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日本のインディーズゲーム界をフランス人が追う「Branching Paths」試写会レポート。木村祥朗氏,もっぴん氏,楢村 匠氏がシーンの現状を語る
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印刷2016/07/26 16:29

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日本のインディーズゲーム界をフランス人が追う「Branching Paths」試写会レポート。木村祥朗氏,もっぴん氏,楢村 匠氏がシーンの現状を語る

 注目を集める日本のインディーズゲーム界をフランス人が追ったドキュメンタリー「Branching Paths」。2016年7月29日の配信に先立ち,「PLAYISM」を運営するアクティブゲーミングメディアは7月25日に東京都内にてメディア向けの試写会を開催した。

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「Branching Paths」公式サイト


 会場には,同作の監督を務めた映像ディレクターのアン・フェレロ氏,作品内に登場するインディーズゲームクリエイターであるOnion Gamesの木村祥朗氏「Downwell」のヒットで注目を集めるもっぴん氏,そして「LA-MULANA」シリーズでお馴染みのNIGOROの楢村 匠氏が登場。日本のインディーズゲーム界に関するトークを行った。

左から,トークの司会を務めたアクティブゲーミングメディアの水谷俊次氏,Onion Gamesの木村祥朗氏,「Branching Paths」の監督を務めたアン・フェレロ氏,NIGOROの楢村 匠氏もっぴん氏
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 「Branching Paths」は,フェレロ氏が2013年から2年の間,日本のインディーズゲーム界を取材したドキュメンタリー。実際に創作活動を行っているクリエイターから,これを支援するプラットフォームホルダーまで,多くの人々が登場し,それぞれの立場からインディーズゲームを語る。

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 大手ゲーム会社からインディーズゲームクリエイターに転身した稲船敬二氏(代表作:「Mighty No. 9」)や,“IGA”こと五十嵐孝司氏(代表作:「Bloodstained: Ritual of the Night」),海外から日本にやってきて作品を作っている17-BITのJake Kazdal氏(代表作:「宇宙戦士ガラクZ」)など,その顔ぶれは多彩。語られるテーマも,インディーズゲーム作りの魅力であったり,資金調達の苦労であったり,開発者同士が交流するためのイベントの必要性だったりとさまざまだ。

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 中でも注目すべきはもっぴん氏だ。それまでは公の場で作品を発表したことがなかったもっぴん氏だが,「Downwell」のプロトタイプを公開するや,海外から多くの注目を集めることになった。ドキュメンタリーでは,同作が大ブレイクする前から氏を追っており,開発中の気持ちなどが語られている点は貴重な資料と言えるのではないだろうか。
 フェレロ氏が「インディーズゲーム界のモザイク」というだけあり,そこに携わる人々の気持ちを切り取った万華鏡のような作品であると感じられた。日本のインディーズゲーム界が注目を集め始めている今だからこそ見ておきたい。

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「インディーでも大規模でも,ゲーム開発は難しい」

インディーズゲームの雄がシーンの現状を語る


 試写会に続いては,監督のアン・フェレロ氏と,Onion Gamesの木村祥朗氏,もっぴん氏,NIGOROの楢村 匠氏が登場。アクティブゲーミングメディアの水谷俊次氏の司会のもと,トークを行った。

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 フェレロ氏は,日本のアニメやゲームで育ち,流ちょうな日本語を操る日本通。かつて日本のサブカルチャーを取り扱う,フランスのケーブルテレビネットワーク「Nolife」で番組を作っていたという経歴の持ち主だ。
 そんなフェレロ氏が「Branching Paths」を撮影することになったきっかけは,木村氏との出会いであるという。自作のインディーズゲームを宣伝する機会が少ないことを痛感していた木村氏。当初は自分でOnion Gamesのドキュメンタリーを作っていたのだが,映像制作を生業とするフェレロ氏と出会ったことにより,この取り組みが日本のインディーズゲーム界全体を対象とするものに昇華されたのだそうだ。

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 フェレロ氏は,2013年のCEDECにおいて,フランスの親日オタク文化の成立を解説した講演「『日本のゲームが海外に通用しない』なんてウソだ!〜大人気の日本コンテンツの実態〜※なんと日本語セッション!」を行ったことをきっかけに,日本のインディーズゲーム界がどうなっているのかを知りたいと思っていたのだが,木村氏との出会いもあって「Branching Paths」の制作に踏み切ったのだという(関連記事)。

 こうしてスタートした「Branching Paths」プロジェクトだが,精力的な取材の甲斐もあり,動画の容量は合計20テラバイトにも達したという。もちろん,すべてを公開するわけにはいかないので,いろいろと編集を加えなければならないのが一番の苦労だったとのこと。
 フェレロ氏にとって印象的だったのは,インディーズゲームクリエイターが皆,さまざまな苦労していることだそうだ。いかにしてゲームを完成させるか。資金集めをどうするか。定期的に作品をリリースするにはどうすればいいか。苦労は多いのだが,クリエイター達が仲間と触れあい,モチベーションを上げたりする楽しさも取材を通して見ることができたのが良かったと氏は語った。

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 「Branching Paths」では,「自分の望む作品を自由に作るためにはどうしたらいいのか」がテーマの一つとなっている。そこで水谷氏は,独立してインディーズゲームクリエイターになった木村氏に対し「大きな会社では,自分が好きなゲームを作るのは難しいのか?」という問いを投げかける。木村氏が返した答えは,「大会社であっても,少人数プロジェクトであっても,ゲームを作ること自体が大変である」というものだ。

 好きなように開発を続け,面白さがブレた作品を未完のまま放置するならともかく,“自分が好きなもの”を“面白く”作り,さらには“完成させる”ためには大きな困難が伴う。制作へのモチベーションを保ちつつ,自分が楽しいと思っていること(=ゲームの魅力)がブレないように集中し続ける必要があるし,そのうえで作品を面白く仕上げなければならない。そもそも,ゲームを完成させることが難しい。こうした大変さは,大会社でもインディーでも変わりないのだ,と木村氏はもの作りの大変さを語った。

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 日本と海外のインディーズシーンの違いは,ゲームへの知識ではないかともっぴん氏は指摘する。
 英語圏ではゲームデザインに関する知識や,良質なインディーズゲームについての情報が大量に交換されており,これがさらなる良作を生み出していく。しかし日本ではこうした良作でもローカライズされることが少ないため,ヒットも生まれにくく,インディーズシーンに新しい人が入りにくいのではないかと述べた。

 また,楢村氏は「Game Developers Conference(GDC)」の講演に招かれた際,「Independent Games Festival(IGF)」の授賞式が大会場で行われていたことに驚いたという。木村氏もIGFから大きな影響を受けた一人だ。当時,もの作りのモチベーションが低下していたという木村氏だが,IGFの会場で見た不思議なインディーズゲームの数々に衝撃を受けたことから,ゲーム作りのモチベーションが再燃。これが「Million Onion Hotel」「勇者ヤマダくん」の制作につながったのだそうだ。

 インディーズゲーム全般が抱える問題としては,宣伝力の不足がある。プロモーション予算が潤沢にあるAAA級タイトルとは違い,自作をアピールできる機会が限られてくるからだ。ゲームレビューの中には批判的なものも出てくるのだが,しっかりとゲームをやり込んで評価してくれるということで,木村氏はこうした記事を歓迎するという。

 きちんと遊んだうえでの批判が開発者の元に届くことにより,日本のゲームはもっと良くなっていくのではないかと木村氏は続ける。また,海外ゲームメディアには,システム面を紹介するようなレビューばかりでなく,その時のプレイヤーの感情を綴るものも少なくないが,日本のメディアもこうした手法を取ればいいのではないかと語った。

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 楢村氏は,インディーズゲーム制作者にとって,自作の記事が載るのは嬉しいことであると語る。高難度で知られる「LA-MULANA」がそうであるように,多くのゲームには受け取る人によってプラスにもマイナスにもなる要素が存在するのは確かだ。氏は「LA-MULANA」を例に挙げ,変に配慮をして「誰でも遊べる簡単ゲーム!」と書かれるよりも,その難しさをしっかりと伝え,ゲームの面白さのみで評価をしてほしいと希望した。

 気になるのはこれからの三氏の活動だ。木村氏の「Million Onion Hotel」は2016年11月,「BLACK BIRD」は来春に完成予定。楢村氏の「LA-MULANA2」は東京ゲームショウ2016に発売日を発表できるとのこと。もっぴん氏は次回作に着手したところであり,具体的なスケジュールを明かせる段階ではないという。三氏の新作を楽しみに待とう。
 なお,「Branching Paths」の配信は7月29日。SteamとPLAYISMでデジタル配信されるので,インディーズシーンに興味のある人はぜひ一見を。

「Branching Paths」公式サイト

  • 関連タイトル:

    Million Onion Hotel

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    BLACK BIRD

  • 関連タイトル:

    LA-MULANA 2

  • 関連タイトル:

    Downwell

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    Downwell

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    Downwell

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    Downwell

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