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機械学習の成果をドローンの飛行に応用も可能。Tegra X1搭載の小型コンピュータ「Jetson TX1」発表会レポート
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印刷2016/03/03 18:03

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機械学習の成果をドローンの飛行に応用も可能。Tegra X1搭載の小型コンピュータ「Jetson TX1」発表会レポート

 既報のとおり,2016年3月1日,NVIDIAは,クレジットカードサイズの基板にモバイル・組み込み機器向けSoC(System-on-a-Chip)「Tegra X1」を搭載した小型コンピュータ「Jetson TX1」と,各種インタフェースの付いた開発キット「Jetson TX1 Development Kit」を3月中旬に国内発売すると発表した。

ヒートシンクを外した状態のJetson TX1モジュール。中央の金属モールドされたチップがTegra TX1だ
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 NVIDIAによるメーカー想定売価は発表されていないのだが,先行発売した米国では,Jetson TX1モジュールは1000台ロット時における1台の価格が299ドル,Jetson TX1 Development Kitは599ドルで販売中だ。国内では,法人向け販売を菱洋エレクトロが,個人向け販売はオリオスペックが担当することになっており,オリオスペックにおけるJetson TX1 Development Kitの価格は,9万3798円(税込)だ。

 ゲームには関係ないテーマではあるが,Tegra X1を使った開発者向けコンピュータで何ができるのかに興味がある読者もいると思うので,本稿では3月1日に開かれた記者説明会の概要をレポートしよう。


Jetsonシリーズの2世代めは,カードサイズで小型機器への組み込みも容易に


 Jetsonシリーズは,NVIDIAが開発者向けに提供している組み込み向け開発キットだ。「Tegra K1」を搭載して2014年に登場した「Jetson TK1 Development Kit」(関連記事,以下 Jetson TK1開発キット)も,菱洋エレクトロやオリオスペックから国内販売されている。

 新しいJetson TX1は,Jetsonの2世代めにあたる製品で,機器に組み込めるコア部分がカードサイズの小型モジュールになっていることが,前世代との大きな違いだ。このモジュールを使えば,開発者は自前の機器にJetson TX1を比較的簡単に組み込むことが可能になる。

コア部分はクレジットカード程度の大きさのモジュールにまとめられており,ロボットのような機器に組み込みやすいのがJetson TX1の特徴だ
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Jetson TX1の主なスペック。容量4GBのLPRRD4メモリと,容量16GBでeMMC接続のフラッシュメモリストレージ,無線LAN機能やBluetooth機能などを搭載する
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 もう1つのJetson TX1 Development Kitは,PCに必要な汎用インタフェースを搭載するベースボードに,ACアダプターといった付属品をセットにした製品だ。開発者は,Jetson TX1 Development Kitを使ってソフトウェアやハードウェアを開発して,最終製品にはJetson TX1モジュールを組み込むといった使い方をNVIDIAでは想定している。

Jetson TX1 Development Kit。ヒートシンクで覆われた部分にJetson TX1のカード型モジュールがある。ベースボードには,有線LAN端子やUSBポートなど,Jetson TX1をPCのように使うのに必要なインタフェースが並ぶ
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Jetson TX1 Development Kitの製品ボックス。ACアダプターや無線LAN用のアンテナ,500万画素の撮像素子を備えたカメラなどの一式がセットになっている
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ディープラーニングを武器に組み込み用途での普及を狙う


 先代のJetson TK1開発キットでNVIDIAは,組み込み分野におけるビジュアルコンピューティング用途での利用をアピールしていた。一方,新しいJetson TX1では,ディープラーニング用途での利用に的を絞っている。

Jetson TX1モジュールを掲げるJesse Clayton氏(Product Manager for Autonomous machines,NVIDIA)
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 Jetson TK1開発キットの説明を担当したNVIDIAのJesse Clayton(ジェシー・クレイトン)氏は,ディープラーニングによる画像認識を例に挙げて説明した。氏によると,ディープラーニングの活用によってコンピュータの画像認識能力は人間を超え,産業分野やロボット,ドローンなどに画像認識を利用することが可能になったと述べる。
 そうした画像認識には,相応の演算能力が必要となるが,「Intelの最も性能の良いCore i7は,65Wもの電力を消費するので,大かかりなバッテリーや放熱システムが必要になってしまう」(Clayton氏)ことが問題であるという。

 一方,Jetson TX1ならば「1TFLOSの性能を持つGPUを搭載しつつ,消費電力はわずか10Wだ」と,その電力効率の高さをアピール。Jetson TX1ならば,ドローンのサイズにも無理せず容易に組み込めると,Clayton氏は語っていた。
 ちなみに,この1TFLOPSというのは,2015年1月にTegra X1が発表されたときのもので,16bit半精度浮動小数点演算を実行した場合の性能を示している。

ディープラーニングの登場によって,2015年にはMicrosoftとGoogleの画像認識システムが人間の画像認識能力を超えたと主張するスライド
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消費電力1Wあたりの画像認識速度で比較すると,Jetson TX1の処理能力は,Core i7-6700Kの10倍に達するという(※画像認識分類システム「AlexNet」を用いた場合)
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 また,Jetson TX1にはカメラを接続できるので,カメラから得た映像を新たな学習素材にして,新しい物体を認識できるようにしたり,認識精度を上げたりといったことが,Jetson TX1だけで可能となるのも利点だという。

 さらに,画像認識よりも大きな演算能力が必要で,Jetson TX1では時間がかかってしまうほど大規模な機械学習には,「GeForce GTX TITAN X」やTeslaシリーズのGPUを搭載したNVIDIAのシステムが使えることも利点であると,Clayton氏はアピールしていた。つまり,学習から認識までの一貫した処理を,NVIDIAのハードウェアとソフトウェア環境上で実行できるというわけだ。

GeForce GTX TITAN XやTeslaシリーズのGPUを搭載したワークステーションと,NVIDIAが提供しているディープラーニングの開発ツールで機械学習を行わせて,その学習結果をJetson TX1に送り込んで,画像認識(推論)を行わせるといったシステムも構築できる。すべてNVIDIAのシステムで完結できるのが利点とClayton氏
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Jetson TX1とTegra用のコンピュータビジョンライブラリ「VisionWorks」を使い,カメラから入力した解像度1280×720ドットの動画から(上),輪郭部分を検出(下)するデモ。60fps前後のスピードで処理できている
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Jetson TX1による機械学習をドローンに応用


Jetson TX1搭載ドローンを説明するエンルート 開発部長のKai Yen氏
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 さて,今回の発表会には,産業用ドローンや自動探査用ロボットカーなどを手がける企業のエンルート(関連リンク)から,開発部長のKai Yen(カイ・イェン)氏が招かれており,同社が開発を進めているJetson TX1を用いたドローンの概要を説明した。会場に持ち込まれていた試作機は「不審なドローンを投網で捕獲する」という,ちょっと面白い用途のドローンだ。

 現在のドローンは,基本的に人間が操縦するものだが,「操縦者が,不審なドローンをカメラで見ながら追いかけるのは,非常に難しい」と,Yen氏は説明する。そこで,市販されている各種ドローンの形状を学習したデータを組み込んだJetson TX1をドローンに搭載し,Jetson TX1が,不審なドローンを画像認識で見分けて自律的に追いかけることで,操縦者をアシストするという方向で開発を進めているそうだ。

エンルートが開発中のJetson TX1を搭載した「不審なドローンを投網で捕らえるドローン」の試作機。機体上部にJetson TX1が載っていて,下部にはレーザーセンサーや投網の発射機がある
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試作機が飛行中の標的ドローンに投網を飛ばす様子。ドローンの形状を学習したモデルデータをJetson TX1に組み込んで,人間では困難なドローンの追跡を補助するという
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発表会では,試作ドローンのカメラがとらえた映像から,障害物を検出するというデモを披露していた。自動運転の技術を流用したものだそうだ
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 先代のJetson TK1開発キットは,グラフィックス性能が高い以外は小型コンピュータの域を出ない感じで,組み込み用途では使い道が限られるという印象を受けた。それに対してJetson TX1は,ディープラーニングという明確な用途を見出したことで,応用事例がイメージしやすくなったように思う。ディープラーニングによる画像認識は,産業分野における最終製品の品質検査といった用途で,実際に利用されるようになっている。その点でも,Jetson TX1は,Jetson TK1以上に注目を集めるそうだ。

 ディープラーニング用途以外でも,組み込み向けSoCとしては強力なグラフィクス機能を備えた小型コンピュータでもあるので,グラフィックスに重点を置いた用途で使うのも面白い。完全に動作するUbuntu 14.04やOpenGL,CUDAといった開発環境一式が提供されているので,興味がある人は,一般向け販売が販売が始まったら入手してみるのもよさそうだ。

Jetson TX1 製品情報ページ


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