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NVIDIAでGeForceビジネスを統括するフィッシャー氏に聞く「GPU市場の現在と将来」
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印刷2015/09/08 05:00

インタビュー

NVIDIAでGeForceビジネスを統括するフィッシャー氏に聞く「GPU市場の現在と将来」

Jeff Fisher氏(Sr. Vice President GPU Business Unit, NVIDIA)
画像集 No.002のサムネイル画像 / NVIDIAでGeForceビジネスを統括するフィッシャー氏に聞く「GPU市場の現在と将来」
 Jeff Fisher(ジェフ・フィッシャー)氏の名前を聞いて,「ああ,あの!」と思う人がいるなら,それは相当なNVIDIAマニアだろう。
 氏はNVIDIA本社でGeForceのビジネス面を統括している人物だが,今まで,メディアの前に登場したことはほとんどない。少なくとも,筆者は記憶になかったりするのだが,そんな“レアキャラ”であるFisher氏が来日した2015年9月上旬,4Gamerでは氏に,現在,そしてこれからのGeForceビジネスについて話を聞くことができた。

 PC市場の縮小や,ゲームPC市場の拡大など,さまざまなことが語られる昨今だが,その状況にあってNVIDIAは,GeForceビジネスをどのように進めていくつもりなのか。氏の話をまとめてお伝えしたい。


「据え置き型ゲーム機の存在はGeForceビジネスに好影響を与えている」


 本稿の主役となるFisher氏がNVIDIAへ入社したのはなんと21年前。NVIDIAの創業は1993年なので,ほとんど創業直後からのメンバーといえる大ベテランである。NVIDIAにおけるキャリアは「ほぼ半分がグローバルのセールス,残りの半分がGeForceビジネス担当」(Fisher氏)とのことなので,簡単にいえば,ここ10年近くのGeForceビジネスを統括してきた人物ということになる。

e-Sports文化は,アジアで立ち上がり,欧米へ広がった。「日本ではまだe-Sportsがあまり盛んではないように見えますが,いずれ盛り上がってくるはずだと考えています」(Fisher氏)
画像集 No.003のサムネイル画像 / NVIDIAでGeForceビジネスを統括するフィッシャー氏に聞く「GPU市場の現在と将来」
 インタビューに先立って氏は,用意したスライドを使って業界の近況を説明してくれたのだが,最初にテーマとなったのが,ゲーム市場の成長だ。いわく,人々がゲームに使う金額は,音楽や映画などといった“競合”の娯楽を超えているとのこと。ゲーム市場は現在も順調に成長し続けており,GeForce搭載グラフィックスカードを購入するような,いわゆるコアゲーマーと呼ばれる人の数もまた増えているという。

 ちなみに,「コアゲーマー」といっても定義はいろいろだが,Fisher氏によると,NVIDIAでは「週に一度は必ずゲームをプレイする人」と捉えているそうだ。コアゲーマーと呼ぶには少しぬるい感じもするが,Fisher氏は,個人的見解と断りつつ,「ゲーム用のPCを買ってゲームを楽しんでいる人がコアゲーマーではないかと思います。一方,ゲームPC以外でプレイするような人のことを,カジュアルゲーマーだと認識しています」と語っていた。

「週に一度はゲームを必ずプレイする人」の数は世界で3億人に達するとFisher氏。また,PCゲームの市場規模は年率8%で成長し,Steamユーザーは2年で倍増しているそうだ
画像集 No.004のサムネイル画像 / NVIDIAでGeForceビジネスを統括するフィッシャー氏に聞く「GPU市場の現在と将来」

 こうしたゲーム市場の拡大には,PlayStation 4(以下,PS4)およびXbox Oneといった現行世代の据え置き型ゲーム機が大きく寄与しているという。ゲーム機の人気が高まり,ゲーム市場が活性化することで,GeForceビジネスに極めてよい影響を与えているのだそうだ。Fisher氏は「据え置き型ゲーム機とGeForceはまったく競合しません」と言い切ってさえいる。

 そう言い切れる理由は何なのか。最初に挙がったのが,プラットフォームの共通化だった。「新世代のコンソール機であるPS4とXbox Oneが同じプラットフォーム(=x86)を共有することになりました。これによりゲーム開発者は,共通のプラットフォームでゲームタイトルを開発可能になり,結果,マルチプラットフォーム展開することへのリスクを大きく下げることができるようになっています」とのことだ。
 その典型的な例としてFisher氏が挙げたのが,9月2日にリリースされたばかりの「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」(PC / PS4 / PS3 / Xbox One / Xbox 360)である。「本作には,8000万〜9000万ドルといった開発費が投下されたと聞いていますが」と始めた氏によれば,ビッグタイトルに大きな投資ができるようになったのは,PCと現行世代の据え置き型ゲーム機との間で実現したプラットフォームの共通化が大きいとのことだった。

 もう1つ,現行世代の据え置き型ゲーム機が,グラフィックス品質のベースライン(=性能の“底”)を大きく引き上げたことも,PCゲームにとってポジティブな影響をもたらしていると,Fisher氏は言う。「PS4やXbox Oneのグラフィックス性能は,一世代前の据え置き型ゲーム機と比べて,6〜7倍に達しています。結果,そのレベルが,PCゲームのグラフィックス品質における,新しいベースラインになりました」(同氏)。

「PlayStation 3の性能を1として,GTX 950のグラフィックス性能が10倍近く高い」と言っても分かりづらいが,高いグラフィックス性能を持つことで知られるPS4よりさらに高い性能があると説明したほうが分かりやすい
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 「旧世代機との比較でグラフィックス品質が高い」と言っても伝わりにくいが,グラフィックス性能の高さで知られる現行世代機と比べてどれだけグラフィックス品質が高いかを語れるようになったことが,GeForceの販促に,大きくプラスの影響を与えているというのである。
 ちなみに,8月20日に発表された「GeForce GTX 950」(以下,GTX 950)は,従来の“x50系”と比べてスペック,そして性能が大きく引き上げられているが,その背景には,「新しいベースライン」があるとのことだった。


VRとGameWorksに注力するNVIDIA


 以上がGeForceビジネスを取り巻くゲーム市場に関するFisher氏の,というかNVIDIAの見解だが,続いてGeForceビジネスの将来についても語ってもらった。

 GeForceビジネスの将来を俯瞰するにあたって,Fisher氏がいま最も期待しているのは仮想現実(Virtual Reality,以下 VR)だそうだ。「私もOculus VRの『Rift』を体験しましたが,『これは将来大きく飛躍する』と確信しました。同時に,VRを満足なレベルで体験するためには,1080pの解像度と90fps以上のフレームレートが必要であり,それを満たせるPCだけが,向こう数年はVRのプラットフォームとなるとも考えています」(Fisher氏)。
 だからGeForceにとってVRが極めて大きなビジネスチャンスになるというわけである。

GameWorksはGeForceビジネスにとって重要な存在であるとFisher氏。同時に,開発者にはソースコードが提供されており,使うか使わないかを選択もできるとしていた
画像集 No.006のサムネイル画像 / NVIDIAでGeForceビジネスを統括するフィッシャー氏に聞く「GPU市場の現在と将来」
 VRとともに,ゲームデベロッパに新しい機能を提供する「GameWorks」も,NVIDIAのGeForceビジネスにとって重要だという。
 GameWorksについては,排外的であるとか,Maxwellアーキテクチャ以外では性能が出ないといった批判もあるが,「ゲームデベロッパは,GameWorksのソースコードにアクセスできます。また,デベロッパはGameWorksの機能を利用するかどうか選択でき,ゲーマーも(ゲーム側のグラフィックス設定から)機能の有効化・無効化を設定できます」と,その柔軟性と開放性を強調していた。

 さて,スライドを使った説明の最後でFisher氏から示されたのが,下のスライドである。これは,デスクトップPC向けGeForce GTXシリーズの現行ラインナップと,そのターゲット環境を示したものとなる。
 MOBAを4K解像度@120fpsでプレイするような人はまずおらず,条件を満たすディスプレイの選択肢も現状はほぼゼロだ。Fisher氏も「MOBAにおける4K解像度@120fpsの欄は,もしかしたら空白でよかったかもしれません」と述べていたが,NVIDIAがGeForce GTXをどう位置づけているかの参考としては役立つだろう。

2015年9月時点におけるGeForce GTXのラインナップと,それぞれのターゲット
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ハイエンドへシフトしつつある世界のGPU市場


 というわけで,ここからがインタビュー本番だ。普段あまり「NVIDIAの偉い人」にしないような内容を中心に聞いてみたので,ぜひチェックしてほしい。

4Gamer:
 先ほどもお話しいただきましたが,あらためて,GeForceビジネス全般のお話から聞かせていただければと思います。

Jeff Fisher氏:
 インタビューを受けるのは初めてなので(笑),どうぞお手柔らかに。

4Gamer:
 世界のゲーム用GPU市場において,GeForceのシェアは8割を超えたというニュースが伝えられています。また,日本では9割を超えて久しいと言われており,端的に述べて,GeForceは大変な成功を収めているといえるわけですが,NVIDIAとしては,好調の要因をどう捉えていますか。

画像集 No.008のサムネイル画像 / NVIDIAでGeForceビジネスを統括するフィッシャー氏に聞く「GPU市場の現在と将来」
Jeff Fisher氏:
 まず,直接の回答ではありませんが,非常に嬉しく,また光栄なことだと思います。
 そのうえで,ゲーマーの方々が我々のGeForceを選んでくださっている背景を挙げると,まず,我々が提供しているドライバが非常に高品質で,主要なゲームタイトルがリリースされるときには,その1〜2日前には最適化版ドライバを公開できているというのがあると思います。

4Gamer:
 たしかに,最近のGeForce Driverにおける最適化速度は,目を見張るものがありますね。

Jeff Fisher氏:
 はい。また,「GeForce Experience」(以下,GFE)を使えば主要なゲームタイトルに対して簡単に,かつしっかりとグラフィックス設定を行えますし,ソーシャルでゲームプレイを共有することもできます。

 そしてゲーマーの方々には,先ほどもお話が出たGameWorksの素晴らしさも理解いただけていると確信しています。これら,GeForceを取り巻くソフトウェア環境が,ゲーマーの方々から評価を得ているのでしょう。

 もう1つ強調しておきたいのは,私達NVIDIAは,ゲーマーが直面している難問の解決へ向けて,常に取り組んでいるという点です。

4Gamer:
 と言いますと。

G-SYNC対応ディスプレイの例
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Jeff Fisher氏:
 たとえば,かつて「3D Vision」という製品がありましたが,これは当時のゲーマーの方々が立体視を正確に再現することが難しかったという難問があっために開発した製品です。
 現在は同じ文脈で「G-SYNC」というシステムを用意し,(表示遅延やテアリングといった)問題に対し,グラフィックスカードとディスプレイのトータルで解決策を提案しています。

4Gamer:
 3D Visionが過去になった現在のGPU市場と,その見通しを聞かせていただけますか。

Jeff Fisher氏:
 GPU市場トータルでは,とても良好だと考えています。率直にお話しすると,ローエンドのGPU市場は縮小に向かっていますが,それを補ってあまりあるほど,ゲーム市場でハイエンドGPUは力強く伸びてるという現状があります。

4Gamer:
 一点確認ですが,いまおっしゃった「ハイエンドGPU」というのは,GeForce GTXシリーズのことという理解でいいでしょうか。それとも「GeForce GTX 970」あたりより上のことですか。

Jeff Fisher氏:
 前者ですね。そして,先ほどのご質問にお答えすると,今後は,e-SportsやVRといった市場の拡大に合わせて,ハイエンドGPU市場はさらに拡大するという見通しを持っています。

4Gamer:
 そんな拡大するGPU市場の中で日本市場についてはどう見ていますか。私達がヒアリングすると,流通関係者は一様に「苦しい」と述べていたりするわけですが。

Jeff Fisher氏:
 日本の市場はGPU全体から見ると決して大きなものではありません。しかし,とても情熱的なゲーマーがいる市場だと見ています。
 日本では,75%ものゲーマーに,GeForce GTXクラスのGPUを購入していただいています。このパーセンテージは驚異的で,ほかの国ではこんな極端な数字にはなりません。

4Gamer:
 私達の認識でもパーセンテージはそんな感じでしたが,そうですか,ほかの国や地域では,GeForce GTXの割合はもっと低いですか。

GTX 980リファレンスカード
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Jeff Fisher氏:
 ええ。また,私達が「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)や「GeForce GTX 980 Ti」(以下,GTX 980 Ti)といった高性能のGPUを発表したとき,最初に歓迎して,利用してくださるのは,必ず日本の方々です。NVIDIAとしては,そんな日本市場の特性を尊重して,新製品の発売に当たっては,日本市場で必要とされる数を確実に提供できるよう,常に心がけています

4Gamer:
 いまのお話だと,海外市場では動向が異なる,ということになるわけですが,たとえばユーザー数が日本とは比べものにならないほど多い中国だとどんな感じなのでしょう。

Jeff Fisher氏:
 中国市場のトレンドは日本とよく似たものになってきていますね。「ゲーマーがよりハイエンドのGPUを求める傾向」が強くなっています。ただ,これは何も中国市場だけではなく,世界中で言えることです。同時に,日本ほど極端ではありません。
 中国の話に戻すと,中国のゲーマーは,いままさにGeForce GTXクラスのGPUへの移行が始まっているところです。とくにe-Sports系で顕著ですね。

4Gamer:
 中国ではiCafe(※日本でいうインターネットカフェ)文化が花開いていますが,そちらはどうですか。

Jeff Fisher氏:
 同じ傾向です。

4Gamer:
 そしてそれは,欧米など,ほかの地域でも同じであると。

Jeff Fisher氏:
 そうです。欧米市場においてもエントリークラス,ローエンドクラスのGPUによる市場占有率は下がっており,その代わりにハイエンドのGPUの市場占有率が高まっています。

4Gamer:
 ところで,そのハイエンドGPUですが,FermiからKepler時代と比べて,第2世代Maxwellの時代では,価格が上がっているように思います。販売開始時点における北米市場でのメーカー想定売価だと,「GeForce GTX 480」「GeForce GTX 580」「GeForce GTX 680」が499ドルだったのに対し,GTX 980は549ドル,GTX 980 Tiは649ドルです。GTX TITANになってくると,さらにトンデモない金額になりますが,ハイエンドGPUの価格が上がっている理由を聞かせてください。

Jeff Fisher氏:
 NVIDIAとしては,「価格が上がっている」とは考えていません。価格に見合った性能を持つ製品群を提供できていると思っていますし,トップの価格帯では,以前から699ドル,599ドル,499ドルの価格帯で,世代ごとに最適な性能を持つ製品を提供してきたという認識でいます。

第2世代MaxwellベースとなるGeForce GTX TITANシリーズ最新作,「GeForce GTX TITAN X」のリファレンスカード。北米市場におけるメーカー想定売価は999ドルだ
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4Gamer:
 もう少し長いスパンで価格は見るべきだということですか。ただ,それにしてもGeForce GTX TITANシリーズは999ドルからですよね。

Jeff Fisher氏:
 ご指摘のとおりですけれども,GTX TITANシリーズはまったく異なる性格の製品です。先ほどご覧に入れたスライドでもGTX TITANシリーズは入れてありませんが,こちらは「エンスージアスト」(enthusiast,マニア)向けの製品で,主なターゲットユーザーは,大学でディープラーニングを研究している方々です。確かに「GeForce」ではありますが,「TITAN」は,ゲーマー向けではなく,安価なHigh Performance Computing(ハイパフォーマンスコンピューティング,HPC)向けですから,そもそも立ち位置が異なっているとご理解ください。

 少々宣伝気味の余談ですが(笑),9月18日に,日本でGTC Japan 2015を開催します。2000人ほどの方々が参加くださる予定のGTC Japan 2015は,ハイパフォーマンスコンピューティング,なかでもディープラーニングに特化したイベントになる予定です。

4Gamer:
 小さくなっているというエントリーおよびローエンド市場についても聞かせてください。この背景には,CPUに統合されているGPU(以下,iGPU)の性能向上があると容易に想像できますが,NVIDIAとして,GT型番のGeForceが展開されている市場の今後をどう見ていますか。

GeForce GT 740」搭載カードの例。「GeForce GTX 650」のリフレッシュ(≒リネーム)的な存在だ
画像集 No.010のサムネイル画像 / NVIDIAでGeForceビジネスを統括するフィッシャー氏に聞く「GPU市場の現在と将来」
Jeff Fisher氏:
 iGPUは以前からローエンドPC市場で50%のシェアを持っていたのですが,現在ではそのローエンドPC市場自体が落ち込んでいます。
 私達のローエンドGPUを使ってくださっている方々は,おもにオフィスユーザーの方々です。その市場はあまり大きくはありませんが,(グラフィックスAPIなどの)互換性が高く,安定性の高いドライバが使いたいというニーズが一定量ありますね。また,新興市場でもローエンド,エントリーのGPUは一定の支持を得ています。
 ただ,市場の動向が動向ですから,今後,これらGPUのニーズは徐々に減っていくでしょう。

4Gamer:
 とはいえ,ゼロになるというわけではありませんよね。

Jeff Fisher氏:
 そうですね,そろそろ底を打つのではないかと思います。
 私達のローエンド・エントリー市場向けGPUの製品展開についてお話しすると,将来的にいくつかのラインナップが統合され,製品数が減るといったことはあるかもしれません。しかし,将来的にも,iGPUと競合できる製品群を揃えていくつもりではいます。


ノートPC向けGPU市場では性能&機能重視と可搬性重視で二極化


4Gamer:
 ノートPC向けのGPU市場について伺いたいと思います。iGPUの性能が向上し,一方でゲーマー向けモデルが花盛りになるなど,市場は大きく変化してきるように感じますが,NVIDIAが展開しているビジネスの現状と,今後の見通しを聞かせてください。

Jeff Fisher氏:
 私達のGPUビジネスは,6割がデスクトップPC向け,4割がノートPC向けとなっています。先ほど話題に出たとおり,デスクトップPC市場では弊社製品が大きな支持をいただいていますが,ノートPC市場では,OEM(となるPCメーカー)がさまざまなGPUを選んで採用し,製品を提供している(ので,そこまで圧倒的な市場シェアを獲得しているわけではない)のが現状です。

4Gamer:
 日本にいると,ノートPC市場でもGeForceが圧倒的かと思いがちですが,世界市場ではそこまでにはなっていないわけですね。

Jeff Fisher氏:
 ええ。
 ただ,デスクトップとノート,両方のPC市場に共通した傾向として見られるのは,ゲーマー向けモデルが成長しているという点です。ゲーマー向けノートPC市場は力強く成長しており,私達としても,そこにより高い性能や機能を提供できるよう,努力しています。

4Gamer:
 ノートPC市場においては,IntelのiGPUとNVIDIAのGPUを負荷状況に応じて自動的に切り替えられる「Optimus」が提供され,とくにKepler世代では大きな成功を収めたように思います。
 しかし,現在はむしろ足枷になっているのではないかと思われることも多くなりました。ノートPC向けG-SYNCは利用できず,SLIは利用できず……。今後,Optimusはどうなっていくのでしょうか。

画像集 No.011のサムネイル画像 / NVIDIAでGeForceビジネスを統括するフィッシャー氏に聞く「GPU市場の現在と将来」
Jeff Fisher氏:
 OptimusはそもそもノートPCの可搬性とゲーム性能とのバランスを取るために開発された技術です。今日(こんにち)の最先端モデルでは,当該機種でゲーム性能や機能をより重視するのか,可搬性を重視するのかで,ゲーマー向けノートPCではゲームの性能を重視するのか,ポータビリティを重視するのかで,Optimusを使うかどうか,OEMが選択できるような形になっています。

 将来的にはノートPC向けGPUの消費電力をもっと下げたいと思っていますが,いまのところはOptimusでないと対応しきれない部分があります。現時点におけるOptimusは,より可搬性を重視する人のための技術,ということになるでしょう。そういったニーズに向けて,Optimusは今後も提供し続ける予定です。

4Gamer:
 Optimusに関しては,Windows 7やWindows 8.1世代でOptiums対応のノートPCにVR対応のヘッドマウントディスプレイを接続できたりできなかったりという話がありましたが,これは現在,どうなっているのでしょうか。

Jeff Fisher氏:
 OptimusのVRヘッドマウントディスプレイの対応にばらつきがあったのは,Windows 7と8.1の制限によるものです。ディスプレイ出力にOptiumsを用いるか,用いないかの,一方しか選択できなかったため,PCによってまちまちの対応になっていたということですね。
 Windows 10ではその問題が解決しているので,Windows 10世代のOptimusノートPCで,適切なビデオ出力端子があるものなら,問題なくVRヘッドマウントディスプレイへ対応できます

2014年3月の「GPU Technology Conference 2014」で,Pascalのサンプルを掲げるJen-Hsun Huang氏
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4Gamer:
 最後に,ここまでとはちょっと毛色の異なる質問です。Pascal世代からStacked Memory(≒High Bandwidth Memory,HBM)を採用することが,すでに発表されています。
 Pascal世代からStacked Memoryを投入する理由について,Jen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)氏は,Stacked Memoryのコストの問題や技術的成熟の問題を挙げていました。そうなると,Pascal世代から投入される「Stacked Memory採用の製品」は,やはり,コストの問題をある程度吸収できるハイエンド製品からということになるのでしょうか。

Jeff Fisher氏:
 NVIDIAとしては,将来的にGPU性能はもっと向上できる,向上させる余地があると考えています。リアルタイムのレンダリングをしていくためには,とくにメモリバス帯域幅が鍵を握っているというのはご存じのとおりで,第2世代Maxwellで私達は,最もよいバランスを保てる組み合わせとして,GDDR5メモリを選択しました。

 では,今後はどうか。より高いメモリバス帯域幅を保証できるだけでなく,十分に量産に堪え,ゲーマーが割高感を感じることなく入手できる価格を設定できる必要があるわけです。
 それ以上の話を聞きたいということだと思いますが,私のボスであるJen-Hsunがアナウンスした以上のコメントはできません(笑)。すみません。

4Gamer:
 (笑)。本日はありがとうございました。

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