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「Travis Strikes Again: No More Heroes」の発売を記念したトークイベントを「あけましておめでトラヴィス 2」開催。楽曲に仕込まれたネタや,凝った画面デザインの秘密が明らかに
「Travis Strikes Again: No More Heroes」公式サイト
最初の話題は,リリースから2週間近くを経たTSAの評判について。須田氏によれば,「ここまで分かれるか」というくらいの賛否両論だそうだ。「やりたい放題,楽しみながら作ったので,それは皆さんにも伝わったのでは」とコメントした。
TSAの企画は,須田氏が発売前のNintendo Switchを見たときに始まったという。須田氏は「(本体とドック,Joy-Conが)合体するなんて,コンバトラーVみたいだな」と思うと同時に,「トラヴィスが復活するんじゃないか」と予感したそうだ。
TSAは,主人公のトラヴィスが架空のゲーム機「Death Drive MK-II」用ソフトの世界で戦うという内容だが,ゲーム機の原型は須田氏がかつて手がけたPlayStation 4用アクションゲーム「LET IT DIE」に登場した「DeathDrive128」だ。残念ながら「LET IT DIE」では“ゲーム内ゲーム”を上手に表現できなかったのだが,Nintendo Switchを前に「トラヴィスがゲームの世界に入っていく」というイメージがつながったという。
TSAはまた,イギリスのゲームクリエイターであるジェフ・ミンター氏がアメリカの都市伝説にある“呪われたアーケードゲーム”をモチーフに開発した「Polybius」にもインスパイアされたのだそうだ。
そんなTSAの楽曲「Welcome to Hell」は,存在感のあるラップがフィーチャーされているが,歌っているのは歌手の我修院達也さん。我修院さんは,須田氏の「シャドウ オブ ザ ダムド」で髑髏のジョンソンのボイスを担当しており,ゲーム中,少しだけラップ調のボーカルを披露している。今回,ABO氏から我修院さんの起用を打診された須田氏がメールしたところ,我集院さんから即OKの返事があったという。
ABO氏は「Welcome to Hell」の制作にあたり,ヒップホップが好きな人や海外の「No More Heroes」ファンを念頭に置いて,まず低音を効かせることを決めた。その根拠は「ナメられちゃいけない!」という直感だったが,今振り返っても,なぜそう思ったかは分からないとのこと。
また,歌詞は本職のラッパーが「シャドウ オブ ザ ダムド」のプレイ動画を繰り返し見て,ジョンソンの気持ちになったうえで書かれていることや,我集院さんが「疲れるから」という理由で座ってレコーディングしていたことなどが明かされた。
加えてABO氏は,ゲームのステージ「SERIOUS MOONLIGHT」の楽曲に「シャドウ オブ ザ ダムド」の楽曲や効果音を逆再生して使っていることを述べ,「TSAの楽曲にはいろんなネタを仕込んでいるが,すべてに意味がある。なんでそうなっているのかを考えると楽しいと思うので,ぜひファンの皆さんで考察して,ディスカッションしてほしい」と話した。
トークではさらに,フォークソング調の楽曲「冷めたご飯(Cold Rice)」のデモバージョンや,前衛的なピアノが印象的なステージ「LIFE IS DESTROY」の楽曲が,自動作曲・演奏ソフトを駆使して制作されたというエピソードが披露された。なお楽曲「Mars」や「Mr Doppelganger」の制作にも自動作曲ソフトが使われているという。
楽曲に対する須田氏のオーダーは,「ステージ『GOLDEN DRAGON GP』はテクノで」「ステージ『COFFEE & DOUGHNUTS』はギターを前面に」といった,おおまかなものだった。それらを受けて,ABO氏は「『GOLDEN DRAGON GP』でテクノといえば,芝浦GOLD」といった感じで発想を広げ,アシッドハウス調の楽曲「Love Secret Desire」を作ったという。なお,この曲のボーカルは,アイドルユニット「9nine」のメンバー,佐武宇綺さんが担当している。
また,「Coffee & Doughnuts」では,スーパーファミコン版「ドンキーコング」などの横スクロールアクションをイメージしたそうだ。
最後にABO氏は,ボーカル曲のインストゥルメンタルバージョンがゲーム内に収録されていることを紹介し,「ぜひファンの皆さんに歌ってほしい。それを動画サイトなどにアップしてくれると嬉しい」と話してトークを締めくくった。
第2部のゲストは,ゲームデベロッパであるWhite OwlsのCEOを務めるSWERY氏だ。SWERY氏は,須田氏と初めて会ったとき,緊張のあまり素っ気ない態度を取ってしまったと述べ,そのあと,SWERY氏がアクションアドベンチャー「Red Seeds Profile」を作っていた頃,改めて交流を深めたというエピソードを披露した。
SWERY氏は,TSAなど須田氏のゲームを「おしゃれ」と表現する。例えばTSAの場合,「決定」や「キャンセル」などのボタンを示すときに[A][B][X][Y]といった文字を使わず,画面に4つのボタンを並べ,押すべきボタンだけを白く表示する。須田氏によれば,この仕様はデザイナーのアイデアであるとのことだったが,SWERY氏は「おしゃれだし,移植やローカライズのときに手間がかからない。ぜひマネしたい」と絶賛した。
また,TSAではキャラクターが遮蔽物に隠れた場合,シルエットのみが表示される。そのシルエットの色がトラヴィスと敵,プレイヤー1とプレイヤー2でそれぞれ異なっており,SWERY氏は「ここにデザインを入れてくるか」「視認性が上がるだけでなく,カッコいい」と感心したという。
こうしたアイデアについて須田氏は,開発スタッフが現場で考えていると述べ,「今回は新人もベテランもいるチームだったが,キャリアに関係なくいろんな案を出してくる」と続けた。
それを受けたSWERY氏は,「チームによってゲームの作り方や順番,雰囲気が異なる。それをブレないようまとめるのがディレクターの仕事」とし,「現場がいろいろ足したものを,ディレクターが商品として成立するか判断して,カットする」と話した。
ここで話題は,SWERY氏の最新作「The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島 -」に移った。同作は,不死身の少女が自分の体の一部を利用して,さまざまなギミックをクリアしていくアクションパズルゲームだ。プレイヤーはわざと少女を傷つけ,ちぎれた腕を投げたり,首だけになって転がったり,そして「Regenerate」(回復)ですべての怪我を治したりしながらゲームを進めていく。
SWERY氏によると,当初は横スクロールのゲームを作りたいと考えていたとのことで,「何か,レイヤーをもう1つ加えられないか」と考えていたところ,このギミックを思いついたそうだ。そこから「欠損をマイナスではなくプラスにできないか」と発想を膨らませていった結果,パズルという要素にたどり着いたのだという。
そんな「THE MISSING」を初めてプレイしたとき,須田氏は「この人,本当に頭がおかしいんだな」と思ったという。須田氏自身も似たようなアイデアを思いつくことはあるが,若い頃ならともかく,ある程度年齢を重ねた今,本当にゲームに採用することはまずないと語った。
またSWERY氏も,パブリッシャであるアークシステムワークスのスタッフに向けて初めて本作のプレゼンテーションをしたとき,ドン引きされたというエピソードを披露した。
SWERY氏は「THE MISSING」の企画・開発にあたり,これまで自身の手がけたゲームに対する「ストーリーはいいが,それだけ」という評価を覆したいと考えた。そこで本作では,ゲームデザインを先に固め,それに合うようにストーリーを作っていったそうだ。
「THE MISSING」の冒頭には,主人公の少女が延々と走っているだけというシーンがあるのだが,これは須田氏の手がけた「花と太陽と雨と」の1シーンのオマージュだという。SWERY氏は「ゲームは何秒かに1回,ボタンを押させるものなのに,ただ走らせるだけで何かを体験させられた気になる」と解説した。
さらにSWERY氏は「THE MISSING」に施したさまざまな試みを紹介した。例えば本作では,キャラクターのモーションにバリエーションを持たせ,動きで感情を表現している。またテーマソングは,作曲家の作った曲を,違和感がでないまでスローにしているとのこと。これは「聴いた人の印象に強く残る」という効果があるそうだ。
ちなみにスマートフォンを使ったチャット部分のテキストはSWERY氏が書いているのだが,自然な雰囲気が出るよう若いスタッフのアドバイスを受けたという。
イベントの最後には,TSA内に「THE MISSING」と「Red Seeds Profile」のTシャツが登場するコラボレーションが発表された。後者は,トラヴィスが好きな伝説のゲームを取り上げる「レジェンダリーコラボ」の一環とのこと。またアメリカのAmazon.comではリアルのTシャツも販売される予定だ。
イベントでは,TSAのDLC第2弾で追加されるステージ「キルマラソン」の開発バージョンのデモプレイも披露された。ステージ構成はピンボールがモチーフとなっており,難度はかなり高いとのこと。すでに本編をエンディングまで見た人も,期待が高まるところだろう。
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