インタビュー
“なんだか雰囲気がいい”PVはこうして作られた。「CARAVAN STORIES」の映像演出を手がけるキーマンに聞く,絵作りへのこだわり
詳しいゲーム内容が明かされていないながらも,PVでその世界の一端を垣間見たゲームファンからは「雰囲気がいい」「世界観がいい」という多くの声が上がっていた。それは,スマホ向けタイトルのPVというよりも,どこかコンシューマ機向けの本格派なRPGを彷彿とさせる,“どこかいい雰囲気”“映像演出に対する真剣さ”を感じ取ったからではないだろうか。
今回のインタビューでは,PVやゲーム内のカットシーン,シネマティック(ムービー)の映像演出について,ILCAの笹原和也氏,Aimingの久保貴美氏と細川勇気氏に話を聞いてきた。
「CARAVAN STORIES」公式サイト
4Gamer内の「CARAVAN STORIES」
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出会いは「ベルアイル」? いいえ,ジャズダンスです
本日はよろしくお願いします。「CARAVAN STORIES」は詳しいゲーム内容が公開される前から,第1弾PVを目にしたゲームファンから「雰囲気や世界観がいい」と早くも評価されています。これはイラストや映像作品の品質が高いからこその注目のされ方だと感じています。
笹原和也氏(以下,笹原氏):
ありがとうございます。
4Gamer:
前回はアート周りのインタビューをさせてもらったので,今回は多くの注目を集めたPVや,映像演出のお話を聞かせてください。まず,みなさんが本作でどういった役割を担っているかを教えていただけますか。
久保貴美氏(以下,久保氏):
チーム全体を取り仕切るマネージャーと,アート周りの監修をするアートディレクターです。以前のインタビューで高屋敷(※プロデューサーの高屋敷 哲氏)も話していましたが,プロジェクトが走り始めたときは8人だけの少数精鋭で制作を進めていたので,初期の頃はチームの土台作りをしていました。今はプロジェクトの規模が大きくなって人数も増えましたので,監修,まとめ役として動くことが多いです。
細川勇気氏(以下,細川氏):
本来は背景デザイナーではあるのですが,「幻塔戦記 グリフォン 〜新章〜」(iOS / Android)からデザイナーとしてプロジェクトに参加している初期メンバーの1人なので,これまでの経験を活かしながらテクニカルアーティストというポジションでチームのサポートをしています。現場で新しい機能が求められたときや技術的なサポートが必要となった際の相談,橋渡し役です。
僕はPVやゲーム内のカットシーン,シネマティックといった,あらゆるゲーム内演出の監修・取り仕切りをしています。適切な肩書きがないのですが,あえてつけるとしたらゲーム演出ディレクターといったところでしょうか。プロジェクトが始まったばかりの頃は僕自身もカットシーン周りの制作をしていましたが,今はチームのメンバーに任せて,監修を主にしています。
久保氏:
最初の頃はメンバーが少ないうえに,ゲームの演出を手掛けるスタッフもいなくて,かねてから交流があった笹原さんにお声がけしました。今でこそ十数人の演出スタッフがいますけど,笹原さんにUnityを覚えていただくところから始まって,数か月のあいだにチームの土台も作っていただきました。
4Gamer:
Unityを覚えながら,スタッフを増員するまでの土台作りを短期間で行ったわけですね。
久保氏:
演出に力を入れ始めるのが遅くなってしまって,本格的に動き出したのは今年に入ってからでした。それまで準備は進めていたものの,実際に手を動かす人が加わったことでグッとスピードが上がりました。
4Gamer:
笹原さんといえば,これまでCG映画の脚本/監督や,「ドラッグ オン ドラグーン」「ベルアイル」「プロジェクト シルフィード」といったゲームのムービーディレクションに関わってこられました。これまで手掛けてきた作品を見るとゲーム畑のものが多い印象ですが,ゲームがお好きだったり?
笹原氏:
ゲームはそこまでやらないんですが……これまで遊んだものといえば「ウルティマ オンライン」とかメタルギアシリーズ,あとはRTSものですかね。
4Gamer:
けっこうコアな路線のものを遊んでいるじゃないですか(笑)。
笹原氏:
ああ,ほんとだ(笑)。仕事的にはゲームが好きだから関わっているというよりも,ゲームの映像作りが僕のやりたいことに近いからという理由が大きいです。CGによる映像作品を作りたい身としては,ゲーム畑はそれに近いことを実現できる場所だったりします。ゲームムービーはリアルな作風のCGであっても,みなさん喜んで見てくれてうれしいんです。
4Gamer:
ゲームだからこそ実現できる見せ方や表現もありますよね。これまでの代表作を見て気付いたのですが,笹原さんが本作に関わるきっかけとなったのは,久保さんも開発に参加されていた「ベルアイル」でしょうか?
笹原氏:
じつは,違うんですよ。
久保氏:
「ベルアイル」はCBTで1度閉じたあとに作り直しをしたんですが,私はその段階でアートディレクターとして呼ばれたので,それ以前の段階でムービーを制作していた笹原さんとは接点がなかったんです。
4Gamer:
では,「CARAVAN STORIES」に加わるきっかけというのは……。
笹原氏:
久保さんとはジャズダンス友達で,その縁で声をかけてもらって現在に至ります。
4Gamer:
まさかのダンスつながり。
偶然が重なって(笑)。
4Gamer:
久保さんと細川さんが開発に加わったのは「幻塔戦記 グリフォン 〜新章〜」から引き続きという形ですよね。
久保氏:
じつはもっと前からのつながりだったりします。チームの初期メンバーは,「幻塔戦記 グリフォン 〜新章〜」のベースを作った仲間であるとともに,もともとヘッドロックでオンラインゲームを作っていたスタッフなんです。アートメンバーに関しては「Wizardry Online」の開発スタッフもいて,そのメンバー達で「幻塔戦記 グリフォン 〜新章〜」の基盤を作り,そのベースを使って「CARAVAN STORIES」を制作しています。
4Gamer:
グリフォンチームというよりも,長い付き合いの戦友達が集ったチームだったんですね。
モーションキャプチャよりも自然なアニメーションを
誰でも映画的なシーンを作成できる環境作り
4Gamer:
笹原さんは映像やモーションの演出の監修をされていらっしゃいますが,本作では具体的にどういった手法でカットシーンやムービーを制作されているのでしょうか。モーションキャプチャの使用が一般的だとは思いますが。
笹原氏:
PV第1弾といくつかのカットシーンではモーションキャプチャを使用していましたが,現在は役者さんが演技している映像を参考に,手作業でアニメーションを付けて,歩きや走りといった動きでは既存のゲームモーションも使用しています。
4Gamer:
動画をもとにツール上で起こすとなると作業工程や手間が増えそうですが,なぜ手付けによるアニメーションにこだわったのでしょう。
笹原氏:
キャプチャしたモーションとゲームモーションではデータの持ち方に違いがあって併用が難しかったんです。それに,モーションキャプチャによる役者さんそのままの動きよりも,ある程度の誇張を手で加えたほうがゲームの雰囲気に合っているんじゃないかと。そういった状況を鑑みて,役者さんの演技を参考に手作業でアニメーションを付けるべきだと判断しました。
4Gamer:
より自然に,違和感のないモーションを目指すための選択だったんですね。役者さんのムービーを見ると,動きだけではなく表情や空気感からも“芝居”をしている様子が伝わってきます。
笹原氏:
表情のアニメーションも撮影した映像をもとに制作しているので,役者さんには「顔芸」になるぐらい表情豊かに演技していただいています。表情のアニメーション付けに慣れているアニメーターさんがあまりいないのと,僕自身もどんな表情がどのような顔の動きをするのか想像しづらく,演技指導が難しかったんです。しかし,撮影した動画があれば作業自体は単純なので経験がない人でも表情アニメーションが付けやすくなるんです。これは,この手法で制作するメリットの1つですね。
4Gamer:
これまで開催された先行体験会やキャラストTVの放送をチェックして,キャラクターの表情やアニメーションが作り込まれている印象を受けたのですが,現状でキャラクターの表情は何パターンほどあるのでしょうか。
笹原氏:
キャラクターの重要度によってバラツキはありますけど,1体につき60パターン近くは作成しています。ゲームに200体登場する予定だったりするので,先のことを考えるとちょっと気が遠くなりますね(笑)。
4Gamer:
おお,単純に計算しただけでも1万2000パターン……。表情だけではなくキャラクターごとに動きの違いも出されますよね。たとえば,種族ごとに動きの変化を付けていたり。
笹原氏:
たしかにオークであれば荒々しい動きを付けてますね。キャラクター性を重視しているので,種族というよりもキャラクターごとに動きの特徴を持たせていて,ヒューマンの物語で仲間になるフォルクであれば,気弱な性格なので尻餅をつかせています。特徴も大切ですけど,動きからそのときの感情が伝わるようにキャラクターの演技を入れることも意識しています。
4Gamer:
カットシーンの動きに注目してみると,キャラクターがただ立ったまま話しているシーンはあまりないですよね。腕を上げる,ジャンプするなど,何かしらアクションをしている。
笹原氏:
僕自身が,ただ立ったまましゃべらせるのが好きじゃなくて。自分が会話するときのことをイメージしてほしいんですけど,話すときって髪を触ったり,指を動かしたり,足を動かしてみたり,何かしらしているもので。そういった動作をモーションに組み込むことでリアリティが生まれ,プレイヤーも感情移入しやすくなると僕は思うんです。まぁ,どこまでやっていいものかはいつも悩むところなんですけどね(笑)。
4Gamer:
あまりモーションを付けすぎてしまうと作業量もその分増えてしまいますし,キャラクターが動きすぎているとうるさくなってしまう。たしかに悩みどころです。ちなみに,カットシーンごとにCARAVANチームからの表情や動きの指定ってあるんですか。
笹原氏:
事前にシナリオのテキストをもらいますが,書いてあるのはキャラクターの台詞と状況を補完するト書きだけで,前後の台詞からその場面を演出するにはどういった動きや表情が必要になるか,イメージを膨らませていきます。
手順としては,ベースのシナリオを高屋敷が組み立てて,それをもとにシナリオライターがト書きと台詞を起こします。その部分的なパーツがゲームの中に組みこまれ,どこをカットシーンにするか,またはシネマティックにするか振り分けてから,笹原さんにお渡しする流れになっています。
演出の面ではこうしてああしてと要望を飛ばすことはないですが,重要なシーンと通常のシーンで作り方を変えてもらうことはあります。
細川氏:
時間とリソースは限られているものなので,その中で何を重要視するかはゲーム作りにおいて重要ですからね。
久保氏:
それに,印象に残ってほしいシーンを際立たせるためにも。
4Gamer:
ということは,作業の工程としてはシナリオのベースから台詞が起こされ,台詞をもとに構成を練り,役者さんの動きをムービーで撮影し,その後ツールで起こす作業へと移るイメージですかね。
笹原氏:
そうですね,絵コンテの工程がないので,撮影された演技がカットシーン作成の軸になる一般的ではないやり方です(笑)。
撮影した動画をアニメーターさんに渡した後は,動画を元にUnityとMayaを使ってざっくりとしたアニメーションを組み立てて,カメラワークを設定していきます。どこにカメラを置くかが決まったら,そのカメラ上で見えるところのアニメーションの精度を上げていく。そんなイメージです。
久保氏:
工程を1段階踏まなければならないので,モーションキャプチャに比べるとちょっと手間はかかってしまいます。
笹原氏:
ただ,いいところもあって,すでにあるモーションと組み合わせてザックリとしたアニメーションが作りやすいんです。カットシーンツール(カットシーンを作る機能)での作業がちょっと面倒なだけで,一般的なCGソフトと同等の表現力があるのは魅力的だと思います。
4Gamer:
そういった工程の中で,細川さんが関わってくるパートというのは?
笹原氏:
主に困ったときに登場してもらいます。
(一同:笑)
細川氏:
Maya上でキャラクターのアニメーションを作っても,そのままゲームに反映できないもので,そういった再現が難しいものにスタッフがぶつかったときに調整をする役回りですから。
Maya上では,右手にあるアイテムを左手に持ち替える動作を簡単にこなしていても,Unity上ではすんなり再現できないケースが意外と多いんです。
笹原氏:
テクニカルな部分でいつも助けてもらっています。
4Gamer:
便利屋といいますか,かけ込み寺のような存在なんですね。
笹原氏:
キャラクターの表情付けも,最初はうまいことキャラクターにのらなくて苦労しました。
細川氏:
演出に力を入れるまでは,ゲーム内のコンテンツを制作して実装するターンだったので,細かな作り込みに関連する機能がツールに実装されていませんでした。なので,開発と並行してツールの機能実装を行っています。
笹原氏:
キャラクターの表情を演出するうえで重要な視線制御機能とかを作ってもらいました!
4Gamer:
カットシーンを見て気付きましたが,独特の揺れのようなものがありますよね。これは意図して付けられたものなんですか。
笹原氏:
ええ,お気付きになりましたか。
スタッフ達に作業に入ってもらうにあたり「画角は狭くする,カメラの位置は動かさない,カメラターゲット(カメラの視点)は揺らす」といった,いくつかの作業ルールを決めています。
カメラワークはある程度の定石があるものですので,カメラワークやアニメーション作成時のルールをスタッフに共有して,そのルールの中でどういった見せ方にするかを考えてもらっています。
4Gamer:
注目するシーンで視点が揺れていることが多かったので,こだわりのポイントなのかとじつは気になっていました。
笹原氏:
画面の揺れから臨場感を感じてもらえたらなと。
あとは,カメラ位置をなるべく動かさないのもポイントです。キャラクターが移動しているシーンでカメラ位置も動かしてしまうと,背景に対するキャラクターの位置関係があやふやになってしまい,前後どちらに進んでいるかが分からなくなることがあります。なので,大きな意図がない限りは,カメラを動かさないのが鉄則です。
これまでのCG映像制作で培った知識をこのルールの中に詰めこんだので,このルールに沿ってカメラワークを考えれば,誰でも映画的な演出をできるようになると思いますよ。
4Gamer:
そのノウハウが活きているからこそ,PVやカットシーンを見たときにゲームというよりも映像作品に近い印象になるんですね。
笹原氏:
そういった印象の違いを感じていただけるのはうれしいことです。
一般的なゲームムービーは画角を広くする傾向があるので,あえて画角を狭くすることで差別化をはかっています。ただ,画角を狭くする手法は背景が大きく見えてしまういわば諸刃の剣でもあり,グラフィックスの密度が高くなければ耐えられません。リッチなグラフィックスを目指す「CARAVAN STORIES」だからこそ実現できたとも言えます。
手作業だからこその熱を感じてほしい
PV第2弾がいよいよ公開
4Gamer:
「なんだか雰囲気がいい」と話題になったPV制作についてもお聞きしたいのですが,PVを制作されていた時期は,当然ですが公開よりもかなり前ですよね。
笹原氏:
僕が1月31日に制作に参加したので,公開の3〜4か月前からですね。
4Gamer:
となると,ゲームの中にすべての要素が出そろっていない状態だったのではないでしょうか。Unityを覚えつつ,ツールの機能拡充も並行して行われたことを考えると,制作としてはかなり大変だったのではないかと……。
笹原氏:
表情を付けられないところから始まったのはたしかに大変でしたね。
そのほかにも,登場予定のキャラクターが動かせる状態になってないものがいくつかあったり,オーク族のメラが魔法使いかどうかも分からず格闘モーションをとらせていたり,ボグスも格闘系なのかと思いきや,あとから木こりだったことが発覚してオノを持ったモーションに変更したり……そんな状態でした(笑)。
久保氏:
PVの制作にはゲーム内のリソースとカットシーンツールを使ってムービーとして構成してもらっているので,作り込みが進んでいない箇所もあって苦労されたと思います……。
笹原氏:
キャラクターが走っているところはゲーム内のモーションを,お芝居や街中のシーンはモーションキャプチャを元にした動きを使用しています。
ゲーム内のカットシーンツールを利用して映像を作成し,それをキャプチャしてムービー化しています。PVで使用されたほとんどのシーンは,実際にカットシーンとして再生できるようになっているんですよ。
4Gamer:
音楽もコーラスによって壮大な世界観を演出していますが,このBGMもベイシスケイプが手掛けたものでしょうか。
久保氏:
そうですね。ゲーム内のBGMはベイシスケイプさんに制作していただいているので,PVにもその曲を使用しています。まず笹原さんに作っていただいた映像に使用したい曲を仮で置いていき,長さなどをベイシスケイプさんに調整してもらっています。
笹原氏:
1曲のBGMとなるよう,PV用に作り直していただきました。
4Gamer:
ここまでのお話を聞くかぎり,かなり手が込んでいますね。ところで,PV第1弾はどういったイメージで制作されたのでしょう。
笹原氏:
エニグマ襲来前の日常のシーンと,各地のヒーロー達が集結するシーンを描いています。
久保氏:
2017年2月に最初のプレビズ版ができていて,その時点でもう大まかな流れや構図が分かるようになっていましたよね。マップやモーションがないところも多々ありましたけど。
笹原氏:
2月と言われると結構前のことのように感じるんですが,そこからアニメーション付けの作業も並行して進めていたので,公開の直前までPVの調整はしていましたよ。
インタビューに同席していた高屋敷氏:
最後の1日が大変でしたね。
笹原氏:
ああ,公開の前日までロンヴァルドが剣を抜き身で背中にさしていて,高屋敷さんが直したいと。
4Gamer:
ええ!?
笹原氏:
僕もPVを作りながら変だとは思っていたんですけど(笑)。共同作業の難しいところで,ほかの担当者が作ってOKしたものを「これ変ですよね」と聞くのも失礼となるわけで。
4Gamer:
見て見ぬふりをしていたら,前日に大変なことになってしまったパターンですね(笑)。
そして,待望のPV第2弾が公開となりましたが,どういったシーンが描かれているのでしょうか。
笹原氏:
ポルカによる長めの歴史語りと,PV第1弾で集ったヒーロー達によるレイド戦のシーンですね。戦闘シーンは,キャラクターそれぞれの役割を見せる構成で,前衛・後衛に分かれて戦う様子や,後方からキャラバンが援護射撃するシーンを入れています。
冒頭部分は,くるっと回ったり,ジャンプしたり,なるべく動きを多く入れたりして,飽きさせないよう意識しています。背景の遺跡っぽいレリーフも,手間をかけて作っていますので,ぜひ細部まで見てあげてください!(笑)
4Gamer:
歴史語りのシーンは長尺でかなり作り込まれているように感じますが,ゲーム内でもこのムービーが流れたりは……?
久保氏:
いえ,これはPV限定です。このためにボイスも収録しています。
4Gamer:
ここだけでしか見られない「CARAVAN STORIES」の世界ということですね。インタビューのまとめとしてお聞きしたいのですが,こういったPVやカットシーンを制作するうえで大切にされていることはありますか。
笹原氏:
ムービーが始まる前のストーリーですね。PVでは3秒のシーンであっても10秒分のお芝居を用意しています。
たとえば,特殊部隊が双眼鏡でのぞくと人質が暴行されているシーンがあったとします。映画やドラマでよくあるシーンですが,何時間も拘束されているのに,のぞいたときにたまたま暴行されているっておかしいと思うんです。そこに至るシチュエーションがあるはずですし,そのシチュエーションから立ち位置や方法が導き出される。それが結果的に映像にリアリティを生むと思うんです。
4Gamer:
だからこそ,たった3秒のシーンであってもそこに至るまでの過程を作っておきたいということですね。では,クリエイターとして意識されていることはありますか。
笹原氏:
意識していることはとくにありませんが,しいてあげるとすれば,自分で体を動かすことが大切だと感じています。ダンスを習っている理由の1つでもありますけど,作って欲しい動きを説明するときに,自分が動いて表現できれば話が早いじゃないですか。
久保氏:
たしかに。ジャズダンスを始めてからは,動きをイメージしやすくなりましたし,演技をする人の気持ちがより分かるようになりました。
4Gamer:
イメージの共有や表現方法の1つとして役立つと。久保さんはそのほかに意識されていることはありますか。
久保氏:
自分自身で心がけていることは,どんなに忙しくても仕事以外の時間に絵を描くようにしています。自己満足では終わらせずに,人に見られるものであると意識することが重要だと感じています。
4Gamer:
細川さんはいかがでしょう?
細川氏:
僕は子供の頃ゲームから受けた感動や,感情の揺さぶりといった感覚を大切にしています。「ドラゴンクエストII」で長い洞窟を抜け雪原が広がった瞬間,ドットで表現されているにもかかわらず,感動や恐ろしさといった感情がこみ上げてきたことを今でも覚えています。なので,自分が作るゲームでも遊び手にそういった感情の揺さぶりを与えたいと思いながら,いつも制作をしています。
4Gamer:
最後に,配信を心待ちにしているファンに向けてコメントをお願いします。
笹原氏:
「NieR:Automata」の反響を見て,ゲーム自体の面白さだけではなくてキャラクターの魅力も重要だとあらためて感じました。そのキャラクターの魅力を演出するパートを僕が担っているので,与えられた仕事を120%頑張ります! みなさん楽しみにしていてください。世界一!
久保氏:
クオリティの高いグラフィックスだとみなさんに言っていただいていますが,スタッフ一同ものすごく恐縮していて,デザイナー達はみんな「まだ調整途中なのに……!」と思っているはずです。開発の後半でさらにグラフィックスのクオリティを上げていくので,それを楽しみにしていてください。
細川氏:
ゲームもPVも非常に短い時間で作っていて,出来上がるまでにいろいろな人の苦労が重なったものだったりします。自動ツールを導入すれば効率化を図れるかもしれませんが,それだとクリエイターの熱や想いがなかなか入っていきません。作り手の熱を込めながら手作りで開発していますので,このゲームがどんな風に作られて,どんな想いが詰まっているのか,遊ぶときに感じとってもらえたらうれしいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
――2017年7月19日収録。
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