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Intel,Skylake世代のデスクトップPC&ノートPC用CPU計46製品を一斉に発表。デスクトップPC向けの「Skylake-S」は販売が始まる
今回発表された多数の新CPUは,
デスクトップPC向け18製品,ノートPC向け26製品
XeonブランドのノートPC向けも2製品登場
まずは,第6世代Coreプロセッサのラインナップから見ていこう。今回発表された製品はいずれもSkylakeマイクロアーキテクチャに基づき,Intelの14nmプロセス技術を採用して製造される。製品分類と,ターゲットとなる市場は以下のとおりだ。
- Skylake-S:デスクトップPC向け
- Skylake-H:高性能ノートPC向け
- Skylake-U:薄型ノートPC向け
- Skylake-Y:タブレット&薄型ノートPC向け
Skylake-SとSkylake-Hは,CPUパッケージの外部にIntel 100シリーズチップセットが必要になるが,Skylake-UとSkylake-Yは,チップセット機能(プラットフォームI/O)が,CPUパッケージ上に統合されたMCM(Multi Chip Module)になっているという違いもある。こうした基本的な構成は,現行の第5世代Coreプロセッサと変わらない。
今回発表された第6世代Coreプロセッサは,計46製品というとんでもない数なのだが,先述したとおり,多くの製品で発売時期が明確にされていない。大雑把に2015年後半から2016年にかけて順次発売とコメントされているだけだ。そのため現時点では,「こんな製品群が出てくるんだな」と理解しておけば十分だろう。
というわけで,製品ラインナップを順に紹介していきたい。まずは,ゲーマーにとって重要なデスクトップPC向け製品からだ。
表1は,LGA 1151パッケージを採用し,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が65WとなるデスクトップPC向けCore i7およびCore i5のラインナップをまとめたものだ。見てのとおり,4コア8スレッドの「Core i7-6700」と,4コア4スレッドの「Core i5-6600
TDP 91W版のCore i7-6700Kが,定格動作クロック4.0GHz,最大動作クロックが4.2GHzという高クロック動作を売りとしていたのに対して,Core i7-6700は定格動作クロックが3.4GHz,最大動作クロックは4.0GHzと,かなり低くなっていることは,押さえておくべきポイントだろう。統合するメモリコントローラは,Core i7-6700Kと同じく,デュアルチャネルDDR4-2133/DDR3L-1600両対応となっている。
Core i7-6700のみL3キャッシュ容量が8MBであるのに対して,Core i5の3製品だとL3キャッシュ容量が6MBという差別化が行われているのは,Haswell世代と変わらない。
また,全製品が,統合型グラフィックス機能(以下,iGPU)として,Skylake-Kと同じ「HD Graphics 530」を統合しているが,Core i5の下位2モデルのみ,iGPUの最大動作クロックが低いという違いもある。
続く表2は,同じSkylake-Sでも,TDP 47Wのミドル〜エントリークラスデスクトップPC向けとなるCore i3およびPentiumブランドの製品をまとめたものだ。
ラインナップは,2コア4スレッドの「Core i3-6320
iGPUは,最下位のPentium G4400を除いて,Core i7・i5と同じHD Graphics 530。Pentium G4400に統合されている「HD Graphics 510」の仕様は不明だが,おそらく,実行ユニット(Execution Unit,以下 EU)の数が減ったバージョンではなかろうか。
表3と表4は,
最上位となる「Core i7-6700T」は,4コア8スレッドで定格動作クロック2.8GHz,最大動作クロック3.6GHzと,TDPに比して高スペックになっているのが特徴だ。
iGPUは,Pentiumの最下位モデルである「Pentium G4400T」がHD Graphics 510を採用している以外,すべてがHD Graphics 530を採用している。
ノートPC向け製品は,数が多いのでざっくりと説明していく。
まず,表5,表6は,TDP 45Wの高性能ノートPC向けCPUであるSkylake-Hのラインナップ計7製品をまとめたものだ。CPUパッケージは「BGA 1440」と呼ばれている。
4コア8スレッド対応版Core i7のラインナップで注目したいのは,アンロック版CPUである「Core i7-6820HK」だ。これまでも「Extreme Edition」として,高価なアンロック版CPUがノートPC用に用意されたことはあったが,Core i7-6820HKは「K」型番ということもあって,1000個ロット時単価は378ドルと,かつてのExtreme Editionに比べれば安価だ。「CPUのオーバークロックを楽しめるゲーマー向けノートPC」の低コスト化に貢献してくれることだろう。
また,ノートPC向けCore i5シリーズでは,
なお,大型ノート向けのSkylake-Hは,全製品がiGPUとしてHD Graphics 530を統合している。より高性能なIris Graphicsシリーズを備える製品がないのは意外に思えるかもしれないが,このクラスを採用する大型ノートPCは,単体GPUを採用する製品が多いと思われるので,あえてIris Graphicsは採用しなかったのかもしれない。
続いての表7は,薄型高性能のノートPC向けとされるSkylake-UのTDP 28W版をまとめたものだ。全4製品が,iGPUとして「Iris Graphics 550」を統合するのが特徴である。Iris Graphics 550の細かいスペックは公開されていないものの,高速なオンチップDRAMである「eDRAM」を搭載した製品なので,iGPUとしては高いグラフィックス性能を期待できるのではなかろうか。
Intelによれば,TDP 15WクラスのSkylake-Uは,2010年に登場したArrandale世代のCore i5プロセッサと比べて,CPU性能は最大2.5倍,グラフィックス性能が最大30倍,バッテリー駆動時間が最大3倍になっているという。
表10は,TDP 4.5Wでタブレット&2-in-1デバイス向けとなるSkylake-Yのラインナップ計5製品をまとめたものになる。
Core Mブランドの製品群で重要なトピックは,命名規則が変更されたことだ。Broadwell-Y世代のCore Mでは,「Core M-5Y70」といった具合に,「ブランド名+プロセッサナンバー」という表記になっていた。しかし,Skylake-Yで製品ラインナップが増えたこともあってか,「M」のところが「m+“偉さ”を示す一桁数字」に変更されたのだ。モデルナンバー部は相変わらずだが,それでも,大まかな製品クラス分けは多少しやすくなったといえるかもしれない。
さて,最後の表11は,Skylake-HをベースにしたノートPC向けXeon2製品をまとめたものとなる。XeonブランドをノートPC向けCPUとして展開するのは,Skylake世代が初となる(関連記事)。
初のノートPC向けXeonとはいうものの,Skylake-HのCore i7をベースにした製品であることは,スペックを見ても明らかだ。
では,ノートPC向けXeonは,一般消費者向けのCore i7と何が違うのかといえば,ノートPC向けXeonでは,エンタープライズ向けソフトウェアの動作に関するバリデーション(検証)プログラムが実施されている点がその違いであるという。
NVIDIAのGPUが,一般向けのGeForceシリーズとビジネスユース向けのQuadroシリーズに分かれているのと似たようなもの,と考えていいだろう。いずれにせよ,ゲーマーには無縁の製品といってよさそうだ。
TDP 4.5Wから91Wまでをカバーする拡張性と高性能を両立させたというのがSkylakeのウリ
一挙46製品を発表したIntelがSkylake世代でアピールするのは,そのスケーラビリティ(Scalability,拡張性や柔軟性という意味)だ。タブレット向けとなるTDP 4.5WのSkylake-Yから,TDP 91WのアンロックCPUであるCore i7-6700Kまで,幅広いセグメントに向けた製品を1つのマイクロアーキテクチャで展開できるスケーラビリティの高さこそが,Skylakeマイクロアーキテクチャの強みであるというわけである。
また,微細化された14nmプロセス技術を活かして,機能統合の度合いを高めている点も特徴の1つであるという。
とくに,タブレットや2-in-1デバイス向けのSoCであるSkylake-Yでは,これまでCoreプロセッサ製品には統合されたことのなかった,ストレージ用のeMMCインタフェースやカメラ機能用インタフェース,カメラ用のイメージ処理コプロセッサ(Image Signal Processor,ISP)といった機能を,CPUパッケージ上に統合。これにより,PCメーカーは。タブレットや2-in-1デバイスを,Broadwell-Y世代のCore Mプロセッサと比べて,より低コストで設計・生産できるようになるそうだ。
Skylakeマイクロアーキテクチャでは,細かな改良によるCPUコアの性能向上も実現されている。具体的には,アウトオブオーダー実行のウインドウサイズを拡大したり,インフライト・ロード/ストア(事前ロード/ストア)数の拡大,命令スケジューラのエントリー数の拡大といった改良によって,命令実行効率の向上が図られたとのこと。また,整数レジスタファイルも増量されて,命令を並列実行させやすくなっているそうだ。
また,L3キャッシュ(≒Last Level Cache,LLC)にも改良が加えられ,キャシュミス時のスループットが向上しているほか,各部のバッファー(※スライドでは「ファブリック・バッファー」と表記)を拡大するといったリングバスの改良なども,性能向上に貢献しているという。
Core i7-6700Kを4Gamerでテストしたときも,キャッシュ周りやリングバスに改良が加えられていると推測できる結果が得られていたので,マイクロアーキテクチャの改良は効果を発揮しているようだ。
電力効率面でもBroadwell世代比で改良が入っており,たとえば,各部の電源をオン/オフするパワーゲーティングの粒度を細かくすることで,さらなる低消費電力化を実現しているという。クロックを制御するPhase Locked Loop(PLL)をアナログ式からデジタル式に変えることで電力効率を引き上げるといった,非常に細かな部分の工夫も入っているそうだ。
また,ノートPC向けCPUには,液晶パネル側で映像を保持できるセルフリフレッシュパネルの特徴を活かして,Haswell世代で導入された省電力ステートの「C9ステート」(※CPUコアに対する入力電圧がオフになる動作状態)でも,ディスプレイをオンにしておけるといった機能があるという。
これはかなり効果的であると思われ,CPUがほとんど電力を消費していない状態でも,ディスプレイだけは表示されているといったことが可能になるだろう。
iGPUの改良に関する説明はほとんど行われなかったが,筆者が調べた限りでは,Skylakeに統合された第9世代iGPUの基本的なアーキテクチャは,Broadwell世代に統合された第8世代のiGPUとあまり変わりがないようだ。
先述したスライドにもあるように,クロックドメインを見直すことで省電力化が図られていることから,iGPUのハードウェアの設計に見直しが入っていることは確かだろう。しかし,GPUアーキテクチャそのもののは,それほど変わっていないと考えていいようである。
Intelでは,Iris Graphics 500シリーズで40%の性能向上を謳っているものの,何と比べて40%の向上なのかは,明言されていなかったりする。額面どおりに受けとるのは早計かもしれない。
ただ,Intelでは,「Skylakeマイクロアーキテクチャでは,リングバスやeDRAMのインタフェースにも改良が入り,結果,eDRAMを搭載したIris Graphics 500シリーズで,性能の伸びが大きくなる期待を持てる」とはしている。HaswellやBroadwell世代と比べて,高い3D性能が得られる可能性はあるようだ。
3Dグラフィックス以外の面でも,iGPUにはさまざまな改良が施されており,
以上,ざっくりとSkylakeの特徴を紹介してみた。
今回発表された製品群のうち,発表と同時に販売が始まるのはデスクトップPC向けのTDP 65Wモデルのみなので,Skylake世代の浸透は,2016年にかけて,ゆっくりと進むことになるだろう。
ところでIntelは,去る7月,投資家に対して,「14nmプロセスの次世代となる10nmプロセスの開発が遅れており,製造の立ち上げは2017年第2半期以降になる」ことを明らかにしている。Intelがこれまでどおり,製造プロセスの刷新とマイクロアーキテクチャの刷新を交互に繰り返す計画を維持するのなら,結果としてSkylakeは息が長いマイクロアーキテクチャになる可能性もあるわけで,Intelが強調しているSkylakeのスケーラビリティの高さという特徴は,長く続く可能性のあるSkylake時代で役立つかもしれない。
もっとも,他のプロセッサメーカーのように,Intelが製造プロセスの刷新と(マイクロ)アーキテクチャの刷新を同期させる方針を放棄することも考えられる。Skylakeマイクロアーキテクチャの展開次第では,そうした将来も見えてくると思うので,プロセッサの技術動向に興味のある読者は,今後登場する製品のリリーススケジュールにも,注意を払っておくとよさそうだ。
Intel 日本語公式Webサイト
- 関連タイトル:
Core i7・i5・i3・M(Skylake)
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