インタビュー
いよいよ4大国のオンライン戦争が開幕! 「グランキングダム」とはどんなゲームなのか,開発会社モノクロの出口智彦氏に聞いた
かつてヴァニラウェアに在籍し,「グランナイツヒストリー」や「朧村正」などを手掛けてきたゲームクリエイターの出口智彦氏が独立後に設立した開発会社モノクロによる,初の作品となる本作について,じっくりと話を聞かせてもらった。
「グランキングダム」公式サイト
4Gamerの年末企画が,モノクロとスパイク・チュンソフトをつなげるきっかけとなった
本日はよろしくお願いします。まずは本作の開発を手掛けたモノクロを設立した経緯からお聞かせいただけますか。
出口知彦氏(以下,出口氏):
会社の設立は2011年で,当初よりオリジナルの作品をコンシューマ機向けに作ることを目的としていました。
その頃からすでに,ゲーム業界では次はソーシャルゲームという雰囲気がありましたが,僕らとしてはコンシューマをもっと盛り上げたいという気持ちが強かったんです。昔から個人でゲームを作っていた仲間と,僕の独立を機に一緒に会社を立ち上げたというのが設立の経緯になります。
4Gamer:
そんなモノクロとしての最初のタイトルが,このグランキングダムとなるわけですが,本作の企画を立ち上げたきっかけを教えてください。
出口氏:
それについてはスパイク・チュンソフトのプロデューサーである渡辺一弘さんから声をかけていただいたことで,弊社でかねてから温めていた企画が実現したという形になるのですが,実は渡辺さんが僕に声をかけてくれたきっかけが4Gamerさんにあったんです。
4Gamer:
えっ!? それは興味深い話ですね。
出口氏:
4Gamerさんで毎年年末にゲームクリエイターがコメントする企画をされていますよね。あの中で,数年前に渡辺さんがその年に気になったタイトルとして,以前僕が開発に関わった「グランナイツヒストリー」を挙げてくださったんです。
それがきっかけで渡辺さんとお会いして,独立するならぜひ一緒に何かやろうと言っていただき,この会社の立ち上げが決まりました。だから,もし4Gamerさんのあの企画がなかったら,今回の話どころか,モノクロ自体も立ち上がってなかったかもしれません(笑)。
4Gamer:
なんとも運命的なお話ですね。こちらとしても嬉しくなります(笑)。
出口氏:
そんな話がありつつ,僕らが過去に考えていた企画の一つにこのグランキングダムの原案があって,渡辺さんがぜひRPGをやりたいということで,ジャンルも「タクティカルRPG」という形で,開発がスタートしたんです。
シングルプレイでストーリーを進めつつ,オンラインでの4か国大戦に参戦できる
4Gamer:
そうした経緯を踏まえて完成した本作ですが,改めてゲームの内容を解説していただけますか。
出口氏:
ひと言で説明するのがなかなか難しいゲームではあるんですが(笑),ごく基本的な内容としては,プレイヤーが傭兵団の団長となって「部隊」を編成し,依頼されるクエストを受諾して,フィールドマップを攻略していくというRPGになります。
フィールドマップはボードゲームのようになっていて,目的地への到達や敵の討伐といったクエストごとに異なる目標を達成することで,ストーリーが進んだり,ボス戦が待っていたりするという流れになっています。
4Gamer:
本作はストーリーを楽しめるオフラインのシングルプレイだけでなく,傭兵として4大国の戦争に参加するオンラインプレイが大きな特徴ですよね。
出口氏:
ええ。シングルプレイは純粋にシナリオを進めていく形式のRPGなんですが,オンラインプレイのほうはシングルプレイで育ててきた自分の傭兵団をオンラインの戦場に送り出して敵国と戦うという,参加者全員でプレイするシミュレーションゲームのような内容になっています。
プレイヤーは4つの国家のいずれかと一定期間契約をして,その国家の傭兵として現実時間で2日間(=48時間)行われるオンラインの「戦争」に参加し,そこで戦った結果が各国の戦果につながるという仕組みです。
4Gamer:
プレイヤーは,どのような形で戦争に参加するのでしょうか?
戦争は毎回決まった時間に始まり,48時間後に終わるという形で行われるのですが,プレイヤーはその間に数回行われる「作戦」に参加することになります。戦争が大陸の一つの“地域”を取り合うのに対し,作戦はその地域を区切った“領土”を取り合うというイメージですね。
4Gamer:
具体的にどのような作戦があるのか,教えていただけますか。
出口氏:
作戦には「侵攻戦」と「防衛戦」があるのですが,ゲームプレイ自体はシングルプレイ時とさほど変わりません。侵攻戦ならばフィールドマップを進んで敵部隊を倒して,目的地である砦を制圧し,防衛戦ならば攻めてくる敵を倒して領土を守るというのが目的となります。
4Gamer:
そこで,オンラインのほかのプレイヤーと戦うわけですね。
出口氏:
非同期型なので,オンラインといってもほかのプレイヤーと直接戦うのではなく,AIが操作する敵との攻防における戦果が,その作戦に反映されるという仕組みになっています。各プレイヤーの戦果を集計して,最終的に敵の戦力ゲージを0にするのが勝利条件で,それを満たすと作戦成功となり,そのフィールドは自国の領土になります。
また作戦終了時は毎回スコア集計が行われて,そこで自分の傭兵団がどれだけ活躍/貢献できたかが分かるようになっています。
4Gamer:
1回の作戦はどのぐらいのプレイ時間になるのでしょうか。
出口氏:
1回につき30〜40分程度を想定しています。もちろん各作戦は途中参加もできますので,プレイヤーは好きな時間に始められますよ。
4Gamer:
オンラインに送り出した部隊の操作は,AIに任せることもできるそうですね。
出口氏:
部隊がどう行動するかを事前に設定しておくことで,自動進行させることもできるようになっています。
積極的に戦いたいという方はオンタイムで参加して,自身の力で戦争に貢献することができますし,時間の都合が合わなかったり,面倒だったりという方は,自動進行で参加していただければと思います。
4Gamer:
ちなみに,一度戦争に送り出した部隊を,シングルプレイで引き続き使うこともできるんでしょうか。
出口氏:
それも可能です。愛着を持って部隊を育てたいという方もいらっしゃるでしょうし,そういう方でもオンラインに気軽に参戦できるようになっています。
4Gamer:
作戦が成功して戦争に勝利すると,プレイヤーにはどんなメリットがありますか?
出口氏:
メリットはいくつかありますが,最大のメリットは領地が広くなることで資源の入手量が大幅に増えることですね。それにより,兵器の配備や強化が行いやすくなるので,純粋に国家が強くなるんです。
4Gamer:
例えば,一つの国に多くのプレイヤーが集中して,大陸全土を制覇してしまうようなことも起こるのでしょうか。
出口氏:
理論上はありえます。ただ劣勢の国については,契約時に支払われる報酬が高額になるように設定しているので,そちらに参加するメリットも大きいです。また戦争時は侵攻先を決める「侵攻提案」や,次の戦争で適用される「条約投票」など,プレイヤーの投票によって方針が決まる要素があるので,人数が少ない国のほうが,個人の意志が通りやすいという利点もあります。
プレイヤーはあくまで傭兵ですから,一つの国家に固執する必要はありません。報酬の多いほうにつくという選択肢もありますので,戦力が極端に偏ることはないのではないかと考えています。
4Gamer:
どの国が人気になるのか,今から楽しみですね。
出口氏:
そうですね。こればかりはフタを開けてみないと分かりませんから,僕らとしてもすごく楽しみです。
4Gamer:
所属する国家によって,得られるメリットに変化はあるんでしょうか。
出口氏:
キャラクターステータスの変化はありませんが,契約後の兵器の開発などに関しては,自然とお国柄が出てくるんじゃないかと思っています。
4Gamer:
それぞれ,どのような国なのか紹介していただけますか。
出口氏:
青の「ランドアース王国」は,大陸を統治することで自分達の正義を貫こうとする,ある意味,正統派の国家です。赤の「バルクール連合国」は力こそすべてという,すごく分かりやすい国で,戦うことに生きる意味を見出すという価値観を持っています。
黄色の「マギオン王国」はかつて帝国に追いやられていた民が起こした国で,バルクールとは逆に知識や魔力が高いほど認められるという特徴があります。そして最後の緑の「フィール女王国」は,戦争から逃れた民が集まってできた小国家で,ほかの国と比べて平和的で国民の戦争に対する意識もやや低いという設定です。
4Gamer:
それぞれの国を守る「守護獣」についても,国家ごとに違うそうですね。
出口氏:
ええ。ランドアースが「グリフォン」,バルクールが「ドラゴン」,マギオンが「ケルベロス」,フィールが「ユニコーン」という,国旗のエンブレムに描かれている生物が,そのまま守護獣になっています。もちろん特徴は異なるので,もし戦争で相手にしたときなどは,それぞれに対応した戦い方が必要になります。
4Gamer:
戦争では,プレイヤー個人の貢献度ランキングもありますね。
出口氏:
もちろん,それも用意しています。各国のトッププレイヤーになると,その国の「英雄」としてキャラクターが登録されて,オンラインの戦争時に,バトルに乱入してくることがあります。当然,とても強いキャラクターなんですが,それに勝つことができると,倒した証としてその英雄の名前が入った武器を入手できるといった遊び要素もありますので,ぜひ戦っていただければと思います。
4Gamer:
戦争とはまた別に,ほかのプレイヤー部隊のデータがオンラインからダウンロードされて,ライバルとしてマップに登場するという仕掛けがあるのも,面白い要素だと思いました。
出口氏:
クエストの「バーサス」モードですね。あれは以前からやりたかった要素で,レースゲームのゴーストデータみたいなことを,RPGでもできないかと考えたのがきっかけでした。
ほかのプレイヤーが同じクエストをプレイしたときのゴーストデータと,どちらが早く任務をクリアするかを競うというもので,社内でも盛り上がった要素の一つです。一手でも早くクリアするか,その前に相手を叩き潰してしまうか,いろいろな遊び方ができますので,楽しんでいただけるのではないでしょうか。
出口氏のイチオシはドラゴンメイジとチャレンジャー
4Gamer:
キャラクターについてもお聞きしたいのですが,たくさんのクラスが用意されている中で,これは見てほしいというイチオシのクラスはありますか?
出口氏:
まずは「ドラゴンメイジ」ですね。ファンタジーでは王道ともいえる,ドラゴンに騎乗したキャラクターなんですが,ほかのクラスのキャラクターとは挙動が大きく異なるので,プログラマーにかなり苦労をかけてしまいました。その甲斐あって,動きも見栄えがするものになっていますし,ユニットとしても2体ぶんの強いキャラクターなので,ぜひ使ってみてほしいですね。
4Gamer:
見た目の派手さからも,人気が出そうなユニットですね。
出口氏:
それと,もう一つ個人的に推したいのが,タルをかついだ「チャレンジャー」です。爆薬の詰まったタルを投げたり,設置したり,あるいは自爆したりと,かなりトリッキーなキャラクターで,開発中の社内でも人気があったクラスです。昔,よく遊んでいたタイトルに自爆して攻撃するユニットがいたんですが,ああいうキャラクターを作れないかと考えて用意したクラスなんです。
4Gamer:
それらのクラスは最初から使えるのですか?
出口氏:
はい,チュートリアルが終わった時点で全ユニットが使えるようになります。ただし,どのタイミングで雇用所に出てくるかはランダムですので,そのあたりは運次第と言えますね。
もう一つ気になるのは,初回特典として雇えるようになる「ノーブル」というクラスですが,どんな特徴を持ったクラスなんでしょうか。
出口氏:
ノーブルは「ファイター」や「ランサー」などと同じ近接タイプのクラスですが,その中でも,攻撃力の高さと,攻撃の多様性に長けたキャラクターです。切り込み隊長的な存在ですが,防御力が低めなので,立ち回りには注意が必要です。
4Gamer:
そうしたさまざまなキャラクターで部隊を編制する際,自分で自由に「陣形」を決められますが,ギミックも一緒に配置して,それらと共に進軍していくシステムはなかなか面白いですね。
出口氏:
あのひとまとめをパーティと考えると,結構な大所帯ですよね(笑)。本作はほかのゲームと比べて,序盤から覚えることがたくさんあるので,最初のうちはギミックの配置をあまり考えないで進めてしまうかと思うのですが,ギミックを適切に配置することで,かなり有利に戦うことができるんです。とくに難度の高いボス戦などでは,ギミックをうまく活用すれば,普通に戦うよりも低いレベルで倒せるようなバランスになっています。
4Gamer:
バトルでも,敵との間合いを調整したり,タイミングよく攻撃ボタンを押してコンボを決めたりと,アクション性が高い印象でした。
出口氏:
そこは普通のコマンドバトルではなく,ちょっとしたアクション性を加えることで,よりゲーム性を高めたいという狙いがありました。
操作方法については,ボタンを続けて押すだけでコンボをつなげられる「シンプル」と,スキルを各ボタンに割り振って自分なりのコンボを作り出せる「テクニカル」の2種類を用意していて,トレーニングモードで練習もできますので,遊びやすいスタイルでプレイしてみてください。
各国の1話のみが遊べる,無料シナリオの配信も!
4Gamer:
続いてメインシナリオのストーリーや,ボリュームについて教えてください。
出口氏:
メインとなるシナリオは,主人公が成り上がっていくという展開で,そこにかつて滅んだ帝国が絡んでくるというお話になっています。メインシナリオだけを進めていくと,20時間程度のボリュームになりますね。ただ今後のアップデートで,4か国それぞれのシナリオを配信する予定です。
4Gamer:
追加シナリオは4か国同時に配信されるんですか?
出口氏:
発売後,1国ごとに順次配信していく予定です。また,追加シナリオは皆さんが十分に楽しめるボリュームになっています。じつは,追加シナリオがどんな内容か触れてもらうために,4か国の各1話のみを遊べるパッチを配信する予定ですので,ぜひご期待ください。
4Gamer:
追加シナリオは無料で遊べるのでしょうか。
はい,すべて無料で配信します。
4Gamer:
また今回は,発売前に「グランキングダム Lite」という体験版が配信されていますが,これはプレイヤーに事前にゲームに触れてもらって,ゲーム内容を理解してもらおうということですか。
出口氏:
まさにその通りです。本作の場合,いろいろなゲーム要素を盛りだくさんに詰め込んでいるぶん,実際に遊んでみないと分からない部分がたくさんあります。オンライン戦争も製品版と同じサーバーで戦えますし,データを製品版に引き継げますので,ぜひ触ってみていただきたいですね。
4Gamer:
それに何といっても,無料ですしね。
では最後に,本作を楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。
出口氏:
僕自身が面白いと思う要素をふんだんに盛り込んだ,ボリュームたっぷりなゲームに仕上がりました。そのぶん説明するのが難しいゲームになってしまったので,少しでも興味を持っていただいた方は,まずはグランキングダム Liteから,ぜひ触ってみてください。とくに既存のゲームにちょっと飽きているという方には,かなり新鮮な体験をしていただけると思いますので,よろしくお願いいたします!
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「グランキングダム」公式サイト
(2015年10月21日収録)
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