マフィア梶田の二次元が来い!:第345回「湯船でオープンエアに想いを馳せるブレス オブ ザ ワイルド」
やっぱり大きな風呂ってのはいいですね。ただ,自分は休日なんかは朝昼晩と3回も風呂に入っちゃうくらい,湯船に浸かりながら本を読んだりゲームしたりするのが好きなんですけれども,公共の場だとそれができないんですよねぇ。1度でいいから,温泉に浸かりながら趣味に没頭してみたいもんですわ。
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(Nintendo Switch / Wii U)が素晴らしいです。もう「面白い」じゃなくて,「素晴らしい」としか言い様がない。
実はマフィア梶田,「ゼルダの伝説」シリーズをプレイするのはかなり久しぶりです。どれくらいぶりかと言いますと,なんと1993年にゲームボーイで発売された「ゼルダの伝説 夢を見る島」以来だったりします。当時プレイしたタイトルの中でもとくにハマった記憶があるのですが,なぜかその後は「ゼルダの伝説」シリーズが出ていることを認識しつつも,プレイする機会を逸し続けてきまして……。
そのせいで,どんどん手を付けにくくなっていた部分はあります。読者の皆さんにも似たような経験があると思うのですが,ゲームに限らずシリーズ物から長く離れてしまうとある種の“罪悪感”みたいなものを抱くようになりませんか? 疎遠になった友人へ久しぶりにLINEでもしようかと思うけど,なんかモヤッとして結局やめちゃうみたいな感覚です。
なので今回,Nintendo Switchの発売に合わせて「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」を購入したのは,ほんの気紛れでした。いや,そろそろ重い腰を上げて,再び「ゼルダの伝説」に触れようという意識も少しはありましたが,ハードだけ手元にあるってのも味気ないなと思い「せっかくだし注目作のゼルダでも……」というのが正直なところです。つまり,プレイに対するモチベーションが極めて高かったとは言えません。
……それがですよ,今じゃ昼間はTVモードでゼルダ,トイレや風呂では携帯モードでゼルダ,就寝前にベッドでゼルダやって,気が付いたら朝日が昇るまでゼルダですよ。
さて,前置きが長くなりましたが,ここからが本題。なぜ「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」は素晴らしいのか。なぜ,シリーズから長らく離れている自分がどっぷりハマってしまったのか……。それは,本作が「ゼルダの伝説」の名を冠した「史上最高に丁寧なオープンワールドゲーム」だったからです。いや,任天堂曰く,本作は「オープンワールド」ではなく「オープンエア」とのことなんですが,これは実際にゲームをプレイしていないとニュアンスが伝わり辛い部分でもあるので……あえて分かりやすい言葉で表現しました。
それが具体的に,どういうことなのか。これまでも何度か連載で触れて来ましたが,マフィア梶田はオープンワールドゲームに対して特別な想いがあります。最も好きなタイトルとなると難しいですが,最も好きなゲームジャンルを挙げろと言われれば,迷いなくオープンワールドと答えるくらいには愛しています。どれほど好きかというと,今現在「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」と並行して「ゴーストリコン ワイルドランズ」(PC / PlayStation 4 / Xbox Oneをプレイしているのですが,オープンエア×オープンワールドという,肉を肉で挟んだような組み合わせでもまったく胃もたれしないくらいには好きです。
しかしながら,さまざまなタイトルをプレイして造詣が深くなっていくほど必然的にその弱点も見えてきます。オープンワールドゲームというのは今現在,間違いなく資金力・開発力に勝る海外メーカーが主導しているジャンルです。ノウハウも充実していますし,昨今は「オープンワールドなのに完成度が低い」というゲームを見かけることは滅多にありません。
ただ,最近ではその“安定”に飽きてきたのもまた事実です。「オープンワールドゲームとはこういうものだ」という固定概念が広まりきった結果,どれも遊び心地は似たり寄ったりになって,オープンワールドゲームに自由な呼吸を求めていたはずが,いつしか「管理された箱庭から箱庭へ移動するだけ」の息苦しいものになってしまっていました。目前の広大な世界は自由に見えても,「そこで出来ること」はとても大雑把だということに皆が気付いてしまったんです。
とはいえ,勘違いしないで欲しいのですが,マフィア梶田はそれを不満に思っているというわけではありません。弱点は弱点として認識したうえで,それでもオープンワールドゲームはやっぱり好きなんですよ。大雑把で遊び心地が似たり寄ったりなタイトルばかりでも,オープンワールドゲームが数多くリリースされる現状をとても嬉しく思っています。そういうものが遊びたいんですからね。
……だが,しかし。しかしですよ,「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」をプレイして,「なんということをしてくれたんだ!」と頭を抱えましたわ。こんなもん出されてしまったら,今後オープンワールドゲームを遊ぶたびに「これがゼルダなら……」という想いが頭をよぎるに違いないと。数時間遊んだ時点で,そう確信させられました。
丁寧なんですよ……とにかく。世界の隅々まで,丁寧なんです。大雑把なところがひとつもない。制限の中でちゃんと“自由”を謳歌できるようになっていて,体験を提供されているのではなく,プレイヤーが自らの思考で体験を生み出せるんです。まったく息苦しくない,自由に呼吸できる空気が“ハイラル”にはありました。解釈の仕方は人それぞれだと思いますが,自分の場合は「ああ,これがオープン“エア”なんだな」としみじみ納得しましたね。
ザコとの戦闘ひとつとっても剣をブンブン振り回すだけでなく,何通りものアクションで自分が思い描く戦いを実現できますし,魔物が狡猾な“生き物”の動きで襲い掛かってくる。近接戦闘を仕掛けてくるヤツと,遠距離射撃で援護するヤツの連携が見事で驚かされたり,こちらが投げたオブジェクトを投げ返してきたり,焚き火から木製の武器に火を燃え移らせてそれで殴りかかってきたりと,かなり歯応えがあって飽きません。単純に敵がカタい=強いではなく,その行動すべてを通して「強い」と感じさせてくれます。
また,空中を飛行したり水中を泳げるゲームはこれまでも多くありましたが,切り立った崖などをちゃんと登攀できるものは意外とありませんでした。「スカイリム」なんかでは馬のジャンプを利用して無理矢理よじ登ったりもしましたが,そういうのではなく……本作ではちゃんとシステム的に「よじ登る」というアクションが用意されている。わざわざ時間をかけて回り道をしなくとも,多少無茶をすれば山だろうが何だろうが独自の攻略ルートを開拓することができるんです。
さらには,それらのアクションが「がんばりゲージ」(※いわゆるスタミナ)によって左右されるという点もお見事ですわ。これが無制限にできると,前述したようなスリルのない大雑把な遊び心地になってしまうところを,がんばりゲージを気にしなければならないことでプレイに各自の“工夫”が生まれてくる。例えば岩壁の途中でせり出した岩場を休息ポイントにすることで効率的に距離を稼いだり,普通に泳いだら溺れてしまいそうな川や湖をとある方法で道を作ることで乗り切ったり……。「ゼルダの伝説」シリーズが得意とする「ギミックの活用」をオープンワールドに無理なく落とし込むことで,プレイヤーの発想力・直感力がダイレクトに攻略ヘと繋がる設計になっているんです。
これはあくまで個人的な意見ですが,本作は今後「国産オープンワールドゲームが目指すべき指標」であるように感じます。昔から日本人というのはとかく職人気質でしたが,ゲーム作りに関しても例外ではなく,海外じゃ「なんで?」と言われるようなことにまでこだわってしまうのが国産ゲームの美点であり,弱点でした。そうした点を変えようとするのではなく,受け入れ,海外とは違った方向からトレンドを攻める。「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」は見事にそれを成功させたように思います。
オープンワールドというゲーム業界の最前線でありながら飽和し,もはや「枯れた技術」になりかけていたジャンルに国産ゲームらしいアプローチで新たな息吹をもたらした本作は,今後の「オープンワールドゲームの在り方」を変えるのではないか,それほどの影響力があるのではないかと期待しています。
読者の皆さんも,まだプレイしていないのであれば一刻も早く触ってみるべきです。「ゼルダの伝説」に興味があろうがなかろうが関係ありません。むしろ,本作から「ゼルダ」デビューできるのはきっと幸せなことですよ!
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