イベント
[COMPUTEX]西川善司の3DGE:テーマは「Polaris」と「Bristol Ridge」そして「Summit Ridge」。AMDのプレスカンファレンスを総括する
すでにお伝えしているとおり,AMDはこの場で3つの発表を行った。
- 開発コードネーム「Polaris」(ポラリス)と呼ばれてきた新世代GPU「Radeon RX 480」を北米市場における想定売価199ドル(税別)で6月29日に発売すること(関連記事)
- 開発コードネーム「Bristol Ridge」(ブリストルリッジ)と呼ばれてきた新世代APUを第7世代AMD A-Series APUとすること(関連記事)
- 「Zen」マイクロアーキテクチャベースとなる次世代CPU「Summit Ridge」(サミットリッジ)のパッケージとスペック概要(関連記事)
本稿ではあらためて,プレスカンファレンスでAMDが語った内容を整理してみたい。
「GTX 1080を買う予算があるなら,
Radeon RX 480 CrossFireのほうが速くて安い」
氏は,PCゲーム市場が盛り上がりを見せていることを報告し,近未来的に,
しかも,AMDの独自調査によると,「グラフィックスカードを買い替えるとしても,その予算は100ドルから300ドルまで」と回答する人が,全PCユーザーの84%を占めると判明したそうだ。
しかも北米市場におけるメーカー想定売価は300ドルを大きく下回る税別199ドル。これにプレスカンファレンスの会場は大きく沸くことになるのであった。
いずれ,稿をあらためてアーキテクチャの解説を行いたいと考えているが,発表会で明らかになった情報によると,理論演算性能値としての単精度浮動小数点演算性能は5 TFLOPS以上で,統合する演算ユニット「Compute Unit」の数は36基だ。「Graphic Core Next」アーキテクチャではCompute Unitあたりのシェーダプロセッサ「Stream Processor」数が64基なので,総シェーダプロセッサ数は2304基となる。
GPUの規模感としては,Tonga RefreshとなるAntiguaコアを採用して32基のCompute Unit(=2048基のシェーダプロセッサ)を統合する「Radeon R9 380X」以上,Hawaiiコアを採用して40基のCompute Unit(=2560基のシェーダプロセッサ)を統合する「Radeon R9 390」未満といったところ。Radeon RX 480の動作クロックは明らかになっていないが,理論演算性能はRadeon R9 380Xが約4 TFLOPS,Radeon R9 390が約5 TFLOPSなので,5 TFLOPS以上とされるRadeon RX 480はかなり高いリファレンスクロック設定になっている可能性が濃厚だ。
組み合わせられるグラフィックスメモリは,256bit接続で容量4GBもしくは8GBのGDDR5となり,メモリバス帯域幅は256GB/sとされるので,逆算するとデータレートは約8Gbps。メモリ周りの仕様は「GeForce GTX 1070」と同じだろう。
公称典型消費電力は150Wで,DisplayPortは競合の最新モデルと同じくバージョン1.4をサポートする。
Koduri氏は,「GeForce GTX 1080」の北米市場における実勢価格が約700ドルであることを指摘したうえで,Radeon RX 480の価格は半額にすら達しないことを強調。そのうえで「もし700ドルの予算があったら?」と続け,Radeon RX 480カードを2枚購入してCrossFire動作させた場合,ベンチマークでGeForce GTX 1080のスコアを上回ると主張していた。
新APUは第7世代のBristol Ridgeに
ノートPCで採用したパートナー企業が応援
- FX 7th Gen
- A12 7th Gen
- A10 7th Gen
- A9 7th Gen
- A6 7th Gen
- E2 7th Gen
ちなみに第7世代(7th Gen)というのは,初代Llanoから数えて,
Anderson氏は新世代APUについて,ゲーム性能と生産性能,電力効率性能いずれもが進化していることをアピール。ゲーム性能は,IntelのノートPC向けCPU「Core i7-6500U」(2C4T,定格2.5GHz,最大3.1GHz,共有L3キャッシュ容量4MB,HD Graphics 520統合)と比べて50%高いこと,表計算や画像編集といったアプリケーションでは,先代や先々代のAPUと比べて確実に高速化していることを説明していた。また,LPDDR4メモリの採用や,AVFS(動的電圧・周波数制御)の最適化によって,さらに電力効率が改善したとも主張している。
LPDDR4メモリの採用とAVFSの進化で,消費電力あたりの性能が向上したというスライド |
PCユーザーの4人に1人が選択する,400ドル未満のノートPCで,APUの採用が進むとAnderson氏 |
なお,Bristol Ridgeに関する技術的な詳細は,筆者の連載バックナンバー「AMDが第7世代APU『Bristol Ridge』を発表。事実上のCarrizo新リビジョン」を参照してほしい。
Su氏,Zenを掲げる
プレスカンファレンスの最後に再び登場したSu氏は,「3つある」とした発表内容の残り1つとなるとなる将来の技術として,開発コードネームSummit RidgeのCPUパッケージを掲げてみせた。
「AM4」パッケージを採用して2016年内に登場することが予告済みのSummit RidgeについてSu氏は,クロックあたりの命令実行効率(IPC)が,これまでのAMD製CPUに対して40%向上していることを公表した。さらに,8コア仕様で16スレッド処理が可能なSMT(Simultaneous Multi-Threading)に対応した命令実行モデルを採用することも明らかにしている。
Su氏はまた,Zenマイクロアーキテクチャ(≒Zenコア)を,当初はハイエンドデスクトップPCとワークステーション,サーバー向けに展開しつつ,その後はノートPC,中長期的にはAPUへの統合も行って組み込み市場もカバーするといった具合で,スケーラブルに展開していく戦略も発表している。
Su氏によると,Summit Ridgeの初期サンプルは2016年の初頭に完成しており,現在は評価を進めている段階にあるという。早ければ数か月以内にOEMとなるPCメーカー向けの出荷を開始するとのことなので,開発は順調という理解でよさそうだ。
AMDのデスクトップPC向けハイエンドCPUは事実上,2012年10月に第2世代AMD FXとしてデビューした「Vishera」コアを最後に革新が入っておらず,今や,「AMDがハイエンド市場向けのCPUを持っていない」というのは,揶揄でも何でもなく,厳然たる事実として語られてしまっている。
それだけに,AMDがこの市場に戻ってくるというのは,AMDファンのみならず,全PCゲーマー要注目と言えるだろう。AM4プラットフォームの立ち上がりを,楽しみに待ちたいところである。
AMDのCOMPUTEX TAIPEI 2016特設ページ(英語)
COMPUTEX TAIPEI 2016 取材記事一覧
- 関連タイトル:
Radeon RX 400
- 関連タイトル:
Ryzen(Zen,Zen+)
- 関連タイトル:
AMD A-Series(Bristol Ridge)
- この記事のURL: