インタビュー
スマホで復活。シリーズ最新作「首都高バトルXTREME」誕生に至るまでの経緯をアシスタントプロデューサー 浜地隆史氏に聞いた
「首都高バトル」シリーズについてあらためて説明しておくと,1994年から2006年にかけて13タイトルがコンシューマ機やPC向けにリリースされた,首都高を舞台にしたレースゲームだ。プレイヤーとライバルが走りで互いの精神力(SP/スピリットポイント)を削り合うという独特なシステムが好評を博した。2006年に発売された「首都高バトル X」以降は,フィーチャーフォンやスマートフォン向けアプリも配信されている。
満を持してリリースされる「首都高バトルXTREME」では,これまで同シリーズに未参戦だったホンダを含む国内メーカー8社が揃い踏み。実在車種による本格的なレースを気軽に楽しめるという。
さて,本作のリリースに至るまでの経緯には何があったのだろうか。「首都高バトルXTREME」の開発を手がける元気のアシスタントプロデューサー 浜地隆史氏に話を聞いてみた。
「首都高バトルXTREME」公式サイト
「首都高バトルXTREME」ダウンロードページ
「首都高バトルXTREME」ダウンロードページ
スマートフォンで気軽に遊べる本格レースゲーム
本日はよろしくお願いします。
まずは,あらためて「首都高バトルXTREME」はどんなゲームなのかを紹介していただけますか。
浜地隆史氏(以下,浜地氏):
夜の首都高を舞台にユーザーとライバルの車が1対1で激突する「首都高バトル」シリーズの最新作です。スピードの極限を追求し,抜きつ抜かれつの激しいバトルが繰り広げられます。
4Gamer:
シリーズの伝統を受け継ぐタイトルということですね。スマートフォン向けのレースゲームとなりますが,どのような操作方法になりますか。
浜地氏:
「放っておいても勝手に車が走る」というラン系ゲームではありません。自由に車を操作していただけます。
スマホの画面にタッチしてアクセルオン,そのまま左右にスワイプすればステアリング操作,上にフリックすればニトロが使えます。ライバル車をブロックしたり,背後にぴったり付いてスリップストリームで加速したりといったテクニックが有効です。コーナーでタイミングよくフリックすると,攻めのコーナリングとして評価がアップしますよ。
4Gamer:
「首都高バトル」と言えば,ドライバーの精神力を表す「SP(スピリットポイント)」が特徴です。こうした要素は「首都高バトルXTREME」にも引き継がれていますか。
浜地氏:
もちろんです。ライバルに遅れをとると,SPが減少してスピードが出なくなるので,車の性能を発揮できない状態になり,バトル後のスコアが下がったりします。
ちなみに,1回のレースは30秒から1分程度で終わるので,気軽に楽しんでいただけますよ。
4Gamer:
サービス形態も教えてください。
浜地氏:
基本プレイ無料のアイテム課金制です。課金要素は車とパーツがランダムで手に入るガチャ,車の保有台数の増加,レースに必要な「ガス」の回復アイテムといったところです。
4Gamer:
サービス開始時にはどんなコースが収録されますか。
浜地氏:
首都高の通称「C1」と呼ばれるコースですね。ライバルによってスタートとゴールの位置,コースの距離が異なり,多彩な走りが楽しめます。
4Gamer:
収録車種も気になるところです。
浜地氏:
国内の主要メーカー8社から27車種を収録しています。
4Gamer:
ユーザーは複数の車を所持できるんでしょうか。
浜地氏:
はい。事前登録者数に応じて車をプレゼントする企画を実施しています。20万人を突破すれば,いきなり4台の車で遊べますよ。
4Gamer:
車の性能は変更できますか。
浜地氏:
「エンジン」「サスペンション」「カーボンボディ」「ターボ」「タイヤ」「アルミフレーム」といったパーツをチューンナップすることができます。パーツはいろいろな特性を持っており,なかには「コーナリングで高評価が出ると,一時的にスピードが上がる」といったユニークなものも。また,パーツ同士を「合成」して性能を引き上げられます。
4Gamer:
パーツのカスタマイズが,マシンの強さに直結するというわけですね。
浜地氏:
合成して強化したパーツは,複数の車で使い回すことも可能です。ただ,パーツの中には「スズキ系車両のみ装備可能」といった特殊な装備条件が存在するものもあります。こうしたパーツは効果が高いので,使いどころが重要ですね。
車の見た目を変えるような要素は?
浜地氏:
「ホイール」や「バンパー」,そして最近の流行である地面を照らす「ネオン管」といったパーツは,見た目のみを変えるものですね。車の性能には影響を与えません。
カラーリングも好きな色を選べるだけでなく,「メタリック」「ソリッド」「マット」といった光沢の感じも変えられます。
4Gamer:
パーツはどのように入手するのでしょうか。
浜地氏:
性能に影響を与えるパーツは,ライバルとのバトルに勝ったり,イベントなどで入手できます。見た目のみを変えるパーツは,これらに加えてガチャなどで手に入るようになっています。
4Gamer:
性能を強化する手段はパーツだけですか。
浜地氏:
いえいえ,バトルで車を使い込んでいくと,愛着が湧いて「パワー」「トルク」「コントロール」といったパラメータが上昇します。このあたりは従来のシリーズ作品とあまり変わらないです。
4Gamer:
なるほど。マルチプレイ対戦はいかがでしょう。
浜地氏:
ほかのユーザーの車とバトルできる非同期型対戦は存在します。こちらはAIが車を制御することになりますね。
スマートフォンでいかにして「首都高バトル」らしさを表現するか
4Gamer:
「首都高バトルXTREME」の誕生までの経緯を教えていただけますか。
実は,2014年秋に「首都高バトルSocial」というタイトルで企画が立ち上がり,「スマートフォンで『首都高バトル』の世界が表現できるか」という実証実験を行っていました。それが順調に進めば,J2リーグとのコラボ企画「首都圏バトル4」が終わる2015年末にサービスを開始できる予定だったんですが……難航しました(苦笑)。
4Gamer:
企画自体はかなり前から動いていたんですね。コラボという形でシリーズ復活への布石を打ちつつも開発を進めていたとは……。
浜地氏:
ええ。しかし,現在の操作方法にたどり着くまでの試行錯誤に時間がかかりました。弊社のような中小企業が投入してはいけないほどのリソースを使ってしまいました。
4Gamer:
具体的にはどのような理由で難航したんですか。
浜地氏:
物理コントローラーのないスマートフォンで「首都高バトル」らしさを表現する。そのためのゲームデザインと操作系の構築を模索していたんです。
4Gamer:
ちなみに「首都高バトルSocial」とは,そもそもどんな企画だったのでしょうか。
浜地氏:
立ち上がり当初は「役目を終えた首都高が閉鎖サーキットとして使われている近未来を舞台にする」「タップやフリックで車を操作して,リアルタイム対戦が楽しめる」という概要が決まっているだけの状態でしたね。
(ここで「首都高バトルSocial」の企画書が登場)
4Gamer:
当時の企画書を見ると,ゲーム画面はPSP版のスクリーンショットがはめ込まれていますね。「車は自動で走行し,レースの要所だけ入力する」という点が,車をちゃんと操作する「首都高バトルXTREME」とは対照的です。
浜地氏:
実証試験は無事に終わったんですが,「スマートフォンでどういう操作をして,レースゲームを楽しんでもらうのか」という部分が問題になりました。
その後,タイトルを「首都高バトル2015」にあらためたところで,もう少しゲーム内容が具体的になりました。この時点では「きらびやかにライトアップされた首都高が舞台」「走りで周囲を魅了する『VIP』という人々がリスペクトされている」という設定を提示しています。
4Gamer:
都会的で美しいコース。スタイリッシュなキャラクター。企画としては申し分ないと思いますが,なぜ完成に至らなかったのでしょうか。
浜地氏:
遊びの部分がネックでした。「画面を指で押すと車は自動で走行する。指を離すとブレーキング。ライバルをオーバーテイク(追い越し)するときにフリックする」というシステムだったんですが,社内からは操作方法への違和感が指摘されました。
4Gamer:
ハンドル操作はなかったんですね。どのような違和感が指摘されたのでしょうか。
浜地氏:
画面を指で押す,離すという操作への意識が,普段スマートフォンを使っているときとは逆になるんですね。スマートフォンで何かをするとき,我々は画面を指で押します。「意識して画面を指で押す」ということです。
一方,ゲームでは基本的に画面を押し続け,コーナーを曲がるためブレーキングが必要な場面で離す。「意識して画面から指を離す」ことになるんです。
4Gamer:
何かをしようとするときの行動が逆なんですね。「普段は画面を押し続け,アプリを起動するときに指を離すスマートフォン」と考えると,違和感も分かります。
浜地氏:
物理コントローラーのないスマートフォンのレースゲームでは,「ユーザーにどこまで車を操作してもらうのか」という問題にぶつかったというわけです。
4Gamer:
スマートフォンの画面をアクセルペダルと考えれば,押し込んで加速,離してブレーキングという操作になるのは自然ですね。しかし,この時点ではハンドル操作がなかったため,ユーザーのゲームへの介入が「画面から指を離す」ことに集中して,結果として違和感が生じたと。
浜地氏:
車というより,「スロットカー」に近い操作になっていたんです。スロットカーではハンドル操作がなく,遠心力によるコースアウトを防ぐため,アクセルを離して加速を緩めることがゲーム性になっています。
しかし,「首都高バトル」はスロットカーのゲームではありません。ハンドル操作が無いというのは,少し違うんじゃないかと。
4Gamer:
「アクセルペダルのみを操作するレースゲーム」はソーシャルゲームアプリとしてはアリだと思います。しかし,「首都高バトル」のスマートフォン版としては疑問が残りますね。
浜地氏:
ええ,「首都高バトル」であるためにゲームデザインを模索したということです。
“お行儀の悪い”「首都高バトル」らしさが生まれる
4Gamer:
「首都高バトルXTREME」では,シリーズで初めて国内メーカー8社がそろい踏みとなります。
浜地氏:
ええ,なかでもホンダはこれまでのシリーズ作品に未参戦でしたが,ついに許諾をいただきました。各メーカーにプレゼンテーションする際には,先ほど話した「画面から指を離す」操作の試作版を持参しましたが,反応は芳しくありませんでしたね。
こうした結果を受けて,さまざまな調整とゲームデザインの模索を進めましたが,最終的に「首都高バトル2015」の要素で残っているのは舞台設定だけになりました。
4Gamer:
相当,難航したことがうかがえます。
浜地氏:
その後,なかなかゲームとして面白いものにはならなかったんですが,「画面を指で押すと車が前へ進み,離すとブレーキング」という仕様に,スワイプによるハンドル操作を加え,現在の「首都高バトルXTREME」が完成しました。
4Gamer:
「首都高バトル」として違和感のない操作方法が完成したということですね。
浜地氏:
自分の操作で車を進めて,コーナーを曲がる。「首都高バトル」らしい,コースを攻めている感覚を演出することができました。
元々,「首都高バトル」シリーズはお行儀の良いゲームではないんです。なるべく前に出てライバルをブロックしたり,SPゲージを削り合ったりと,お行儀の悪い遊び方をしてきたゲームなので,やはりハンドル操作は欠かせません。
4Gamer:
それが「首都高バトル」らしさだと。
浜地氏:
我々が考える「首都高バトル」らしさとは,「お行儀の悪いチェイス&バトル」と「互いに精神力を削り合い,決着を付けるSPバトル」です。
ただ,「首都高バトルXTREME」にSPゲージ自体は存在するものの,ゴールに先に着いたユーザーが勝利となるルールなので,これまで以上に「お行儀の悪いチェイス&バトル」を押し出しています。
4Gamer:
シリーズ伝統のSPバトルとは,少し違ったシステムになっているんですね。
浜地氏:
新しい遊び方の「首都高バトル」であるということです。そのあたりはタイトルにも表れています。従来どおりのSPバトルを継承するならば,「首都高バトル02」といったような路線のタイトルにしたでしょうね。
4Gamer:
ハンドリングとアクセル操作があることで,自分で車を操作している実感があります。
浜地氏:
いわゆるソーシャルゲームの文脈とは違った操作ですが,スマートフォンの性能向上もあって,しっかりと3Dゲームが動かせるようになっています。開発者としても,操作している実感が得られるゲームにしたかったということです。
ただ,「首都高バトルXTREME」の路線が受け入れられるか否かは,ユーザー次第ですね。
再始動した「首都高バトル」,そして「首都圏バトル」の今後は?
4Gamer:
いよいよ再始動となる「首都高バトル」シリーズですが,今後の展開はいかがでしょうか。
浜地氏:
スマートフォン版の水平展開に加え,据え置きゲーム機での新作も考えていないわけではありません。しかし,現在,弊社の社員はフル稼働しているので,今後の展開は「首都高バトルXTREME」の状況を見つつ,判断していくことになりますね。
4Gamer:
以前のインタビューのきっかけとなった「首都圏バトル4」※については?
※首都圏バトル4……2015年に実施されたJリーグの企画。当時,J2所属だった4クラブ(大宮アルディージャ,ジェフユナイテッド市原・千葉,東京ヴェルディ,横浜FC)の合同プロモーション「首都圏バトル4〜じゃない4の逆襲〜」のこと。
浜地氏:
2015年シーズンの結果,大宮アルディージャがめでたくJ1に昇格されたこともあって,発展的な解消という状態ですね。
4Gamer:
なるほど。
浜地氏:
とはいえ,弊社とJリーグのつながりが消えたというわけではありません。2016年にはジェフユナイテッド市原・千葉のチームカラーのハイエースを,弊社がデザインさせていただきました。
4Gamer:
縁というのは面白いですね。そもそも「首都圏バトル」と「首都高バトル」が似ているということで,Twitterで発信したことがコラボのきっかけでした。そして,コラボ終了後も関係が続いていると。
浜地氏:
さらなる展開の可能性はありますが,それが「首都高バトル」シリーズになるのかは分かりません。サッカーチームとレースゲームのコラボって,相当にヘンじゃないですか(笑)。
ただ,「Jリーグの試合に行くと,『首都高バトルXTREME』でチームカラーのペイントカーがもらえる」といったような,オンラインとオフラインをつなぐコラボができればいいなと考えています。
4Gamer:
昨年の夏には「Genki Racing Project(GRP)」として,実際のレースに参戦されました。「首都高バトルXTREME」への布石だったのでしょうか。
そう……なのかな(笑)。ある日,突然,弊社代表の星野(孝氏)から「車を作ったから,Twitterで呟いておいて」と(笑)。
どこで何をやるのかも聞かされないまま,いきなり日曜日にレースの手伝い要員として呼び出されたこともありました。あのときはサッカー観戦※のために仙台にいたんですが,急いで車で帰ってきました(苦笑)。
※浜地氏は湘南ベルマーレのサポーター。
4Gamer:
それはそれは……。
浜地氏:
星野が参加しているレースというのが,車好きの人ばかりでとても楽しそうなんです。先日,ご一緒させていただいたチームも面白い皆さんでしたね。「R35型のGT-Rが手に入ると聞いてレースにエントリーしたら,実際の車はV35型のスカイラインクーペだった」と。
要はスポーツモデルの車だと思ったら,型番が似ているクーペが来てしまったんです。せっかくだからということで出場したら,ブレーキパッドにトラブルが起きてしまって(笑)。何とかしてピットに戻ったら,そのブレーキングでまたトラブルですよ。いい大人がみんなであたふたして楽しそうでした(笑)。
4Gamer:
なんだか微笑ましいですね。
「首都圏バトル4」,Genki Racing Projectの発足としっかり布石を打ちつつ,「首都高バトル」シリーズの復活につなげる。全社的プロジェクトが進んでいたというわけですか。
浜地氏:
そう見えたのであれば,僕の勝ちですね。「首都圏バトル4」もGenki Racing Projectも巻き込まれた形でスタートした企画でしたので(笑)。
4Gamer:
それでは最後に,「首都高バトルXTREME」について一言お願いします。
浜地氏:
いろいろとお叱りをいただくかもしれませんが,今の雰囲気に合わせた「首都高バトル」シリーズを提示する作品ですので,よろしくお願いします。
4Gamer:
どうもありがとうございました。
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