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新作TRPG「コロッサルハンター」が発表された「ドラゴンブックTRPG祭 秋フェス」レポート。「巨獣×立体戦闘」がテーマのインコグ・ラボ最新作が登場
発表されたのは,「巨獣討伐RPG」と銘打たれた「コロッサルハンター」で,「常夜国騎士譚RPG ドラクルージュ」でおなじみのインコグ・ラボがゲームデザインを担当。発売日は12月20日,価格は1728円(税込)を予定している。
人類の天敵たる超巨大生物を相手に,立体的な戦闘が繰り広げられるという「コロッサルハンター」は,いったいどんなゲームなのか? 新作発表会に先んじて開催されたメディア向けの体験会の模様から,本作のコンセプトに迫ってみよう。
富士見書房公式「TRPG ONLINE」
武装と移動の組み合わせによるキャラクターメイク
体験会では,本作のゲームデザイナーである備前伸光氏がGM(ゲームマスター)を担当。まず,本作の世界観についての説明が行われた。
ゲームの舞台となるのは,突如として出現した巨獣生物「コロッサル」によって,人類が滅ぼされかけている近未来。
備前氏によれば,このコロッサルとは「世界を造り替える意志」によって生まれた生物で,人間や人工物を「マテリアル」化し,それを用いて新しい自然を造り出しているのだという。これに対抗し,人類の「生存圏」を広げることが,プレイヤーを含めた人類全体の目標だ。
本作でプレイヤーがロールする「ハンター」は,コロッサルによるマテリアル化の影響で,脳だけが「コア」(コロッサルを司る中枢のようなもの)化した人間だという。言うなればコロッサルと人間の中間のような存在で,たとえ体の一部が欠損しても,マテリアルを使った再構築=「リクラフト」によって修復が可能なのだとか。
普通の人間や人工物は,コロッサルに近づくだけでマテリアル化してしまうため,人類が持つ兵器はいっさい通用しない。自前で武器をリクラフトできるハンターだけが,コロッサルと戦える数少ない人間達というわけだ。
本作のキャラクターメイキングにおいて,ゲーム中にもっとも大きく影響するのは,「武装スタイル」と「移動スタイル」の2つだ。今回はお試しプレイということで,プレイヤー達が演じるハンターは,あらかじめ用意されたキャラクターの中から選んだが,実際は好きな組み合わせを選べるという。
武装スタイル(全8種類・今回判明したのは5種類)
- リィンフォース:接近しての打撃による直接攻撃を得意とする。
- バレッジファイア:広範囲に弾をばらまく制圧射撃。
- デトネイション:爆発物をあつかう。
- スナイプ:遠距離からの射撃。
- スラッシュ:剣などによる斬撃スタイル。
移動スタイル(全5種類)
- パルクーラー:コロッサルの外殻に乗ったり,張り付いたりしながら移動するスタイル。
- ワイヤマスター:ワイヤを使って移動する。
- クラフター:リクラフトで足場を作りながら移動する。
- ライダー:自身が使役する動物(馬など)に乗って移動する。
- ブースター:ブースターを使って,飛びながら移動する。
立体的な戦闘がウリと聞いていたので,筆者はデトネイション×クラフターの組み合わせを持つキャラクターを選択した。筆者とパーティを組むほかのプレイヤー2名は,それぞれバレッジファイア×ワイヤマスター,リィンフォース×パルクーラーをそれぞれ選び,ゲームスタートとなった。
「バレッジファイア×ワイヤマスター」のイメージイラスト。左手から伸びている3本の透明な線がワイヤのようだ |
「リィンフォース×パルクーラー」のイメージイラスト。直接打撃といっても,このような杭打ち機っぽい武器なども使うらしい |
キャラクターメイキングは前述の武装&移動スタイルのほかに,専門能力や過去,プレシャス(愛着のあるアイテムなど。「人間性」のパラメータに関わる)などを決めれば完成だ。いずれもダイスを振って出た目のチャートに従って決定する方式なので,それほど時間はかからない。なお,本作で使用するダイスは,行為判定も含めてすべて6面体ダイス(以下,D6)となる。
パラレルに展開するストーリー部分
今回のセッションの舞台となるのは,「ベース」と呼ばれる復興村の1つ「オオイマチベース」だ。この世界は大まかに,人間が安全に暮らせる「ホーム」,コロッサルによって人工物が自然に造り替えられた「ゾーン」,ホームの範囲を広げるべく,ゾーン近くで開拓する「ベース」の3つに分かれている。プレイヤーが演じるハンター達は,この「ベース」のリーダー兼用心棒という形で,コロッサルの脅威から人々を守る役を担っているという。
本作のストーリー進行には,「イベントマップ」というシートが用いられる。
これは,シナリオ中に発生可能なイベントをまとめたもので,プレイヤーはどれをこなすのか任意で選択できる。各イベントには「プライズ」が設定され,イベントを成功させるとコロッサルとの最終戦闘でプレイヤーが有利になる報酬をもらえる仕組みだ。そうなるとすべて発生させたくなるところだが,残念ながら時間制限がある。今回参加者に与えられたのは,全プレイヤーが3回ずつ行動できる「3ピリオド」分の時間である。
イベントは誰か1人が行けば発生させられるうえに,「ハンターライン(HL)」と呼ばれる念話のような能力により,その場にいないハンターも当事者を応援したり,特殊能力を貸したりできる。行為判定は基本,1人が行うというルールもあり,筆者達は効率を考えて3人がバラバラに行動し,イベントを並行して発生させることにした。
発生したイベントの解決は,3D6(3つのD6の合計値)の成否判定によって行われる。それぞれのイベントは,錯乱している村人を落ち着かせてコロッサルについての情報を聞き出したり,家畜が逃げ出した原因を調べることで,事件の真相に迫るといった内容で,成功すれば,報酬としてさまざまなプライズが入手できる。
成否判定は,前述のハンターラインを使ったほかプレイヤーの応援や,特殊能力の貸与などでブーストも可能。ただし,出目が5以下の場合はファンブル(=失敗)となり,達成値が16以上の場合(ちなみに今回のシナリオでの目標値はすべて11だった)はクリティカル(=大成功)となる。これは後の戦闘などにも共通する判定ルールである。
筆者達は,「(1)行方不明」「(2)地形調査」「(3)かつて見たコロッサル」の各イベントに挑戦し,結果はすべて成功となった。プライズとしてマテリアルの結晶や,溜めると,主に戦闘で役立つボーナスを得られる「復興ポイント」を獲得し,イベントの(6)と(7)が新たにアンロックされた。
全員が1回ずつ行動し,1ピリオドが経過。続いて始まった2ピリオド目では,「(5)大量の獲物」と「(6)」「(7)」のイベントに挑戦する。ちなみに(6)と(7)にイベント名がないのは,アンロックされて初めて書き込まれる仕組みのためだ。
(6)に成功して復興ポイントが3まで溜まった筆者達は,来るべき決戦に備えて「全員のAP+1」というプライズを得る。APは戦闘時にまた詳しく解説するが,これによって1ターン内に行える行動に幅が出るようになる。
さらに(6)と(7)をこなしたことで,今現在ハンターがいるオオイマチベースで起きている異変の原因が,土中に眠るケルベロス型のコロッサルであることが判明。物語が大きな盛り上がりを見せたところで,あえて(5)はこなさずに全員で(8)を発生させ,コロッサルとの決戦に挑むことにした。
ベストな位置取りを探して展開する「立体戦闘」
巨大なコロッサルとの戦闘では,「高度」や「前面・背面」といった要素があるため,敵味方の位置関係を把握しやすくするべく,専用のシートが用いられる。今回はケルベロス型のコロッサルということで,その外観イメージラフとともに,高度や攻撃可能部位を記したマス目が記入されたシートが用意された。
まず,本作の戦闘ルールを簡単に解説しよう。
シートに書かれた1-1〜4-8までのマス目は,ハンターが移動可能な場所を表している。各マスのチェックボックスに入ったマークは,そこが地上かどうかを意味していて,今回の場合は左の数字が1なら地上,2以上なら空中という扱いである。なお,筆者が担当したクラフターの能力を使えば,空中に地上扱いの足場を作ることができ,これによって地上専用の攻撃スキルを使用可能にできる。そうした場合は,後からここにチェックを入れることもある。
移動時に使用する移動スキルはキャラクターの移動スタイルごとに異なるが,そのカテゴリーはおおむね「隣接」「上下」「裏」「水平」の4種に分類される。
- 「隣接」:文字どおり,上下前後左右の隣り合うエリアへの移動。
- 「上下」:現在いるエリアの上または下方向への移動。
- 「水平」:同一高度で隣接エリアへの移動。
- 「裏」:同一高度で隣接以外のエリアへの移動。
ちなみに筆者が担当したクラフターの移動スタイルは,「隣接」「上下」がメインの移動方法だったが,備前氏によると「裏」へ抜けることを得意とするスタイルもあるとのこと。
専用シートにある「頭中央」「胸」「右前脚」といった記述は,コロッサルに対して攻撃可能な部位を示している。コロッサルには弱点があり,すべての部位を撃破しなくても倒せるのだが,攻撃を担当する部位,弱点をガードするための部位などがあるので,どの順番で攻撃するかを考えなくてはならない。
今回のケルベロス型コロッサルの弱点は胸だったが,そこを壊そうとしても,頭中央と頭左,尾,左前脚,右前脚がガードしてしまうので,まずは,これらの邪魔な部位を撃破することが,我々ハンター達の目標となった。
実際の戦闘では,事前の調査で敵の最初の攻撃が頭左から行われることを掴んでいたので,そこを攻撃しやすい1-8に陣取ることにした。頭左を潰してしまえば,それを防げるだろうという算段だ。
本命の攻撃とは別に発生するコロッサル側の「牽制攻撃」を紙一重でかわすといった波乱はあったものの,相手の体をよじ登りつつ,この撃破に成功。さらに炸裂ダメージによって隣接部位にもダメージを与える。隣接部位は都合良く弱点である胸で,わずかにその外殻を削り取ることができた。ちなみにこの外殻を破壊すると,ガード部位が発動するようになる。ともあれ,相手の攻撃前に頭左を潰したので,このターンの相手攻撃はキャンセルすることができた。順調順調。
1ターン目の攻撃が首尾良く成功したことを受け,2ターン目も頭を狙って全力攻撃し,3つの頭をすべて叩くことにした。見事3つとも撃破に成功し,またしても頭による攻撃を狙っていたコロッサルは,このターンも本命の攻撃はできず仕舞いに終わった。一見楽勝に見えるかもしれないが,本命の攻撃なんて食らってしまったら1発で瀕死になりかねないので,結構な綱渡りだ。まあ,そうなったらなったで,ピンチのときしか使えない「アンチェインバースト」(=∞ダメージ)を狙うという戦略もあるが……。
3ターン目,あえて地上の1-8に降りていた筆者は,ここで勝負をかけるべく「マテリアル」を使った強力な攻撃スキル「ドゥームズ・デイ」を発動する。マテリアルはパーティの共通財産なので,仲間の了承を得たうえで,足を吹き飛ばして一気に決着を付けてしまおうという狙いである。ハンターのスキルには,マテリアルを消費することで,このような強力な効果が得られるものがいくつか存在するのだ。仲間からの支援も受け,この作戦をクリティカル成功させると,4か所の足を潰して三つ首のコロッサルを地に伏せさせた(といっても高度が変わるわけではないが)。コロッサルはこれで攻撃手段およびガード部位をほぼ失ったため,その後は危なげなく戦闘を進め,完全勝利となった。
コロッサルを無事に退治し,オオイマチベースに起きていた奇妙な事件はすべて解決した。シナリオをクリアするとハンターはExPを獲得し,これによってキャラクターを成長させていく。本作では新しいスキルを入手したり,愛用の武器を強化させることで,より強大な敵に立ち向かえるようになる。
また,シナリオ中に獲得したマテリアルは,ハンター管理組織の「リアクト」に回収してもらうことで,復興ポイントに変えられる。復興ポイントが溜まれば,ホームやベースの設備が充実することでキャラクターの人間性やAPにボーナスが入り,街にも活気が戻ってくるというわけである。
ダウンタイムを減らし,皆でワイワイ楽しめるゲームに――デザイナー・備前伸光氏インタビュー
体験会終了後に,デザイナーの備前氏に話を聞くことができた。氏へのミニインタビューをもって,本稿の締めくくりとしたい。
4Gamer:
「コロッサルハンター」を制作するにあたってのきっかけを聞かせてください。
実は本作の企画を立てたのは自分ではなく,前任者から引き継いだ形です。ちょうど「巨大な敵と戦う」というテーマが世間で注目を集め出していた時期でもあり,面白いと思ったので途中参加させてもらいました。なによりTRPGにおける「立体的な戦闘表現」に挑戦してみたかったんですね。
4Gamer:
本作の軸は,やはり「巨大な敵」と「立体的な戦闘」の2つなのですね。世界観についてはいかがですか?
備前氏:
自分が参加する前から「ポストアポカリプスもの」ということは決まっていました。自分はそれに肉付けをしていく作業を担当しました。というか,インコグ・ラボのスタッフ皆でですね。ちなみにキャラクターメイキングで使った「過去表」は,「永い後日談のネクロニカ」のデザイナー・神谷 涼先生の作です。
4Gamer:
「立体的な戦闘」についてですが,本作では移動スタイルと武装スタイルを組み合わせてキャラクターを作るというシステムが採用されています。どうしてこのような形になったのでしょうか。
備前氏:
これも企画初期からあったアイデアでした。巨大生物と戦ううえで差別化を図るためには,移動方法にフォーカスするのがいいだろうという発想です。まず,さまざまな移動方法を考えて,それから攻撃方法を考えていったんです。ただ,当初は移動と攻撃の組み合わせは,ある程度限られていたんですね。あとから組み合わせを自由にしたいという意見が出て,現在の形になったんです。
4Gamer:
しかし組み合わせによっては,かみ合わないスタイルもあるのでは?
備前氏:
そうですね。今回使ったデトネイション×クラフターは大変強力な組み合わせです。一方で,コロッサルの体を足場にするパルクーラーと,遠距離攻撃が得意なスナイプは,普通に考えれば良い組み合わせと思えませんよね(笑)。でも,定番の組み合わせをあえて外して――例えばリィンフォース×パルクーラーじゃなくバレッジファイア×パルクーラーにしたら,両手に重火器を持って巨獣を駆け上がるみたいなカッコイイ絵面も生まれてくる。そうやってイメージを膨らませて遊んでもらえたら,デザイナーとしてはうれしいですし,定番以外でも活躍できるようにゲームを作っています。
4Gamer:
「巨大な敵」というコンセプトについてですが,部位がかなり細かく分かれていて驚きました。
備前氏:
あそこまで細分化したのは,僕が引き継いでから作った部分です。やはり立体戦闘してる感じを出したかったので,前や後ろに回りながら,パーツを攻撃するというシチュエーションがやりたかったんですよ。
4Gamer:
「マテリアル」を集めながら戦いつつ,大技を狙うというのも面白いですね。
備前氏:
これは,自分が「マインクラフト」をプレイしてこともあって,何かを作りながら戦うというイメージを思い描いていたんです。そこで,足場を作るための素材としてのマテリアルという要素が生まれました。そこからマテリアルの使い道を増やしていって,攻撃や再生などにも使えるようにしました。
4Gamer:
戦闘で使う以外にも,マテリアルを集めるとベースである街が復興していきますが,そうするとどうなるのでしょうか。人類がコロッサルを克服し,盛り返すようになるとか?
備前氏:
その予定です。ただ,ベースやホームはかなり豊かになりますが,人類全体がどうなるかというのは,また別の話です(笑)。仮にコロッサルを押し返せるとしても,年単位の長いスパンになると思います。
4Gamer:
うーん,なるほど。ところで,シナリオの進行をイベント制にしたのはなぜでしょうか。
備前氏:
TRPGでありがちなんですが,あるプレイヤーの話を進めていると,別のプレイヤーがヒヒマを持て余してしまうことがあるんですね。それを避けるために皆で一緒に行動することがあるんですけど,それもどうかなあと。
4Gamer:
まあ,確かに(苦笑)。
備前氏:
そこを前から疑問に思っていて。なので物語をパラレルで進めるようにしたかったというのが,イベント制にした最大の理由です。
4Gamer:
ピリオドという制限時間もあって,テストプレイでは見事に3人がバラバラに行動していましたね。
備前氏:
バラバラに動いても,ハンターラインで会話や支援ができますし,ゲームには参加できるんです。とにかくみんなが常に参加できるようにしたかった。戦闘にも支援システムを採用して,ほかのプレイヤーの行動中も,自身の行動を考えてもらうようにデザインしています。
4Gamer:
確かに,常に自分のAPとにらめっこしてましたね。「どこで支援を入れるべきか」「自分の行動でどれだけAPを残せばいいか」って。ヒマを感じる時間はまったくなかったですね。
備前氏:
TRPGって長い時間がかかりますけど,その中で可能な限りたくさんの時間,全員が参加できれば嬉しいですよね。イベントでも戦闘でも,みんなでワイワイ楽しめるものを目指したのが,本作のゲームデザインなんです。
4Gamer:
最後に発売を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
備前氏:
今回はとくに移動システムに実験的な試みを採り入れてますので,変わったTRPGを探している人,新しい刺激が欲しい人は,ぜひ手にとってもらえると嬉しいですね。それに,「巨大生物と戦う」こと自体が1つのロマンですから。単純にハデに戦ってみたいというTRPG初心者にもオススメです。ぜひ遊んでみてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
富士見書房公式「TRPG ONLINE」
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