インタビュー
野球の面白さがここに凝縮! 球団運営シミュレーション最新作「野球つく!!」の開発陣にインタビュー
本作は,自分だけのプロ野球チームを組んで,日本全国のプレイヤーとペナントレースを競う「プロ野球チームをつくろう!」シリーズの最新作だ。「プロ野球チームをつくろう!ONLINE 2」(※7月29日14:00にサービス終了)と「プロ野球チームをつくろう!」(iOS / Android ※5月31日にサービス終了)の後継作にあたり,さまざまな新要素も盛り込まれている。
今回4Gamerでは,開発チームを率いる瀬川隆哉氏と徳永 剛氏にインタビューを実施し,タイトルの魅力を聞いてきた。なお,ゲームシステムについては先日実施されたプレミアムテストのレポートで紹介している。本稿と合わせて,ぜひ目を通してほしい。
「野球つく!!」公式サイト
シリーズが「野球つく!!」に一本化
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
新たに正式サービスを開始した「野球つく!!」にシリーズが一本化される形になりましたが,その経緯を教えていただけますか。
瀬川隆哉氏(以下,瀬川氏):
「プロ野球チームをつくろう!ONLINE 2」はサービス開始から9年目となるタイトルです。プロジェクトの開始は2005年でしたが,当初の半年ほどは2人だけのチームでした(笑)。なにぶん昔のゲームなので,最近の時流にはマッチしなくなってきたと感じましたし,現在のオンラインゲームのように,常にアップデートを重ねるような運営体制も整備されていませんでした。
そこで,シリーズのリニューアルに加え,ユーザーの皆さんの一歩先を行くゲームを目指して「野球つく!!」を開発することにしました。
4Gamer:
ちなみにシンプルなタイトルの由来は?
瀬川氏:
「プロ野球チームをつくろう!」シリーズは20年目に突入しているのですが,「野球(やきゅ)つく」という略称が浸透していて,なかなか正式名称で呼んでもらえません。それならいっそ,略称を正式タイトルにすればいいじゃないかと(笑)。
4Gamer:
なるほど。略称だけに親しみやすいですね。
「野球つく!!」は,PCとスマートフォンのマルチプラットフォーム展開となりますが,どのような違いがありますか。
瀬川氏:
試合シーンの解像度が違うくらいで,ゲームの内容に大きな違いはありません。スマートフォン版は処理速度を優先したチューニングになりますね。
徳永 剛氏(以下,徳永氏):
自宅ではPC版,通勤通学中はスマートフォン版といったように,ユーザーのライフスタイルに合わせて遊び方を選べるようにしました。一週間単位でイベントを実施し,常に新しい驚きや喜びを提供する予定です。
瀬川氏:
野球ファンの「自分が監督だったら」という願望,少年時代の「プロ野球選手になりたい」という夢を叶えられるゲームにしたかったので,「野球に存在する全ての要素を入れよう」と目標を定めています。もちろん,現時点で全ての要素を網羅したとは思っていませんが,今後もアップデートを重ねて,「野球つく!!」を「野球の全てが楽しめる」作品にしていきます。
4Gamer:
「野球つく!!」はどんなユーザーにおすすめでしょうか。
瀬川氏:
いろいろと考えながら野球にまつわる夢を叶えるゲームなので,野球が好きな方,頭を使って監督やオーナーとして遊びたい方におすすめですね。単に強いカードを集めるだけでなく,さまざまな要因を踏まえてチームを編成していかなければならないようになっています。
大きな反響があったプレミアムテスト
4Gamer:
5月に実施されたプレミアムテスト(クローズドβテスト)ではどんな反応がありましたか。
「野球つく!!」は,UI(ユーザーインタフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)を重視して開発を進めてきたのですが,そうした点を評価してもらえたのは嬉しかったですね。
現在はF2P(基本プレイ無料)のゲームが主流になっていて,膨大な数のタイトルがリリースされていますので,少しでもダメな部分があるとすぐに止めてしまいます。そこで,とにかく分かりやすく,導入部分に面白い要素を盛り込むようにしました。
こうしたタイトルの場合,チュートリアルの時点でプレイを止められる方も少なくないのですが,プレミアムテストでは97%のユーザーがチュートリアルを終了しています。その点でも手応えを感じました。
4Gamer:
ゲーム内容についてはどうでしょう。
徳永氏:
「つくろう選手」や「ホームタウン」といった新要素が,概ね好評価だったので安心しました。正式サービスに向けては,さらに調整を重ねていますので,より遊びやすくなっていると思います。
4Gamer:
ユーザーの遊び方について印象に残ったことはありますか。
ホームタウンにこだわってプレイされていた方が多かったですね。各施設の相性を考慮して,完璧な配置を追求している方が予想以上に多かった印象です。
4Gamer:
つくろう選手についてはいかがですか。
徳永氏:
「テスト期間中に飛び抜けた選手は作れないだろう」と思っていたのですが,予想を超える方が続出しました。
瀬川氏:
ユーザーの皆さんが,私達の想定の域を超えてくるのはオンラインゲームの日常ではありますが(笑)。
徳永氏:
皆さんに一生懸命プレイしていただいたと感じています。負荷試験を目的としたイベントを開催したのですが,想定以上のアクセス数でした。
瀬川氏:
プレミアムテストの前には,社内を対象にしたインターナルβテストを実施しました。野球をよく知らない人から,「プロ野球チームをつくろう!ONLINE2」の経験者まで,さまざまな層にプレイしてもらったのですが,そこでも参考になる意見が多く寄せられました。
4Gamer:
と言いますと?
瀬川氏:
経験者からは「前作と比べて,やることが多くなった」という声がありましたね。「野球つく!!」は,短期から長期までさまざまな戦略で勝利を目指していくゲームです。従来の「良い選手を獲得してチームを強くする」という短期の戦略に加えて,「ホームタウンを開発して,効率的につくろう選手を育成したり,選手を獲得したりする」という中長期の目標もあります。
つまり「遊び方の軸が2つある」ということですが,それが評価されるものになりました。
4Gamer:
それでは,野球をよく知らない人はどういった反応でしたか。
瀬川氏:
「どうすればチームが強くなるのか」「そもそも,どの選手が強いのか」といったところも分からなかったようです。選手の獲得や育成,ホームタウンの開発など,できることが多かったことで困惑されていたようなので,新しい要素を段階的にアンロックする仕組みに変更しました。
とはいえ,できることが少なすぎてもつまらないので,ちょうどいいバランスを探りながらの開発でしたね。
ホームタウンとつくろう選手について
4Gamer:
新要素となるホームタウンの開発時に苦労された点を教えてください。
瀬川氏:
ホームタウンは最も作り直しが多かった部分ですね。とくに各施設の相性はゲームバランスに直結していきます。
当初は「治安」「景気」といったパラメータがあり,「警察署や消防署を建てると治安が良くなる」「ホームタウンが好景気に沸く」といった要素を予定していたのですが,複雑すぎたのでオミットしました。それぞれの施設に意味を持たせたかったのですが,要素が多くても楽しくなければ意味が無いということです。
4Gamer:
まるで「都市経営シミュレーション」ような要素があったんですね。
瀬川氏:
街作りは楽しいじゃないですか。東京ドームだと,周囲にホテルや遊園地があり,そこにお客さんを運ぶための鉄道路線が走っている。こうした施設群を全て思いどおりに作れたら,本当に面白いだろうなと。
ちなみに,ボツになった施設には「ロボット工場」というものもありました。
4Gamer:
ロボット工場ですか。「巨大ロボピッチャ」を生産して,練習場に設置できたとか?
瀬川氏:
巨大ロボットの立像を街に設置できる感じでしたね。ただ,ロボットと球団運営がつながらなくて(笑)。
4Gamer:
つくろう選手はいかがでしょうか。
徳永氏:
実在のプロ野球選手と競い合うので,強くなりすぎてもいけません。そのバランス調整が難しかったですね。「つくろう選手はホームタウンから発掘される」というコンセプトを大事にしたかったので,ホームタウンの発展に合わせて,強い選手を育成できるようにする必要もありました。
瀬川氏:
つくろう選手については,長いスパンでいろいろなことをやってみたいですね。まだ構想段階ではありますが,自分の球団を引退したつくろう選手が,他球団のトライアウトに出現したり,つくろう選手のドラフトをしたりと,ユーザー同士のコミュニケーションを促すものにしたいと考えています。
「プロ野球チームをつくろう!ONLINE 2」の運営期間はちょうど9年間ですが,「野球つく!!」はそれを上回りたいです。そのための起点となるのが,つくろう選手というわけです。
4Gamer:
プレミアムテストでは,能力の高い選手を育成できなかったのですが,つくろう選手のおすすめ育成方針があれば教えてください。
徳永氏:
最初に「どういう選手に育てるか」というイメージをしっかり持ち,強化するポイントをハッキリさせたほうがいいでしょう。パラメータの変化は,必ず試合での活躍に表れますので,こまめに成績をチェックしてください。投手の場合,球速を上げれば三振が増え,球威を上げれば被ホームラン数が減るはずです。
徹底的なデータ収集で実在選手をリアルに表現する
4Gamer:
実名選手のリアルなデータが反映されますが,各球団の強さを平均化するようなことは行っていますか。
瀬川氏:
それはないですね。データ班が試合結果や個人成績などから能力の査定をして,ゲームに反映させています。
ただ,入団したばかりの新人選手や二軍から上がってきた選手のようにデータの少ない選手には苦労しています。こうした選手がいきなり好成績を収めたり,急成長したりするのもプロ野球を見る楽しみではありますが,「ここから伸びそうな選手」を予想しなければいけません。
4Gamer:
なるほど。まるでスカウトのような能力が求められますね。
瀬川氏:
肩の強さや足の速さのように,試合結果だけでは分かりづらい要素もあります。たとえば,いくら足が速い選手でも4番に抜擢されたときは盗塁しないといった,選手の身体能力が数字に表れない状況です。こうした情報をどう拾うかというと,普段から野球中継を見たり,スポーツ新聞や雑誌を読んでいくしかないわけです。
瀬川氏:
同じ選手であっても,レアリティや留学の有無,打線のつながり,チームカラーなどのさまざまな要因で能力が上下します。こうした変化を反映させつつ,選手の個性を試合で表現するように調整しました。強打で知られる選手なら入手直後の低レアリティの状態でも強打者であり,成長した暁には“その選手らしく”強くなるというわけです。
4Gamer:
プロ野球ファンとしては嬉しいポイントですね。
徳永氏:
選手の特徴はパラメータだけでなく,試合中の動きでも表現しています。
瀬川氏:
「守備」の値が低いときはたどたどしくボールをキャッチしていたのが,高くなると片手キャッチから素早く送球するといった,巧みなプレイを見せてくれるようになります。
4Gamer:
PCとスマートフォン版,どちらでもこうした変化が見られるんですか。
瀬川氏:
もちろん。ちなみにプレミアムテストでは,試合をしっかり観戦している方が予想以上に多かったです。
4Gamer:
野球中継のような楽しみ方をされていたんですね。
「カードゲーム的な遊び方に一石を投じたかった」
4Gamer:
選手といえば,それぞれに「契約期間」が設けられています。どんな選手もずっと雇い続けることはできず,契約期間が尽きると引退してしまいます。
瀬川氏:
「プロ野球チームをつくろう!ONLINE 2」にも存在していた要素ですが,「野球つく!!」に導入するかは悩んだところです。
もし契約期間が設定されていないと,ユーザーは同じ選手をただ単にキープし続けることになるので,運営側としてはさらに強い選手をどんどんリリースするしかなくなる。こうしたカードゲーム的な遊び方に一石を投じてみたかったのです。
4Gamer:
引退があることにより,メンバーが頻繁に入れ替わるのが狙いだと?
瀬川氏:
契約切れによって主力選手が抜けることもありますが,そこにはチーム編成の面白さがあります。球団育成の観点からすると,選手層を厚くしなければならないという目標も生まれます。
現実のプロ野球では,選手の引退や移籍が重なって,強豪チームがいきなり弱体化するようなことが起きますよね。それこそ,メジャーリーグでは前年の王者がいきなり最下位に転落したりします。
契約期間については,プレミアムテストのアンケートでも肯定的な意見が多かったんですよ。選手層を厚くしなければならないのは,プロ野球としてはリアルな考え方です。現実のように「黄金期」や「低迷期」といった時期が生まれるのではないでしょうか。
4Gamer:
それでは,正式サービスから実装された要素について教えてください。
徳永氏:
まずは,監督の能力が試合に影響を及ぼす「監督効果」が実装されます。一軍の監督だけでなく,二軍の監督もゲームには登場する予定です。
4Gamer:
今後は監督選びも重要になりますね。
徳永氏:
選手カードも追加していきます。選手のサイン入りカードやOB選手のレジェンドカードなどが登場予定です。また,現役選手がキャリアハイ(最盛期)の状態にパワーアップする「リバイバル選手」も実装されます。
4Gamer:
それは楽しみですね。ホームタウンはどうでしょう。
瀬川氏:
フレンドのホームタウンを訪問すると,「お宝」がもらえるようになります。ユーザー同士でホームタウンを訪問し合うイベントも予定しています。
4Gamer:
なるほど。課金要素についても確認させてください。
徳永氏:
BP(バトルポイント)やMP(マンパワー)の回復チケット,高コスト選手が獲得できるガチャに加えて,さまざまな特典を受けられる月額制のプラチナ会員を用意します。
4Gamer:
ホームタウンの施設は課金対象ではありませんか。
瀬川氏:
強力な施設を売ることは予定していません。試合の勝利数が一定に達するなど,特定の条件を満たすと無料で入手できるようになっています。普通に遊んでいると,全て集めるのに2年くらいかかると思いますよ。
4Gamer:
今後,どのようなシステムや機能が増えるのでしょうか。
瀬川氏:
あくまで予定ではありますが,ユーザー同士のつながりを強化するシステムを考えています。皆で選手を持ち寄り,1つのチームを結成して競い合うといった「ドリームチーム」ですね。
徳永氏:
トレードやFA,トライアウトなど,プロ野球という題材にはまだまだテーマがありますので,1つ1つ実装していきたいですね。なにしろ,10年以上の運営を目指しているゲームですから。
4Gamer:
今後の発表に期待しています。
話は変わりますが,プロ野球の魅力はどういった部分にあるとお考えですか。
毎年いろいろなスターが生まれてくるところですね。今年であれば「二刀流」の大谷翔平選手が活躍しています。かつては「マー君」こと田中将大選手,ダルビッシュ有選手,「メガネのキャッチャーは成功しない」というジンクスを覆した古田敦也選手など。こうした点はオンラインゲームとの相性がいいと思っています。
徳永氏:
私は,奇跡的な確率が重なってミラクルが起こるところが野球の魅力ではないかと思います。どれだけの強打者でも,ヒットを打つ確率は3割程度です。そうそう点が入るはずもないのに,実際には連続ホームランなどのドラマチックな展開が起こりますよね。
4amer:
ありがとうございます。
それでは,最後に4Gamer読者にメッセージをお願いできますか。
徳永氏:
従来のシリーズ作品以上にユーザーの皆さんの意見を取りいれ,自信を持って「野球つく!!」をリリースしました。野球が好きな方は,ぜひ遊んでみてください。
瀬川氏:
野球の面白さを全て詰め込むつもりです。キャッチコピーの「大人になった野球少年たちに贈る」に偽りなく,今後もアップデートに力を入れ,さまざまな要素を導入していきますので,ご期待ください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。