インタビュー
謎に包まれていた新作ブラウザゲーム「V.D.−バニッシュメント・デイ−」とは,一体どんなゲームなのか。キーマンであるプロデューサー土田俊郎氏と楽曲担当の下村陽子氏へのインタビューを掲載
本作は,“世界地図から日本が消えた”とされる世界で,特殊な力を持つ少年少女達を率いて戦うタクティカルバトルRPGだ。すでに二度のクローズドβテストが行われているが,テストの参加要項に守秘義務が課せられていたこともあってか,クリエイター関連の情報以外は出回らず,どんなゲームなのか気になっていた人も多いだろう。
4GamerではすでにCBTレポートをお届けしているが,今回は,キーマンであるプロデューサーの土田俊郎氏と,楽曲を担当する下村陽子氏にインタビューを行う機会を得たので,本作の魅力の一端をお伝えしていきたい。
ジークラフト代表取締役 土田俊郎氏 |
作曲家 下村陽子氏 |
軽快なBGMで楽しませてくれるV.D.のバトル
敵の能力に合わせてキャラクターの配置を変えて戦う
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。お二人とも熱心なファンのいるクリエイターなので,本来なら近況からたっぷりお聞きしたいところなんですが……。今日は時間がありませんので,さっそくゲームの内容からお聞きしていきます。
土田俊郎氏(以下,土田氏):
V.D.の世界は,敵対する勢力によって日本だけが孤立した状態にされてしまいます。その敵対する勢力に対抗できるのは,特定の少年少女だけ……と,一見トンデモ設定とも言えるものなのですが(笑)。実は知り合いからアイデアをいただいて,それを基に私のほうで企画書にし,DMM.comのPOWERCHORD STUDIOに提出したのが始まりです。
4Gamer:
DMMさんのブラウザゲームというと,「艦これ」の印象がどうしても強くありますが,最初に企画書を見せたときの反応はいかがでしたか?
土田氏:
4Gamer:
音楽を下村さんに頼もうと思ったのも,企画の段階からだったんですか?
土田氏:
POWERCHORD STUDIOのプロデューサー(※)から,最初に「音楽は考えていることがある」と言われていたんです。企画が進んだときに,実は音楽は下村さんにお願いしてありますと,引き合わせてくれました(笑)。
4Gamer:
本作は,とにかく最初は謎に包まれていて,プロデューサー土田さん,音楽下村さん,そしてゲームのジャンルが「タクティカルバトルRPG」と公式サイトに掲載されたので,業界に詳しい人の中には「フロントミッション」系のゲームなのでは,と噂されたりもしましたよね。
土田氏:
「コンシューマゲームのようにガッツリ作り込んでください」と言われましたので,試行錯誤はしてみたのですが,戦闘のプロセスを一つ一つプレイヤーが実行しないとゲームが進まないというのは,ブラウザゲームとしては問題があるのかなと考えました。なので,バトルに入ると「GOボタン」が出てきて,それを押し続けると自動で進むようにし,プレイヤーの手間を減らす方向でシステムを構築しています。
4Gamer:
バトルでは,プレイヤーが介入できることはないのでしょうか。
土田氏:
プレイヤーは,前衛と後衛を入れ替えることと,ターゲットする敵を個別に指定することができます。バトルに参加するキャラクターにはジョブが設定されていて,ジョブによって前衛か後衛かハッキリ分かれているのですが,ほかにもキャラクター固有のスキルもあって,これが「前衛ジョブなのに後衛にいないと発動しない」といったことがあるんですよ。例えば,前衛のジョブ「ヘビーガンナー」は基本的に前で戦うことになりますが,後衛に移動させると防除系のスキルを発動することが多いので,いったん下げてスキルが発動してから前に戻す,というような戦術が行えるわけです。
4Gamer:
ジョブによって基本的には配置が固定されるけれど,キャラクターのスキルによっては場所の入れ替えも必要。つまり,V.D.のバトルでは,状況によって配置を変えつつ戦うことが重要になるわけですね。
土田氏:
ええ。とにかくキャラキャラクターを強化してGOボタンを押すだけでゲームを進めてもいいですし,配置を工夫してギリギリの戦いを楽しんでもいい,そういうゲームを目指しました。
4Gamer:
土田さんというと,バトルシステムにこだわりがある印象なのですが,シンプルな見た目に反して,実は内部で複雑な計算をしている……なんてことはないのですか?
土田氏:
V.D.は,そこまで複雑なバトルシステムではないですね。バトルも重要な要素ですが,キャラクター集めと育成にフォーカスを当てていますので,ほかの要素はできるだけシンプルで分かりやすくしました。ただ,スキルのシステムは結構考えていて,キャラクターを育成していくと,少しずつバトルが多様化していきますよ。
4Gamer:
バトルを少しだけ遊ばせてもらいましたが,下村さんらしい軽快なBGMになっていました。
下村陽子氏(以下,下村氏):
よく“下村節”とか言われるのですが,作っている本人はまったく分かってなくてですね。いろいろな雰囲気のゲームを作ってきましたが,どちらかというと器用貧乏タイプなのかなと。あれもこれもと手を出すので,個性はないのかもしれないと思っていたりします。
4Gamer:
いや,聞けば下村さんの曲だと分かると思いますよ(笑)。良い意味で下村さんらしく,バトルの緊迫感が増している感じがします。
下村氏:
4Gamer:
下村さんはゲームも相当プレイされているということをお聞きしていますが,プレイベートでゲームをプレイしている経験が作曲に活かされることもあるのでしょうか。
下村氏:
世界観など設定だけでなく,実際のゲームにおけるテンポ感,バトルならスピード感に合わせて曲を作ることは意識していますね。
4Gamer:
過去にも土田さんとは一緒に仕事をされたことがありますが,今回はやりやすかったですか?
下村氏:
何度か打ち合わせしていくなかで,こんな曲が良いのではとイメージが出てきていて,あとはそれを形にするだけでしたので,曲を作るという意味ではやりやすかったですね。締切があるという点だけは,やりにくかったですが(笑)。
可愛いキャラクターに反してシリアスな物語
日本を解放するという目的が達成できればエンディングへ
4Gamer:
バトルに続いて,次は物語について話を聞いていきたいと思います。最初はどうしてもキャラクターに目がいってしまうと思うのですが,全体的にどういった物語になるのでしょうか。
土田氏:
4Gamer:
オープニングから重苦しい雰囲気が垣間見れますが,重厚なストーリーに期待できそうですね。BGMのほうはいかがでしょうか。
土田氏:
曲の発注自体は「こういう場面で使うので,こういう気持ちになる感じでお願いします」と二行程度のもので基本お任せでした。とくに書き直しもなかったと思います。
下村氏:
えっと,一曲だけ没曲がありました(笑)。その没曲というのが,今回唯一の明るい曲だったんですよ。“明るい”から“不安”な曲になりました。
土田氏:
すいません,そうでした(笑)。
4Gamer:
明るい曲がないゲームということで,物語のシリアス度合いもか想像できますね(笑)。ブラウザゲームとしは珍しい,エンディングがあるゲームだともお聞きしましたが。
土田氏:
日本を解放するという物語ですので,実際に解放が行われる結末は用意されていて,そこに向けた過程を楽しむゲームとなっています。
4Gamer:
エンディングがあるということは,当然エンディング曲もあるんですよね。
下村氏:
エンディング曲は……やはりほしいですよね。
4Gamer:
ほしいです。個人的に,下村さんが作ったスーパーマリオRPGのエンディング曲「さよならジーノ……〜星の窓から見る夢は」が大好きなんですが,エンディングの感動は曲によるところも大きいと思うんですよ。
下村氏:
土田氏:
物語を最後まで見てくださったプレイヤーの方々に,感謝の意味を込めたエンディングはやはり用意すべきだなとは考えています。
下村氏:
エンディングで日本を解放したら,次は別のどこかの国が消えて新しい物語が始まってもいいですしね(笑)。
一同:
(笑)
4Gamer:
物語が終わっても,キャラクターの育成とか,ゲームとしては続いていくんですよね。
土田氏:
それは,もちろんです。エンディングに到達して満足したあとも,その世界に留まって遊んでいたいと思う気持ちにどう応えるのか。そこはちゃんと考えていかなければと思います。
4Gamer:
ちなみに,エンディングまではどの程度のプレイ時間で到達することを想定していますか。
土田氏:
全部が完成しているわけではありませんので,具体的にはまだ決まっていません。九州から始まって,北に進軍し,少しずつ日本を解放していくのですが,主要な物語は地方単位でくくられていて出てこない都道府県があるんですね。プレイヤーの皆さんからの反響次第ではあるのですが,スポットの当たっていない都道府県にも,アナザーエピソードを追加していきたいです。
4Gamer:
ご当地ネタも入れやすいでしょうし,ぜひ全部の都道府県を制覇してもらいたいです。アナザーストーリーなら,明るい話にもできると思いますので,もしかしたら没曲が復活するかもしれませんね。
下村氏:
いつでもご用意できます(笑)。基本はシリアスにしても,こぼれ話としてコミカルな場面も見てみたいですよね。
キャラクターの収集と育成/バトル/ストーリーが軸となる
高いレベルでその3要素が一体となっているのが特徴
4Gamer:
ちょっと触った感じでは,バトルのバランスはシビアな印象を受けました。
土田氏:
4Gamer:
焦って先んだ結果,難しいと感じたのかもしれません。以前クリアしたマップに戻って,キャラクター育成を行うことは可能なのでしょうか。
土田氏:
4Gamer:
初期配置のキャラクター達は物語でもその姿を見られますが,スカウトで入手するキャラクターの扱いはどうなっているのでしょうか。
土田氏:
作中は,プレイヤーの部隊だけでなく,いくつかの部隊がそれぞれ戦っていて,お互い助け合うなどのドラマがあるんですね。そうした別部隊のキャラクターは,最初からスカウトできるわけではなく,物語の進行していってプレイヤーの部隊と合流したときにスカウト可能となる仕掛けです。
4Gamer:
なるほど。物語でどういうキャラクターなのか先に設定が分かり,どうしても仲間にしたいと思ったらスカウトを行う流れですね。
土田氏:
レアリティが高いとかパラメータが高いといったゲーム的なことだけでなく,どういう人物なのその設定から思い入れを持ってもらえると嬉しいですね。キャラクター別のサブクエストもありますので,V.D.の世界観にどっぷり浸かって遊んでみてください。
4Gamer:
強力なキャラクターは,そうしたサブクエストをクリアすることで仲間するなんてこともこともありそうですね。
土田氏:
ありますね(笑)。特殊な戦地にのみ投入されるエリート部隊なども存在していて,キャラクターを立たせるよう細かい設定をしています。きっとお気に入りのキャラクターが見つかるはずです。
4Gamer:
物語にのめり込むと,そのエリート部隊全員を揃えたいと思ったりしそうです。
土田氏:
部隊によって服装に統一感があったりするので,揃えて楽しむのも面白いと思いますよ。仲間にしたキャラクターはアルバムで詳しい設定が読むこともでき,それらの情報をつなぎ合わせていくとV.D.の世界が少しずつ見えてきます。
4Gamer:
分かりました。では,下村さんに質問します。よく聞かれると思うのですが,V.D.の楽曲の中でプレイヤーの皆さんにぜひ聞いてもらいたい一曲はありますか?
下村氏:
4Gamer:
ゲームをプレイしながら,探させてもらいます(笑)。ゲームシステムに関しては,プレイヤーの皆さんに注目してほしいところはどのあたりになりますか?
土田氏:
キャラクターを集めてバトルの戦術を練り,バトルに勝つことでストーリーが進む。そして,ストーリーが進むとキャラクターが増えていく。キャラクターの収集と育成/バトル/ストーリーが一体になっていることが,V.D.の持ち味だと思います。
下村氏:
ちなみに,土田さんのお気に入りの曲を聞いてもよろしいですか?
土田氏:
えっとですね,「BOSS2」が好きですね。とあるボス戦のとき流れる曲で,下村さんからは「メロディアスすぎませんか?」と言われたんですが,それを流すと盛り上がりそうなバトルがあるので,「これをいただきます」と即答した記憶があります。
下村氏:
その曲は,できあがって納品したあとでどうしても構成的に変更したくなって,無理を言って直させてもらった思い入れのある曲ですね。
4Gamer:
物語の重要なポイントで行われるバトルで流れる曲でしょうか。聞いてみたいですね。
土田氏:
物語を進めていってください。盛り上がるシチュエーションなので,きっとこれがBOSS2だと分かると思いますよ。
4Gamer:
V.D.が本格始動して,今回お聞きした注目のポイントを確認できることを楽しみにしています。では,最後に4Gamer読者に向けてメッセージをお願いします。
土田氏:
何から何まで斬新なゲームというわけではありませんが,しっかりしたゲームになるよう開発には力を入れました。手に取っていただいて,ストーリー,キャラクター集め,そしてバトルの戦術というV.D.のセールスポイントを存分に楽しんでください。
下村氏:
V.D.で採用されたのは,重く泣きの要素がありながらも疾走感もある楽曲です。音楽を聴きながら,ゲームを楽しんでいただければと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「V.D.−バニッシュメント・デイ−」公式サイト
- 関連タイトル:
V.D.−バニッシュメント・デイ−
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(C)DMM.com POWERCHORD STUDIO / GCRAFT, Inc.
Development by GCRAFT, Inc. / fuzz, Inc.