プレイレポート
スパイ任務に挑む若者達の恋を描いた「帝国海軍恋慕情〜明治横須賀行進曲〜」のプレイレポートをお届け
「帝国海軍恋慕情〜明治横須賀行進曲〜」公式サイト
日露戦争開戦が迫る明治36年,横須賀での物語
本作のヒロイン「美萩園緒」(名前変更可能)は没落した士族の出身で,師範学校(教員資格を取得できる教育機関)を卒業したものの,働き口が見つからず困り果てていたところ,横須賀鎮守府の絵描きを募集するポスターを発見する。
これはチャンスと,自分の描いた絵を持って面接に向かうも,海軍兵舎の中で迷子になったおっちょこちょいなヒロイン。偶然,上官達の打ち合わせ現場を目撃し,“海軍音楽隊”が特殊任務として諜報(スパイ)活動を行っていることを知ってしまう。タイミングが悪すぎる……。
しかし,幸か不幸か秘密を漏らせない軍楽隊側と,仕事を求めている彼女の思惑が合致し,ヒロインは軍楽隊付きの絵師兼スパイ見習いとして,海軍に所属することになるのだった。
――というのが,共通ルートであるプロローグのストーリーだ。本作では,ヒロインの初任務のパートナーを誰にするかによって,その後のストーリーが分岐する。これ以降は各攻略キャラの個別ルートを進めていき,途中で選んだ選択肢によってエンディングが変化していく。
命懸けの展開が待ち受ける,軍服男子達との恋
攻略キャラによって,ヒロインに与えられる任務の内容もさまざま。ここからは攻略キャラ5人について見ていこう。
■深山峻晴(CV:斉藤壮馬)
深山ルートでは,彼と彼の弟との関係を軸にストーリーが展開していく。任務は,直近のパレードを襲撃しようとしている過激組織の調査だ。ヒロインと深山はパレードルートに仕掛けられた爆弾を発見。ヒロインは現場から立ち去る青年を目撃するが,それは深山の実の弟「深山稜照」で……。
明治時代の一般的な恋愛はこうだったんだろうな,という印象を受けるのが深山ルート。弟が過激組織の一員かもしれず,任務と私情に挟まれ苦しむ深山と,そんな彼の力になりたいと奔走するヒロインが次第に惹かれ合っていく。お互いに恋心を秘めたまま任務を遂行していく様子は,とてもいじらしかった。
■平塚 茂(CV:前野智昭)
彼とヒロインへの指令は“軍楽隊内にいる内通者を探りだせ”というもの。しかし,まったくやる気を見せない平塚は,街中をフラフラするうえに,しまいには1人で別行動をするように。彼の行動に疑問を抱いたヒロインが後をつけてみると,平塚は見知らぬ外国人と密会していた。その怪しい行動から,彼がスパイなのではと疑いはじめ……。
これぞスパイ物! という展開の平塚ルート。平塚が敵なのか味方なのか判断できず,最後までハラハラしてしまう。ヒロインを突き放すくせに,彼女がピンチの時には必ず助けに入る平塚が非常にカッコいい。普段は見せない凛々しい姿にギャップ萌えしてしまった。
■伊予部直哉(CV:小西克幸)
伊予部の下につくことになったヒロインだったが,常に一歩引いたように振る舞う彼とあまり親しくなれずにいた。そんな中,軍の協力者である新聞記者の「本庄眞一郎」が伊予部に「部下殺し」と絡んできた。どうやら伊予部には,先の戦争でのいわくつきの過去があるようで……。
「堅物な上官が,押せ押せなヒロインに落ちた」そんな感想を持ったのが,この伊予部ルートだ。このルートでのヒロインは,無茶を承知で遊郭に潜入したり,感極まっていきなり伊予部に抱きついたりと,とにかく大胆。彼女への思いに気づいた伊予部も,ヒロインの好きなものをこっそり調べたりするなど,彼女が可愛くて仕方ないようで……あぁ,苦〜い珈琲が飲みたくなってきた。
■原 正毅(CV:櫻井孝宏)
敵国と通じている上層部の人間を探る任務のため,ヒロインは彼の身分を使って,上流階級が集まるパーティーに潜入することに。原に仕えるメイドとして潜入した会場で,ヒロインは彼の許嫁だというお嬢様「志賀 京」と遭遇する……。
身分を越えたシンデレラのような恋が描かれる原ルート。任務を進めるうちに惹かれ合う原とヒロイン。しかし,ヒロインは身分の違いを気にして,原は家や許嫁といったしがらみのため,互いに思いを打ち明けられずにおり,見ているこっちが焦れてしまう。そして2人の仲を阻むしたたかな許嫁・京。乙女ゲームとしては王道の流れだ。エンディングで見られる,ちょっと強引な原は必見。筆者はまんまとヤラれてしまった……。
■小宮山嵩元(CV:石田 彰)
2人の任務は,ロシア諜報部とつながりを持つロシア人の捜索のため,外国人街の診療所に潜入するというもの。しかも周囲への目眩ましのために夫婦を装ってとの指令だった。慣れない仕事に戸惑うヒロインは,失敗ばかりで小宮山に厳しく叱責される毎日。ロシア人の情報を得られないまま,時間だけが過ぎていく……。
偽装夫婦という,なかなか見られないシチュエーションを楽しめる小宮山ルート。偽装のためとはいえ,お互いを“お前”“タカさん”と呼びあう場面には,思わずニヤニヤしてしまう。また,薄々想像はつくかと思うが,彼はかなりのツンデレキャラ。しかも,役に立とうと1人で行動するヒロインの後をこっそりつけて,ピンチの時はすかさず助けに入るなど,とても過保護。もうニヤニヤが止まらないよ! ちなみに,攻略キャラの中で1番たくさん涙を流しているのがこの小宮山。 かなり意外だ。
プロローグを除いた個別ルートは,第1章から最終章までの全10章で構成されている本作。エンディングはHAPPY ENDとNORMAL ENDの2種類が用意されている。1つのルートのボリュームはそれほど多くはなく,各章に1回ずつ登場する選択肢はいずれも2択なので,テンポよく攻略していける。少し物足りなさを感じるが,そのぶんじっくりストーリーに入り込めた。
正しい選択肢を選ぶと,画面上にナデシコの花が咲き乱れる |
次の選択肢や章までシーンを飛ばす「JUMP」や,ボイスの再生など,各種システムも充実 |
わいあっと氏が描いた美麗な軍服男子達はもちろんのこと,華族や士族といった身分や,当時の喫茶店であるパーラーや遊郭など,明治時代の雰囲気を存分に堪能できる「帝国海軍恋慕情〜明治横須賀行進曲〜」。明治浪漫好きや,軍服男子が好きな人はぜひプレイしてみてほしい。
「帝国海軍恋慕情〜明治横須賀行進曲〜」公式サイト
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