連載
「そうだ アニメ,見よう」第69回は蝸牛くも氏原作の「ゴブリンスレイヤー」。TRPGの世界観で描かれるダークファンタジー
最弱のモンスター・ゴブリンをひたすら狩り続ける冒険者を描いた,蝸牛くも氏原作のダークファンタジー小説「ゴブリンスレイヤー」(GA文庫/SBクリエイティブ,既刊8巻)。Web小説からスタートした本作は,王道ファンタジーとは対極ともいえるリアルな描写が話題となり,小説版はもちろん,コミック版も大ヒットし,その後,外伝小説「イヤーワン」や「ブランニュー・デイ」といった派生作品を生み出し続けている。
「そうだ アニメ,見よう」第69回のタイトルは,蝸牛氏の原作小説をアニメ化した「ゴブリンスレイヤー」だ。アニメーション制作はWHITE FOX,シリーズ構成・脚本は,倉田英之氏と黒田洋介氏のベテランコンビが担当し,監督は「PERSONA5 THE ANIMATION THE DAY BREAKERS」や「少女終末旅行」の尾崎隆晴氏が務めている。
「ゴブリンスレイヤー」
1人残され,死を覚悟した女神官の前に,全身を鎧で覆った銀等級(序列三位)の冒険者(CV:梅原裕一郎)が現れた。「ゴブリンスレイヤー」(子鬼を狩る者)だと名乗るその男は,洞窟のゴブリンを手段を選ばず殲滅。命を救われた女神官は,その後,ゴブリンスレイヤーと行動を共にすることになる。
そんなある日,彼の噂を聞き,森人(エルフ)の少女(CV:東山奈央)と鉱人道士(CV:中村悠一),そして蜥蜴僧侶(CV:杉田智和)のパーティが訪れた。ゴブリン退治のメンバーに加わってほしいという3人の依頼を快諾したゴブリンスレイヤーだったが,目的地にはゴブリン以外の何者かの痕跡が残されていた。
ファンタジー系のアニメやゲームなどで最下層の魔物として扱われることの多いゴブリン。本作は,そのゴブリンを専門に狩る「ゴブリンスレイヤー」の物語である。数ある英雄譚のように魔王やドラゴンではなく,なぜゴブリンなのか。
別段この物語に登場するゴブリン達が強敵というわけではなく,彼らはせいぜい子供に毛が生えた程度の力しか持たない。しかし,想像してみてほしい。武器を持ち,かんたんなワナを仕掛ける知能を持った子供達が群れをなして襲ってくる光景を。実際作中では,ゴブリンを非力とあなどった新米冒険者達が全滅の憂き目を見ることになる。
凄惨を極めるゴブリン達との戦い。ときには瀕死になることも |
強くはないが,しくじれば殺され,討伐したとしても報酬はたかが知れている。そうしたほかのベテラン冒険者が嫌がる仕事を主人公は淡々とこなしていく。その理由は,幼い頃に目の前で実姉を襲われ,何もできなかった自分への罪滅ぼしとも復讐ともとれる。
「俺は世界を救わない。ゴブリンを殺すだけだ」。そうつぶやく彼は,実際世界を救えるほどの力もなく,積み重ねた経験と知恵のみで,ゴブリン達と戦い続ける。地味かつ狂気じみた,彼のストイックな生き様を描いているのが「ゴブリンスレイヤー」なのだ。
新たな仲間を得てもゴブリンスレイヤーのターゲットはゴブリンのみ |
TRPGのルールが根底に流れる世界観
本作の登場人物達は,固有の名前で呼ばれず,“女神官”や“槍使い”といった職業名で区別される。これは,テーブルトークRPGに強い影響を受けた蝸牛氏の意向で,読者(視聴者)が好きに名前をつければよい,と配慮してのことだとか。アニメの随所にダイスの描写があるのも,運命はダイスの目次第というTRPGの世界観が採用されているのだ。このあたりの経緯は,こちらで(関連記事)詳しく語られているので,ぜひ目を通しておいてほしい。
「ゴブリンスレイヤー」原作者・蝸牛くも氏×グループSNE代表・安田 均氏対談。オールドスクールRPGの新たな潮流
蝸牛くも氏の原作小説をベースとしたアニメ「ゴブリンスレイヤー」がまもなく放送開始となる。古き良きTRPGの影響が色濃い同作だが,その原点はどこにあるのか。「ゴブリンスレイヤーTRPG」を制作中というグループSNEの代表・安田 均氏と原作者による対談をお届けしよう。
また,ゴブリンスレイヤー自身もそうした記号として登場しているせいか,常に鉄兜を外さず,顔がさらされることがない。不意打ちから頭部を守るためと本人は言っているが,食事のときもそのままという徹底ぶりだ。第8話で瀕死の重傷を負い,女神官達に看病されたシーンでちらっと顔が見えているが,果たして彼の顔がちゃんと見られる日が来るのか,気になるところだ。
仲間につっこまれてもやはり兜を外さない。ある意味男らしい |
ゴブリンスレイヤーのヒロイン達
ギルドの冒険者仲間からゴブリンばかり狩り続ける変わり者として,一線を引かれていたゴブリンスレイヤーだったが,彼のストイックさに惹かれて女神官,妖精弓手,鉱人道士,蜥蜴僧侶が行動を共にするようになっている。
寡黙なゴブリンスレイヤーだが,仲間達の信頼は厚い |
そのせいなのか,ゴブリンスレイヤーの周囲に不思議と女性陣が目立つようになってきた。パーティの相棒とも言える女神官をはじめ,幼馴染みの牛飼娘(CV:井口裕香)や彼に好意を寄せるギルドの受付嬢(CV:内田真礼),さらに第6話に登場した剣の乙女(CV:遠藤 綾)ともいい仲の様子。
「ああ」と「そうか」がボキャブラリーのほとんどを占めるゴブリンスレイヤーだが,彼を慕う女性はなかなか多い。やはり男は口数ではないということか。
ショッキングな内容となった第1話ばかりが話題となっている本作だが,見るべきところはむしろ地味な普段の日常シーンなのではないだろうか。住居となる牧場の見回り,ゴブリン退治に役立つと思われる知識の収集,防具や武器の手入れを欠かさないといった,ゴブリンスレイヤーの用心深さが彼の強さを支える要因となっているのだろう。そこを考慮しながら見ると,本作への理解力が深まるはずだ。
今流行の“最強系主人公”へのアンチテーゼともいえる本作。ご都合主義の展開や,MMOのようなファンタジーに飽きたという人にはオススメの作品だ。
TVアニメ「ゴブリンスレイヤー」公式サイト
TVアニメ「ゴブリンスレイヤー」公式Twitter
放映データ |
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2018年10月〜 |
キャスト | |
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ゴブリンスレイヤー:梅原裕一郎 | |
女神官:小倉 唯 | |
妖精弓手:東山奈央 | |
牛飼娘:井口裕香 | |
受付嬢:内田真礼 | |
鉱人道士:中村悠一 | |
蜥蜴僧侶:杉田智和 | |
魔女:日笠陽子 | |
槍使い:松岡禎丞 | |
剣の乙女:遠藤 綾 |
スタッフ |
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原作:蝸牛くも(GA文庫/SBクリエイティブ刊) |
キャラクター原案:神奈月昇 |
監督:尾崎隆晴 |
シリーズ構成・脚本:倉田英之 |
脚本:黒田洋介 |
キャラクターデザイン:永吉隆志 |
音楽:末廣健一郎 |
オープニングテーマ:Mili |
エンディングテーマ:そらる |
アニメーション制作:WHITE FOX |
■Blu-ray&DVD情報
ゴブリンスレイヤー 1【初回生産限定】
2019年2月20日発売
本編ディスク1枚
[収録話数]第1話〜第4話
[Blu-ray]価格13,000円(本体)+税
[DVD]価格11,000円(本体)+税
【初回生産特典】
・原作・蝸牛くも先生書き下ろし小説
・キャラクター原案・神奈月昇先生描き下ろし三方背BOX
・キャラクターデザイン・永吉隆志描き下ろしデジトレイ
・特製ブックレット
・イベントチケット優先販売申込券
<イベント概要>
開催日:2019年5月26日(日)
会場:有楽町朝日ホール
出演者: 梅原裕一郎、小倉 唯、東山奈央、井口裕香、内田真礼、中村悠一、杉田智和、日笠陽子、松岡禎丞
※出演者は変更になる場合がございます。
※時間等の詳細は追ってお知らせいたします。
【映像特典】
・ノンクレジットOP・ED
【音声特典】
・オーディオコメンタリー
(C)蝸牛くも・SBクリエイティブ/ゴブリンスレイヤー製作委員会
- 関連タイトル:
ゴブリンスレイヤーTRPG
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