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画面を動く枠で囲むと集中力が上がる? 新機能「Focus Mode」の開発秘話が語られたIOデータ「GigaCrysta」10周年記念イベント
その節目にあたる2024年10月15日,同社は,東京都内でブランド10周年の記念イベントを開催した。イベントの目玉は,東京ゲームショウ2024直前に発表された10周年記念モデル「LCD-GCQ271UD」だ。
イベントでは,LCD-GCQ271UDの特徴である「Focus Mode」(フォーカスモード)の開発に協力した明治大学総合数理学部 専任教授の中村聡史氏も登壇して,Focus Modeを実現した研究について説明した。
本稿では,中村教授の研究に関する説明を中心に,イベントの概要を紹介しよう。
あびんつ氏は,もともと実家が石川県金沢市にあるIOデータ本社に近いとのことで,同社を以前から身近に感じていたそうだ。
イベントの主役であるLCD-GCQ271UDのFocus Modeとは,27インチサイズ,解像度2560×1440ドットの画面中央に,24インチサイズ相当で映像を表示する機能だ。これにより,ゲーム映像がeスポーツの競技会でよく使われる24インチ級のディスプレイと同じ見た目のサイズになるので,違和感なくプレイできるというものである。解像度2560×1440ドットの映像を,ディスプレイ側で縮小して24インチ相当の部分に表示するので,Windowsやゲーム側からは,2560×1440ドットのディスプレイに見える仕組みだ。
27インチサイズの中央に24インチ相当の映像を表示する機能を持つeスポーツ向けディスプレイは,BenQ製品などに以前からある。しかしLCD-GCQ271UDのFocus Modeの大きな違いは,24インチ部分の周囲,本来なら何も映像を表示しない黒枠の部分に,10秒間隔で明滅する白い枠線を表示していることだ。
これにより,単に黒枠を表示しているだけよりも,ゲーム映像に集中しやすくなる。だから「Focus」=集中するモードというわけだ
技術アドバイザーとして,Focus Modeの開発に参加した中村教授は,まず,中村研究室でどのような研究を行っているかを簡単に説明した。
ユーザーインタフェース(以下,UI)の研究も,その一環というわけで,中村教授は「間違えやすいUI」の例として,横線で区切られた署名欄のどこに書くのが正しいかという例を挙げた。筆者も在外企業との誓約書のやり取りで,困惑することがたまにあるが,横線の上に書くか,下に書くか,どちらが正解というルールはなく,国によって異なる場合があると,中村教授は説明する。
中村教授は面白い例として,「ポツダム宣言」に各国の代表がサインした書面を挙げた。カナダ代表が署名の位置を間違えて書いてしまったので,以下に続く国の代表も書く位置がずれてしまったというものだ。
そして,研究を進めていくうちに,注目したい映像の周辺にノイズを表示して減衰させることで,集中を促せることが分かってきたそうだ。研究成果は,もちろん公開されていたので,それをたまたまIOデータのスタッフが目にして中村研究室に接触したことが,Focus Modeの誕生につながったわけだ。
余談だが,筆者はいわゆる映像酔い(3D酔い)しやすい質なので,あるとき,周辺視野と映像酔いの関係を調べたことがある。そのときに,中村研究室で行われた周辺視野に関する研究に行き当たり,興味深く拝見したことがあった。IOデータ機器がLCD-GCQ271UDを発表したときに,中村研究室の名前があったので驚いた,と同時に納得したものだ。
中村教授は,ディスプレイ側で周辺部分に映像を表示することには,利点もあると説明する。研究室では,映像を表示するアプリ自体に周辺へのノイズ表示を行う仕組みを組み込んだり,映像表示アプリを全画面に表示したうえで,サイズを調整して周辺部分にノイズを表示するといった仕組みを採用していたそうだ。しかし,当然ながらこのような仕組みは,余計な処理負荷が必要であるし,どんなアプリでも利用できるわけではない。
その点,ディスプレイ側で周辺部分に枠線を表示できるLCD-GCQ271UDであれば,アプリは選ばないしPC側に特別な負荷をかけることもないと,中村教授は述べた。たしかに,どんなアプリでも利用できるし,OS側に特別な設定やアプリの実行も必要ないというのは,大きな利点だろう。
中村研究室ではほかにも,周辺視野や視覚に関する研究を進めているとのこと。たとえば,視線追跡技術(アイトラッキング)を用いてユーザーの視線を認識して,周辺視野に当たる映像をぼかすことで集中を促進するといった研究も行っているそうだ。CG映像における「フォビエイテッドレンダリング」は,描画負荷を下げるための技術だが,注視すべき映像への集中を高めるのにも役立つということだろうか。
また,色覚にハンデがある人でも,問題がない人と同じように改善していく色覚特性の研究として,「Among Us」を用いた検証を行ったという例もあるそうだ。最近では,色覚へのハンデを考慮して,ゲームにおける警告表示などの色を,他の色に置き換えられるゲームは増えつつある。しかし,まだまだ少ないのが実情だ。
こうした研究とその成果が広がれば,色覚のハンデによってゲームを楽しみにくいということも減っていくかもしれない。
イベントではほかにも,GigaCrystaの今後の展開なども説明された。そのひとつとして,プロ格闘ゲーマーのMOV選手へのスポンサードを行うことが発表されたほか,eスポーツをテーマにした漫画「マタギガンナー」とのコラボレーションも行うとのこと。10周年の節目を迎えたGigaCrystaの今後にも注目したい。
アイ・オー・データ機器のGigaCrysta製品情報ページ
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