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[EVO Japan]Grand Finalでは「ももち」をぶつけるしかないと思った――「ストリートファイターV AE」部門優勝,ももち選手インタビュー
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印刷2019/02/22 00:00

インタビュー

[EVO Japan]Grand Finalでは「ももち」をぶつけるしかないと思った――「ストリートファイターV AE」部門優勝,ももち選手インタビュー

 2019年2月17日に閉幕した「EVO Japan 2019」。「ストリートファイターV AE」部門では,忍ismの代表であり,ゲーミングチーム・Fudohなどを運営するプロゲーマーのももち選手が,ふ〜ど選手との激戦を制し,見事優勝を果たした。ここでは大会直後に行ったインタビューの模様をお届けしていく。

ももち選手
プロゲーミングチームなどを運営する忍ismの代表取締役であり,自身もシーンの最前線で活躍を続けるプロゲーマー。能動的に動きつつも,相手の選択肢に対し,適切な回答を瞬時に導き出す様はまさに天才。本家EVOでも優勝経験があり,日米EVO覇者の称号を手にした
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4Gamer:
 優勝おめでとうございます。今の心境はいかがでしょうか。

ももち選手:
 参加者のレベルが高く,厳しい大会でしたので,優勝できて本当にうれしいです。Grand Finalで対戦したふ〜ど選手は,とくに手ごわい相手でした。

4Gamer:
 ふ〜ど選手は現在のバージョンでの活躍がめざましく,今大会においても優勝候補の1人でした。大会前に対策などを練っていたのでしょうか。

ももち選手:
 ふ〜ど選手のバーディーについては,自分と同じチームに所属する藤村選手から「5本先取の練習試合で0-5で負けてしまった」とか,「ほかのプロプレイヤーも全然勝てていない」など,ものすごく強いという話を聞いていました。ですので,大会前から「自分のコーリンとふ〜ど選手のバーディーが戦ったら……」という想定をして,対策を練っていました。

4Gamer:
 対策を練るというのは,ふ〜ど選手のプレイ動画を見て研究を進めるとかでしょうか。

ももち選手:
 いや,動画などは一切見ていないです。直接の対戦も一度もしていませんね。

4Gamer:
 ふ〜ど選手が情報を隠していたということでしょうか。

ももち選手:
 そういうわけではないです。ふ〜ど選手は配信などでふつうにプレイはしていたようなので。

4Gamer:
 ということはももち選手としては,何か理由があって対戦動画を見なかったり,直接対戦をせずに対策をしたということですよね。その理由を聞かせてもらってもいいでしょうか。

ももち選手:
 格闘ゲームをプレイしている人なら全員経験があると思うのですが,動画を見て感じた対戦相手のイメージと,実際に対戦したときの感覚って,まったく違うんですよ。
 結局は対戦の中で,いろいろな部分を修正していく必要があるんです。それであれば「最初から動画を見て対策するのでなく,別の練習に時間を割いたほうがいい」というのが自分の持論なんです。

4Gamer:
 これまでいろいろなプレイヤーの練習方法を聞いたり見たりしてきましたが,正直かなり驚いています。ただ,ふ〜ど選手ほど強いと噂になっているプレイヤーに対して情報を集めないというのは,勇気がいるのではないでしょうか。

ももち選手:
 ふ〜ど選手のバーディーに対して情報がなくても,「ふ〜ど選手がどういった考え方をして,どのようなプレイをする人なのか」ということは長年の対戦経験でわかっているので,ある程度の予測はつきます。そこから,さまざまな状況を煮詰めて,自分なりの回答を用意しておくといった感じですね。

4Gamer:
 なかなか珍しい練習だと思いますが,ふだんからそういったイメージを重視しているのでしょうか。

ももち選手:
 そうですね。格闘ゲームって「キャラクター対策と人対策」がどちらも同じくらい重要だと思うんですよ。今回の例でいうと,「バーディー対策とふ〜ど対策」がどちらも欠かせないわけです。どちらも別々に対策を立てて,うまくミックスされて初めて,生きた攻略というものにつながるんじゃないかなと考えています。

4Gamer:
 Grand Finalでももち選手はWinner's側にいましたが,ふ〜ど選手に1度敗れ,後がない状況に追い詰められてしまいました。

ももち選手:
 初めてふ〜ど選手のバーディーと対戦したんですが,自分が想定していたふ〜どバーディーよりも圧倒的に強くて「これはまずいな」と感じました。

4Gamer:
 常にポーカーフェイスで本大会を勝ち進んでいたももち選手でしたが,カウントをリセットされたときに1度だけ厳しい表情を見せていたのが印象的でした。

大会中に1度だけ見せた厳しい表情のももち選手
画像集 No.003のサムネイル画像 / [EVO Japan]Grand Finalでは「ももち」をぶつけるしかないと思った――「ストリートファイターV AE」部門優勝,ももち選手インタビュー

ももち選手:
 あの時は想像を遥かに超えるプレイをされて,正直に顔に出てしまいました(笑)。内心かなり焦っていましたね。

4Gamer:
 ですが,カウントがリセットされてからは試合のペースを取り戻し,3-1での勝利となりました。何か意識的に変えた部分はあったのでしょうか。

ももち選手:
 「対策として用意してきたものを出すだけでは絶対勝てないな」と思ったので,ここは「ももち」をぶつけるしかないなと思って,ひたすら我慢する戦い方に切り替えました。
 最初は「コーリンvs.バーディー」の戦いだったのが,次第に「ももちvs.ふ〜ど」の戦いになっていったと思います。ひたすら待って待って我慢して,相手が攻め疲れるのを狙って……ミスを誘ったり,逆にこちらから攻めたり。その切り替えが上手くハマったんだと思います。

4Gamer:
 「これはいけそうだ」という感触を得たのはどのあたりでしょうか。

ももち選手:
 そういう感触は最後までなかったです(笑)。とにかくひたすら苦しい戦いを続けていた結果,最後に立っていたのは自分だっただけです。
 とくにGrand Finalの1試合目は,自分でも後悔するような負け方をしてしまって「ここを取られたらきついな……」と感じていたのですが,逆にそれがよかったのかもと今では思っています。そこでもし運よく勝っていたら,勢いで押し切ろうとするプレイになって,逆転されていたかもしれません。勢いだけでは勝てない状況に追い込まれたことによって,ひたすら我慢するプレイに切り換えることができたんじゃないかなと。

4Gamer:
 そもそも,コーリンvs.バーディーというカードの相性はどうなんでしょうか。

ももち選手:
 バーディーのほうが若干有利かなと。ただ,シーズン4の調整でブルリベンジャー(移動コマンド投げ)をバックジャンプして回避したあとに,EXパラベラムで安定して反撃できるようになったので,そこは楽になりました。また,立ち回りでもふ〜ど選手レベルの相手でなければ問題なく戦えるのですが,ふ〜ど選手の上手さは想像以上でした。

4Gamer:
 ももちさんは是空も使用しますが,是空vs.バーディーはどうなんでしょうか。

ももち選手:
 その組み合わせは勝ち目がほとんどないです(笑)。今回の大会では是空をメインにして戦っていたんですが,是空はふ〜ど選手の使うミカに対しても有利ではないので,最初からコーリンを出すと決めていました。

4Gamer:
 ももち選手はコーリンと是空を使い分けていますが,この2人はどういう理由で選んだのでしょう。

ももち選手:
 いろいろな相手に対し,万遍なく戦えるタイプのキャラクターが好きなんですよ。コーリンとか是空とかケンとか。投げキャラや飛び道具に弱いような偏ったキャラクターはあまり好きじゃないです。

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4Gamer:
 メインを1人決めて,サブにはその穴を埋めるようなキャラクターを選ぶという人が多いですよね。バランス型を使い分けるプレイヤーはかなり珍しく感じます。

ももち選手:
 バーディーがきついなら春麗を使うとか,ダルシムを練習するという選択肢もあると思うんですが,自分はあくまで,いろいろできるキャラクターの中でどちらを出すかというスタンスです。相手からしたら嫌だと思うんですよね,どっちが出てくるのか分からないというのは。

4Gamer:
 確かに,明らかなキャラ被せというのは予想がつきやすいですし,相手にとっては苦手キャラクターなわけですから,そのぶん対策されている可能性が高いですよね。

ももち選手:
 たぶん今回のEVO Japanで自分と対戦した人たちは, 是空とコーリンのどっちを使ってくるのか読めなかったと思うんですよね。ただ,そのレベルにまで達するのはかなりの練習が必要です。ピンポイントでのキャラ被せで使うのとは訳が違いますから。

4Gamer:
 そういった労力をかけてまで,今のプレイスタイルにこだわる理由はあるのでしょうか。

ももち選手:
 今の格闘ゲームの環境って,対戦動画をいつでも見られるし,ゲームもシンプルになってきているので,人のプレイを簡単に真似できてしまうんですよね。期待値の高い行動を真似したり,有利な相性のキャラクターを被せたり。ただ,そういったセオリー通りの動きには,相手に読まれやすいという弱点を抱えています。
 逆に,自分がさっき話していたような,相手に攻めさせて待つといった戦い方は非効率的であっても,個性になり,武器になってくれることがあるんです。そういった,自分にしかできないプレイというのをプロゲーマーとして見せていけたらいいなと。

4Gamer:
 あれだけしっかりとした地上戦をしていたのに,バーディーのブルリベンジャーを全然食らっていなかったですよね。あれは,地道な練習の成果なんでしょうか。

ももち選手:
 ふ〜ど選手はブルリベンジャーを執拗に狙ってくるプレイヤーじゃなかったので,そこに意識は割いていませんでした。

4Gamer:
 意識はしていなかったけど,避けられたということでしょうか。

ももち選手:
 意識していなかったので,1回目は食らっちゃったんですよ。ただ,それで「ふ〜ど選手も勝負どころでは仕掛けてくるな」と思って気持ちを切り替えました。その後は意識することなく,無意識にバックジャンプで対応できていたのでうまくいきましたね。

4Gamer:
 今回の大会はシーズン4で初めての大きな大会となりました。大会を戦い抜いての印象はいかがでしたか。

ももち選手:
 やっぱり,バーディーがすごく強いなと(笑)。バージョンが変わった直後は是空も強いと言われていたんですが,自分としてはシーズン3の途中からずっと上位のキャラクターで,今回の調整で一気に強くなったわけではないと思っていました。ただ,今回是空を使って結果を残してしまったので,弱体化されるかもと考えると少し怖いですね(笑)。そこだけ心配しています。

4Gamer:
 最後に応援してくれているファンへのメッセージと今後の目標をよろしくお願いします。

ももち選手:
 最近,ゲームの配信をかなりするようになって,先月は150時間も配信をしたんですよ。「ストV」だけでなく,「ぷよぷよ」や「スプラトゥーン」などいろいろなゲームでやっています。それで格闘ゲームをやらない人も自分の配信を観てくれるようになって,今回はそういう人が応援してくれたのがうれしかったですね。今後もさまざまなゲームを配信で遊んでいこうと思っています。

 「ストV」は,Capcom Pro Tourがもうすぐ始まります。シーズンの序盤に勝つと,後半に余裕ができて「いい一年」を過ごせるようになるので,最初から全力で臨んでいきたいですね。そういう意味では,今回のEVO Japanでは最高のスタートダッシュを切れたと感じます。今年も自分らしいプレイを見せていきたいと思っているので,応援よろしくお願いします。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。あらためて優勝おめでとうございます。

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