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[COMPUTEX]上下左右にぐるんぐるん動くVRゲーム筐体をGIGABYTEブースで体験してきた
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印刷2017/06/03 16:10

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[COMPUTEX]上下左右にぐるんぐるん動くVRゲーム筐体をGIGABYTEブースで体験してきた

 近年,COMPUTEX TAIPEIという展示会は,台北市の東端にある「南港展覧館」(Taipei Nangang Exhibition Center)と,台北市中心部にある「台北世貿中心」(Taipei World Trade Center,以下 TWTC)という2か所の会場に分けて行われている。ASUSTeK ComputerやMSIといった台湾の大手メーカーや,NVIDIA,AMDといった半導体メーカーは,真新しくてスペースも広い南港展覧館にブースを設けているので,展示会取材のメインはそちらになりがちだ。実際,TWTCやその周辺での取材は,プレスカンファレンスやミーティング程度という場合が多い(※ただし,その数は多いから大変だ)。
 大手企業がTWTCから離れるなか,その数少ない例外となっているのがGIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)で,同社はTWTCへのブース出展を毎年続けている。

人だかりが絶えないGIGABYTEブース
画像集 No.002のサムネイル画像 / [COMPUTEX]上下左右にぐるんぐるん動くVRゲーム筐体をGIGABYTEブースで体験してきた
 そんな状況なので,TWTCのブースにはあまり注目が集まらないのだが,今年に限っては,「GIGABYTEブースのためだけでも,TWTCに行く価値がある」と,業界人の間で囁かれていた。それというのもGIGABYTEは,ぐりんぐりん動き回る可動型筐体に乗ってプレイする,ライド系のVRアトラクションを出展していたからだ。
 1日50人限定という限られた人数しか体験できないこのアトラクションを体験してきたので,レポートしてみたい。


2軸で可動する筐体で,Wipeout風味のSFレースを体験


 見るからにクレイジーなたたずまいのVRアトラクションは「AORUS 720-degree Motion Simulator」(以下,AORUS720VR)というもの。プレイヤーはVRヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)を着用し,筐体に乗り込んでVRゲームをプレイする。
 名前にある「720-degree」(720度)というのは,筐体を支える2つの可動軸が,それぞれ360度回転することから付いたもの。いわゆる2DoF(DoF:Degrees of Freedom)というわけだ。
 ここでいう2軸とは,1軸めがピッチ(上下)の回転で,2軸めはロール(左右の傾き)の回転である。構造が複雑になりすぎるからだろうか,ヨー(左右の首振り)の回転には対応しない。

1軸はピッチ(上下)の回転
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もう1軸はロール(左右の傾き)の回転だ
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 筆者が体験したVRコンテンツは「Redout」というゲームで,イメージ的には「F-ZERO」や「WIPEOUT」的な,路面から浮いて走行するビークルを操るSFレーシングVRゲームであった。コーナリングでは早めに車体をスライドさせながらコーナーに突入して,機体の先端を早めにコーナー出口に向けてスラスター全開で抜けていくようなスタイルのゲームである。
 敵車や障害物はなく,純粋にコースの走破タイムを競うタイムアタックを体験するものだった。

筐体内には,プレイヤーが見ているのと同じ映像を表示するディスプレイが据え付けられていた。ちなみに,ディスプレイの上側手前に見える2つのスピーカーのようなものは,実は送風機である
画像集 No.007のサムネイル画像 / [COMPUTEX]上下左右にぐるんぐるん動くVRゲーム筐体をGIGABYTEブースで体験してきた

 宙に浮いて飛行するゲームなので,操縦はステアリングコントローラではなく,右横に置かれた操縦桿タイプのジョイスティックで行うようになっていた。操作はシンプルで,ジョイスティックの左右で機体の向きを制御し,トリガーボタンを押すと加速,離すと減速するだけ。ペダル類はなかった。VR HMDは,プレイヤーが顔を向けた方向の映像を表示するだけという,これまたシンプルな使い方をしている。ジョイスティックによる左右操作は,とてもセンシティブで,少しの入力で機体が大きく向きを変えるチューニングだった。

ジェットコースターのように保護具を降ろして体を支える(左)。レースゲームだが,操縦はジョイスティックで行う仕組みだ(右)
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 操作系はシンプルだが,反応はセンシティブな味付けにしているのは,コースを取り囲む壁面になるべくぶち当たって欲しいから……に違いない。というのも,壁に衝突してスピンしたり,コースアウトしたりすると,筐体がぐるんぐるんと激しく回るのだ。
 コースへの復帰は自動だが,当然,タイムロスにはなる。うまく走行するためには,なるべく慎重に左右の操作を行って,アクセルワークも繊細に行う必要があった。
 余談だが,デジタルゲームパッドでプレイしていた昔のレースゲームのように,小刻みに連打するアクセルワークが有効であるようだ。

 コース2周で1プレイとなるので,所要時間は大体5〜10分程度。うまく走ると1周2分程度で走れるが,ぶつかりまくると5分くらいはかかってしまう。筆者は2分半程度でクリアしたので,スタッフは「初めての人にしてはうまいですね」と誉められたが,別の日本人記者が筆者のタイムをあっさりと抜いて2分そこそこでクリアしていた。「下手くそな人ほど長く遊べて,しかもぐるぐる回る筐体の醍醐味を味わえる」といったところか。


体重150kgの人もOK

BtoB向けに販売の可能性も視野に


 技術的な面を見ていくことにしよう。
 名前からも分かるとおり,AORUS720VRは,GIGABYTEが展開しているゲーマー向け製品ブランド「AORUS」のプロダクトを使って組み上げたものだ。たとえば,VRコンテンツを動作させるPCや,可動筐体を始めとした周辺機器を制御するのに,AORUSブランドのPCパーツを採用しているのだ。

 具体的な採用製品としては「AORUS AC300W Gaming Chassis」というタワー型PCケースと,Intel X299チップセット搭載のマザーボード「X299 AORUS Gaming 9」,「GeForce GTX 1080 Ti」搭載のグラフィックスカード「AORUS GTX 1080 Ti Xtreme Edition 11G」といったものが挙げられている。

ピンボケしていて恐縮だが,左写真の手前にあるのが,AORUS720VRに搭載されているものと同型のPC。当然中身は全部GIGABYTE製品だ。筐体内のディスプレイは係員の操作用だが,ソーシャルスクリーン的な意味もある(左)。ジョイスティックの下にある部分に,PCを組み込んでいるとのこと。プレイ中はPCも一緒にぐるんぐるん動いているわけだ
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 使用しているVR HMDは,Oculus VR「Rift」。HTCの「Vive」は使えないのかと聞いたところ,Viveは,VR HMDの位置や動きのトラッキングに使う「ベースステーション」が必要になるが,AORUS720VRは筐体内に着席してプレイするので,これを使えないからだという話だった。
 AORUS720VRの場合,回転軸が2軸だけなので,VR HMDが内蔵しているジャイロセンサーや加速度センサーといった慣性計測装置(IMU,Inertial Measurement Unit)だけでも,向きや角度は検出できるはずだ。それについても質問してみたところ,「たしかにその通りなのだが,VR HMDの自律的な向きや角度の検出精度は,Riftのほうが正確だった」とのこと。ViveはVR HMD本体だけだと安定したデータが取れないので,それもあってAORUS720VRでの採用を見送ったのだそうだ。

 AORUS720VRの開発期間は,可動筐体システムを含めて2か月強だったという。なかなかスピード感のあるプロジェクトだが,実際にはコンテンツと筐体のカゴ部分,稼働システムは,それぞれ分業で開発したそうだ。
 VRゲームのRedoutは,イタリア・トリノ市にある開発スタジオの34BigThingsが2016年にリリースしたもので,これをAORUS720VR用にカスタマイズして使用したという。ちなみに,ゲームエンジンにはUnreal Engine 4を使っている。


 AORUS720VRで面白いのは,プレイヤーはVR HMDを着用するものの,ヘッドフォンは身につけないというところだ。ゲームのサウンドは,プレイヤーの真横左右に設置したスピーカーで再生する仕組みになっている。
 理由の1つは,筐体が激しく動くので,ヘッドバンドのテンションだけ固定するヘッドフォンでは,体が振り回されたときに外れて吹っ飛んでしまうためとのこと。Rift本体に固定できるOculus純正ヘッドフォンもあるのだが,プレイヤーが体験中に汗ばむことが多いそうで,着用時の不快感も考慮して外したそうだ。
 ヘッドフォンを使わない理由は,もう1つある。AORUS720VRは,ディスプレイの上に送風機を付けて,ビークルの走行速度に応じて強弱を付けた風をプレイヤーに浴びせるギミックがあり,ヘッドフォンをつけると,風を感じにくくなるそうだ。そのため,あえて付けなかったということだった。

筐体外に置いてあるスピーカーとサブウーファは客寄せ用
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 展示ブースでは,これ以外に,筐体から少し離れた場所にサブウーファと外部スピーカーを追加で設置している。担当者によると,「迫力のあるサウンドを周囲に響かせることで,客寄せ効果が期待できるため」とのことだった。細かいところまで,意外にいろいろと考えているようである。

 筐体のカゴ部分は,体重150kgの人が着席した状態で動いても,びくともしない堅牢性があるとのこと。
 2軸の可動部分は電動モーターで,油圧(ハイドロ)式のアクチューエーターではないそうだ。電動モーターの利点は,大きな動きも小さな動きも最大トルクの猛スピードで高速に動かすできるところとのこと。時速数百km/hで走るVRレースの動きを再現するためには,遅延が発生しうる油圧式は考えられなかったのだとか。

上下方向の回転運動を生むモーターを取り付けたヒンジ部。かなり大型のモーターで,筐体を支えるパイプフレームの太さも強烈だ
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強力なモーターで動かすだけあって,安全面には細心の注意を払ったという。会期中も,1日に2回のメンテナンスタイムを設けている。COMPUTEX会期直前には,希望したGIGABYTE社員全員に連続で体験してもらったそうで,「これが実質的に耐久テストになった(笑)」そうだ
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 筐体のカゴを含めた総重量は約700kg。価格は非公開だが,単に「デモ用に1台作っておしまい」ではなく,VRアミューズメントシステム向けのBtoBソリューションとして,展開していくことを検討中だそうである。取材中も,インドからのバイヤーが「どうしても値段を知りたい」と担当者に詰め寄っている様子を見ており,こうした問い合わせは会期中に殺到していたらしい。今回の展示に対する注目度は,GIGABYTEの想像を超えてしまっていたようである。

 AROUS720VRは,この1台しかなく,しかも相当な重量物なので,台湾外で稼動させるのは難しいそうだ。ただ,今回の人気ぶりや問い合わせの多さを見れば,2台目以降が製造される可能性は高そうに思える。日本でもVRアミューズメントパークなどに設置してほしいものだ。

こちらはブースに展示されていた薄型ゲーマー向けノートPC「X5 MD」。NVIDIAの「Max-Q Design」を採用した製品で,G-SYNC対応の15.6インチ,4K IPS液晶パネルを搭載し,GPUは「GeForce GTX 1080」,CPUは「Core i7-7820HK」とのこと。メインメモリ容量は最大64GB。重量は2.5kgと,ASUSTeK Computerの「ROG Zephyrus」(約2.2kg)より少し重い
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閉じたときの厚さは約23mm。GeForce GTX 1080搭載のMax-Q Designノートのわりに,オーソドックスなゲーマー向けノートPCに近い形状だが,その分,厚みがある
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GIGABYTE 日本語公式Webサイト

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