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「Mighty No. 9」から「RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女」へ。稲船敬二氏が,さらなるプロジェクトへと挑み続ける理由を聞いた
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印刷2015/07/11 00:00

インタビュー

「Mighty No. 9」から「RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女」へ。稲船敬二氏が,さらなるプロジェクトへと挑み続ける理由を聞いた

画像集 No.002のサムネイル画像 / 「Mighty No. 9」から「RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女」へ。稲船敬二氏が,さらなるプロジェクトへと挑み続ける理由を聞いた
 北米時間の2015年7月4日,ロサンゼルスにて開催された「Anime Expo 2015」のパネルディスカッションで,稲船敬二氏が率いるcomceptとアニメスタジオのSTUDIO4℃が手掛ける,ゲームとアニメの連動プロジェクト「RED ASH(レッドアッシュ)」が発表された。

 同社の「Mighty No. 9」PC / PS4 / PS3 / Xbox One / Xbox 360 / Wii U / 3DS / PS Vita)のバッカー向けに公開されたティザームービーから予想された通り,本作は,過去に稲船氏が手掛けた「ロックマンDASH」を想起させる,アクションRPGの新作となり,現在クラウドファンディングサイトKickstarterにて,開発資金の出資を募っている。期間は8月4日までで,目標金額は80万ドルとなる。
 「RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女」(北米タイトルは「RED ASH - The Indelible Legend」)というゲームと,それとは別に制作されるという,世界観と主人公キャラクターを共有したオリジナルアニメーション「Red Ash -Magicicada-」。今回は,両者の資金募集を同時に開始した稲船敬二氏にインタビューを行うことができた。気になる本作の内容だけでなく,日本のゲーム業界に関する話も聞いてみたので,その模様をお届けする。


「RED ASH - The Indelible Legend」公式サイト


ゲーム「RED ASH - The Indelible Legend」Kickstarterプロジェクトページ

アニメ「Red Ash -Magicicada-」Kickstarterプロジェクトページ



ゼルダを超えるアクションRPGにもう一度チャレンジしたい。そんな思いから始まった「RED ASH」


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 さっそくですが,Anime Expoにて発表されました「RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女」(以下,RED ASH)について,改めて概要からお話しいただけますか。

画像集 No.004のサムネイル画像 / 「Mighty No. 9」から「RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女」へ。稲船敬二氏が,さらなるプロジェクトへと挑み続ける理由を聞いた
稲船氏:
 まず,サブタイトルにある「機鎧城カルカノンの魔女」というのは,RED ASHのプロローグ編にあたります。RED ASHの企画自体は壮大なスケールになっていて,最初からその金額を集めるのは無理だと思っています。なので,まずはプロローグの部分を作って,これなら投資できるなとか,うちのハードでやって下さいとか,うちがパブリッシングしますとか,そいう方向に広げていきたいと思って。

4Gamer:
 アクションRPGになるとのことですが,アクションゲームだった「Mighty No. 9」と比べて,その金額は大きく変わるのでしょうか。

稲船氏:
 僕らがなぜMighty No. 9を作ったのかというと,Mighty No. 9ならKickstarterの金額で作れると思ったからなんです。レトロな横スクロールアクションゲームなら,集めた金額の範疇で作れると。
 でもRED ASHはアクションRPGにしたいので,それなりの金額が必要なんですが,Kickstarterですべてをまかなうのは相当無理があるので,その良さを分かってもらえるプロローグ編をまず作ろうと考えたんです。

4Gamer:
 Mighty No. 9の開発中からこの企画はあったのですか?

稲船氏:
 途中からですね。やっぱりクリエイターの夢を叶えるのがKickstarterであって,Mighty No. 9で僕らがやりたかった夢は叶えさせてもらいました。ただ,その先にまだ夢はあって,それがアクションRPGだったということです。

4Gamer:
 Mighty No. 9が軌道に乗ってきたから,これはいけるという判断で企画されたんですか?

稲船氏:
 いえいえ,そんな単純なことじゃないです。ゲーム作りって後半になると次のことを考えますよね。Mighty No. 9がある程度僕の手から離れた時期に,次にやりたいこととしてこのRED ASHを企画して,お金のことはどうしようとか,そういうことを考えつつ,まとまったのが今回の発表内容なんです。

4Gamer:
 なるほど。ちなみに,RED ASHはどのようなゲームになるのでしょうか。

稲船氏:
 具体的な内容についてはまだこれからですけど,基本はアクションRPGですね。
 僕はしょっちゅう「どんなゲームが好きですか?」って聞かれるんですけど,そのときに必ず「ゼルダの伝説」って答えているんです。僕自身,チマチマしたRPGよりアクションが好きなんだけど,ゼルダってアクションとRPGのバランスがすごくいいでしょ。

4Gamer:
 どちらにも偏ってないイメージがありますね。

稲船氏:
 それとは別に,ゲームのストーリーを追うのも好きなのですが,ストーリー重視で考えていくと,どうしてもRPG寄りの作品になってしまうんです。ストーリーは楽しみたいけど,ゲームはマリオでありロックマンであってほしい。そんな僕が満足できるゲームがゼルダなんです。

4Gamer:
 ゼルダシリーズでいうと「時のオカリナ」あたりですか?

稲船氏:
 もっと前の作品で,スーパーファミコンの「神々のトライフォース」です。2Dと3Dの違いはあれど,あの作品が自分のやりたいことの原点なんですね。「ロックマン」を進化させる形で「ロックマンDASH」を作ったとき,目標としたのがゼルダだったので,このRED ASHでゼルダを超えるアクションRPGにもう一度チャレンジしたいなと思って。
 もちろんゼルダと同じものではなくて,自分なりのアクションRPGにしたいんです。キャラクターや舞台設定を見てもらえれば分かるように,目指すところは日本のアニメであって,RED ASHはアニメを動かしているようなアクションRPGにしようと考えています。

4Gamer:
 PVを見ると,アニメの部分が強くフィーチャーされているのが感じられました。

画像集 No.005のサムネイル画像 / 「Mighty No. 9」から「RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女」へ。稲船敬二氏が,さらなるプロジェクトへと挑み続ける理由を聞いた
稲船氏:
 今回はその部分をしっかりと作っていきたいので,キャラクターの個性であったり,その個性に合ったアクションであったり,ミッションであったりなど,それらがちゃんと表現されていて,キャラクターのことがどんどん好きになるゲームにしたいんです。
 TPS(Third Person shooter)をベースに,アクションが多彩で,アニメを強く意識した作品となると,ロックマンDASHの時に挑戦したものと同じ形になるとは思うんですが,あの頃にはできなかったこともたくさんありますからね。

4Gamer:
 例えばどんなところですか?

稲船氏:
 今でいうオープンワールドですよね。僕自身,割と早い段階から「行きたいところに好きに行ってください」というゲームを提示していたんですけど,当時はまだ受け入れてもらえなかったんです。今ならば早すぎることはないですからね。

4Gamer:
 では,このRED ASHもオープンワールドになるのでしょうか。

稲船氏:
 オープンワールドと言い切ってしまうとちょっと誤解を招くので,あまり使いたくはないんですが,それらしい形にはなるかと思っています。このカルカノン編も,厳密にはオープンワールドではありません。

4Gamer:
 というと?

稲船氏:
 ゲームの舞台となる「カルカノン」は巨大な動く城になっています。その中は比較的自由に行き来できるけど,もちろん行けないところもあるし,ミッションをクリアすれば行けるようになるところもある。
 例えば城の肩の部分に行きたいんだけど,そこに至る道を塞いでいるものがあって,それを破壊しなければ行くことができない。RPGっぽいこういう制限のある状況をオープンワールドですっていうのは,どうかな? と思うわけです。

4Gamer:
 ただ,オープンワールドという定義自体も結構曖昧ですよね。

稲船氏:
 そう,すごく曖昧。僕としては,目的を達成するまでの手段がたくさん用意されていれば,それもオープンワールドだと言えると思うんです。城の動きを止めたいけれど,その止め方が分からないとなったときに,駆動系を破壊してみようとか,足の関節を破壊してみようとか,それを自由に考えられるのも,オープンワールドの醍醐味ですよね。

4Gamer:
 カルカノン城というのは,そんなに大きな設定なんですか?

稲船氏:
 「移動都市」ですよね。こういうところも日本のアニメっぽい設定にしたんです。「ハウルの動く城」じゃないですけど,ロマンがあるじゃないですか。
 暴走している移動都市を「ピースメーカー」という砲台で破壊する命令が下っている。でも破壊しちゃうと移動都市の文明や財宝なんかも一緒に壊されてしまうから,その前になんとか止めようとするのが主人公のベックとタイガー,そしてコールなんです。

4Gamer:
 彼らは住民を守るためとかではなく,お宝目当てなんですよね。

画像集 No.015のサムネイル画像 / 「Mighty No. 9」から「RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女」へ。稲船敬二氏が,さらなるプロジェクトへと挑み続ける理由を聞いた
稲船氏:
 そう。金儲けのため。そこにキャラクター性が出てくるんです。世界を救うとか,そういう理由ではなく,「いくらになるんだ? じゃあ止めてやるよ」っていう。カルカノンを救う側だけど,その目的が勧善懲悪ではないという。
 要するにカルカノン編は,彼らのキャラクター性を紹介する内容になります。まずはキャラクターを好きになってもらうことが最も重要で,好きになってもらえれば,彼らが次にどこで活躍しても楽しいものになりますからね。

4Gamer:
 今後も続きがあるとしたら,彼らがメインになると。

稲船氏:
 もちろん。別のキャラクターはたくさん出てくると思いますけど,彼らが中心になります。

4Gamer:
 ちなみにMighty No. 9のベックとは別人なんですよね?

稲船氏:
 どう見ても全然別人でしょ,これ(笑)。

4Gamer:
 そうですね(笑)。

稲船氏:
 同じ名前の人って世の中にたくさんいますよね,という設定です。パラレルワールドでもなく,ベックという名前の役者さんを使った程度のイメージで。ベックという名前は,ある意味ブランドですね。今後僕のゲームにはいっぱい出てくると思います。



「ロックマンDASH 3」を作る夢もあきらめてはいない。だからRED ASHは,その代わりなんかじゃない


4Gamer:
 このRED ASHの開発には,ゲームディレクターに安間正博さん,アートディレクターに伊藤和司さんが関わっているそうですが,稲船さんが声をかけたのですか?

稲船氏:
 安間はもともとcomceptの立ち上げメンバーの一人です。彼と一緒にロックマンやロックマンDASHや「ロックマン エグゼ」のシリーズなどを作り続けてきて,ある意味僕が育ててきた,一番信頼しているディレクターの1人です。彼との仕事は面白いし,僕のゲーム作りを一番理解してくれてもいるので,RED ASHも彼と一緒にと思いました。

 伊藤については,このRED ASHのプロジェクトが実現できるとなったときに,イメージした絵が彼の絵柄しか考えられなかったんです。主人公のベックとタイガー,コールの3人を描けるのは伊藤しかいないなと思って連絡しました。
 電話で「今何やってるの?」「某社でモバイルやってます」「楽しい?」「まあまあ」「RED ASHってプロジェクトを考えているんだけど,一緒にやらない?」「やります!」,そんな感じのやりとりでしたね。カプコン時代よりずっと技術も上がっていました。絵を描くことに対する想いも強いので,RED ASHでもいい絵を描いてくれると思っています。

4Gamer:
 お二人とも稲船さんとは旧知の仲というわけですね。

稲船氏:
 ええ,こういうプロジェクトですので,息の合ったメンバーとやらないとうまくいかないですからね。今回はMighty No. 9とは違うメンバーも入ってますけど,かなり息が合っていると思います。

4Gamer:
 稲船さんをはじめとするそのメンバーで,アクションRPGというと,先ほどお話に出たロックマンDASHが思い浮かぶのですが,あのシリーズを意識した内容と捉えてもいいですか?

稲船氏:
 ロックマンDASHという作品は,自分の中で完成にまで至っていませんけど,同じアクションRPGとしてやはり意識はしています。ロックマンDASHでできなかったことをしっかりと組み込んで,「稲船が作るアクションRPG」の完成形を目指したいという思いがRED ASHにはあります。

4Gamer:
 今回の発表で,ロックマンDASHのファンからいろいろな反応があったと思うのですが。

画像集 No.006のサムネイル画像 / 「Mighty No. 9」から「RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女」へ。稲船敬二氏が,さらなるプロジェクトへと挑み続ける理由を聞いた
稲船氏:
 そうですね。ただ,僕はロックマンDASH 3の代わりにRED ASHを作るわけではないですよ。そもそも僕はロックマンDASH 3を作ることをあきらめていませんし。もちろん僕やメンバーのスケジュール次第ですけど,カプコンから正式な依頼があれば,いつでもやりたいという夢は持っているんです。

4Gamer:
 決してロックマンDASHを上書きするような作品ではないと。

稲船氏:
 はい。新しい形のアクションRPGを作るというプロジェクトなので,そういう意識で支援していただきたいんです。ロックマンDASHに関わったメンバーがいるのは,ロックマンDASHを作るからではなく,その経験を生かすのが目的です。
 Mighty No. 9のときもそうでしたが,変にロックマンの幻想だけを抱いてほしくはないんですね。もちろん僕が作るゲームですから,似ているゲームにはなりますが,ロックマンを作るなら,カプコンに権利をお借りしてちゃんと作りますよ。

4Gamer:
 先ほどのオープンワールドのお話のように,新しい作品だからこそやれることもありますからね。

稲船氏:
 そういうことです。当然,僕達が作るゲームですから当時の匂いもすると思います。ただ,あれから10年,20年と経って,メンバーのやりたいことやできることも当時とは違っています。共通するのはアクションRPGで,アニメの世界観を表現したいというところぐらいですね。

4Gamer:
 アニメといえば,STUDIO4℃がアニメ版のRED ASHを作るとのことですが,それはどういうきっかけだったのでしょうか。

稲船氏:
 もともとSTUDIO4℃とは,RED ASHの原型を考えていたときから,何か一緒にやろうという話をしていたんです。「アニメの世界観をゲームにしたいんだけど,これなら一緒にできるかもしれない」と声をかけたら,「ぜひやりたい」と言っていただいて実現しました。

4Gamer:
 発表された内容を見ると,RED ASHというテーマだけを共有した,異なる作品になるようですね。

稲船氏:
 はい。縛りを入れて,お互いのクリエイティブ性を阻害したくはないので。STUDIO4℃には「自由にやりましょう」と話してあります。RED ASHというコンテンツをゲームで展開していくcomceptと,アニメで展開するSTUDIO4℃で,両者が自由にやりながら,「そのキャラクター,こっちでも使っちゃおうか」みたいな相乗効果で,面白いものを作っていけるのではないかと。

4Gamer:
 ゲームのRED ASHをアニメ化するとか,そういう話ではないんですね。

稲船氏:
 言ってしまうと,アニメはカルカノン編じゃないです。

4Gamer:
 えっ,そうなんですか!?

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稲船氏:
 アニメにはカルカノンは出てきません。ベックとコールとタイガーは出てきますが,それが時代的にカルカノンの前なのか後なのかも分からないぐらい。
 でもRED ASHという世界で一緒に始めるので,アニメに出てきた場所やキャラクターを,ゲームにも取り入れてみようとか,もちろんその逆もありで,互いが権利をやりとりすることなく,好きに対応できるようにしています。


4Gamer:
 発表後にオープンした公式サイトを拝見しましたが,アニメはロゴも違いますし,Kickstarterも別途で立ち上げられてたので驚かされました。そういうからくりだったんですね。

稲船氏:
 はい。アニメはアニメで,ゲームとは別にKickstarterのファンドを集めます。それを同時にやるという,世界で初めての試みですね。僕は世界初が好きなんで(笑)。

4Gamer:
 ちなみに,稲船さんはアニメにも関わっているんですか?

稲船氏:
 はい。サブのプロデューサーのような扱いですが。

4Gamer:
 放送枠やメディアなども未定なんですよね?

稲船氏:
 うん,それは僕にも分かりません。STUDIO4℃の田中(栄子)さんに聞いてみてください(笑)。

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