インタビュー
「バイオハザード7」開発チームを指揮する竹内 潤氏に聞く,プロジェクトの“これまで”。プロモ戦略の狙いや「全編PS VR対応」を決めた経緯とは
約4年ぶりとなるナンバリング最新作の開発チームを指揮するのは,開発総責任者を務める竹内 潤氏である。バイオハザードシリーズの初期作品から開発に携わってきた氏は,世界中が注目する「バイオハザード7」のプロジェクトをどのように進めているのだろうか。
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「バイオハザード7 レジデント イービル」公式サイト
作り手側の心のどこかにあった「ホラーを作りたい」
本日はよろしくお願いします。
竹内さんは「バイオハザード7」の開発総責任者を務めておられますが,バイオハザードシリーズの開発に直接携わるのは「バイオハザード5」(2009年発売)以来です。今回,「バイオハザード7」を統括する立場に就かれた経緯を教えていただけますか。
竹内 潤氏(以下,竹内氏):
「バイオハザード6」(2012年10月発売)のあと,すぐに「7」の開発がスタートしていたんですよ。ところが,開発の現場はなかなか苦労していたようで,どういう方向に進むべきかと悩んでいたんですね。
そして2014年1月,突然,辻本(憲三)会長に呼ばれまして,「バイオハザード7のチームが苦労している。やってくれへんか?」と(笑)。当時は開発の現場ではなく,サポートする側に回っていたんですが,そこから「バイオハザード7」に携わることになりました。
4Gamer:
その時点で竹内さんから見て,「バイオハザード7」の進捗状況はどのように映りましたか。
竹内氏:
やはり迷っている感はありましたね。
バイオハザードシリーズは「4」以降,作品を重ねるごとにアクション要素のウェイトが大きくなっていきましたが,作り手側の心のどこかに「ホラーを作りたい」という思いもあったんです。それに引きずられつつ,好調に推移していたセールス面を考えるとアクションであることも捨てられない。ずっとアクション要素を突き詰めてきたのに,今さらホラーに戻っていいのだろうかということですね。
そんな相克の迷いが,そのまま当時のプロトタイプやプランニングにも表れていました。正直なところ,「これはちょっと良くない」と感じましたね。
4Gamer:
そうなると,明確なコンセプトを打ち出す必要があります。それが「ホラーを作ろう」だったと。
竹内氏:
「アクションか,ホラーか」と考えたときに,「バイオハザード6」のユーザーから寄せられた意見を拝見しました。「6」はシリーズのドリームチームといったタイトルで,ファンの方に喜んでいただいた一方で,「サバイバルホラーが遊びたい」という声も多くありました。だったら,次はホラーに振り切ってもいいだろうと。
バイオハザードシリーズは「1」「2」「3」で一つの区切りを迎え,「4」でリニューアルを果たしました。そして「4」「5」「6」と来て,次は「7」です。
これは,いいタイミングだと思いまして(笑)。
ここで自分達の原点と言いますか,「バイオハザードのあるべき姿,サバイバルホラーとは何か」を見直してみる価値があると思ったんですね。それは自分達にとっても,お客さんにとっても,すごく大きな意味を持つだろうと。だから,思い切ってやろうじゃないかと,腹を括りました。
4Gamer:
なるほど。
川田さんと中西さん※にお話をうかがったところ,最初の作業というのが,スタッフが考えている「バイオハザードはこうあるべき」という枷(かせ)を外すことだったそうですね。
※バイオハザードシリーズ プロデューサー 川田将央氏,「バイオハザード7」ディレクター 中西晃史氏。
「4」「5」「6」を作ったスタッフがほとんどなので,バイオハザードと言えば「クリスやレオン,クレアといったキャラクター達がいて,サードパーソンビューでゾンビと戦う」というイメージを持っていました。でも,心の中では「サバイバルホラーもやりたい」と感じていたんです。
だから,まずは「バイオハザードはこうあるべき」というものを忘れましょうと。その状態にしていくのが,すごく大変でしたね。
最初のスタートを切るときに,スタッフを集めて1発目のミーティングを開いたんですけど,ここで曖昧な言葉を使うと,枷が外すのが難しくなるだろうと。そこで,なるべく具体的な目標とやることを掲げ,「俺は腹を括っているから,これで行くぞ」と意思表示をしなくてはいけないと強く意識していましたね。
4Gamer:
その決断は,ある意味,ギャンブルですよね。
竹内氏:
セールスという観点では「ギャンブルだろうな」と思っていました。なので,スタッフには最初,「責任は俺が負うから。何も気にしなくていい」と言いました。
ただ,「新しいバイオハザードが作れるか?」という意味では,自信がありましたよ。最悪,自分が全部ディレクションする気でいましたし(笑)。
さすがに心配そうなスタッフもいましたけどね。いきなり「テーマは『死霊のはらわた』だ」「オンラインモードはなし」ですから。そして「ひたすらに怖いものを,“狭く深く”追究する。それに全精力を傾けよう」と。
4Gamer:
「バイオハザード リベレーションズ」もホラー色の強いタイトルでしたが,ナンバリングでそのコンセプトとは驚きました。
竹内氏:
今回,「リベレーションズ」を手がけた中西をディレクターに起用しましたが,「7」の適任者は彼しかいなかったですね。サバイバルホラーの本質や有り様を,しっかりと捉えている。だから,「リベレーションズ」というサブブランドを確立できたわけですし。
4Gamer:
2か月後に発売を控え,ほぼ完成に近づいていると思います。クオリティについてはいかがですか。
竹内氏:
今,我々ができることのベストを尽くしました。これ以上のものはない,と言えます。最大限,やれることはやり切りました。
4Gamer:
プロモーションの面でも,思い切った施策を取っています。「ホラー」という一面だけを見せて,全貌をほとんど明かしていません。当初から,こうしたプロモーションを予定されていたのでしょうか。
竹内氏:
はい。川田に言っていたんですが,「好きの反対は何か。好きの反対は嫌いじゃなくて,無関心だ」と。だから,関心を持ってもらわないのが一番マズイ。ずっと関心を持ってもらうために,そういうプロモーションをしようじゃないかと考えていました。
でも,これまでのプロジェクトで最初の発表がこんなに不安だったことはないんですよ。E3 2016の当日も,発表の30分には喫煙所でそわそわしている,子供がもうすぐ生まれそうな父親みたいになっていました。「大丈夫かな。もう俺,無理無理無理」って(笑)。
あの発表が今回のプロモーション戦略のスタートだったので,発表直後に会場からワーッと歓声が上がったときには「よし!」と。最初のレースに勝った感じですよ。
4Gamer:
確かに「待ってました!」という雰囲気でした。
竹内氏:
そこから,皆さんにプレイしてもらうまでが我慢でした。出したいけど,まだ出さない……と,ずっと我慢。「今回のバイオハザードはホントに『バイオ』なのか? 違うゲームなんじゃないか?」という疑問をずっと持っていてもらいたいんですよ。
ちゃんとお客さんに「バイオはホラーに戻ります」ということを認識してもらうために,じっくりと時間を割こうと。実際に遊んだら「バイオハザード」だからと分かってもらえるので,それまでは疑問を感じてもらう……という博打を打ったんです。
4Gamer:
「で,どうなの?」という熱が,最も高いタイミングが今だと思います。
竹内氏:
そうですね。実は15秒の短いトレイラーを出しているんですが,「これ,思った以上にバイオハザードじゃないか」と思われている最中ではないでしょうか。
4Gamer:
今回,2日間にわたってプレイしたのですが,「これは間違いなくバイオハザードだ」という安心感にも開放感にも近い感覚がありました。
竹内氏:
「バイオハザード7」は,発売日に遊んでこそ一番楽しめるゲームだと思います。ネットで情報を知ってから遊ぶと,本当に残念な気持ちになってしまう。それは,もったいないと思います。「発売日に遊んでくれ」「ネットを見ないで」「メタクリ(世界有数の評価集計サイト)は見てもいいけど,ネタバレは見るな」と強く訴えたいですね。
初めて知る驚き,それも「バイオハザード7」の楽しみの1つだと思っているので。
4Gamer:
それは,作品に自信があるからできる発言ですね。
はい。それだけのものになるように,本当に何回作り直したか分からないくらい,練って練って練って練ってきました。
「7」では開発のスパンとして,2か月で見直しのターンになるんです。「ここがうまくいっていない」というところを作り直す。つまり,2〜3か月で必ず作り直すんです。
最初は大変でしたよ(苦笑)。現場からは「またやり直すのか」「ちゃんとプランニングもできないのか」と。それが2回目には「まあ,分かっていたよ。そういう風にやっているんだから」,3回目で「ここ,もうちょっと直したいんだけど」,4回目にもなると「なんで直さないんだよ,ここ」って(笑)。本当に素直でいいスタッフが揃ったと思います。
4Gamer:
2014年1月に本格的なスタートを切ったとのことで,開発期間はちょうど3年となります。これは,当初の想定どおりのスケジュールなのでしょうか。
竹内氏:
ええ。逆にこれ以上延びると,今の僕らが追いつける領域のゲームのマーケットではなくなると思います。実際,PlayStation 4 Proの発売やScorpioの発表があったりして,もう次の世代が近い。そういう流れになっているので,僕らが勝負できるタイミングは2017年1月までと思っていました。
4Gamer:
開発の途中で,「全編PlayStation VR対応」を決めたそうですが,その時点で御社が持っていたVRコンテンツに対するノウハウや基礎研究の蓄積はどのくらいあったのでしょうか。
竹内氏:
もちろん,すでに研究は進めていましたが,そこまで本格的ではなかった状態なので,「7」からが本格的なスタートといった感じですね。でも,最初からやりたかったんですよ。中西なんて,初期の企画書に小さく「VR対応?」と書いていましたし。
開発初期の時点では,ユーザーがVRを体験するための投資額が十数万円でしたので,「まだ早い。やれないよな……」という話はしていました。それが,開発中にPS VRの話が来て,しかも「バイオハザード7」はファーストパーソンビューというのが決まっていた。
あとは「もう,やろうよ」「やろう,やろう」「来てますよね。風,吹いてますよ! ファーストパーソンビューにしたタイミングで,VRが来ているんだから!」という感じでした。
4Gamer:
しかし,全編対応というのは,これまたギャンブルだと思いませんでしたか。
竹内氏:
最初は「一部対応」を考えていたんですが,「それじゃあ,他社も考えているだろうし,つまんないね」と。今回,これだけ腹括ってやっているんだから,「全編やりましょう!」という流れになりました。
高原※に「全編やれる?」と確認したら,「やれるやれないじゃない。やりましょう!」と返ってきました(笑)。
※「バイオハザード7」リードVRエンジニア 高原和啓氏。関連記事は「こちら」
4Gamer:
熱いですね!
竹内氏:
そこから先は苦労の連続なんですが……。とにかくサンプルデータが足りなかったんです。VRでも気分が悪くならないように環境を改善するには,もっともっとサンプル数がいる。でも,社内だけではやっぱり足りなくて。
失礼な話かもしれないですが,E3で試遊してもらったメディアや関係者の皆さんからいただいた意見は貴重でした。「大丈夫でしたか」「どこで気分が悪くなりましたか」というのもありつつ,ソニーさんからもフィードバックをもらいつつ,だいぶ改善できたと思います。
4Gamer:
最新ビルドでは,VR酔いをほぼ感じませんでした。
竹内氏:
それは良かったです。
とはいえ,誰もが平気というわけではないでしょうから,オプションをたくさん用意しました。VRは車と同じだと思っていて,遊んでいくと慣れるけど,その前にオプションでも体験できるようにしています。
ただ,僕らとしては,最初は通常のディスプレイでプレイしていただき,次はPS VRを体験してほしいですね。VRだと新しい発見もありますから。
4Gamer:
PS VRだと「ディスプレイを見ている自分は安全」という感覚がなくなるので,距離感と密度が違いますね。
竹内氏:
ええ。VRはまったく違う体験になるので,もう1回,新鮮な気持ちで遊べると思います。2回目以降なら,恐怖もほどよくマイルドになりますからね。
1回目から「VRでやる!」という人も,もちろん止めはしないですけど,相当怖いので覚悟はしてほしいですね。
4Gamer:
右スティックで身体の向きを30度ずつ左右方向に動かす操作方法になっていますが,VR酔い対策の一環でしょうか。
竹内氏:
そうです。そのスタイルが一番酔いにくいので,デフォルトの操作になると思います。 ただ,オプションで完全にアナログ操作にも変えられます。
4Gamer:
デベロッパ間でVRコンテンツに対する情報交換は行われましたか。
ハードメーカーとは頻繁にやりとりをしましたが,ソフトメーカーとはあまりなかったですね。というのも,ネタバレ厳禁で情報を表に出さないプロモーションだったからです。情報交換ができれば良かったんですが,「7」では秘密主義を徹底していたのでタイミングが作れなかったという感じですね。
ただ,僕から見ても,VRとVRゲーミングは違うと思っているんです。いま,巷に溢れているVR体験の多くは,「大昔の活動写真で電車が向かってくる映像」を見てるようなものじゃないかと。単純に特殊な体験をして,「高い所で吊り橋を渡ったら怖かった」ということだと思うんです。
でも,僕らは「VRをゲームにしなくては」と思っています。あのデバイスを使ったゲームの有り様が,何かあるはずだと。もっとすごい可能性があるものだと感じています。
4Gamer:
いわゆるVRゲームに挑戦されたわけですが,会社の経営判断としてはどんな反応でしたか。
竹内氏:
今回,バイオハザードシリーズの続編を作るとなったときに,Co-opはない。オンラインモードはない。シングルプレイです。これまでの路線から大きく変えてホラーにします。そのうえ,誰もやったことのないVRゲームに挑戦します,ですから。普通なら,僕はクビになってもおかしくないな,と思いますよ。
もちろん,「少し落ち着きなさい。会社にとって,非常に大事な大事なIPなんだから」と怒られるのかと思ったら,本当に何も無かったんです。
辻本会長が会議の場で言われたのが「ずっとバイオを作っているんだ,彼は。バイオのプロだ。プロがやっていることを,素人はゴチャゴチャ言うな」。これを言われたら,「もう,頑張らなしゃあないな……」と(笑)。あらためてカプコンの力を感じた瞬間でしたね。
4Gamer:
カプコンイズムですね。
竹内氏:
カプコンイズムですよ(笑)。そういう風に考えて任せてくれたことで,「バイオハザード7」を完成させることができました。
プロモーションに関しても,いろいろと言われました。もっと素材を出さないとダメだとか,セオリーから反してるとか。そういうときも経営陣が理解してくれて,「ホラーゲームはネタバレ厳禁だから,そこは何とか方法を考えろ」と。皆に支えられて,このタイトルは存在するんだと思います。本当に面白い会社ですよ(笑)。
4Gamer:
確かに受注期になっても,ほとんど情報が公開されませんでした。かなりセオリーから外れていますよね。
竹内氏:
セオリーはすごく大事ですよ。これまでの経験の蓄積ですから,それが一つの形として成立している。だからこそ,それを破るということには,リスクもありますが。
でも,破らなきゃいけない瞬間があるから,セオリーだと思うんですね。破らなくていいもの,みんなが破ってるものは,セオリーとは言われません。
僕は学生時代から,ルールとはちょっと破ることにこそ,意味があると思っています。そうした意味では,セオリーを外すことに躊躇がなかったというか,逆にドキドキしながらも楽しいと感じています。
「全編PS VR対応」は手探りの中から
4Gamer:
先ほどPS VR対応について,苦労が絶えなかったというお話をされていました。開発はどのようにして進められたのでしょうか。
竹内氏:
本当に手探りでした。私もサンプルに使われましたが,開発初期の段階では午後から使い物にならなくなったり……。「頭痛い,気分悪い」と。
笑い話ではないのですが,VRを体験できるスペースにカゴが置いてあって,そこに飴と一緒に酔い止め薬が刺さっていました。薬を飲まないとできなかったときもあり,肉体的,精神的にダメージを伴う苦労でしたね。
4Gamer:
それは世に出ている文献や知見を取り入れつつ,あとはトライ&エラーを繰り返すしかないと?
竹内氏:
そうです。しかし,「VRでフルゲームを作ろう」とするようなバカが少ないんですよ(笑)。なので,その知見の数も限られていました。
「やっちゃいけない。でも,俺らはやりたいんだよ,それを」というケースが多かったので,「どうアプローチするか」となると,身をもって体験するしかなかったんです。そういった意味では,自分達の血肉になりましたね。
VRはひたすら,少し出して確認,ダメ。少し出して確認,ダメ。引いてみたら,ちょっとマシになった。ここが限界だから,次はこっちで……ということの繰り返しです。
試してみることをリスト化して,それを一個一個潰していくしかない。どれくらい効果があったかを数値化できないので,体感だけで確認していくんですよ。
4Gamer:
なるほど。VRコンテンツの開発は,通常のコンテンツの開発と並行する形で行われたのですか。
竹内氏:
ええ。だから,もう1本のゲームを作ってる感じです。
「面白いからやろう!」と始めてはみたものの,終盤になってエライことを始めてしまったなと(苦笑)。それでも,よく最後の最後に間に合わせて形にしてくれたと思います。
4Gamer:
グラフィックスに関しても,実際のモデルを作って,それをスキャンして,そこから調整する手法(フォトグラメトリー)を取り入れていますね。
竹内氏:
ゲームのクリエイターやCGデザイナーは,自分のデザイナーとしての作業が入らないことをすごく嫌がります。やはり自分の手で作ったものに愛着が湧きますから。
フォトグラメトリーという手法は,そういうものを全部捨ててしまう感じで,ある種,残酷な判断だったとは思います。ただ,まだどこも着手していませんでしたが,将来的にはこの作り方じゃないと通じなくなるだろうとは思っていました。
もう,大号令ですよね。「今回は手作業でキャラクターを作ることはない」と。皆の仕事が180度変わったわけです。役者さんの顔を見て,キャラクターの誰が似てるのか。どんなイメージが合うのか。衣装についても,デザインはこうなっているけど,実際の衣装にするとおかしいから直さなくては,ということになります。
ただ,幸いにも「バイオハザード7」チームには新しいことが大好きなメンバーを集めたので,すぐに「やろう!」と。一気に作り方が変わりましたね。
CEDECでスタッフが講演を行いましたが,とあるゲーム開発者が「バイオハザードはどえらいことをやらかした」と言っていたそうです。「『バイオハザード7』の前と後では,ゲームの作り方が変わった,と言われかねないよ」という言葉をいただいて,ニヤリとしたんですけど(笑)。
4Gamer:
AAAタイトルに関しては,今回の手法を追随してくる可能性は高いでしょうね。
竹内氏:
おそらくライバルがいっぱい出てくると思いますが,とりあえずスタートは「バイオハザード7」ということで(笑)。
「バイオハザード7」では,新たな内製ゲームエンジン「RE ENGINE」を作られました。これも「バイオハザード7」のコンセプトを実現するために必要だったということですか。
竹内氏:
そうです。
今回,新しいゲームエンジンを作るにあたって,1つは「現行機のゲーム開発に適したエンジンを作る」ということがありました。実はこれに関して,カプコンはちょっと出遅れたので,しっかり作らなくてはいけないと。「これを手に入れないと,グローバルでなんか戦えないぞ」という危機感がありました。
そのために,どこをゴールに設定するかというときに,おっしゃったとおり,弊社のグローバルタイトルである「バイオハザード」をいかに作りやすく,ハイクオリティで作れるエンジンにするか。
この2つを重視して,開発に着手しました。
4Gamer:
カプコンでは,ほかにも現行機向けのゲームエンジン制作が進んでいましたよね。
竹内氏:
そちらのエンジンは,さまざまなシステムの良いところを持っていけば,良いエンジンになるだろうという思想でしたが,逆に現行機でも扱い切れないくらい重厚な仕様になってしまったんですね。その反省を生かして,RE ENGINEではいろいろな意見やノウハウ,やりたいことを集めて,エンジン設計者が判断して作りました。
僕はゲームエンジンというのは,ゲームエンジンの思想に則って,使い手側が使っていくもの,と考えています。「誰もが使いやすいように」という思想では,逆にいけないと。
だから,「MT Framework」を作ってくれた石田※に「キミの好きなゲームエンジンを作ってくれ」と言いました。「誰よりもカプコンの開発を知っていて,俺らがやらなきゃいけないこと,足りないことも分かっている。一切,口を出さないから,好きなエンジンを作ってくれ」というのがスタートでした。
※プログラマー 石田智史氏。関連記事は「こちら」
4Gamer:
念のため,確認させてください。ゲームエンジンに必要なものは,多機能であったり,ハイパフォーマンスであるということも大事だけど,それよりも思想が大事であると。
竹内氏:
そのとおりです。
4Gamer:
現場がやりたいことを実現してくれるものなのか,ということですか。
それは機能として必須だと思っています。
まずは思想です。どういう思想でゲームエンジンを作るのか,それが定まってないと,よく分からないものになってしまいますね。誰のためなのか,分からないものが,どうしてもできあがってしまう。
いろいろな人が寄ってたかって決めた思想では,よくありません。誰か1人の思想を根っこに引かないと,その思想を持ったエンジンにはならないんです。あくまで私の持論ですが,それがないと逆に使いにくい。
僕は「Mac OS」が大好きなんですが,Mac OSは思想を持っています。「こう使え」感がすごい。一度,その思想を捕まえると,バージョンアップしても思想が変わらない限り,使い続けられますよね。これは,僕らがエンジンなり,OSなりに合わせていると言えますが,道具とは多かれ少なかれ,そういう側面があると思います。
4Gamer:
なるほど。思想には「人を選ぶ」というデメリットもありますね。
竹内氏:
もちろん,あると思います。
「Mac OSなんか,勘弁ならない!」という方もおられるでしょう。これはもう,仕方がないことなんです。道具である以上,それにバリエーションを求めるのは,ごく当たり前のことです。Windowsがあり,Macがあり,Linuxがあるというのは,それがそもそもの原点ですしね。
たった一つの思想,究極の思想に則ればいいのであれば,OSメーカーも自動車メーカーも1社でいいはずなんです。
だから,「カプコンの思想はこうだ」というのが必要だと思ったということです。そして,とりあえず第一開発の「バイオハザード」チームが作るエンジンの思想は,石田がエンジンに込めてくれました。僕としては,RE ENGINEを非常に気に入っています。
4Gamer:
今後,カプコンの全タイトルにRE ENGINEが使われる,という計画ではないと。
竹内氏:
多くのタイトルで使われることにはなると思います。汎用性はしっかりと持っていますので。少なくとも,僕ら「バイオハザード」チームや第一開発はRE ENGINEで今後も開発していくことになります。海外では発表済みの次回作もRE ENGINEで開発していますよ。
4Gamer:
おお! 「バイオハザード2」のリメイク作品ですね。そういえば,国内向けに発表されていませんが,何か理由があるのでしょうか。
竹内氏:
深い意味はありませんが,「2」のリメイクに対する声が海外では熱狂的でしたので,まずはプロデューサーから回答しようということです。まだ「ちゃんと作っています」としか,お伝えしていませんけどね。
状況が整えば,ちゃんと発表させていただきます。……期待してもらっていいと思います(笑)。
4Gamer:
それは楽しみです。
竹内氏:
でも,だいぶ先ですよ。
まずは「バイオハザード7」です。非常に挑戦的なタイトルと感じられるかと思いますが,何にチャレンジしているかと言うと,皆さんがよくご存じのサバイバルホラーです。あらためて2017年のサバイバルホラーを体験してもらおう,そのことに僕らは必死になって開発してきました。そして,結果的に自信のあるタイトルになりました。
「バイオハザードらしくないのでは?」という意見も耳にしています。心配されてるかもしれませんが,2017年の「バイオハザード」を冠するに値する体験を提供できるタイトルです。使い古された言葉になってしまいますが,安心してください。「バイオハザード」です。ぜひ遊んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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