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江戸時代の日本を舞台に,5人の専門家の活躍を描く「Shadow Tactics: Blades of the Shogun」は,タクティカルストラテジージャンルの良作だ
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印刷2016/12/24 12:00

プレイレポート

江戸時代の日本を舞台に,5人の専門家の活躍を描く「Shadow Tactics: Blades of the Shogun」は,タクティカルストラテジージャンルの良作だ

 ドイツのMimimi Productionsが開発し,同じくドイツのDaedalic Entertainmentがパブリッシングを担当した「Shadow Tactics: Blades of the Shogun」PC/PlayStation 4/Xbox One。以下,「Shadow Tactics」)が,2016年12月6日にリリースされた。

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「Shadow Tactics: Blades of the Shogun」公式サイト


 本作のジャンルは,いわゆる「タクティカルストラテジー」で,最近,この呼び名をあまり聞かない気がするが,1998年にリリースされた「Commandos: Behind Enemy Lines」(邦題「コマンドス:特殊工作大作戦)に始まる(と言われている)。
 2001年に登場した「Desperados: Wanted Dead or Alive」などもそうで,俯瞰視点で敵の動きを眺めながら,個性的なスキルを持ったキャラクター達を取っ替え引っ替え操作して,背後から忍び寄って敵を倒したり,罠を仕掛けたり,できるだけ見つからないように隠密行動をしたりして,マップを攻略していくのだ。……こうして文字にしてみると,なんだか地味なゲームだと思うかもしれないが,だいたいそのとおりで,チマチマとゲームを進めるのが大好きな筆者にはもってこいのジャンルだったのだ。
 今から15年くらい前には,割と人気を集めていたとうろ覚えしている。

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 さて,この「Shadow Tactics」を簡単に言うと,「江戸時代っぽい日本を舞台に繰り広げられるCommandos」という言葉がピッタリだ。我ながらうまいことを言った気がするが,しかし,Commandosシリーズを知らない人には,なんのことだか分からないと思うので,これから「Shadow Tactics」の面白さを皆さんに伝えていこうと思う。終わったと思わないで,このまま読み進めてほしい。ちなみにプレイしたのはPC版で,キーアサインもそれに準じている。


江戸時代の日本を舞台に繰り広げられる13ミッションに挑戦


 ゲームの背景になるのは1615年。人気ドラマでおなじみの大坂夏の陣もたけなわだが,最初から勝負は見えていたので,江戸時代が始まったと言ってもいい年だ。しかし,日本の新たな支配者となった将軍の世を脅かす“カゲサマ”という反乱勢力が怪しい動きをしている。

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 そんなカゲサマの野望を挫くため,5人のエキスパートが敵地へ送り込まれた。5人の内訳は,刀と手裏剣を使い,俊足で音もなく敵を排除する「ハヤト」(職業,忍者),忍者では太刀打ちできない敵や,複数の敵を相手にできる「ムゲン」(同,侍),変装して敵に近づいて倒したり,油断させて仲間の侵入を手助けしたりする「アイコ」(同,芸者),罠やオトリを使って敵を排除する「ユキ」(同,罠使い),はるか遠方から狙撃銃を使って敵を倒す「タクマ」(同,鉄砲使い)だ。プレイヤーは,彼らを使ってさまざまなミッションに挑んでいく。

 ミッションとしては,大阪城を舞台にした「大坂攻城戦」,違法武器輸送を阻止する「中山道での苦難」,違法武器輸送の手がかりとなる書類を盗み出す「今井の泥棒」,捕らえられた仲間を救出する「鶴山からの脱出」,邸宅に逃げ込んだヤブ大名に復讐する「ヤブ大名の殺害」など,計13種類が用意されている。

ミッションごとに9つの「バッジ」が用意されている。バッジ獲得を目指して試行錯誤しよう
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 一つのミッションは,複数のパートで構成されており,1つのパートをクリアすると,次のパートへと話が進む。ミッションは,ただクリアするだけでなく,それぞれのミッションごとに「バッジ」と呼ばれる9つの課題が用意されており,それらを達成するといった,やりこみ要素も充実している。
 課題は簡単に達成できるものから,誰も殺さない,茂みに触れない,ハードでクリアする,15分以内にクリアするなど高難度のものも用意されており,9つすべてをクリアするには,相当プレイする必要があるだろう。

敵の配置や目的地を確認したい場合は,右上のミニマップをチェック
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 難度はイージー,ノーマル,ハードの3種類で,タクティカルストラテジーを初めて遊ぶという人はイージーでプレイしてステップアップしていくのがオススメであり,逆はオススメしない。
 もっとも,ノーマル以上でないとバッジに挑戦できないので,あえて最初から難度をノーマルにして悪戦苦闘してみるのもアリだ。ちなみに,クリア済みのミッションは難度を変えていつでも挑戦できるので,全バッジのクリアを目指してやり込んでほしい。筆者はそうしている。


キャラクターごとの特性を活かした行動ができるかが重要


 5人のエキスパートがいるとはいえ,ミッションごとに使用できるキャラクターは決められており,好みの組み合わせでミッションに挑むことはできない。しがたって,例えば「ここにユキがいれば,楽だったろうなぁ」といったシーンは何度となく出てくるが,これはまあ仕方ない。
 マップは比較的広く,ときには単独行動で,ときにはグループで,ときには複数を連携させつつ,状況に応じて臨機応変にキャラクターを使い分けて任務を遂行していくのがポイントだ。

ユキならば,罠を仕掛けて死角から笛で誘き出すと簡単に敵を倒せる。死体がほかの敵の視野に入ると発見されて,増援が呼ばれる
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 キャラクターの切り替えは,数字キーで行う。また,攻撃やそれぞれの能力を使う場合は全員共通で,[A]キー,[S]キー,[D]キーに割り当てられている。例えば,ハヤトなら,[A]で忍者刀,[S]で手裏剣,[D]で石を投げて音を立てる。ユキなら同じ順番で,短刀,罠,笛でおびき出す,タクマなら,銃で遠距離攻撃,焙烙玉(ほうろくだま)による広範囲攻撃,タヌキに吠えさせて気を引かせるといった感じだ。同様に,[F]キーで火縄銃,[G]キーでダメージ回復というのも,全キャラ共通。

 文章で書くと面倒に感じるかもしれないが,視点切り替えなどを含めた操作性は良く,非常にプレイしやすい。筆者はキーボード+マウスでプレイしているが,本作はゲームパッドにも対応しており,移動を左スティック,視点切り替えを右スティックという風に,直感的に操作できるので,こちらも便利だ。

屋根の上はジャンプやロープなどで移動でき,地上からは発見されない。敵の頭上から飛び降りて倒すことも可能だ
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 プレイ画面は俯瞰視点だが,すべて3Dで表示されており,マップの回転,拡大縮小などは自由に行える。細かく描かれた日本風のグラフィックスにより,江戸時代の日本の風景が緻密に描かれている。言うまでもなく,ドイツ人の描いた日本には微妙な部分もあって楽しい。日本じゃないだろ,みたいな。
 また,嬉しいことに,本作は日本語音声&テキストに対応しているのだが,こちらもグラフィックス同様,「ん?」というところがあるものの,問題はない。

 筆者が混乱したのが,タクマの連れているタヌキの名前が「クマ」で,タヌキに「クマ,行け!」という命じ場面だ。しかもタヌキなのに,吠えて敵の気を引きつけるという能力を持っている。なぜ犬ではなくタヌキで名前がクマなのか,気になって夜も眠れない。

タクマの相棒のタヌキのクマを吠えさせれば,敵の注意を引けるので,その間に移動したり敵を倒したりできる
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敵の視野をかいくぐり,任務を遂行できたときの喜びは格別


落下させられるオブジェクトも用意されており,これをうまく使えば,一度に複数の敵を倒せる。死体が発見されても事故扱いなので問題なし
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 敵に見つかって増援を呼ばれると任務終了になるので,基本はステルス行動だ。どのマップも,地形が複雑で建物なども多いので,身を隠せる遮蔽物には不足しない。草木の陰に身を潜めるだけでなく,ときには屋根の上を走ったり,水中に潜って移動することも必要になる。
 敵の真上から飛び降りてすばやく倒したり,岩などを落として事故に見せかければ,敵の警戒感を高めずに済むが,そう簡単にはいかないのだ。

 マップに配置された敵は,立ち止まって警戒している者や,一定の場所を行き来している者,所定のコースを巡回している者など,その数は非常に多い。さらには町人なども歩いており,友好的でない町人に見つかっても敵側に知らせられるので,油断大敵。町人といえど,任務遂行のために排除してしまおう。ごめんなさいね。

(左)敵に発見されると当然,攻撃される。たとえうまく逃げても,詰所から多くの敵が出てくるため,任務遂行は一段と厳しくなる。(右)町人の多くは友好的ではなく,こちらを見つけると敵に知らせらに走る。また,雪上では足跡も見つかるので,移動には注意が必要だ
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 敵の行動はパターン化されているので,彼らをじっくり観察して戦略を練るのがタクティカルストラテジの醍醐味の一つだ。どうしてもここを通らなければならない,という状況もないわけではないが,多くの場合,複数の進行ルートを取れる作りになっており,敵の配置を眺めつつ,こいつは殺しとくか,いや,先にこっちの敵をやっちゃうか……など考えるのが楽しくてしょうがないの,ボク。

敵の視野範囲を逃れつつ,隠密行動で任務を遂行していくのが本作のスタイル。状況をしっかり見極めて,どう攻めるか試行錯誤しよう
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視野範囲は色の濃い部分は発見されてしまうが,縞模様の部分は,しゃがんでいれば大丈夫
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 敵や町人の一人ひとりに視認できる範囲が設定されており,いかにそれをかいくぐりながら移動できるかもプレイのキモの1つになる。視野は緑色の扇形で表現されており,色の濃い部分と縞模様の部分がある。
 敵の視野に入ると,すぐに見つかるかというと,実はそうでもなく,敵との距離があるほど見つかるまでの時間がかかるといった具合に,多少の猶予が与えられている。また,縞模様の部分なら,しゃがんでいれば見つからない。
 うっかり視野に入ってしまっても,すぐにそこから出るなり,近くの遮蔽物の背後に隠れれば問題ないのだ。

夜間の視野範囲は,暗いところでは極端に狭くなるが,明かりがあると見つかる。明かりを避けて移動しよう
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 複数の敵が見張っている場所では,緑色の扇形が入り乱れており,そんな厳しい状況の中,敵の背後に貼り付きつつ,次の行動を確認していくというダンドリが,筆者がタクティカルストラテジーにグッと来る理由の1つだ。
 目指す場所までなんとか辿り着けそうだ,なんて安心していたら,まったく把握していなかった別の敵の視野に入って見つかったとか,こんなことがしょっちゅう起きるが,なんとかうまく切り抜けたり,対処できたときの喜びや爽快感がたまらない。

 さらに,キャラクター1人だけでなく,複数を連携させて,ちょっと離れた場所にいる敵を3人,同時に倒したいなどといったシーンもしばしば出てくる。例えば,ハヤトで1人を斬り,すぐにムゲンに切り替えて,彼の強力な武器太刀風で残りの敵を斬る,といった感じだ。こうした連続攻撃をキー入力だけでやろうとすると,割と厳しいものがあるが,昔のタクティカルストラテジーでは,そんな綱渡りのようなことをしょっちゅうやらされていた。

 しかし,安心してほしい。本作に用意された「シャドウモード」を使えば,こうした連係攻撃が手軽にできるのだ。「シャドウモード」とは,それぞれのキャラクターの行動を1つ,予約できるというもの。好みのタイミングで[Enter]キーを押せば予約した行動を実行してくれるので,やっかいなキー操作は必要なくなった。

複数の敵を一気に倒すには,「シャドウモード」を使ったキャラクター同士の連係攻撃が有効
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 プレイ画面で左の[Shift]キーを押すと「シャドウモード」の設定に入るので,上記の例なら,まずハヤトの忍者刀で敵1体を選択,次にムゲンの太刀風で敵2体を選択し,あとはタイミングを見計らって[Enter]キーを押せば,連係攻撃が発動して,自動的に3人の敵を倒してくれるのだ。

 もっとも,予想外のことが起きて予定どおり行かないことも少なからずあるので,[Enter]キーを押す前にクイックセーブしておけば万全だ。この新発明,「シャドウモード」は非常に便利なので,今後,タクティカルストラテジーの定番の機能になるのではないかと筆者は確信しているのだが,果たしてどうだろう。


数え切れないほどのトライアル&エラー必至
イマジネーションを磨いて切り抜けろ


 タクティカルストラテジーの専門家といってもいいほどの筆者だが,勝利のコツはやはり「死んで覚える」だろう。自分で言ってて,専門家とは思えない意見だが,とりあえず,数え切れないほどのトライアル&エラーが必要になるのは間違いない。PC版について言う限り,最もよく押すキーは,クイックセーブの[F5]とクイックロード[F8]だろう。せっかくうまくいったのに,間違えてクイックロードしてしまったとかいう,ありがちなミスは避けたいところだ。

プレイ画面の上部に最後にセーブした時間が表示される(非表示も可)。PC版について言えば,本作はセーブしながら進めていくゲームなのだ
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 ちなみにPC版のクイックセーブは3回ぶん保存されているので,万一,手詰まりになっても,少しさかのぼってやり直しができる。しかし,あまり頻繁にセーブしていると,「結局,場所を間違えてました」などというときに戻れなくなるので,それなりに注意が必要だ。

 アクション性はそれほどなく,画面内の敵の動きを観察して,一歩ずつコマを進めていく本作。攻略方法も1つではなく,ミッションをクリアする方法は無限にある。一見,絶対に無理だこんなの,と感じるところでも,進行ルートを少し変えれば意外とあっさり敵を倒せたり,そもそも,倒さなくても良かったりなどする。1つのミッションをクリアした経験は,次のミッションで必ず活かされるはずなので,ついついゲームを続けてしまう。

PC版では,キーボードとマウス,あるいはゲームパッドが使える。ゲームパッドを使用すると,画面のインターフェース表示も変わる
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「Shadow Tactics: Blades of the Shogun」公式サイト


 歴史を再現したものではないが,舞台が江戸時代の日本ということもあって,妙に親近感がわいてくる。これまで遊んできたタクティカルストラテジーの中でも,ゲームバランスと完成度はピカイチなのでオススメの一本だ。興味のある人は,まずは本作の面白さを味わえるデモ版をダウンロードしてほしい。
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