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[COMPUTEX]上下左右にぐるんぐるん動くVRゲーム筐体をGIGABYTEブースで体験してきた
大手企業がTWTCから離れるなか,その数少ない例外となっているのがGIGA-BYTE
1日50人限定という限られた人数しか体験できないこのアトラクションを体験してきたので,レポートしてみたい。
2軸で可動する筐体で,Wipeout風味のSFレースを体験
見るからにクレイジーなたたずまいのVRアトラクションは「AORUS 720-degree Motion Simulator」(以下,AORUS720VR)というもの。プレイヤーはVRヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)を着用し,筐体に乗り込んでVRゲームをプレイする。
名前にある「720-degree」(720度)というのは,筐体を支える2つの可動軸が,それぞれ360度回転することから付いたもの。いわゆる2DoF(DoF:Degrees of Freedom)というわけだ。
ここでいう2軸とは,1軸めがピッチ(上下)の回転で,2軸めはロール(左右の傾き)の回転である。構造が複雑になりすぎるからだろうか,ヨー(左右の首振り)の回転には対応しない。
筆者が体験したVRコンテンツは「Redout」というゲームで,イメージ的には「F-ZERO」や「WIPEOUT」的な,路面から浮いて走行するビークルを操るSFレーシングVRゲームであった。コーナリングでは早めに車体をスライドさせながらコーナーに突入して,機体の先端を早めにコーナー出口に向けてスラスター全開で抜けていくようなスタイルのゲームである。
敵車や障害物はなく,純粋にコースの走破タイムを競うタイムアタックを体験するものだった。
宙に浮いて飛行するゲームなので,操縦はステアリングコントローラではなく,右横に置かれた操縦桿タイプのジョイスティックで行うようになっていた。操作はシンプルで,ジョイスティックの左右で機体の向きを制御し,トリガーボタンを押すと加速,離すと減速するだけ。ペダル類はなかった。VR HMDは,プレイヤーが顔を向けた方向の映像を表示するだけという,これまたシンプルな使い方をしている。ジョイスティックによる左右操作は,とてもセンシティブで,少しの入力で機体が大きく向きを変えるチューニングだった。
操作系はシンプルだが,反応はセンシティブな味付けにしているのは,コースを取り囲む壁面になるべくぶち当たって欲しいから……に違いない。というのも,壁に衝突してスピンしたり,コースアウトしたりすると,筐体がぐるんぐるんと激しく回るのだ。
コースへの復帰は自動だが,当然,タイムロスにはなる。うまく走行するためには,なるべく慎重に左右の操作を行って,アクセルワークも繊細に行う必要があった。
余談だが,デジタルゲームパッドでプレイしていた昔のレースゲームのように,小刻みに連打するアクセルワークが有効であるようだ。
コース2周で1プレイとなるので,所要時間は大体5〜10分程度。うまく走ると1周2分程度で走れるが,ぶつかりまくると5分くらいはかかってしまう。筆者は2分半程度でクリアしたので,スタッフは「初めての人にしてはうまいですね」と誉められたが,別の日本人記者が筆者のタイムをあっさりと抜いて2分そこそこでクリアしていた。「下手くそな人ほど長く遊べて,しかもぐるぐる回る筐体の醍醐味を味わえる」といったところか。
体重150kgの人もOK
BtoB向けに販売の可能性も視野に
技術的な面を見ていくことにしよう。
名前からも分かるとおり,AORUS720VRは,GIGABYTEが展開しているゲーマー向け製品ブランド「AORUS」のプロダクトを使って組み上げたものだ。たとえば,VRコンテンツを動作させるPCや,可動筐体を始めとした周辺機器を制御するのに,AORUSブランドのPCパーツを採用しているのだ。
具体的な採用製品としては「AORUS AC300W Gaming Chassis」というタワー型PCケースと,Intel X299チップセット搭載のマザーボード「X299 AORUS Gaming 9」,「GeForce GTX 1080 Ti」搭載のグラフィックスカード「AORUS GTX 1080 Ti Xtreme Edition 11G」といったものが挙げられている。
使用しているVR HMDは,Oculus VR「Rift」。HTCの「Vive」は使えないのかと聞いたところ,Viveは,VR HMDの位置や動きのトラッキングに使う「ベースステーション」が必要になるが,AORUS720VRは筐体内に着席してプレイするので,これを使えないからだという話だった。
AORUS720VRの場合,回転軸が2軸だけなので,VR HMDが内蔵しているジャイロセンサーや加速度センサーといった慣性計測装置(IMU,Inertial Measurement Unit)だけでも,向きや角度は検出できるはずだ。それについても質問してみたところ,「たしかにその通りなのだが,VR HMDの自律的な向きや角度の検出精度は,Riftのほうが正確だった」とのこと。ViveはVR HMD本体だけだと安定したデータが取れないので,それもあってAORUS720VRでの採用を見送ったのだそうだ。
AORUS720VRの開発期間は,可動筐体システムを含めて2か月強だったという。なかなかスピード感のあるプロジェクトだが,実際にはコンテンツと筐体のカゴ部分,稼働システムは,それぞれ分業で開発したそうだ。
VRゲームのRedoutは,イタリア・トリノ市にある開発スタジオの34BigThingsが2016年にリリースしたもので,これをAORUS720VR用にカスタマイズして使用したという。ちなみに,ゲームエンジンにはUnreal Engine 4を使っている。
AORUS720VRで面白いのは,プレイヤーはVR HMDを着用するものの,ヘッドフォンは身につけないというところだ。ゲームのサウンドは,プレイヤーの真横左右に設置したスピーカーで再生する仕組みになっている。
理由の1つは,筐体が激しく動くので,ヘッドバンドのテンションだけ固定するヘッドフォンでは,体が振り回されたときに外れて吹っ飛んでしまうためとのこと。Rift本体に固定できるOculus純正ヘッドフォンもあるのだが,プレイヤーが体験中に汗ばむことが多いそうで,着用時の不快感も考慮して外したそうだ。
ヘッドフォンを使わない理由は,もう1つある。AORUS720VRは,ディスプレイの上に送風機を付けて,ビークルの走行速度に応じて強弱を付けた風をプレイヤーに浴びせるギミックがあり,ヘッドフォンをつけると,風を感じにくくなるそうだ。そのため,あえて付けなかったということだった。
筐体のカゴ部分は,体重150kgの人が着席した状態で動いても,びくともしない堅牢性があるとのこと。
2軸の可動部分は電動モーターで,油圧(ハイドロ)式のアクチューエーターではないそうだ。電動モーターの利点は,大きな動きも小さな動きも最大トルクの猛スピードで高速に動かすできるところとのこと。時速数百km/hで走るVRレースの動きを再現するためには,遅延が発生しうる油圧式は考えられなかったのだとか。
AROUS720VRは,この1台しかなく,しかも相当な重量物なので,台湾外で稼動させるのは難しいそうだ。ただ,今回の人気ぶりや問い合わせの多さを見れば,2台目以降が製造される可能性は高そうに思える。日本でもVRアミューズメントパークなどに設置してほしいものだ。
GIGABYTE 日本語公式Webサイト
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