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[SIGGRAPH]「Radeon RX Vega」の短尺版やEPYCを20基搭載するサーバーなどが初披露されたAMD「Capsaicin」イベントレポート
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印刷2017/08/01 17:31

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[SIGGRAPH]「Radeon RX Vega」の短尺版やEPYCを20基搭載するサーバーなどが初披露されたAMD「Capsaicin」イベントレポート

画像集 No.002のサムネイル画像 / [SIGGRAPH]「Radeon RX Vega」の短尺版やEPYCを20基搭載するサーバーなどが初披露されたAMD「Capsaicin」イベントレポート
 SIGGRAPH 2017開幕初日の北米時間7月30日,AMDは,ロサンゼルスにて,SIGGRAPH参加者や報道関係者,および一般ユーザーを招いたイベント「Capsaicin」(カプサイシン)を開催した。AMDは,このCapsaicinというイベント名称が気に入っているようで,2017年には,3月のGDC 2017や6月のCOMPUTEX TAIPEI 2017といった大型イベントに合わせて開催している。

 今回のCapsaicinにおける主役は,新世代GPU「Radeon RX Vega」と,「Zen」マイクロアーキテクチャベースのハイエンドCPU「Ryzen Threadripper」であり,その概要は,すでに4Gamerでレポート済みだ。そこで本稿では,イベントで明らかになったそれ以外の興味深い情報についてまとめてみたい。


Radeon Proシリーズの価格が明らかに


 冒頭で登壇したAMDの社長兼CEOであるLisa Su(リサ・スー)博士が,「AMDは,業界トップクラスのCPUとGPUを作り出せる唯一の企業である」というお決まりのトークを展開したのに続いて,本日の主役とも言うべき,Radeon Technologies GroupのリーダーであるRaja Koduri(ラジャ・クドリ)氏が登壇した。

冒頭で登壇したLisa Su氏(左,CEO,AMD)は,「CPU vs GPU」ではなく「CPU&GPU」がAMDのビジネスであると語る(右)
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Raja Koduri氏(Radeon Technologies Group)
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 今回は大きな新製品が2種類もあるので,さっそくその紹介を始めるのだろうと思いきや,意外なことにKoduri氏は,Epic Games創業者の1人にして,Unreal Engineシリーズのアーキテクトも務めるTim Sweeney(ティム・スウィニー)氏をステージに呼び寄せた。

 Koduri氏は「現在,ゲームエンジンはゲーム開発のみならず,デジタルコンテンツ制作においても広く活用されるようになってきた。リアルタイムグラフィックスハードウェアを開発する我々にとっては,最もこれから重要視していくべきソフトウェアのひとつである。なかでもUnreal Engine 4は,このムーブメントの先頭にある存在」と述べて,Sweeney氏の功績を褒め称えた。そして「そんな,業界に貢献するアナタに私からささやかなプレゼントをお渡ししたい」と,「Radeon RX Vega 64」(以下,Vega 64)を搭載するコンパクトな「Nano」版グラフィックスカードを手渡した。Radeon RX Vega 64にNano版カードが存在することは,事前に行われた発表会でも未公表だったので,サプライズなデビューとなったわけだ。

Radeon RX Vega 64のNano版がSweeney氏に手渡された(左)。右写真はグラフィックスカードを拡大した様子。大きめのファンを1基備えた空冷式で,8ピンの補助電源コネクタが1つ見える
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 関係者に取材をしたところ,このNano版Radeon RX Vega 64は,直近で製品化の予定はなく,あくまでも試作モデルであるとのこと。とはいえ,プレゼント用のワンオフモデルにも見えなかったので,いずれはこれをベースにしたコンパクトな製品版グラフィックスカードも,市場に登場するのではないだろうか。

「Threadripperも合わせてどうぞ」と大きな製品ボックスを渡すKoduri氏に,「そんなにいっぺんには持てないよ」と笑うSweeney氏
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 Nano版Radeon RX Vega 64に続けて,Koduri氏は,「Ryzen Threadripperも付けちゃおう」と,Ryzen Threadripperの製品ボックスをSweeney氏に手渡して,会場の笑いを誘っていた。

 コントのような一幕に続いては,Radeon RX VegaシリーズとRyzen Threadripperシリーズの基本スペックや価格,発売時期といった,AMDの新製品に関する発表が行われた。これらについては,掲載済みの詳報を確認してもらうとして(関連記事1関連記事2)。

 新製品のパートで明らかになった新情報は,Vega世代GPUを搭載するワークステーション向けグラフィックスカード「Radeon Pro WX9100」と,SSD搭載グラフィックスカード「「Radeon Pro Solid State Graphics」(以下,Radeon Pro SSG)の価格であった。
 Koduri氏によると,Radeon Pro WX9100が2199ドルで,Radeon Pro SSGが6999ドル。価格対スペック比の高さをアピールしていたRadeon RX Vegaシリーズに比べると,さすがにプロ向けらしいお高さである。

Radeon RX Vega 64ベースのRadeon Pro WX9100は2199ドル(左)。容量2TBのSSDを搭載するRadeon Pro SSGは6999ドルとのこと(右)
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Radeon Pro SSGの製品版を披露するKoduri氏。Radeon Pro SSGは,SIGGRAPH 2016で発表と実動デモの公開が行われていたので,製品版登場まで1年かかったわけだ
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 容量2TBものSSDを搭載したRadeon Pro SSGが,どういった業種に向けた製品なのかを解説するために,Koduri氏はゲストとして,映画撮影向けデジタルビデオカメラの最大手であるRED Digital Cinema(以下,RED)の社長であるJarred Land(ジャレッド・ランド)氏と,インド映画界の巨匠と呼ばれる映画監督のS.S.Rajamouli(S.S.ラジャモウリ)氏を呼んだ。

 まずLand氏は,4K解像度の映画コンテンツ制作では,8K解像度での撮影が行われるようになっていることを説明し,「現時点でRadeon Pro SSGは,8K映像を編集しながらスムーズに再生できる,唯一のソリューションである」と述べた。
 一方のRajamouli氏は,インドで2016年に公開されたファンタジー映画「Bahubali 2: The Conclusion」の制作では,CGの3Dモデルやテクスチャなどの総アセット容量が数10〜数100GBを超えており,制作スタッフが使う標準的なグラフィックスワークステーションでは,プロ向けの制作ツールでさえ開けなくなってきている現状を訴えた。そんな環境で役立つのが,Radeon Pro SSGというわけだ。

Bahubali 2のアセットを,Radeon Pro SSG(左)とNVIDIAのQuadro(右)で読み込むデモ。巨大すぎて,Quadroではエラーとなってしまう
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Rajamouli氏(写真右)にRadeon Pro SSGとREDの8Kカメラをプレゼントする一幕も
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 ちなみに,インド映画界のスピルバーグとも言われているらしいS.S.Rajamouli氏は,実はKoduri氏の従兄弟である。そんな縁によってか,Rajamouli氏の映画では,クレジットの最後にAMDのロゴが出てくるのが定番となるなど,日頃から密接な協力体制が取られているほどだ。2014年にインドのゴア州でAMDが行ったイベントにも,Rajamouli氏のビデオメッセージが流れたことがあったのを思い出した(関連記事)。


AMDもコンパクトスパコン市場に参入?


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 続いての新しい話題は,AMDの中に「AMD Studios」という新しいグループが創設されたことだ。

 AMD Studiosという名称を聞いて,「ゲームや映像を制作する部門ができたのか」と思う人もいるかもしれないが,当然ながらそういうわけではなく,AMDのハードウェアとソフトウェア,およびそれらにまたがるトータルソリューションによって,映像制作業界を技術サポートしていく部門である。
 もともとATI Technologies時代から,AMDには,ゲーム開発者に向けた技術サポートを提供するチームは存在したが,映像制作業界向けのサポートチームというのは,今まで存在しなかったそうだ。この部分は,競合NVIDIAに対して劣っていた部分なので,今回補強したということなのだろう。

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 また,AMDが開発したOpenCLベースのオープンソースのレイトレーシングエンジン「Radeon ProRender」(旧称:FireRender,関連記事)が,映像制作業界で非常に評価を高めているそうで,これがAMD Studios設立のきっかけにもなったようだ。
 Radeon ProRenderの評価が上がっている理由だが,幅広いアーキテクチャに対応することが第一に挙げられる。AMD製のGCNアーキテクチャベースGPUすべてで動作するのはもちろんのこと,IntelおよびAMDのCPU,そしてNVIDIAのGPUでも動作するのだ。加えて,NVIDIAのGPUでも,ちゃんとアクセラレーションが効くように作られている。

 また,Radeon ProRenderは,ハリウッドでも採用事例の多い映像制作ツール「CINEMA 4D」の標準レンダラーとして採用されたほか,幅広いデジタルコンテンツ制作ツールのプラグインが対応していたり,Unreal Engine 4用のプラグインも登場したりと,対応ソフトウェアが続々と登場中だ。ちなみに,Unreal Engine 4のRadeon ProRenderプラグインは,当然ながらゲーム制作向けのソリューションではなく,Unreal Engine 4を用いて映像コンテンツを制作する用途に向けて用意したものとのこと。

 このように,ハードウェアとソフトウェアに対する幅広い対応によって映像制作業界をサポートすることで,業界内での信頼と実績を積み上げていこうというのが,AMD Studiosの狙いのようである。

AMD Studiosのサポートを受けたイギリスのCGプロダクションであるJellyfishの事例では,「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の特殊効果CGが例として取り上げられた
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1 PFLOPSの演算性能を持つというスーパーコンピュータProject 47
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 イベントの最後に,再び登壇したスー氏は,最後の隠し球として,1 PFLOPS(ペタフロップス)の演算能力があるという,比較的小さなスーパーコンピュータ「Project 47」を紹介した。

 大まかな仕様は,サーバー向けCPUであるEPYC 7000シリーズの32C64Tモデル「EPYC 7601」を20基,GPUにはVega世代の「Radeon Instinct MI25」を80基搭載,メインメモリ容量は10TBに達するという。

Project 47の主な仕様
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 Project 47は,まだプロジェクトの初期段階とのことで,価格や発売時期は未公表であった。ステージでは,GPU搭載で最大1280クライアントの仮想マシンとして動作する様子や,1 PFLOPSの演算能力すべてを使って,ほぼリアルタイムに間接照明やリフレクション付きの高解像度のレイトレーシングレンダリングを行うデモを披露した。

GPUサーバーとして活用すれば,1280基のGPU搭載仮想マシンとして利用できるという(左)。Project 47の演算能力すべてをレイトレーシングのレンダリングに利用すると,超高品位のレイトレーシング映像がほぼ瞬時に完成するというデモが披露された(右)
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 コンセプトは少々異なるが,NVIDIAがコンパクトなスーパーコンピュータ製品として「DGX-1」や「HGX-1」をリリースして,これらが,かなり好調な売れ行きであるという。AMDも,こうした分野を取り込みたいという思惑で始まったプロジェクトではないだろうか。こちらも,今後の展開に注目したい。

AMDのSIGGRAPH 2017 公式Webページ

AMD公式Webサイト


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