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[GDC 2019]純須杜夫の遺伝子は「ファイヤープロレスリング ワールド」に生き続ける。25年ぶりの続編「チャンピオンロード2」の物語を描く須田剛一氏にインタビュー
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印刷2019/03/23 10:00

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[GDC 2019]純須杜夫の遺伝子は「ファイヤープロレスリング ワールド」に生き続ける。25年ぶりの続編「チャンピオンロード2」の物語を描く須田剛一氏にインタビュー

 ファイプロに須田剛一氏が帰ってくる――
 販売中の「ファイヤープロレスリング」(以下,ファイプロ)シリーズ最新作,「ファイヤープロレスリング ワールド」(PC/PlayStation 4)のDLCとして,須田剛一氏がシナリオを担当するストーリーモード「チャンピオンロード2」の配信が決定した。

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「ファイヤープロレスリング ワールド」公式サイト


 1993年に発売された「スーパーファイヤープロレスリング3 Final Bout」と,1994年発売の「スーパーファイヤープロレスリングSPECIAL」(以下,「ファイプロSP」)でゲームディレクターを担当した須田氏だが,「ファイプロSP」に搭載された「チャンピオンロード」は,国やルールを問わずさまざまな団体で激戦を繰り広げる若きレスラー,純須杜夫(※)を主人公とした,シリーズ初のストーリーモードだ。
須田剛一氏
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 「ファイプロSP」に収録されたこのモードは,全体的に暗い展開や衝撃の結末などから発売当時は不評を買うことも多かったが,1人のレスラーの人生を静かにそして熱く描いた物語はファイプロを語るうえで欠かせないものになった。

 そんなチャンピオンロードのシナリオを書いた須田氏が,25年の時を経て,新たなストーリーモードを担当する。しかもそれは,純須杜夫の物語の続きを描くものになるという。
 そう聞いては,初代「ストーリーモード」に大きな影響を受けた人間として黙っていられない。GDC 2019に出展中のスパイク・チュンソフトのブースに須田氏がいると聞いた筆者は,同ブースに乱入し,「チャンピオンロード2」について話を聞いてきた。

デフォルトの主人公の名前で,読み方は「すみすもりお」。この変わった名前の元になっているのは,1980年代に活躍し,その後のインディー/オルタナティヴバンドに大きな影響を与えたイギリスのバンド「ザ・スミス」と,そのボーカルのモリッシーだ

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「ファイヤープロレスリング ワールド」公式サイト



4Gamer
 あの純須杜夫の物語の続きを用意されていると知って,いてもたってもいられず話を聞きにやってきました。まず,今回の件はいつ頃から動いていたのでしょう。

須田剛一氏(以下,須田氏)
 「ファイプロ復活おめでとう」っていうムービーを撮った頃には(関連記事),すでに話は出ていましたね。
 あとファイプロ同窓会でみんなで集まったときとか(関連記事),松本さん(※)と個人的に会ったときでも話していました。

「ファイヤープロレスリング ワールド」総監督の松本朋幸氏


4Gamer
 かなり初期の段階からですね。

須田氏
 はい。ただ当時は,自分も「Travis Strikes Again: No More Heroes」の制作で忙しく,なかなかすぐにとはいかなくて。あらためて「よし,やりましょう」という話になったのは,マスターアップが終わった昨年(2018年)末です。

4Gamer
 その段階で,どんなストーリーにしようっていうのは決まっていましたか。

須田氏
 もう,余裕で固まっていました(笑)。ファイプロでストーリーを描くなら前回の続きしかない。それも,プロレスラーになった純須杜夫の息子の物語しかないって思っていましたし,ファイプロSP発売から25年経っているから,リアルタイムで考えてもちょうどいいタイミングだと。

4Gamer
 あの衝撃の結末を迎える前に宿った命だと考えると,たしかにそうですね。しかし「いつの間に? やはり相手は……」と,当時のプレイヤーとしては気になるところです。

須田氏
 もちろん,「チャンピオンロード」のヒロインとして登場した冴刃麗子です。前から彼女は純須の子を宿しているというイメージを持っていて,その断片みたいなものを話しているうちに,スパイク・チュンソフトからも「ぜひ書いてください」って言ってもらえました。

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4Gamer
 やるならこれしかない,とのことですが,「ファイプロSP」の「チャンピオンロード」は完結した物語となっています。その続きを,というところに抵抗感はなかったのでしょうか。

須田氏
 もちろん,自分の中でも完結している物語ですが,抵抗感というものはないですね。
 映画の話になりますけど,「クリード」が好きで,2作目の「クリード 炎の宿敵」を観たときは号泣しました。あれって「クリード」という新しい作品になっていますが,描き方は本当に「ロッキー」そのものなんです。ロッキーは「ロッキー・ザ・ファイナル」で完結しているけど,しかし「クリード」で続いている。「チャンピオンロード2」もそんな感覚で,プロレスラーという戦う男達のその後の物語を描けるんじゃないかと思うんです。

4Gamer
 物語の主人公となる純須の息子ですが,物語の大まかな部分は決まっていますか。

須田氏
 はい。リングネームはザ・ブレード冴刃で,海外のインディー団体でデビューします。

4Gamer
 おおっ,海外ですか。

右が主人公のザ・ブレード冴刃,左がタッグパートナーとなるノトーリアス
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須田氏
 海外です。それも南部です。彼の父も早い段階から海外に目を向けていましたし,同じような道ではないけど,息子も国内ではなく外国でのデビューを選択するんだろうなと。
 そこで出会ったノトーリアスというレスラーと,THE VANISHING(ザ・バニシング)というタッグを組むというイメージはできています。ノトーリアスにも物語があって,重要なキャラクターですね。

4Gamer
 2人が描かれているキーイラストを見て思ったのですが,二人が着用しているこのブラックとレッドのデザインのロングタイツって,もしかすると……。

須田氏
 はい。純須と同じデザインのロングタイツです。これは「クリード」のオマージュみたいなものですけど,ザ・ブレード冴刃のデビュー戦の日に,母の麗子が父の形見であるロングタイツを渡す,みたいな話も考えています。

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4Gamer
 なるほど。前回のストーリーには,その当時のプロレス界の状況がかなり濃いめに詰め込まれていました。今回も,プロレス界の現状のようなものを盛り込むのですか。

須田氏
 そういう話よりは,“純須杜夫の息子”としての物語になるかと思います。前回の物語がああなったのは,やはり当時のプロレス界が激動の最中にあったという状況があると思うんです。

4Gamer
 プロレス史上でも大きな出来事になった団体の分裂が数年前にあり,また総合格闘技も存在感を増していた頃ですね。

須田氏
 はい。あの時代から見ると,いまはそこまで大きな事件はないというか,安定しているという感じがありますよね。

4Gamer
 メジャー団体はメジャー団体,インディー団体はインディー団体で,それぞれが成立しています。

須田氏
 前回の時代に比べると,ある意味,今は良いプロレス界だと思います。だから,前回のように,というよりは,今のプロレス界でザ・ブレード冴刃というレスラーが何をするかを描きたい。それについては,自分の中でも楽しみで。

4Gamer
 現在は,フリーでさまざまな団体に参戦して存在感を見せる選手や,1つの団体に留まらず,新たなフィールドに挑戦する選手にも大きな注目が集まっています。父親の純須もそういうタイプでしたが,その意味からも,プロレスの今を描いたものになりそうですね。

須田氏
 そうですね。海外でデビューはしますが,もちろん日本への凱旋も考えていますので,そこは楽しみにしてください。日本に戻ってくるときはマネージャーも付いていて,そんな彼らが日本のプロレス界に何かを仕掛けていく……みたいなのを今,思い付きましたので,日本編はヤバくなりそうです(笑)。

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4Gamer
 なんだか濃いキャラクターのマネージャーが出てきそうで,楽しみです。
 ところで,1つ気になる点があるのですが,「ファイプロSP」では,いわゆるファイプロネームの選手と団体が収録されていて,物語にもさまざまな団体や選手が登場しました。本作ではファイプロネームのレスラーが収録されていませんが,「チャンピオンロード2」にはどのような選手を登場させるのでしょうか。

須田氏
 ファイプロネームでやりたいなと思っています。レスラーは難しくても,団体名だけならどうだろうかと考えています。

4Gamer
 純須の物語の続きである以上,かつて登場したレスラーもですが,彼がたどった数々の団体のその後も気になるプレイヤーも多いはずです。実現すると嬉しいですね。

須田氏
 これについてはスパイク・チュンソフトと相談しながらなんですが,でも,冴刃 明(※)は出ます! やはり彼が出ないとストーリーになりませんから。

とある選手のファイプロネーム。リングの内外で純須が深く関わることになる,「チャンピオンロード」の重要なキャラクターの1人

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4Gamer
 前作の重要人物で,麗子の兄ということは,主人公にとっては親戚になりますね。彼に限らず,ファンから,「あれはどうする」「これはどうなるんだ」みたいな声が挙がると思うのですが,それに対するプレッシャーはありますか。

須田氏
 ほどよいプレッシャーはありますが,それよりも久しぶりにファイプロでプロレスにじっくり向き合える嬉しさが強いですね。ファイプロは自分の原点ですし,ほかの作品でもプロレスラーを出したりプロレスのエッセンスを入れたりしてきましたが,がっつり向き合うのは久しぶりですから。

4Gamer
 では最後に,読者やファイプロファン,そして「チャンピオンロード」をプレイしたという人にメッセージをお願いします。

須田氏
 「チャンピオンロード」って,当時は激怒した人も多かったんですが,そういう人達が「あのときこう思ったけど,やっぱりプレイして良かった」と思える物語にします。シリアスにはなると思うけど,誰も見たことないプロレス物語をもう一度描きたいですね。純須のときと同じような感覚でしっかりと,自分でしか表現できないようなレスラーの生き様を描き切ります。プロレスラーに対する自分の見方にあらためて向き合うことになりますが,それも楽しみです。

4Gamer
 最後に,と言っておきながら,大事なことを聞き忘れていました。ザ・ブレード冴刃は,27歳を乗り越えられますか?(※)

須田氏
 大丈夫だと思います。おそらく(笑)。ザ・ブレード冴刃は,父の影や,彼の持つ闇の部分との戦い,そしてそれをどう乗り越えるかも大きなテーマの一つなんです。そのあたりのプロットはできているので,期待してください。

4Gamer
 ありがとうございました。

ファイプロSPが発売された1994年,アメリカのバンド「ニルヴァーナ」のカート・コバーンが27歳でこの世を去っている。「チャンピオンロード」はそのカート・コバーンの最後を想起させるような形でラストを迎えている。音楽ネタで言えば,ザ・ブレード冴刃のタッグパートナーのノトーリアスからは,24歳の若さで亡くなったラッパーのノトーリアス・B.I.G.が思い浮かぶ。大丈夫なのだろうか。

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