インタビュー
[E3 2018]30周年を機に再び活気づく「ロックマン」シリーズ。最新作への思いを土屋和弘氏,小田晃嗣氏,野中大三氏に聞いた
同シリーズでは,2018年7月26日に「ロックマンX アニバーサリー コレクション」(PC / PS4 / Xbox One / Switch)と「ロックマンX アニバーサリー コレクション 2」(PC / PS4 / Xbox One / Switch)が,10月4日には「ロックマン11 運命の歯車!!」(PC / PS4 / Xbox One / Switch。以下,ロックマン11)がそれぞれ発売される予定だが,それがすべてプレイアブル出展されているのだ。
そんなカプコンブースで,「ロックマン11」プロデューサーの土屋和弘氏とディレクターの小田晃嗣氏,「ロックマンX アニバーサリー コレクション」2作品のプロデューサー野中大三氏の3人に,各タイトルの魅力や,ロックマンシリーズへの思いを聞いたので,その模様をお届けしよう。
――E3 2018の出展に対する,海外のロックマンファンの反応はいかがでしょうか。
土屋氏:
「ロックマン」シリーズは海外でも強いコンテンツですが,以前から日本・海外関係なく,コアなファン層の意見が似ているというイメージがあります。気になる点も面白そうだと言ってくれる点も,だいたい同じようなところを挙げていただけるんです。
「ロックマン11」では,そういったシリーズファンが魅力に感じてくれるものを,小田が的確に打ち出せていると思います。
また,ファンの意見が地域ごとに割れているようなことはなさそうなので,第一段階として開発チームの考え方が伝わったかなとも感じています。
小田氏:
まずは感無量の一言ですね。ようやく「ロックマン」をファンの皆さんにお返しできたという感覚が大きいです。
作っている間も多くのフィードバックをいただいてきましたが,やはり実際にゲームに触れていただくまでは「独りよがりじゃないかな」という不安がありました。でもこうしてプレイしてくださっている姿を見ると,本当に作って良かったなというのが素直な感想です。
野中氏:
僕は「ロックマンX アニバーサリー コレクション1+2」やSwitch版「ロックマン クラシックス コレクション」を担当していて,「ロックマン11」ではお手伝いくらいですが,やはりこうしてブースに「Mega Man」(※1)が並んでいて,多くの人が遊んでくれているところを見ると「それぞれの思いを持ってきてくれているんだな」と,嬉しい気持ちになります。
出展している「Mega Man Legacy Collection」(※2)を遊んでる人を見ると,起動するタイトルが全然違うんですよ。偏りがあるかなと思っていたんですが,実際楽しんでいるお客さんたちは,純粋に自分の中の思い入れあるタイトルを選んでいるんですね。見ていて楽しいですし,広く愛されているんだなと実感します。
そういう点でも,まず過去シリーズ作品に触れるものを出してから,最新作の「ロックマン11」につなげる,というところもうまくいっているかなと感じます。
※1 ロックマンの海外版タイトル名
※2 「ロックマン クラシックス コレクション」および「ロックマンX アニバーサリー コレクション1+2」の海外版タイトル名
――新たにロックマンシリーズのプラットフォームになったSwitch版の反響はいかがでしょうか。
野中氏:
ロックマンはファミコン,ロックマンXはスーパーファミコンで生まれたシリーズなので,任天堂さんのハードとはもともと相性がいいんです。そして今Switchでは,インディーゲームの横スクロールゲームが元気ですよね。ドット絵の良い作品がとても多く,遊びやすいプラットフォームとなっているので,ロックマンにとっても本当に良い風が吹いているなと思います。
土屋氏:
2Dのドット絵横スクロールアクションみたいなゲームを,最近10代の子が楽しんでいると聞きます。それはノスタルジーで触れているのではなく,2Dや3Dといったものを問わず“良いゲームがあるから”選んでいるんですよね。そういった,垣根なく遊んでいる若い層が増えているんです。
例えばクラシックスに入っている昔のロックマンタイトルを,Switch本体の画面で出すと,情報の密度がピッタリ合うというか,安心感や安定感がある情報量だなと感じられるんです。プレイヤーの皆さんにもそういうところを感じている方が多いようで,Switchでロックマンを遊びたいという人も増えているようです。
もちろん若い方だけでなく,「任天堂にロックマンが帰って来た」というような人にも,エモーショナルなところで触れていただけているでしょう。
――試遊した人たちの反応はどうでしたか。
小田氏:
まずは自分のプレイスタイルで進めて,進めなくなったり,残機が減ったりしたところで新要素を試して「ああ,こういうこともできるんだ」という感じで確かめている人が多く見受けられますね。
今回は1ステージにさまざまな要素を入れて,ロックマンの魅力をつめこんだ試遊版となっていますが,ロックマンってプレイヤーそれぞれに「自分はこう進める」といったものがあるゲームだと思うんです。
あと,プレイを見ていると,どのあたりのシリーズ作品を遊んでいたかも分かって面白いですね。いきなり新要素の「ダブルギアシステム」を試している人もいれば,「ロックマンってチャージして撃てるんだ」みたいな人もいて。いろんな方が興味を持っていくれていると思います。
土屋氏:
「ロックマン11」の試遊版ステージは,いわゆる旧来の“ロックマン的”な要素を踏まえつつ,今までにないギミックの一端を見せるようなものとなっています。
でも,製品版の「ロックマン11」のステージはかなりバリエーションがあって,それらはプランニングの段階からしっかり考えて作っています。このステージはゆったり遊ぶ,こちらは急かされる,みたいに,特色というよりテーマを明確に打ち出しているイメージです。
ロックマンはシンプルな操作方法になっていて,複雑なことは求められません。そこから,まるで「この遊具ははこうやって遊ぶのか」と考えながらアスレチックで遊ぶような,“同じ操作だけど違う遊びに渡り歩ける楽しさ”というところを大事にしています。本当にバラエティ豊かなステージがあるので,プレイしたファンの皆さんの感想が楽しみです。
――グラフィックスについて聞かせてください。温かさのある手書き風の3Dにしたのはなぜでしょう。
土屋氏:
ファミコンのステージをイラスト調に全部書き直し,それを現代の技術で3Dにしたらどうなるのか,そこからどうアレンジしていくのかを試してたどり着いたものです。
小田氏:
2Dと3Dのいいとこ取りを狙っていった結果,みたいなところもありますが(笑)。ロックマンって,いろいろな時代を経ても,イラストのロックマンがみなさんの頭の中にあると思うんです。技術が向上した今,“イラストのロックマンが直接動かせるような感覚”も表現できますし,親しみもさらに増すだろうから,挑戦してみようと。
土屋氏:
グラフィックスは“普通に見えるようにする努力”がありました。例えばステージの背景だと,ぱっと見では分からないのですが,手描きによってできる違和感というのがあるんです。それを画面に投影したときに違和感ないよう,画角を何度もテストし,だまし絵のような調整をしました。
――過去シリーズ作品がそろい,最新作の発売も控えています。今後どのようにシリーズが展開していくのか気になります。
土屋氏:
僕だけではなく,それぞれにやりたいことはたくさんあると思うんですが,まずは「ロックマン11」を仕上げることに集中するという点は共通していると思うんです。
今は「手に取って本当に良かった」って言ってもらえるようにするための,最後の仕上げに入りつつある状態です。持てる力を出し切った「ロックマン11」がどう受け入れられたか,反省点などを見つけてからそのほかのことを考えていきたいと思います。
小田氏:
シンプルなものこそ,作ることが難しいというのは,ものの本質みたいなところがあると思うんです。ロックマンに向き合って,あらためてそう思いました。
予想だにしないことや,解決しなきゃいけない問題が起きて,ロックマンの作品を1つ作るだけでも,力が及ばないと感じることが多いんです。「次は何をしていこうか」という話をするときは,それらを踏まえないと,ロックマンを好きな人たちに失礼なものを出してしまうことになります。まずは「ロックマン11」を皆さんにしっかりお届けすることですね。
野中氏:
僕がロックマンのチームに加わったタイミングって,ちょうど土屋が30周年のロゴを作っていた時だったんです。それで,「ロックマンを遊んできた世代の自分が,30周年というタイミングを適当なものにしてはならない。新作も発売されるし,できることは全部やらなきゃいけない」と考えました。
今までロックマンを好きだと言ってくれた人が,「30年過ぎたけど,やっぱり今でもロックマンが好きだ」と胸を張って言ってもらえるものにしなきゃいけない。お休み期間が長かった分,盛り上げるため全力で頑張りたいですね。
――ありがとうございました。
「ロックマン11 運命の歯車!!」公式サイト
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