いた
 ポケモンが展開するTCG「ポケモンカードゲーム」(以下,ポケモンカード)。1996年10月から展開されている日本発祥としては最も歴史のあるトレーディングカードゲームなのだが,2018年の夏ごろから大ブームが巻き起こり,商品の売り切れが続出。これが社会的に大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。現在もその勢いは衰えることはなく,継続的に新商品が販売され,イベントなども盛んに行われている。

 今回は,昨年に起きたブームのきっかけやこれから始める人に向けての話を,ポケモンカードの開発を行うクリーチャーズの長島 敦氏と岡本康太氏,「ポケカの伝道師」こと公式YouTuberのポニータ石井氏に聞く機会を得た。
 すでにポケモンカードを遊んでいる人はもちろん,「興味はあるけどどう始めていいのか分からない」というような人にも,ぜひご一読いただきたい。


大ブームの引き金となった「GXスタートデッキ」


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。さっそくですが,ポケモンカードと言いますと昨年の大ブームが記憶に新しいです。当時を振り返ってみていかがですか。

ポケモンカードゲーム ゲームディレクター
長島 敦
画像集 No.013のサムネイル画像 / 大ブームを巻き起こした「ポケモンカードゲーム」の魅力とは? 開発者とポニータ石井氏に話を聞いた
長島 敦氏(以下,長島氏):
 昨年は,7月に発売した「GXスタートデッキ」がきっかけで,ポケモンカードを今まで触ったことのない多くのお客様に興味を持っていただきました。その半面,商品が品薄の状態が続き,以前からポケモンカードを楽しんでいただいていたお客様にはご迷惑をおかけして申し訳なかったと思います。

4Gamer:
 GXスタートデッキのどのような点がプレイヤーに刺さったのでしょうか。

長島氏:
 GXスタートデッキは全9種類の構築済みデッキが各500円で買える商品で,まず安価で始められるというのが第1の理由として挙げられると思います。
 また,TCGというと,自分で試行錯誤してデッキを改造し,大会で勝ち上がるという楽しみ方が主流だと思います。もちろん,GXスタートデッキでもこういった楽しみ方は可能ですが,そのほかにも9種類のデッキをそのまま持ち寄って身内と対戦することで完結した遊びができるんです。
 安価で,友達などのコミュニティさえあれば楽しめるので,そういった参入ハードルの低さが世の中に受け入れられたのかなと思っています。

4Gamer:
 なるほど。

長島氏:
 ラフに遊べる,ガッツリプレイしなくても気軽に遊べる,というのが良かったのだと思います。また,「ポケモンGX」という強力なカードが1枚入っているので,価値のあるカードを手に入れつつ,いろいろな遊びができるという点が良いかけ算になったのかなと。

画像集 No.002のサムネイル画像 / 大ブームを巻き起こした「ポケモンカードゲーム」の魅力とは? 開発者とポニータ石井氏に話を聞いた

4Gamer:
 TCGは初期投資が高くなることも多いので,ワンコインで気軽に手に入れられるのは良いですよね。

画像集 No.023のサムネイル画像 / 大ブームを巻き起こした「ポケモンカードゲーム」の魅力とは? 開発者とポニータ石井氏に話を聞いた
長島氏:
 すでに遊んでいるプレイヤーが新規の方を誘って対戦するときも,普通はカード資産の差が大きすぎて勝負にならないですよね。
 ただ,GXスタートデッキはお互い持ち寄って対戦すれば,どんなプレイヤーも同じ条件で遊ぶことができます。
 更に2018年の12月から導入された強力なカード「TAG TEAM GX」()も目を引いた一つの要素だったと思います。

※2018年12月7日に発売された拡張パック「タッグボルト」から登場したポケモンGX。非常に強力なワザを持つ一方で,「きぜつ」した場合は相手にサイドを3枚取られる

4Gamer:
 公式のYouTubeチャンネルも,昨年のブームの影響がありましたよね。

ポニータ石井氏:
 はい。7月13日にGXスタートデッキが発売されたのを皮切りに,動画の再生数が3〜4倍ほどになりました。また,ほかの動画クリエイターの方々が盛り上げてくださったこともあって,普段はポケモンカードの情報が届かない人たちにも触ってもらえる機会が増えたのかなと思います。

4Gamer:
 YouTuberが一斉にポケモンカードを取り上げていました。

ポニータ石井氏:
 はい,個人的によく試聴しているチャンネルでも,ポケモンカードが取り上げられていて嬉しかったです。また,動画だけでなく,イベントも以前にも増して盛り上がりを見せています。私もポケモンカードの伝道師としてさまざまなイベントに参加していたのですが,GXスタートデッキが発売される少し前から「ゼクロムHR争奪戦」という,世界に100枚しかないレアリティがHR(ハイパーレア)のカードを巡る争奪戦が全国で行われました。
 このイベントには,普段ほかのTCGを遊んでいる方や,「ポケモンカードはやっていないけど,ビデオゲームの『ポケモン』はやっている」という方も参加している様子が見られました。

4Gamer:
 棋士の方や,ほかのTCGのプロプレイヤーなど,さまざまな方が参加していましたね。

世界に100枚しかないカード「ゼクロムGX」
画像集 No.019のサムネイル画像 / 大ブームを巻き起こした「ポケモンカードゲーム」の魅力とは? 開発者とポニータ石井氏に話を聞いた
ポニータ石井氏:
 はい。しかも最初の争奪戦で,当時ポケモンカード歴が2か月半だった動画クリエイターで,ポケモン実況者のライバロリ選手が優勝したんです。これによって「初心者でもいけるかも……?」という雰囲気が伝わったのも良かったと思います。

4Gamer:
 カードゲーマーは,コレクター的な性格の人も多いので,世界に100枚というのは特別感があって燃えるのだと思います。実際,当時はさまざまなカードゲーマーたちの間で「ゼクロムHR争奪戦」のことが話題になっていました。

ポニータ石井氏:
 また,GXスタートデッキ同士で戦う「GXスタートバトル」というイベントも非常に盛り上がっていました。500円でGXスタートデッキを買うだけで遊べる大会だったので,気軽に参加できたのが大きかったのだと思います。

4Gamer:
 中高生などのポケモンカードのプレイヤーが非常に増えたという印象があります。

長島氏:
 競技志向のプレイヤーが入ってきた割合も多かったですね。「本気でポケモンカードをプレイしたいけど,どうすればいいのか分からなかった」という人にとっても,GXスタートデッキの発売はちょうどいいタイミングだったのかなと思います。

4Gamer:
 確か,2018年9月から最新のスタンダードレギュレーションが始まり,スタンダードの大会で使えるカードが新しくなった時期とも重なっていました。

長島氏:
 それも要因として考えられるかもしれません。新規ユーザーの方に入っていただく施策は毎年用意しているので,そのときもとくに「ここで仕掛けるんだ!」と思っていたわけではなかったのですが,いろんな要因が重なってここまで盛り上がったのだと思います。


ポケモンカードが重視するのはユーザー同士のコミュニケーション


4Gamer:
 ポケモンカードというと,ユーザー層の幅広さも目を引きます。新しく入ってきた若い層だけではなく,昔遊んでいた層が改めて戻ってくるケースもありますよね。

※ファーストデザイン
通称「旧裏」と呼ばれるかつて採用されていた裏面のデザイン。「ポケモンカード★neo」まで採用され,以後は,現在の裏面になった
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長島氏:
 裏面がファーストデザイン()のとき遊んでいたという方はかなりいますね。うちの社内でも多いです。

岡本康太氏(以下,岡本氏):
 イベントでも,そのころにやっていたという方が子供を連れて来られるのをよく見かけます。

ポニータ石井氏:
 20代後半から30代前半ぐらいが現在のコア層だと思うんですけど,あと5年ぐらいしたら,その子供が小学校高学年ぐらいになってきて,「親子二代でポケモンカード」という家族も増えてくるのかなと思っています。

4Gamer:
 現状は,20から30代以上のコア層と,新規で入ってきた若い層が入り混じっているという感じですか。

ポニータ石井氏:
 はい。大きい大会だけでなく,小さなショップの大会でも学生や社会人,お父さんプレイヤーが入り混じって楽しそうに遊んでいます。幅広い層のプレイヤーが遊んでいるのはポケモンカードの魅力の1つだと思います。

4Gamer:
 女性のプレイヤーも比較的多い印象です。

長島氏:
 女性限定の「ニンフィアガールズバトル」という大会もありますし,いろんな層に向けたイベントがあります。30歳以上の男性限定の「ダーテングマスターズバトル」という大会もありました。

4Gamer:
 30歳以上! ちょっと見ないレギュレーションですね(笑)。

長島氏:
 親子でポケモンカードを始めた人でも,子供が成長して部活などで忙しくなってくると,ポケモンカードから離れてしまうことがあるんですよね。でもお父さんは「ポケモンカード仲間のつながりがあるからやめたくない!」と続けている,というケースも話に聞きます(笑)。

4Gamer:
 そういった幅広い層のプレイヤーはどこに魅力を感じていると思いますか。

ポケモンカードゲーム プロジェクトマネージャー
岡本康太
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岡本氏:
 まず大きいのは「ポケモン」自体を取り扱っているというところです。
 また,ポケモンカードのイラストは,かわいいものから,ちょっと大人向けのおしゃれなものまでアートの幅を広くしています。そういったポケモン自体の多様性だったり,アートの幅広さだったりというのはポケモンカード独自の魅力だと思っています。

4Gamer:
 なるほど。

岡本氏:
 あと「遊びがシンプルで分かりやすい」というところもあると思います。例えば,“エネルギーカード”は,ポケモンに付けるという用途しかありませんから,手札に来たときに何に使うかすぐ分かりますので。

4Gamer:
 TCGというと,複雑なものもあるので,とっつきやすさは大事ですね。

岡本氏:
 先ほどの「ユーザーの年齢層が幅広い」という話にも結びつきますが,ベースのルールが基本的に変わってないことも大きいと思います。
 細かい調整はされていますが,昔ポケモンカードをやっていた人が戻って来ても「ほとんどルールが変わってないね」と思ってもらえるのは大きいかなと。
 また,年齢層が幅広いので,一緒に遊べる人を見つけやすいというのも魅力です。お父さんプレイヤーでも,近い年齢層の人に出会えることが多いんです。

長島氏:
 ポケモンカードプレイヤーの皆さんは,本当に優しいんですよね。
 自分がこっそり一般のイベントに遊びに行ったときにも「これこうしたほうがいいよ!」とアドバイスしてくれたり,「これあげるよ!」ってカードをくれたりするんです(笑)。皆さんめちゃくちゃフレンドリーで嬉しかったです。

岡本氏:
 ポケモンカードはプレイヤー同士でコミュニケーションを取ってもらうことをすごく大事にして開発しているので,そういう意味でも「勝つ」「負ける」より「楽しむ」ということに比重を置いているユーザーが多いのでしょう。
 もちろん,勝負なので勝ち負けはありますが,対戦後にプレイヤー同士が「いやー,あそこでそれを使われるとは思わなかったよ」と,すごく楽しそうに談笑している姿を見かけます。

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長島氏:
 必ずしも勝ち負けがすべてではなく,「勝敗うんぬんより,自分はこのポケモンを使いたいんだ!」という人や「このポケモンのカードだけ全部集めてます!」という人も,イベントではかなり見かけます。

4Gamer:
 確かに,大会で勝った人のコメントを動画や生配信で見ると,「何故このデッキを使ったんですか」という問いに対して「このポケモンが好きだったから」という人を結構見ます。

長島氏:
 そういうのを聞くとほっこりしますよね(笑)。我々も頑張ろう! と元気になります。


「ポケカの伝道師」としてのポニータ石井氏の活動


4Gamer:
 ポケモンカードのイベントについても聞かせてください。大学の学園祭をサポートしたり,あとはTwitterのハッシュタグで「#ポケカ部」と入れて活動を宣伝すると,そこにポニータ石井さんがやってきたりと,非常に精力的ですよね。

ポケモンカードゲーム公式YouTuber
ポニータ石井
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ポニータ石井氏:
 「#ポケカ部」の取り組みについては,ポケモンカードの輪を広げてくださる方を教えてもらい,活動を紹介するという取り組みで,私も実際に現場を訪問しています。
 同じ会社の社員同士の集まりで遊んでいる人もいらっしゃいますし,カードショップを拠点にしたサークルのような集まりなどさまざまです。
 こういった活動が,全国的にもかなり増えていて,どこもすごく盛り上がっています。自分も見ていて,「漫画やアニメの青春の1ページみたいでいいな……」と思ったりしますね(笑)。

4Gamer:
 「#ポケカ部」の募集はいつから始められたのでしょうか。それ以前にもポニータ石井さんはイベント訪問をされていましたよね。

ポニータ石井氏:
 2018年の7月からですね。また,それ以前は「ポケモンカードジム」という対戦イベントの取材や,「イベントオーガナイザー」という公式資格を持ったプレイヤーの方々が主催する「ポケモンカードゲーム公認自主イベント」の取材に行くこともありました。最近では,ポケモンカードキャラバンで各地を回り,たくさんのプレイヤーさんと交流を持たせてもらいました。

4Gamer:
 ポニータ石井さんの活動が始まったのは確か2016年からですよね。

ポニータ石井氏:
 ちょうどポケモンカード20周年企画の一環で始まったんですよ。いつ終わるか分からないなか,今日までずっと続いています(笑)。

4Gamer:
 まだ20周年企画の最中ということになるんでしょうか(笑)。

ポニータ石井氏:
 いえ,さすがにもうそのくくりは消えましたね(笑)。今は完全に独立してやっています。

4Gamer:
 途中で「一段落ついたから終わり」とはならなかったんですね。

ポニータ石井氏:
 自分のなかで「YouTubeからポケモンカードを好きになってほしい」という思いがあって,毎日動画を上げ続けていました。そうしたら,ジワジワと視聴者が増えていったんですよね。一気に視聴者が増えることもなかったですが,ずっとジワジワと増えていく傾向は変わらず,下がることがありませんでした。
 また,イベントに参加したときも「あ,ポニータ石井さんだ!」とお声がけいただくことも増えてきて,個人的にもぜひ続けたいなと思ったんですよね。「このままジワジワ続けていこう」という形で現在も活動しています。

岡本氏:
 イベントでも,最初は「え,何この人?」と子どもたちは彼のことをおびえた目で見ていたんですが,1年後2年後には「サインちょうだい!」と近づいてくるようになったので,継続ってやっぱり力なんだなと思いましたね。

4Gamer:
 ポニータ石井さんの動画も,公式っぽいカチッとした雰囲気というよりは,ゆるい感じで親しみが持てました。

ポニータ石井氏:
 そこは意識していましたね。公式らしからぬ雰囲気というか(笑)。


4Gamer:
 プレイヤーと良い意味で近い印象を受けます。

ポニータ石井氏
 最近はYouTubeのコメント欄も解禁して,双方向のコミュニケーションを心がけています。


ポケモンカードを始めたい! でもどれを買えばいいの……?


4Gamer:
 さて,昨年のブームを受け「これから始めようかな」と思っている人も多いと思うのですが,ポケモンカードはたくさん商品が出ていて,正直どれを買えばいいか分からないという人もいると思います。「これから始めるならこれがいいよ」というおすすめがあれば教えてください。

岡本氏:
 やはり,一番おすすめなのは「GXスタートデッキ」ですね。何と言っても安価ですし,まず遊んでみたいという方は,ぜひここから始めるのが良いと思います。

4Gamer:
 そのほかには何かありますか。

岡本氏:
 3月15日に発売した「ファミリーポケモンカードゲーム」もいいと思います。これは新規ポケモンGXが入った3つのデッキとバトルで使うさまざまなグッズ,おかたづけデッキバンド,そして初めてカードゲームに触れる人に向けたガイドをセットにしているので,この商品だけで遊べるようになっています。

「ファミリーポケモンカードゲーム」
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4Gamer:
 1つで完結する商品は良いですね。ボードゲーム感覚で買えそうです。

岡本氏:
 まさにボードゲームみたいな感じで,このセット1つで楽しめると思います。
 また,これだけで遊ぶことを想定してバランス調整しています。

ポニータ石井氏:
 「GXスタートデッキ」や「ファミリーポケモンカードゲーム」はすごくバランスが良くて,毎回どっちが勝つかわからないギリギリの勝負になりますね。

長島氏:
 また,自分でデッキを組みたくなったら,これらのデッキを崩して自分でデッキを作ることができるのも良いと思いますね。
 「好きなポケモンを使いたい!」という人は,好きなポケモンが入っている拡張パックを買って,構築済みデッキと組み合わせてデッキを作るのも良いと思います。

4Gamer:
 「TAG TEAM GX」のポケモンは拡張パックに入っているんですよね。

岡本氏:
 はい。「タッグボルト」から「ダブルブレイズ」までの最近の拡張パック・強化拡張パックに収録されているので,「TAG TEAM GX」のポケモンで遊びたい方は,拡張パックを買うのが良いと思います。

4月5日には強化拡張パック「ジージーエンド」が発売(関連記事
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4Gamer:
 拡張パックと言えば,買ったパックから出てきたカードでデッキを作って対戦する「シールド戦」を行うイベントも開かれていましたよね。

岡本氏:
 シールド戦のイベントは年に1回ぐらいのスパンで開催しています。

ポニータ石井氏:
 ゼクロムHR争奪戦のイベントでは,強化拡張パックの「迅雷スパーク」を15パック買って,その場でデッキを組んで対戦するというシールド戦をやってみました。

長島氏:
 パックを開けたあと,大会用のデッキだけを組んで,ほかのカードは放置されてしまうのが気になっていたんですよね。「デッキを作る前に楽しみがあってもいいよね」という思いからシールド戦をしやすい拡張パックを作ることになりました。それが2017年7月に発売した強化拡張パック「ひかる伝説」です。

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4Gamer:
 シールド戦は,普段と違った感覚で戦えるのが良いですよね。

長島氏:
 また,いつもと違うカードが活躍すると,意外な一面が見られてそのカードが好きになるじゃないですか。
 普通の対戦だとそこまで活躍しないけど,シールド戦だったら活躍するというカードも出てきます。そういう遊びは大事にしていきたいなと思ってます。

岡本氏:
 社内にもシールド戦が好きな人はかなりいますね。3月に出た拡張パック「ダブルブレイズ」でもシールド戦をやりました。資産差が出ないので,ベテランのなかにビギナーが混ざって遊べるんですよね。普段なかなか勝てない人でも優勝することがあったり。

4Gamer:
 パック運によっても変わりますしね。

岡本氏:
 同僚に「どのTAG TEAM GXが勝ったの」と聞いたら,「勝ったのはTAG TEAM GXじゃないです。ペラップが勝ちました」と言われて驚きました(笑)。意外なカードが勝つのもシールド戦の面白いところです。

長島氏:
 イベントとしては年1回ほどのスパンですが,友達と遊ぶときにもシールド戦をやってもらえると嬉しいですね。

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カードは買った! でも対戦相手はどこに……?


4Gamer:
 「いざカードを買ってデッキを作ったはいいものの,対戦相手がいないよ!」という方もいるかと思います。初めてでも参加しやすいおすすめイベントはありますか。

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ポニータ石井氏:
 初心者向けのイベントは公式でも積極的に行っています。最初に参加するなら特に「GXスタートデッキ」だけを使って対戦をする「GXスタートバトル」が良いのではないかと思います。
 今は「ファミリーポケモンカードゲーム」と「GXスタートデッキ」,合計12種のデッキで対戦する「ファミリーポケモンカードゲーム&GXスタートバトル」として開催しています。

4Gamer:
 やはり,「GXスタートデッキ」と「ファミリーポケモンカードゲーム」からというのが一番おすすめだと。
 デッキは既に持っているけど対戦相手や友達作りをしたいという人に対しては,ほかにおすすめのイベントはありますか。

ポニータ石井氏:
 そういう人は店舗大会の「ポケモンカードジム ジムバトル」に出ても良いと思います。
 特に「ポケカの日」という,新拡張パック発売となる毎月最初の金曜日と土日に一部のショップやポケモンセンターなどで行われるイベントは,とにかくいろんな人が集まりますから,そこで仲間を探すのも良いと思います。
 また,バトルの勝敗に関係なく,じゃんけん大会に勝ったらオリジナルデザインのラバープレイマットがもらえるといった「ポケカの日」週末限定バトルイベントもあるので,初心者の方にもぜひ参加してほしいです。

4Gamer:
 なるほど。初心者向けのイベントだけでもたくさんあるんですね。

ポニータ石井氏:
 ただ,おすすめを紹介しておいて何なのですが,あまり「このイベント!」と狙っていかなくても楽しめると思いますよ。
 私自身もYouTuberとして活動する前にいろいろなイベントに行きましたが,ポケモンカードプレイヤーはとにかく優しくて,どこに行ってもすごく歓迎してもらえるんです。いろいろな方が声をかけてくれるので「また来たい」と思いましたね。

4Gamer:
 しかし,普通は1人でイベントに行くというのはなかなかハードルが高いものですが,イベントで友達が作れる土壌があるというのはいいですね。

ポニータ石井氏:
 友達はだいぶ作りやすいと思います。
 また,初心者歓迎の「公認自主イベント」であれば,「イベントオーガナイザー」というポケモンカードの公式資格を持つプレイヤーの方々がサポートをしてくれます。とりあえずちょっと遊んでみたいというときは,足を運ぶのも良いですよ。
 公式サイトのイベント検索ページでは,今後開催されるイベントの情報を探せます。初心者向けから腕試し,世界大会に繋がるものまでさまざまなものがあるので,まずは自分の家の近くでどんなイベントが開催されているか調べてみるのをおすすめします。


競技としてのポケモンカードとは


4Gamer:
 冒頭で,競技志向のプレイヤーも多くポケモンカードに入ってきたというお話がありました。ポケモンカードの競技シーンは,どのようになっているのでしょうか。

ポニータ石井氏:
 一番大きな大会として挙げられるのは「ポケモンワールドチャンピオンシップス」です。これは,2009年から開催されている歴史あるイベントで,今年はワシントンD.C.で開催されます。さまざまな国,地域から数千人にのぼるプレイヤーが集まる大規模な大会で,競技シーンではそこを最終的な目標として目指す人が多いです。

4Gamer:
 「ポケモンワールドチャンピオンシップス」への出場プロセスはどのようになっているのでしょうか。

ポニータ石井氏:
 国内で4回開かれる大規模大会「ポケモンカードゲーム チャンピオンズリーグ」で優勝することで出場権を得られます。
 そのほかにも各大会で得られるチャンピオンシップポイントの累計によって出場権が得られます。このポイントは,チャンピオンズリーグ以外に「ポケモンカードゲーム シティリーグ」という中規模の地区大会や,ショップ大会の「トレーナーズリーグ」でも手に入れられます。大会を回ってポイントをコツコツ稼いでステップを踏んでいくのは楽しいと思いますよ。

「ポケモンカードゲーム チャンピオンズリーグ2019 東京」マスターリーグ決勝
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4Gamer:
 大会巡りは友達と一緒に旅行気分で行くこともできるので楽しいですよね。

ポニータ石井氏:
 また,いちプレイヤーとして感じるのは,毎回上位に名を連ねるプレイヤーもいらっしゃり,実力が反映されるカードゲームだなという印象があります。

4Gamer:
 ポケモンカードはコイントスで判定を決めることもありますが,それに偏っているわけではないのでしょうか。

ポニータ石井氏:
 もちろん,運の要素もありますが,どのデッキを使うか,どういう戦略で相手を倒していくかなど,考えることは非常に多いです。
 今は世間でeスポーツが話題になっていますが,ポケモンカードでも知能と知能の戦いを存分に味わえると思います。

4Gamer:
 ちなみに,強い人はどこが違うんでしょう。

ポニータ石井氏:
 私のプレイヤーとしての感覚になりますが,とにかく読みがすごいです。二手三手先を考えて動くんですよね。「今は大丈夫でも後々脅威になるこのポケモンは倒そう」とか,「相手がこのカードを使ったから,今は相手の手札はこんな感じだろう」とか……,強い人は相手の心理や手札を読んだプレイもうまいです。

長島氏:
 ポケモンカードはほかのTCGに比べてドローソース()が強く,自分の番にやりたいことができるのが特徴だと思います。なので勝ち上がるためには,しっかりと相手の番に何が飛んでくるかを把握し,対戦を通して経験を積んでいく必要があります。

※デッキからカードを引く能力を持つカードのこと

ポケモンジャパンチャンピオンシップス2018の様子
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4Gamer:
 ポケモンカードはいわゆる「マナ」()の概念がないので,相手の番に“すごいことをやられる”可能性が高いですよね。どういったことをしてくるのかを理解する知識や経験は非常に大事そうです。

※「マジック:ザ・ギャザリング」などで採用されているカード(または効果)を使用する際に必要なコストのこと。ポケモンカードでは,ワザを使うときのエネルギーが近い

長島氏:
 また,プレイヤーによってデッキに入る細かいカードが全然違うので,そこに経験差が出てきます。
 「今の流行はこの型だから,あのカードが入っているだろう」とか。読み合いのうまさは世界レベルだとかなり顕著に出ますね。「すごいなあこの人たち」とよく思います。

4Gamer:
 メタゲーム()が熱そうですね。ゲームによっては,大会上位がほぼ同じデッキばかりということもありますが,ポケモンカードはその辺いかがでしょうか。

※ゲーム環境の流行を把握し,デッキの相性を考慮して戦略を立てること

ポニータ石井氏:
 多様性は生まれやすいと思いますよ。弱点や抵抗力の概念があるので,すごく強いデッキがあったとしても,次の大会ではそれが対策されまくっていますし。

4Gamer:
 ちなみに,今から「ポケモンワールドチャンピオンシップス2019」を目指せる大会はあるのでしょうか。

ポニータ石井氏:
 4月26日から出場者の募集が始まる「ポケモンジャパンチャンピオンシップス2019」は勝ち抜けばそのまま世界大会に参加できます。6月8日,9日の2日間にわたって開催されますので,ぜひ応募してほしいですね(公式ページリンク)。


目指すは一家に一本の定番ゲーム! まだ届けられていない地域へも展開


4Gamer:
 最後に,これからのポケモンカードの展開についてお聞かせください。
 海外ではアプリでポケモンカードが遊べる「Pokémon TCG Online」がありますが,国内でデジタルの対戦に力を入れようという動きはありますか。

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長島氏:
 今のところ予定はないですね。面と向かって遊ぶ紙のカードゲームと,PCやスマホ越しに遊ぶデジタルカードゲームはまったく違うもので,それぞれに良さがあると思います。
 私たちとしては,プレイヤー同士のコミュニケーションを大切にしたいと思っているので,今は紙のカードに力を入れていきたいと思っています。まだ世界には届けられていない地域もかなりありますし。

4Gamer:
 そうなんですか。勝手に届けられていない地域の方が少ないと思っていました。

岡本氏:
 はい。これからはそういう地域に広げていきたいなと。

長島氏:
 この前,プレリリースイベントでタイに行ってきましたが,タイはeスポーツが盛んでポケモンカードのイベントもすごかったですよ。大きい体育館みたいなところで,巨大モニターを設置して,ゲーミングチェアに座りながらポケモンカードで対戦をしていました。しかもみなさん初めてなのにうまいんですよ。
 多くの地域でどんどんポケモンカードを遊んでもらえたらな,と思っていますね。

岡本氏:
 そうですね。それによってポケモンカードのコミュニティも広がっていくと思うので,今後も継続してやっていく予定です。
 あとは,プレイヤーの年齢層がグッと広がってきているので,このまま続けられたら囲碁や将棋のように「おじいちゃんと孫のバトル」も実現しそうだなと思っています(笑)。
 お父さんもお兄ちゃんも遊べる「一家に一本の定番ゲーム」という風になっていけたら良いなと。

4Gamer:
 なるほど。

岡本氏:
 また,年を重ねると老眼が出てくると思いますが,そういう方が少しでも遊びやすいようにということで「ファミリーポケモンカードゲーム」では,少しでもプレイしやすいようにカードの文字を大きくするといった試みも行っています。英語表記の部分も,小さいお子様でも読めるようにすべてカタカナにしています。

4Gamer:
 細かいところにも誰でも遊びやすい工夫を凝らしていると。

岡本氏:
 普段の拡張パックでは,文字をこのサイズにすると,テキストの量が限られてきてしまうのでなかなか難しいのですが,色んな人に遊んでもらうための工夫はやっていきたいですね。
 コインについても「ファミリーポケモンカードゲーム」には,紙製の大きいメンコのようなコインが入っています。お客様から「小さい子供がうまくコインを指で弾けない」というお声をいただいていたのですが,この紙製のコインだと軽く投げることで簡単にコイントスができるようになっています。

カードの文字を大きくしたり,紙製の大きいコインを導入するなど新たな試みもなされている「ファミリーポケモンカードゲーム」
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4Gamer:
 先ほどの一家に一本の定番ゲームというお話のように,ゆくゆくは文化として定着させていきたいという思いがあるのでしょうか。

岡本氏:
 文化というほど格式張ったものではなくて「みんな知ってる遊び」ぐらいになればいいなと思っています。

長島氏:
 「TAG TEAM GX」のような新しい刺激についても,これからどんどん開発していきたいと思っているので,ぜひご期待いただければと思います。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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「ポケモンカードゲーム」公式サイト

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    ポケモンカードゲーム

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