テストレポート
ASUSの新型スマホ「ZenFone 3」と「ZenFone 3 Deluxe」の下位モデルをテスト。最新のミドルクラス端末はゲームもよく動く
ラインナップは,
本稿ではこれら3製品のうち,Qualcomm製のミドルクラスSoC(System-on-a-Chip)である「Snapdragon 625」を採用するZenFone 3 Deluxe(型番:ZS550KL,以下 型番表記)と,ZenFone 3(型番:ZE520KL,以下 型番表記)の2製品をチェックしていく。また,ハイエンドのZenFone 3 Deluxe(ZS570KL,以下 型番表記)については,別記事でレポートしたい。
ZenFone 3(ZE520KL) |
ZenFone 3 Deluxe(ZS550KL) |
ミドルクラス相応のスペックを高級感のあるデザインで包んだZE520KL
まずはZE520KLから見ていこう。
先にスペックを説明してしまうと,SoCであるSnapdragon 625(MSM8953)は,CPUコアにCortex-A53×8基,GPUにはAdreno 506を統合したものである。CPUコアの最大動作クロックは2GHzだ。
メインメモリ容量は3GBで,内蔵ストレージ容量は32GB。microSDXC(※最大2TB)カードにも対応する。ディスプレイには,5.2インチサイズで解像度1080×1920ドットのIPS液晶パネルを採用。内蔵バッテリー容量は2650mAhといったスペックである。シリーズのスタンダードモデル的な立ち位置にある製品だ。
サイズは73.9(W)×146.8(D)×7.69(H)mmで,重量約144g。5インチクラスとしては,比較的コンパクトなサイズだ。カメラユニットが若干出っ張っていることを除けば,前面,背面ともにフラットなデザインになっており,ハイエンド製品で流行りのビジュアル要素をうまく取り入れている。
本体前面と裏面には,左右端がわずかに湾曲したCorning製「Gorilla Glass 3」を採用しており,堅牢性を確保しつつ,見た目の質感を向上させることに成功しているようだ。また,随所にZenシリーズのトレードマークである同心円状のデザインも施されており,他社製品との差別化という狙いは,デザインにうまく溶け込んでいるように思えた。
ボタンやカメラ,センサーといった要素のレイアウトは,ZenFone 3シリーズ全体でほぼ統一されたものとなっている。
液晶パネル下側には,タッチセンサー式の[ホーム]ボタン,「戻る」ボタン,[最近のアプリ]ボタンが並ぶ。各ボタンは,タップするとバックライトが点灯するもので,バックライトの挙動は,OSの設定で変更することも可能だ。
また,本体背面には上側の出っ張りにアウトカメラがあり,その左にレーザーオートフォーカス用のセンサー,右側にRGBセンサー(※詳細は後述)とLEDライト,下部に指紋認証センサーが配置されている。
ZE520KLのSIMカードスロットは,Nano SIMカードを2枚装着可能となっており,2枚のSIMカードによる同時待ち受け機能「デュアルSIMデュアルスタンバイ」(以下,DSDS)にも対応している。2016年後半以降に登場するミドルクラス以上のSIMロックフリースマートフォンでは,DSDS対応が当たり前のものになっていくのかもしれない。
アウトカメラ用のレーザーオートフォーカス機能(以下,レーザーAF)は,
RGBセンサーは,周囲の光が持つRGBの成分を検出し,色温度や照度を調整する用途に使うセンサーだ。一般的には,デジタルカメラのホワイトバランス調整や,ディスプレイの色温度や輝度を周囲の光に合わせて自動調整する用途に使われている。ASUSは,それをスマートフォンのカメラにも採用することで,撮影時の色再現性を高めているというわけだ。
2016年9月初旬にドイツで行われた家電見本市「IFA 2016」にて,ソニーモバイルコミュニケーションズが発表した「Xperia XZ」も,「RGBC-IRセンサー」という名称で同様の仕組みを採用していた。
実世界の光景にゲームを重ね合わせるARゲーム,たとえばPokémon GOのジムバトルやポケモンハントで,より見栄えのいいスクリーンショットを取りたいと考えている人なら,ちょっと注目してみたい要素といえよう。
ちなみに,本体前面にも似たようなセンサーがあるので,フロントカメラにもRGBセンサーがあるのかと期待したのだが,こちらは単なる環境光センサーのようだ。
ゲーム用機能「Game Genie」は何ができるのか
ZenFone 3シリーズの搭載OSはAndroid 6.0.1で,ホームアプリはASUS独自の「ZenUI 3.0」となっている。
ソフトウェア面でゲーマーが注目すべきは,「Game Genie」というゲーム用機能が導入されたことだ。
Game Genieは,ゲームアプリに合わせて自動で起動し,動画や静止画のキャプチャや配信,メモリの管理といったゲーム向けの機能を提供するソフトウェアである。簡単にいえば,「Galaxy S7 edge」が搭載する「Game Tools」と似たような,ゲーマー支援機能といったところか。
Game Genieが有効になっている状態でゲームを起動すると,画面の片隅にゲームパッドの描かれたアイコンが表示される。このアイコンは位置を変更可能で,タップするとメニュー画面「ゲームツールバー」が開き,ここからGame Genieの各機能を呼び出せる仕組みとなっていた。
ちなみに,Galaxy S7 edgeにあった画面キャプチャボタンはないが,これは[最近のアプリ]ボタンの長押しで,スクリーンショットを撮影する設定がZE520KL自体にあるからだろう。
ZE520KLにインストールしたゲームは,自動的にGame Genieが有効なアプリとして追加される。ユーザー自身が,どのゲームでGame Genieを使う/使わないといった設定を行うことも可能だ。
録画を実行してみた限りでは,ゲームを邪魔するような負荷は生じなかった。スマートフォンのプレイ動画を保存しておきたいという人には喜ばれそうだ。YouTubeとTwitchに限られるが,配信も楽に行えるという。
スピードブースターは,ゲームに関係ないプロセスすべてを黙らせる機能なのかと思ったが,単に,起動中のアプリケーション一覧から行えるアプリの終了を,起動中のゲームを除外して行うもののようだ。詳細についてASUS側から明確な回答を得られなかったので,要検証といったところか。
省電力設定は5種類用意されている。「スマート」「省電力」「スーパー節約」ではSoCの動作クロックを下げる制御が行われるため,ゲームプレイ時は「パフォーマンス」が適当だ |
片手操作用に,画面を一時的にリサイズする機能も健在。ZenFone 2よりもスムーズに画面が切り替わるようになった |
普段なら,続いてはベンチマーク……と行くところだが,冒頭でも触れたように今回は2製品のスペックが似ているので,先にZS550KLについて説明し,その後でまとめてベンチマークテストを行うこととする。
フルメタルボディになったZenFone 3? といったスペックのZS550KL
冒頭で触れたとおり,搭載SoCはZE520KLと同じSnapdragon 625。メインメモリ容量は4GBで,内蔵ストレージ容量は64GB,バッテリー容量3000mAhといったスペックとなっている。基本的には,ZE520KLをベースに,メインメモリとストレージ容量を強化した製品といったところか。
具体的には後述するが,ベンチマークテストやゲームプレイの印象もほぼ同じであり,性能面ではZenFone 3 Deluxeのミドルクラスというよりも,ZE520KLのバリエーションモデルといった印象を受けた。
一方,デザインはZE520KLではなく,ZenFone 3 Deluxe特有の金属筐体を採用したものとなっている。サイズは若干異なるものの,上位モデルであるZS570KLと見た目はほとんど共通で,2台並べると間違い探しかというほど似ている。
もちろん,アンテナがなければ通信できないので,実際はどこかにあるはずなのだが,発表会の現場で確認しようとしても,「がんばりました!」という回答しか得られなかった。そのため,以下は筆者の観察によるものとなる。
まず,本体前面のベゼル部分下側を見ると,2か所に樹脂製の部品がチラリと見える。同様の樹脂製部品は,ベゼル上側にも1つあった。となると,側面を覆う金属パネルをアンテナとしているのではなく,前面ガラスと側面パネルの境目にあって,前面をグルッと一周している斜めにカットされた金属部分がアンテナとなっているのだろうか。
いずれにしても,樹脂部品を極力目立たないデザインとすることで,アンテナとしての機能と金属筐体の見栄えを両立しているのが,ZenFone 3 Deluxeの特徴であるようだ。
そのほかに,サイズや重量が一回り大きいこと,前面の強化ガラスとして「Gorilla Glass 4」を採用していることなどが,ZS550KLとZE520KLの主な違いといったところか。
ZE520KLとZS550KLの性能をベンチマークテストで検証
それでは,お待ちかねの検証へと進めていこう。何度も述べているが,ZE520KLとZS550KLの搭載SoCは同じSnapdragon 625で,メインメモリ容量と内蔵ストレージ容量が異なるだけの姉妹機といったものである。
ミドルクラスSoCであるSnapdragon 625は,14nm FinFETプロセスを採用して製造されるQualcommでは最新世代のSoCであり,前世代の同クラスSoCには,28nmプロセスを採用していた「Snapdragon 617」がある。
これまでの傾向からすると,ゲームにおけるミドルクラスSoCのグラフィックス性能はそこそこで,ヘビーなグラフィックスを扱うゲームは荷が重いといった印象があった。新しい世代のSoCとなったことで,ミドルクラスの性能がどれだけ改善されたのかに,注目したいところだ。
ベンチマークテストには,定番のグラフィックス系ベンチマークアプリである「3DMark」と,CPUの動作クロックを見る「CPU-Z」,メインメモリおよびストレージの性能を見る「A1 SD Bench」,連打応答性を調べる「ぺしぺしIkina」を使用した。
一方,会場の電波状態が悪く,ゲームのダウンロードに十分な時間が取れなかったため,Android版「艦隊これくしょん -艦これ-」と「Pokémon GO」のテストは諦め,ゲームの動作検証は「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(iOS / Android,以下 デレステ)でのみ行っている。
ベンチマークテストに進む前に,大雑把なインプレッションについても触れておこう。
14nm FinFETプロセスの採用によるものか,高負荷時のSoCから出る熱は減ったようで,アプリのダウンロード中やテスト中の筐体は,不愉快なほどの熱は持たなかった。ゲームの動作もスムーズで,放熱によるサーマルスロットリングまで達した様子はない。もっとも,体験会場は空調が効きすぎなくらいだったので,放熱しやすい環境だったという面もあったかもしれない。
まずは3DMarkだが,Ice Strom Unlimitedプリセットのスコアは,ZE520KLが「13867」で,ZS550KLが「13890」と,スペックどおりほぼ同一スコアになった。3Dグラフィックスを多用するゲームの場合,2万以上あれば快適というのが大雑把な目安といったところなのだが,そこまでの域には達していない。
この結果を,1年ほど前に登場した「Snapdragon 808」(CPUコア:Cortex-
同一条件での比較ではないので,あくまでも参考値ではあるが,前世代のハイエンドSoCであるSnapdragon 808にはまだ及ばないものの,ミドルクラスSoCとしては,順当な性能向上を達成しているといえよう。
CPU-Zで負荷をかけたり,放置してみたりしたところ,両製品ともCPUコアは,Cortex-A53の652MHz〜2.02GHzであると表示された。8基のCPUコアを4基ずつに分けたbig.LITTLE構成なのだろうと想像していたのだが,挙動を見ていた範囲では,8基とも同じ動きをしていた。
クロックの変動も,652MHzから2016MHzにジャンプアップする様子しか見られず,その中間で動作するシーンは見られないという不思議な挙動だ。また,GPUクロックは,216〜650MHz間を行き来しており,筆者の経験からすると,GPU制御を細かく行っているという印象を受ける。
A1 SD Benchを見ると,RAMのコピーとInternal memoryの読み出しは両製品ともほぼ同じスコアだが,なぜかInternal memoryの書き込みだけは,ZS550KLのほうが優れていた。どちらもスコア自体は良好なので,ここで性能に不満を感じることはないだろう。
面白い結果が出たのは,ぺしぺしIkinaの連打計測だ。いつものように,93〜96になるよう連打したところ,ZE520KLとZS550KLともに,ほぼ理論値に近い結果となった。ここ最近のスマートフォンで,連打応答性のテストでこれほど優れた結果を残した製品はない。連打の激しいゲームでも取りこぼしが問題になることはなさそうで,すばらしい結果だ。
それではデレステのプレイテストに入ろう。
今までのSnapdragon 6xx番台搭載スマートフォンといえば,「3D標準」のままではプレイには難があり,途中で描写がもたついたり,ときどきタップやスライドを認識しなかったりするのが珍しくなかった。
それに対して,ZE520KLとZS550KLが搭載するSnapdragon 625は,実にスムーズな3Dグラフィックス描画を実現しており,入力の取得漏れもなかった。体感的には,ハイエンドSoCであるSnapdragon 820搭載端末と同じくらいの快適さだ。わずかに差を感じたのは,ゲーム画面上のボタンを押してからの反応と,画面の切り替わりが心持ち遅いかな,といった程度である。
まずは動画を見てほしい。
動画の撮影状況は,検証用の曲として選択した「BEYOND THE STARLIGHT」を,難易度Pro,難易度Masterでプレイしたうえで,MV再生まで連続で行ったものだ。会場の涼しさを考慮して,普段よりも負荷をかけ続けてみた次第である。なお,設定はすべて「3D標準」だ。
過去のミドルクラススマートフォンでは,3曲目あたりで熱ダレを起こすことが多く,曲の冒頭付近でコマ落ちする様子が見られたものだが,ZS550KLでは,そうした問題は起きなかった。
プレイ中に,筐体からそれほど熱を感じなかったことも記しておきたい。ZE520KLとZS550KLは,どちらも筐体に金属やガラスを多用しているため,もともと放熱性能には比較的優れているほうだとは思う。だが,やはり14nm FinFETプロセスを採用するSnapdragon 625自体が,デレステほどの負荷でもあまり高い熱を発することなく動作できるようになった恩恵が大きいと思われる。
予想外に良好な挙動には驚いてしまったが,入力の取得については,気がかりなところもあった。
ZE520KLの場合,タップや同時押しでは問題ないのだが,スライド(ドラッグ操作)になると,画面端での取得が少し甘く感じられた。個体差かもしれないが,軽く指をあててスライドするのではなく,しっかりと押し当てて動かすことで回避できたので,反応が甘いなと感じた場合は,試してほしい。
一方,ZS550KLでは,四隅のタップ判定が甘く,認識しないこともあった。ただ問題が生じる頻度は低めであり,普段使いの範囲で気になることはないだろう。
ミドルクラススマートフォンに対する認識を改めさせられるZenFone 3シリーズ
2015〜2016年において,SoCや入力の取得に最も高い性能を要求するゲームであるデレステは,「Snapdoragon 820,810」系を搭載するハイエンド端末であれば,最高設定で快適にプレイできるというのが,これまでの常識であった。デレステ以外のゲームでも,たとえば「World of Tanks Blitz」のように要求スペックの高いものを遊んでいる読者は,同じような印象を持っていたのではないだろうか。
しかし,ZE520KLとZS550KLと,そして同じSoCを採用する「Moto Z Play」をテストした結果からすると,こと性能面においては,Snapdragon 625であればデレステ並みの高負荷ゲームでも高品質で快適にプレイできるのではないかと思えてくる。
もちろん,端末の設計やチューニングによって,同じSoCでもスマートフォンの挙動が変わることは珍しくないので,確証を得るには今後も同クラスの端末でのテストを積み重ねていく必要はあるだろう。だが,少なくともZE520KLとZS550KLは,現時点でもゲーマーが合格点を与えられる製品となっている
今後,年末商戦に向けて,SIMロックフリー対応のミドルクラススマートフォンが,各社から登場してくるだろう。ZE520KLやZS550KLのデザインやスペック,価格が気に入った人なら,今すぐ飛びついても損はないはず。だが,同クラスのスマートフォンをいろいろと比較してみたいという人は,もう少し製品が登場してくるのを待ってから選んだほうが,性能的にも価格的にも満足行く選択ができるのではないだろうか。
●ZenFone 3(ZE520KL)の主なスペック
- メーカー:ASUSTeK Computer
- OS:Android 6.0(Marshmallow)
- ディスプレイパネル:5.2インチ液晶,解像度1080×1920ドット
- プロセッサ:Snapdragon 625(MSM8953,CPUコア:Cortex-A53×8 最大動作クロック2GHz,GPU:Adreno 506)
- メインメモリ容量:3GB
- ストレージ:内蔵(容量32GB)+microSDXC
- アウトカメラ:有効画素数約1600万画素
- インカメラ:有効画素数約800万画素
- バッテリー容量:2650mAh
- 待受時間:約493.6時間(LTE)
- 連続通話:約1134分(au VoLTE使用時)
- LTE通信周波数帯:Band 1
/2 /3 /5 /7 /8 /18 /19 /26 /28 /38 /39 /40 /41 - 無線LAN対応:IEEE 802.11ac
- Bluetooth対応:4.2
- USB:USB 2.0 Type-C
- 本体サイズ:73.9(W)
× 146.8(D) × 7.69(H)mm - 本体重量:約144g
- 発売時期:10月7日
- メーカー想定売価:3万9800円(税別)
●ZenFone 3 Deluxe(ZS550KL)の主なスペック
- メーカー:ASUSTeK Computer
- OS:Android 6.0(Marshmallow)
- ディスプレイパネル:5.5インチ液晶,解像度1080×1920ドット
- プロセッサ:Snapdragon 625(MSM8953,CPUコア:Cortex-A53×8 最大動作クロック2GHz,GPU:Adreno 506)
- メインメモリ容量:4GB
- ストレージ:内蔵(容量64GB)+microSDXC
- アウトカメラ:有効画素数 約1600万画素
- インカメラ:有効画素数約800万画素
- バッテリー容量:3000mAh
- 待受時間:約475時間(LTE)
- 連続通話:約1758分(au VoLTE使用時)
- LTE通信周波数帯:Band 1
/2 /3 /4 /5 /7 /8 /12 /17 /18 /19 /20 /26 /28 /38 /39 /40 /41 - 無線LAN対応:IEEE 802.11ac
- Bluetooth対応:4.2
- USB:USB 2.0 Type-C
- 本体サイズ:76.7(W)
× 151.4(D) × 7.8(H)mm - 本体重量:約160g
- 発売時期:10月下旬
- メーカー想定売価:5万5800円(税別)
ASUSTeK ComputerのZenFone製品情報ページ
- 関連タイトル:
Zen
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