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[SIGGRAPH]「Radeon RX Vega」の短尺版やEPYCを20基搭載するサーバーなどが初披露されたAMD「Capsaicin」イベントレポート
今回のCapsaicinにおける主役は,新世代GPU「Radeon RX Vega」と,「Zen」マイクロアーキテクチャベースのハイエンドCPU「Ryzen Threadripper」であり,その概要は,すでに4Gamerでレポート済みだ。そこで本稿では,イベントで明らかになったそれ以外の興味深い情報についてまとめてみたい。
Radeon Proシリーズの価格が明らかに
冒頭で登壇したAMDの社長兼CEOであるLisa Su(リサ・スー)博士が,「AMDは,業界トップクラスのCPUとGPUを作り出せる唯一の企業である」というお決まりのトークを展開したのに続いて,本日の主役とも言うべき,Radeon Technologies GroupのリーダーであるRaja Koduri(ラジャ・クドリ)氏が登壇した。
Koduri氏は「現在,ゲームエンジンはゲーム開発のみならず,デジタルコンテンツ制作においても広く活用されるようになってきた。リアルタイムグラフィックスハードウェアを開発する我々にとっては,最もこれから重要視していくべきソフトウェアのひとつである。なかでもUnreal Engine 4は,このムーブメントの先頭にある存在」と述べて,Sweeney氏の功績を褒め称えた。そして「そんな,業界に貢献するアナタに私からささやかなプレゼントをお渡ししたい」と,「Radeon RX Vega 64」(以下,Vega 64)を搭載するコンパクトな「Nano」版グラフィックスカードを手渡した。Radeon RX Vega 64にNano版カードが存在することは,事前に行われた発表会でも未公表だったので,サプライズなデビューとなったわけだ。
関係者に取材をしたところ,このNano版Radeon RX Vega 64は,直近で製品化の予定はなく,あくまでも試作モデルであるとのこと。とはいえ,プレゼント用のワンオフモデルにも見えなかったので,いずれはこれをベースにしたコンパクトな製品版グラフィックスカードも,市場に登場するのではないだろうか。
コントのような一幕に続いては,
新製品のパートで明らかになった新情報は,Vega世代GPUを搭載するワークステーション向けグラフィックスカード「Radeon Pro WX9100」と,SSD搭載グラフィックスカード「「Radeon Pro Solid State Graphics」(以下,Radeon Pro SSG)の価格であった。
Koduri氏によると,Radeon Pro WX9100が2199ドルで,Radeon Pro SSGが6999ドル。価格対スペック比の高さをアピールしていたRadeon RX Vegaシリーズに比べると,さすがにプロ向けらしいお高さである。
まずLand氏は,4K解像度の映画コンテンツ制作では,8K解像度での撮影が行われるようになっていることを説明し,「現時点でRadeon Pro SSGは,8K映像を編集しながらスムーズに再生できる,唯一のソリューションである」と述べた。
一方のRajamouli氏は,インドで2016年に公開されたファンタジー映画「Bahubali 2: The Conclusion」の制作では,CGの3Dモデルやテクスチャなどの総アセット容量が数10〜数100GBを超えており,制作スタッフが使う標準的なグラフィックスワークステーションでは,プロ向けの制作ツールでさえ開けなくなってきている現状を訴えた。そんな環境で役立つのが,Radeon Pro SSGというわけだ。
AMDもコンパクトスパコン市場に参入?
AMD Studiosという名称を聞いて,「ゲームや映像を制作する部門ができたのか」と思う人もいるかもしれないが,当然ながらそういうわけではなく,AMDのハードウェアとソフトウェア,およびそれらにまたがるトータルソリューションによって,映像制作業界を技術サポートしていく部門である。
もともとATI Technologies時代から,AMDには,ゲーム開発者に向けた技術サポートを提供するチームは存在したが,映像制作業界向けのサポートチームというのは,今まで存在しなかったそうだ。この部分は,競合NVIDIAに対して劣っていた部分なので,今回補強したということなのだろう。
また,AMDが開発したOpenCLベースのオープンソースのレイトレーシングエンジン「Radeon ProRender」(旧称:FireRender,関連記事)が,映像制作業界で非常に評価を高めているそうで,これがAMD Studios設立のきっかけにもなったようだ。
Radeon ProRenderの評価が上がっている理由だが,幅広いアーキテクチャに対応することが第一に挙げられる。AMD製のGCNアーキテクチャベースGPUすべてで動作するのはもちろんのこと,IntelおよびAMDのCPU,そしてNVIDIAのGPUでも動作するのだ。加えて,NVIDIAのGPUでも,ちゃんとアクセラレーションが効くように作られている。
また,Radeon ProRenderは,ハリウッドでも採用事例の多い映像制作ツール「CINEMA 4D」の標準レンダラーとして採用されたほか,幅広いデジタルコンテンツ制作ツールのプラグインが対応していたり,Unreal Engine 4用のプラグインも登場したりと,対応ソフトウェアが続々と登場中だ。ちなみに,Unreal Engine 4のRadeon ProRenderプラグインは,当然ながらゲーム制作向けのソリューションではなく,Unreal Engine 4を用いて映像コンテンツを制作する用途に向けて用意したものとのこと。
このように,ハードウェアとソフトウェアに対する幅広い対応によって映像制作業界をサポートすることで,業界内での信頼と実績を積み上げていこうというのが,AMD Studiosの狙いのようである。
大まかな仕様は,サーバー向けCPUであるEPYC 7000シリーズの32C64Tモデル「EPYC 7601」を20基,GPUにはVega世代の「Radeon Instinct MI25」を80基搭載,メインメモリ容量は10TBに達するという。
Project 47は,まだプロジェクトの初期段階とのことで,価格や発売時期は未公表であった。ステージでは,GPU搭載で最大1280クライアントの仮想マシンとして動作する様子や,1 PFLOPSの演算能力すべてを使って,ほぼリアルタイムに間接照明やリフレクション付きの高解像度のレイトレーシングレンダリングを行うデモを披露した。
コンセプトは少々異なるが,NVIDIAがコンパクトなスーパーコンピュータ製品として「DGX-1」や「HGX-1」をリリースして,これらが,かなり好調な売れ行きであるという。AMDも,こうした分野を取り込みたいという思惑で始まったプロジェクトではないだろうか。こちらも,今後の展開に注目したい。
AMDのSIGGRAPH 2017 公式Webページ
AMD公式Webサイト
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