インタビュー
【Nintendo Switch 5週連続インタビュー(5)】「マリオカート8 デラックス」編。“超お買い得”かつNintendo Switchのベンチマーク的な作品に
来たる4月28日には,数多くの熱いファンを抱える人気シリーズの最新作「マリオカート8 デラックス」が,Nintendo Switchに向けてリリースされる。
2014年5月にWii U用としてリリースされた「マリオカート8」に,さまざまな新要素を追加し,まさに“デラックス”な仕上がりになるという本作。だが,Nintendo Switchならではの要素は,どのあたりにあるのだろうか。プロデューサーの矢吹光佑氏に聞いた。
「マリオカート8 デラックス」をプレイ。「スプラトゥーン」キャラクターや刷新されたバトルが盛り込まれたうえ,白熱のレースを手軽に持ち運べる
「マリオカート8 デラックス」公式サイト
そのボリュームは,まさに「デラックス」
“超お買い得”な1本に
4Gamer:
マリオカート8 デラックス」は、Wii Uで発売された「マリオカート8」に追加要素を盛り込んだものというイメージで問題ないでしょうか。
ええ。まず,レース用のコースはマリオカート8に収録していたものと,DLCで配信した「ゼルダの伝説」や「どうぶつの森」「F-ZERO」などのものを合わせた48種類です。
これに大きく分けて二つの追加要素を組み込んだものが,マリオカート8 デラックスとなります。
4Gamer:
二つ,ですか。
矢吹氏:
はい。まずはキャラクターやステージといった,コンテンツに関する追加要素ですね。例えば「Splatoon」のキャラクターや,新バトルステージ,バトルの新ルール追加がそれにあたります。Nintendo Switchは外に持ち出してほかの人と遊べますので,そういったときにはレースだけでなくバトルも盛り上がると思うんですね。
4Gamer:
Splatoonのキャラクターやステージの映像を見たときは,びっくりしました。
矢吹氏:
キャラクターだけでなくサウンドもSplatoonならではのものになっていますので,普段のレースとはまた違う雰囲気を楽しんでいただけると思います。
4Gamer:
では,もう一つの追加要素は……?
矢吹氏:
テーブルモードでの対戦やローカル通信対戦など,Nintendo Switchによって実現する追加要素です。家でも外でも,ときにはJoy-Conハンドルを使ったりもして,さまざまなシチュエーションで楽しむことができるので,Nintendo Switchとの相性の良さも確認できると思います。
4Gamer:
DLCも全部入って,Nintendo Switchならではの遊び方もできるとなると,かなりお買い得ですね。
矢吹氏:
ありがとうございます(笑)。
過去のシリーズ作品に比べてもキャラクターやコースなどが多く,まさに「デラックス」という名にふさわしいものになっていると思います。
4Gamer:
Wii U版のプレイヤーとして気になっているんですが,セーブデータの共有は……できないですよね?
矢吹氏:
キャラクターやステージが増えていることもあって,それは残念ながらできません。
ただし,まったくゼロの状態からゲームを始めて,一つ一つキャラクターを出していくのもたいへんかと思いますので,今回はプレイ開始時からほぼすべてのキャラクターを使える状態にしています。
その分,キャラクターの多さにびっくりされる方もいらっしゃると思いますけど(笑)。
4Gamer:
どれを選べばいいのか分からない! となりそうですね(笑)。
矢吹氏:
はじめの遊びやすさという点で,作り手としては悩むところではあるんですけどね。ただ,今回は“デラックス”なので,キャラクターがたくさん並んでいる豪華さを重視しました。
さまざまなニーズに応えるべく
多様な対戦環境に対応
4Gamer:
マリオカートシリーズといえば,画面分割での対戦が特徴の一つだと思うんですが,テーブルモードでも画面分割はできるんですか?
矢吹氏:
TVモードでもテーブルモードでも,2分割と4分割に対応しています。ただ,テーブルモードでの4分割は,さすがに画面が小さいのであまりオススメはできません。もし4人で集まって遊びたいというときは,Nintendo Switchを2台持ち寄って,2分割と2分割でローカル通信を使って遊んでいただくほうが良いと思います。
4Gamer:
確かにNintendo Switchは1台しかないのに,Joy-Conだけ4人分あるという状態はレアですよね。
矢吹氏:
ええ。ちなみに,3人いるけれどNintendo Switchが2台しかないような場合,片方は1画面で,片方は2分割で……といった通信対戦も可能ですよ。
4Gamer:
細かい部分の確認になりますが,ローカル通信は最大8人まで対応しているんですよね。Nintendo Switchを2台持ち寄って,それぞれ画面を4分割して8人で遊ぶことはできますか?
矢吹氏:
いえ,ローカル通信をする場合は,画面は2分割までとなるので,それはできないんです。
4Gamer:
ああ,そうなんですね。
矢吹氏:
マリオカートWiiのときから,2画面に分割して2人のプレイヤーが同時にオンラインにログインして遊べるようにしていたんですが,今回はその延長で,テーブルモードで2分割しながら通信対戦をできるようにしています。
もちろん,テーブルモードで2人同時にオンラインで遊ぶこともできます。
4Gamer:
また細かい話ですが,Nintendo Switchを2台用意して,2人同時にオンラインにつないで同じレースで遊ぶことはできますか?
矢吹氏:
その場合は,あらかじめフレンドになっておいて,先に入ったほうに合流すれば良いですね。
4Gamer:
ああ,その手がありました。
こうしてうかがってみると,対戦環境に関しては細かいところまで配慮しているような印象を受けます。
矢吹氏:
Wiiのときにも複数台のTVとWiiを一か所に集めて遊んでいるという方もいらっしゃいましたが,Nintendo Switchではそれと同じことをもっと手軽にできるようになっているんです。マリオカートはやはり友達と遊んだときに,さらに楽しくなるものですから,対戦に関するさまざまなタイプのニーズに応えたいんです。
4Gamer:
スーパーファミコン時代から画面分割に対応しているのも,まさにそういう思想があるからなんですね。
新機能「ハンドルアシスト」で
初心者でも上級者と対戦を楽しめる
4Gamer:
別売りのJoy-Conハンドルは,Wiiハンドルと比べてだいぶ小さいですが,操作性は変わりないんですか?
確かにサイズは小さいですね。手に収まるドーナッツぐらいになっています。
ただ,Joy-ConってWiiリモコンと比べてセンサーの精度がかなり上がっているんですよ。Wiiハンドルで「マリオカートWii」やマリオカート8を遊んでみて,「ちょっと自分には向いていないな」と感じた方も,きっと技術の進歩を実感していただけると思います。
4Gamer:
センサーの精度が上がると,ちょっとした手ぶれなどを拾ってしまって,かえって操作が難しくなりそうな気もします。
矢吹氏:
そこはもちろん対策済みです。ハード側の性能が上がった部分を,プログラムでどのように扱うかというところなんですが,すべての細かい値をゲームに反映するのではなく,大きな変異が来たところで反映するような仕組みになっています。マリオカートWii以来8〜9年やってきて,プレイヤーの皆さんの動かし方みたいなものも分かってきましたし,ノウハウも蓄積しています。
なので,決して難しくなるようなことはありませんよ。
4Gamer:
そこも含めて技術の進歩を味わえそうですね。
矢吹氏:
ありがとうございます。さらにですね,以前はハンドル操作とコントロール操作を設定で切り替える必要があったんですが,今回は同時に使うこともできます。例えば,大きいコーナーはハンドル操作で,細かいS字カーブではスティック操作で……といったことができるんです。友達と交代で遊ぶようなときにも,いちいち設定を変更することなく,Joy-Conを渡すだけで良いんです。
4Gamer:
スムーズに交代しながらゲームを続けられるのは嬉しいですね。とくにNintendo Switchだと,どこかに持って行って友達と一緒に遊ぶといったシーンも増えそうですし。
そういえば,初心者に優しいモードも用意されているとか。
矢吹氏:
壁にぶつかりそうなとき自動で避けてくれる「ハンドルアシスト」という機能を追加しています。これはもちろん,設定でオフにすることもできます。
4Gamer:
なぜ,そういったものを実装することにしたんでしょう?
矢吹氏:
店頭などでお子さんが遊んでいる様子を見ていると,何度やっても壁にぶつかったり,コースアウトしたりでなかなかゴールできないケースが少なくないんですよね。それだとちゃんと走れなかった不満のほうが残ってしまいます。
でもハンドルアシストをオンにしておけば,とりあえずゴールまでは行けます。もちろん途中でほかのカートとの駆け引きなどはありますし,そこで順位に差は付きますが,ひとまずレースに参加して最後までたどり着けるようにはなっているんです。
4Gamer:
なるほど。
矢吹氏:
実はこれ,以前から取り組んできたことなんですが,今回ようやく日の目を見た機能なんですよ。
4Gamer:
これまで日の目を見なかったのは,どうしてですか?
矢吹氏:
気持ち良くアシストするというのが難しいんです。例えば,プレイヤーは右に曲がりたいのに,アシストが急に左に曲げてきたりとか,透明の壁にぶつかったような動きになったりとかすると,かえってストレスになってしまうんですよね。そうならないようにするべく,調整に調整を重ねていたんです。
4Gamer:
それがようやく納得できるところまできた,と。
実力差のあるプレイヤー同士で対戦するときに,かなり嬉しい機能だと思います。
矢吹氏:
まさにそこを狙っています。初心者でも上級者と対戦を楽しめるように,底上げをしたかったんですよ。これをオンにするとレインボーロードでも落ちませんから。
4Gamer:
レインボーロードのカーブで調子に乗ってドリフトをしていたらそのまま落下! ということもないんですか?
矢吹氏:
ええ。それもハンドルアシストがカバーしてくれます。
落下するスリルがなくなると物足りないという方は,ハンドルアシストをオフにしてください。ちなみに,オフにした場合にはちょっとした特典があります。それに,うまくなっていけば最終的にはオフにしたほうが速くなるはずです。
Nintendo Switchというハードの
一つのベンチマーク的な作品になっている
4Gamer:
そういえば今回,レース中にアイテムを二つ持てるようになっていますね。
矢吹氏:
昔,ゲームキューブの「マリオカートダブルダッシュ!!」で採用していたものと,まったく同じではないんですが,近い仕組みです。アイテムを一つ拾ったら一つめのスロットに入り,その状態でもう一つのアイテムを拾うと二つめのスロットに入ります。
4Gamer:
それを入れ替えることはできますか?
矢吹氏:
いえ,使用順は拾った順で固定されます。ただ,ブーメランフラワーやテレサのような,使ったあとに戻って来るようなアイテムの場合,戻って来たときにほかのアイテムが一つめのスロットにあると,二つめのスロットに入ります。
4Gamer:
その他,グラフィックスや演出面で,Nintendo Switchになって変わったことはありますか?
矢吹氏:
Nintendo Switchはこんなに小さいんですが,Wii Uよりパワーアップしたハードなんですよ。Wii Uでは解像度が720pだったんですが,Nintendo SwitchはTVにつなげた状態で1080p,つまりフルHDでの描画が可能です。とくに大画面のTVに映したときには,「こんなに違うんだ」と,Wii Uとの差を体感していただけると思います。
4Gamer:
フルHD用にグラフィックスもリファインしているんですか?
矢吹氏:
粗く見えてしまう部分は作り直しましたが,一つ一つのテクスチャに関しては使い回している部分もあります。遠くまでくっきり見えるよう,プログラムでしっかり1080p表示に最適化していますから,これはとにかく大画面のTVで確認していただきたいですね。
4Gamer:
Nintendo Switchの携帯モードやテーブルモードでは,720pですよね?
矢吹氏:
ええ。それでも遊ぶには十分なぐらい高精細ですよ。
そういう意味では今回,Wii Uのマリオカート8をベースに開発したことで,Nintendo Switchの性能はどんなものなのか,Joy-Conや通信機能をどのように使えるのかといった部分を,テストする機会にもなりました。マリオカートだけの話ではなく,Nintendo Switchってこれだけのことができるんだな,という一つのベンチマークになっていると思います。
4Gamer:
そのあたりの手応えはバッチリといったところでしょうか。
素朴な疑問なんですが,Nintendo Switch用のマリオカートとして,新作を作るという話はなかったんですか?
矢吹氏:
そうですね。スーパーファミコン以降,任天堂の歴代ハードでマリオカートの新作を作り続けてきましたので,それも頭をよぎることはありました。ただ,一から作るとなると,どうしてもお届けするまで長い時間お待たせすることにもなってしまうんです。
4Gamer:
ああ……。
矢吹氏:
Nintendo Switchという,これだけマリオカートを活かせるハードがせっかくあるのだから,少しでも早く皆さんにお届けしたいという気持ちで,マリオカート8をベースに作ることにしました。
その分,本体の発売から2か月以内というスピードでリリースすることができます。更なる次回作があるかどうかは現時点で何とも言えませんが,マリオカート8 デラックスは長く遊ぶことができますので,まずはこれで楽しんでいただけると嬉しいですね。
4Gamer:
発売まで少し時間はありますが,楽しみにしています!
「マリオカート8 デラックス」をプレイ。「スプラトゥーン」キャラクターや刷新されたバトルが盛り込まれたうえ,白熱のレースを手軽に持ち運べる
「マリオカート8 デラックス」公式サイト
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マリオカート8 デラックス
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