インタビュー
パワポケコラボ第2弾記念「実況パワフルプロ野球」インタビュー。制作陣の考える“パワポケらしさ”とは
実装内容は「こちら」の先行体験取材レポートでお伝えしているが,この取材のあとに「パワポケ」制作陣を交えたキーマンたちにインタビューする機会が得られたので,本稿で紹介しよう。
「実況パワフルプロ野球」,花丸高校を舞台とした「パワポケ」コラボサクセス先行体験取材レポート
KONAMIが提供するスマホ向けアプリ「実況パワフルプロ野球」にて,花丸高校を舞台とした「パワプロクンポケット」とのコラボ第2弾が2月25日から開催予定だ。コラボサクセスやミニゲームモードの実装に先駆けて確認できた内容をお届けしよう。
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元祖制作陣が組み込んだ「パワポケ」らしさとは
本日はよろしくお願いします。まずは2020年4月を皮切りに始まった「パワポケ」コラボが実現するに至った経緯をお聞かせください。
三浦陵介氏(以下,三浦氏):
「パワプロアプリ」制作のディレクションを担当している三浦です。コラボ実現に至った経緯としては,アプリ内のアンケートで多数の希望をいただいたことがきっかけでした。
4Gamer:
第2弾が決まるほどの人気だったということですよね。
三浦氏:
そうですね。第1回を実施してみたら予想以上の反響がありました。1回目のコラボで未実装だったキャラの登場を望む声もたくさんいただいたので,それらを含めてもう少し規模を広げて,「パワポケ」のシナリオを実装してみたらいいのではないか,という方向性で進行していきました。
そもそもアプリスタッフの中に,私も含めて当時の「パワポケ」を制作していたスタッフが関わっていたということも大きい要因の1つとなっています。
紫杏が1位になったのもやっぱり大きかったですね。
三浦氏:
ええ,人気投票で「パワポケ10」から登場したキャラクターの神条紫杏が1位になったことも大きな要因です。
西川氏:
2020年4月時点で実装された3キャラのうち,神条紫杏は1位となった彼女キャラということもあって,実装時はシナリオを書くのに時間がかかりました。アプリの場合はイベント数が増えすぎると問題が出てきてしまうので,当時は試行錯誤を重ねていましたね。
西川直樹氏 |
三浦陵介氏 |
4Gamer:
「パワプロアプリ」開発チームには,「パワポケ3」から「パワポケ14」まで制作に携わっている三浦さんだけでなく,「パワポケ1」から「パワポケ14」まで全体のシナリオに関わっている西川直樹さんもおられます。これはつまり……。
三浦氏:
はい,コラボというよりも当時の制作陣が作っていますね(笑)。もちろん,パワプロアプリは,そのほかにも多くのスタッフが関わって運営しているのですが。
4Gamer:
「パワポケ」シリーズはナンバリングが長く続きながらも,各作のストーリーがつながっていることで知られています。今回の「パワプロアプリ」で追加されるコラボシナリオは,既存シリーズと関係してくるんでしょうか。
シナリオは続編ではなくて,花丸高校が登場する「パワポケ7」をあくまでも「パワプロアプリ」で作ったら,こんな風になるだろう。そんなイメージをもとに調整を加えた内容です。
そしてコラボと言えば,本来はお互いのIPを持ち寄って交換してやる一種のお祭りです。そのため今回はお祭りという意識のもとで,「パワポケ7」だけでなく,ほかのナンバリングタイトルのキャラも登場させています。
4Gamer:
なるほど,「パワプロアプリ」オリジナルの花丸高校ですか。
西川氏:
そうです。基本的には「パワポケ7」の話をアプリの尺に合わせて編集し直したような内容となっています。とはいえ「パワポケ7」のことを知らない人も多いと思うので,同作を未プレイの人でも楽しめるようにしています。
4Gamer:
「パワポケ」のシナリオといえば,ただ野球選手を目指すだけでなく,暗くシビアな話が展開することもあり,そういったストーリーに対するファン期待の声あるかと思います。今回,そういったテイストのシナリオは用意されるのでしょうか。
実を言うと,「パワポケ」のシナリオを作ったとき,意識して暗い話を作ろうとしていたわけではなかったんです。現実にある辛い状況をほかの要素に置き換えた結果,そういうシナリオができあがっていきました。ダークな要素のある恵比留高校編が「パワポケ」らしいと言われることが多いんですが,太平楽高校編のように理不尽な状況に置かれた人々のもがいている話のほうが,「パワポケ」らしいと思っています。
今回のコラボに関しては,優秀なヒーローたちと,彼らに活躍の場を奪われた主人公たちとの対立が描かれていて,序盤からダークサイド的な部分は出ていると思います。そしてヒーローが負けた場合にどうなるのか,主人公が負けた場合にどうなるのか,といった部分はしっかりと原作を再現しています。
ただ,それ以外にヒーローが次々と現れて乗っ取られていくシーンや,ヒーローに妥協して迎えるバッドエンドなどは,入れられませんでした。しかし原作にあった主人公が負けた場合の展開は,しっかりとあります。
4Gamer:
「パワポケ」のキャラたちはコラボでの登場に伴い,もちろんデザインが一新されていますが,描き直すうえでこだわったポイントはどういったところでしょうか。
パワプロアプリではデザインリーダーをやらせてもらっている萩原です。デザインでは,そもそも何を持って「パワポケ」らしいと言えばいいのか。そこは難しかったですね。変な世界にしたいとは思っていて,黒野鉄斎が作りそうなロボットを登場させていたりします。
西川氏:
いかに「パワポケ」らしいロボットを出すかを決めるとき,サクセスを1周する時間を考えつつ,カードのシステムに絡めるのがちょうどいいという話になり,このロボットを出すことになりました。
カードのシステムに絡める際に普通のカードでは面白くないので,カードのデザインをロボのパーツに置き換えて「合体ロボ」にしようかと。「頭」「頭2」「ドリル」「アーム」という4つの部品で構成されているのですが,もちろん中身はカードゲームなので,実際組み合わさったときに,すべてのパーツ「ドリル」なんてこともあります。全身「ドリル」のロボから野球を指導してもらうわけですが……。
西川氏:
野球要素ないですよね(笑)。システムありきで,そこに遊びや「パワポケ」らしさを盛り込んだ結果,今回のような形になりました。
4Gamer:
そういえば遊びという面では,花丸高校のサクセスが追加されたあと,別のミニゲームとして「ウキウキ地雷パニック!!」も実装されるとうかがいました。
木村和久氏 |
プランナーとして今回のコラボに携わっている木村です。「ウキウキ地雷パニック!!」は,これまでの地雷パニックとは異なり,最初は正方形で,難度が上がっていくと縦長のステージになっていきます。
4Gamer:
これまで画面における縦と横の比率が横長となっていたハードで発売されていましたが,しっかりとスマホ向けに作り直したということですよね。
エリアが外側に広がっていく仕様は「パワポケ3」や「パワポケ8」ではなかったんですが,今回追加しました。もともとの仕様だとハードルが高いものになっていたので,序盤はもっと気軽にクリアできるよう,エリアを狭くするために入れた仕様です。
「パワポケ」好きで新たに入ってきた方でも,もちろん楽しめるように作りたいと思っていますが,当時や「マインスイーパ」を知らない方に向けて構築する必要があったんです。
4Gamer:
確かに「マインスイーパ」を知っていればゲームルールを理解しやすいですが,知らない場合にはルールの把握が難しそうです。
木村氏:
最初のほうはすぐクリアできるようにということで,正方形にしています。あとはゲーム機でボタンに対応していた操作を,アプリに落とし込むときにどう調整するかを試行錯誤しながら作っていきました。
4Gamer:
なお,そんな木村さんは「パワポケ」好きが高じてKONAMIに入社されたと聞いています。西川さんとしては木村さんにどのような印象を持っていますか?
私は「パワポケ」への強いこだわりを感じました。今回は「ウキウキ地雷パニック!!」のシナリオを木村に書いてもらったんですが,かなり「パワポケ」らしいシーンが繰り広げられるので,そこだけでも制作に入ってもらって正解だと思いました。
4Gamer:
その「パワポケ」らしいシーンというのは,どのような場面なんでしょうか。
西川氏:
一種,悪ノリのようなものです。原作であってもおかしくないような形だったので,ぜひそのシーンも楽しみに進めていってもらえたらなと思います。
4Gamer:
西川さんからお墨付きがもらえたところで,反対に木村さんは,制作陣の皆さんを間近で見てどのような印象を持ちましたか?
とても的確なアイデアを会議中に出されますし,とにかく仕事が早いんですよ。制作側に回ってから考えてみると,「パワポケ」スタッフは毎年少人数で表サクセスと裏サクセスをどちらも作っていたのに,どれも面白い。ゲームの面白さに納得できる仕事ぶりでした。
西川氏:
そうは言っても,ナンバリングタイトルが毎年発売されていた当時から変化しているとは思います。現在はテキストを直接書くことが減って監修のほうが多くなっていますから。
4Gamer:
当時のゲーム機向けに表現されていたキャラをスマホの画面で描写するにあたって,こだわった部分はどういったところでしょうか。
萩原氏:
それは私のほうで監修をしまして,今回は「パワプロアプリ」ということで完全なる「パワポケ」のテイストではないんです。「パワプロ」シリーズにおける「パワポケ」とのコラボという前提があったので。そのうえ解像度が上がると表現の幅も変わってくるため,細かい部分まで変更を加えています。
「パワポケ」のグラフィックスを再現する難しさ
4Gamer:
第1弾コラボのキャラや,今回のコラボで追加されるキャラも含めて,原作から縦と横のサイズ比が変わっているように感じました。そのあたりもスマホで高解像度になったことが関係してくるんでしょうか。
西川氏:
それはバストアップの仕組みとかパターン数の問題があります。システム上,避けられない変化ですね。
東優を当時ドットで描いたときは,チーム内で「めちゃくちゃ顔がでかくない?」と言われていました。そのため「パワプロアプリ」でも顔を大きめにして,当時のサイズ感を表現しています。
西川氏:
大量のキャラクターを扱う関係上,「パワプロアプリ」では,顔とは逆に体が大きい人が出せないんですよね。大豪月みたいに始めから全部描けば別なんですが,それでも野球をすると体型は標準的になってしまいます。それも仕方のないことなので,そのラインでどれだけやれるかということになってきます。
「パワポケ」のときにも,ゲーム機が変わったタイミングで絵に変化がありました。そういった面では,表情の違いというのもあって,なるべく初代のキャラクターに近くなるようにしています。
とくにピンクの顔の線とかは「ゲームボーイアドバンス」と「ニンテンドーDS」で変化していました。あごの下の線をどうしようかと,当時も試行錯誤した記憶があります。
萩原氏:
当時の資料を見直しながら比較もしていったんですが,デジタル資料で保存されていなかったため,家中を探して資料を見つけていきました。
そんな歴史ある「パワポケ」シリーズですが,今回シリーズの節目に関係なくコラボが実施されたのは,何か最新作に向けた動きもあるんじゃないかと勘繰ってしまうところもあります。
三浦氏:
パワプロアプリでは,第1回のパワポケコラボを終えてから第2回実施を検討しましたので,新シナリオを実装するタイミングとして,この時期がちょうど良かったと言うことになります。パワプロアプリでの第3回,第4回コラボの可能性に関してですと,お客様からの反響次第になるかなと思います。アプリ以外のお話ですと,私の口からはノーコメントですね(笑)。
4Gamer:
承知しました。そろそろお時間が近づいてきましたので,最後に皆さまから一言ずつコメントをいただいて締めたいと思います。
三浦氏:
今回のコラボはアプリプレイヤーだけでなく,「パワポケ」ファンにも向けた内容となっています。当時「パワポケ」は遊んでいたけど,アプリを遊んでいないという方には,ぜひこの機会に遊んでいただきたいです。もちろん,いまアプリを遊んでいる方も楽しめる内容になっていると思うので,既存プレイヤーも楽しみにお待ちください。
西川氏:
「パワポケ14」が出てから6,7年経過しているという状況で,まだ「パワポケ」を覚えていてくれる人がいるっていうのは,非常にありがたい話です。できる限り当時の雰囲気を再現できるようにがんばってきましたし,今回のコラボでは「パワポケ」で語れなかったことを語っているキャラもいますので,楽しんでいただければ幸いです。
萩原氏:
私も長いあいだ「パワポケ」に携わってきた中で,子供たちに喜んでもらえるようにとやってきました。そんな中,その子供たちが大人になって,木村が入ってきました。木村のようにゲーム業界に興味を持って入ってきてくれたのが,私としては作っててよかったなと感じた部分です。今後もゲームを作っていくうえで,人に感動を与えるようなものを目指していけたらなと思います。
木村氏:
今回,「パワポケ」コラボに関わるということで,戦々恐々としながら作ってきたところもありますが,昔から好きな人にも楽しんでもらえるようなものにできたと思います。もちろん,「パワプロアプリ」から始めた方にも,「パワポケ」がどういう作品だったのかを感じ取れるイベントにできているはずです。
4Gamer:
本日はお忙しい中,ありがとうございました!
──2021年2月10日収録。
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阪神甲子園球場公認
ゲーム内に再現された球場内看板は、原則として2018年のデータを基に制作しています
(C)Konami Digital Entertainment
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