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VR向けリュック型PC「背負えラブルパソコン」の最後の砦。ZOTAC「VR GO 3.0」
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印刷2019/05/31 16:00

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VR向けリュック型PC「背負えラブルパソコン」の最後の砦。ZOTAC「VR GO 3.0」

ZOTAC VR GO 3.0。ZOTACロゴと左右の差し色の部分はRGB-LEDによりフルカラー発光する仕組み。中央の三角形を並べた模様はバッテリー残量ゲージ
画像集 No.001のサムネイル画像 / VR向けリュック型PC「背負えラブルパソコン」の最後の砦。ZOTAC「VR GO 3.0」
 Oculus VRの「Rift」やHTCの「Vive」といった一般ユーザー向けのVR対応ヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)製品が出揃った2016年のことである。その年のCOMPUTEXにはちょっとした新スタイルのPCフォームファクターが各社から提案された。
 それはVRHMDの「ケーブル引っかかる問題」を解消する新提案,リュック型PC(バックパックPC)である。筆者は2016年当時,ウケを狙って「ウェアラブルならぬ背負えラブルPCが登場」と,駄洒落ではしゃいだ記事を寄稿したこともあったが,その3年後の現在。「背負えラブル」という駄洒落がまったくはやらなかったのはいいとして,あれだけ各社から提案されていたこのタイプの製品のほとんどが短命に消えてしまったことが驚きだ。
 ざっと思いつくだけでもZOTAC Technologyの「VR GO」,MSIの「VR One」,サードウェーブの「GALLERIA VR WEAR」,HPの「OMEN X by HP Compact Desktop P1000」などを挙げることができる。そういえばデルもALIENWAREブランドで試作機を作っていたことがあった

日本では利用できないが,バックパックPCに最も影響を与えたかもしれないHTCのVive用ワイヤレスアダプター
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 結局,このジャンルの製品で一定の成功を収めることができたのはMSIのVR OneとZOTACのVR GOだけだった。
 とくに日本ではMSIのVR Oneは,VRアミューズメント施設での採用事例が多く,目にしたことがある人も多かったのではないだろうか。ところがそのMSIもVR Oneの2018年版を最後に,今年は新製品の投入を断念した。
 対するZOATCは,なんと「勇気ある継続」を決めたというのだ。
 「背負えラブルPC」という駄洒落を消さないためにも「もしかしたら最後」となるかもしれないこのリュック型PCの新型モデルの取材にZOTACブースへと飛んだのであった。

今年もZOTACブースは「League of Legends」のeスポーツイベント開催用ステージと新製品展示棚が混在する高密度なレイアウトに
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展示されていた「VR GO 3.0」
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3世代目のVR GO。搭載プロセッサを2019年仕様に刷新


 今年で3世代めということでZOTACのリュック型PCの2019年モデルには「VR GO 3.0」という名称が与えられていた。
 結論から言えば,外観デザインについては2018年モデルの「VR GO 2.0」から変更はない。ブースの現地担当者によると「これ以上のコストをかけられなかったのも事実だが,求められるスペックと熱容量設計の視点からさらなる薄型化は無理と判断した。しかし,VR GO 2.0の筐体デザインは完成度が高いため,継続利用を選択した」との弁。

 では違いはどこにあるかというと,搭載されるプロセッサ群の世代交代がメインとなる。具体的にはCPUは第9世代Coreプロセッサの「Core i7-9750H」(6C12T/2.6GHz/4.5GHz),GPUはNVIDIAの「GeForce RTX 2070」(8GB GDDR6)となった。ちなみに先代VR GO 2.0は「Core i7-8700T」(6C12T/2.0GHz/4.0GHz),「GeForce GTX 1070」だったので,実質的に「スペックが年次更新された」ということになる。

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VR GO 3.0のPC本体部分。寸法は347.5(L)×280.4(W)×87.1(H) mm。背負うためのストラップが付いたベースユニットと合体させる感じで背負う構造だ。このPC本体部分は単体で利用も可能
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身体に背負うバックパックアタッチメント部分。PC本体部分をこれに合体させて使うスタイルとなる

 メインメモリはDDR4-2666を16GB搭載。高速ストレージとしてM.2 PCIe SSDを256GBを搭載するが,セカンダリストレージ用として2.5インチサイズのドライブベイも搭載する。ネットワークは802.11ac WiFi,1Gbps LAN,Bluetooth5に対応。

 接続端子はHDMI2.0×2基,DisplayPort1.3×1基,USB3.0×6基,USB TYPE-C×1基というラインナップだ。ちなみに,マザーボードの変更により,側面側の接続端子パネルの配置がVR GO 2.0から変わってはいるが,接続端子自体のラインナップには違いはない。

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側面側の接続端子
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上側の接続端子

 電源は,86.4Whのリチウムイオンバッテリーを2基搭載しており,先代モデルと同様に片方ずつ交換することでシステムの再起動なしにバッテリー交換が可能になっている。これは,VRアミューズメント施設では好評な仕様だ。バッテリー1個あたりの駆動時間は1.5時間程度で,ここも先代と同仕様だ。


背負えラブルPCの未来は?


VR GO 3.0を装着する筆者。3年前までは列ばなくては楽しめなかったリュック型PCによるVR体験も,いまやフラッと通りすがりで体験できるようになったことは歓迎したい
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 他社がこのジャンルの製品から撤退してしまったこともあり,今年以降は,いうなれば「選択肢はZOTAC VR GOのみ」となる。実際,VRアミューズメント施設からの問い合わせはかなりあるそうなので,VR GO 3.0も単なるコンセプトモデルではなく,実際に発売を行うそうである。発売は年内を予定。価格はVR GO 2.0から微妙に上がりそうだという。
 なお,VR GO 2.0は日本では今年,2019年5月に発売されたばかりで,その価格は35万円前後となっている。VR GOシリーズは個人でも購入できるが,VRアミューズメント施設をはじめとしたB2B販売がメインのため,顧客によってはVR GO 2.0のスペックでも十分と言うことも想定されるようだ。そのため,ZOTACとしても現状は,VR GO 3.0の積極的な訴求は現状は考えていない。顧客側がより高い性能を欲している場合にVR GO 3.0をお勧めするといったことになるのかもしれない。

筆者がプレイ中のVRゲームは今年のGDC2019におけるGame Developers Choice Awardsで最優秀「VR/ARゲーム賞」を受賞した「Beat Saber」
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 気が早いが「VR GO 4.0は来年あるのか」と聴いてみたところ,「分からない。実は昨年のVR GO 2.0が最後とする案もあった」との返答。
 確かに最近ではコンピュータ部分をHMD側に内蔵させたスタンドアローン型のVRHMDも増えてきている。もちろんスタンドアローン型VRHMDは上級スマートフォンレベルの性能のSoC搭載のものがほとんどで,絶対的なコンピューティングパワーは実質ゲーミングノートPC相当の性能を持つリュック型PCには到底及ばない。よりリッチなVRコンテンツを走らせるためにはリュック型PCにまだまだ一定のアドバンテージはある。
 ただ,VRコンテンツはその楽しみ方の性質上,回転率がよくないため,VRアミューズメント施設側としては低コストに意識を払ったコンテンツ作りとハード選びにシフトしつつある。その流れもあってリュック型PCはなかなか立場が苦しくなってきているようだ。
 ZOTACのVR GO展示コーナーにいた担当者によれば「今後は,VR GOのようなリュック型PCは,VRアミューズメント施設での運用向けよりも,今後はVRコンテンツ開発現場でのニーズのほうが高まっていくのかもしれない」と述べていた。
 なるほど,VR GOのハイスペックは,そのままVR開発キットを動かすだけのポテンシャルもあり,開発と実行テストをスピーディに展開するにはリュック型PCは適しているかも知れない。来年あたり「VRHMDを被ったまま,VR GOを背負ったままコーディングするVRコンテンツ開発者」……なんていう人物をZOTACブースで登壇させてみたりすると面白いかも?

本体重量はバッテリー込みで約5kg。プレイ中,それほど重いとは感じない
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  • 関連タイトル:

    ZOTAC GAMING(旧称:ZOTAC Gaming)

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