プレイレポート
実写映像の恐怖とギミックが容赦なく襲いかかる。日本一ソフトウェアの新作ホラーアドベンチャー「クローズド・ナイトメア」プレイレポート
目が覚めたら,殺風景な部屋に独り
薄暗く殺風景な部屋の中で目覚めた主人公 上代真莉亜(かみしろまりあ)は,身に置かれた状況はおろか,自分が何者であるのかも分からない。記憶がないのだ。さらに左腕の感覚が麻痺しており,動かすこともできない。
動揺を隠せない真莉亜。そんな時,部屋に置かれている携帯電話が鳴り,千鶴と名乗る子供(?)が話しかけてくる。「あなたは上代真莉亜。この実験の参加者です。あなたにはある役目を担ってもらいます」と。そして,実験が成功すれば解放してくれるという。
どうやら千鶴は,真莉亜のことを知っている人物のようだ。しかし,実験が始まる様子はないし,いつまでもこうしているわけにもいかない。しびれを切らした真莉亜は,建物から脱出するため,意を決して動き出す。
以上が導入部のストーリーラインとなる。つまりプレイヤーは,右も左も分からない状態から,建物の探索に乗り出すことになるのだ。
本作は「実写映像」「テキストパート」「探索パート」「仕掛けパート」の4つのパートで進行していく。
実写映像は,一人称視点のカメラワークによるイベントシーンとも呼べるパートだ。実写で展開されるだけあって映画を観ているような感覚で,役者の演技や恐怖の演出を存分に味わえる。何かの節目など,物語が盛り上がるシーンで挿入されることが多いため,実写映像のパートになると,ある種の緊張感が生まれる仕掛けだ。
テキストパートは,その名の通り文章を読み進めながらストーリーを追うためのパートとなる。登場人物のボイスやサウンド演出,カットイン画像も入り,物語に緩急をつけることに一役買っている。
途中,選択肢が出現することもあり,選択次第でその後の展開が左右される。中にはバッドエンド(ゲームオーバー)に直結するものもあるため注意が必要だ。なおバッドエンドを迎えてしまっても,シナリオツリーの分岐点からやり直せるので,その点はあまり気にし過ぎなくてもいい。
ただ,とある人物を殺すか殺さないかを選ぶだとか,どうするべきか悶絶するようなヤバイ選択を迫られることもあるから油断ならない。こうした選択肢が平然と出てくるのが,クローズド・ナイトメアなのである。
お次は探索パート。ポイント&クリックスタイルのパートで,部屋の怪しい箇所にカーソルを当てながら場所を調べていく。
ストーリーを進めると,インスタントカメラやICレコーダーなど,特定の箇所で使うと情報を得られるアイテムも登場する。インスタントカメラは主に不気味な霊の姿,ICレコーダーはこれまた不気味な音や声などをキャッチしてくれるアイテムだ。
ライターの筆者としては,カメラとICレコーダーは取材現場で必須の身近な仕事道具なのだが,危険なものを浮き彫りにするアイテムとして登場しているだけに,ゲーム中に使っていると気が気ではない。
仕掛けパートは,手がかりを元に正解を探す内容となっている。文字の組み合わせや南京錠の解錠といったオーソドックスなものから,狂気じみた残酷なギミックも存在する。
例えば,磔にされた男の指をペンチで折って苦痛を与えるかどうかの選択を迫られるシーンは強烈だ。[○]ボタンで指をペンチではさみ,さらに,アナログスティックや方向キーで力を入れたり弱めたりもできるなど,プレイしていて非常に痛々しい。実写映画のパートならまだ観ているだけで済むのに,これを自分で操作しなければならないので,「こんなことやらせないでくれよ!」と叫びたくなること間違いなしだ。もちろん,こうしたシーンはほかにも用意されている。
2人の男性キャラクターと,真莉亜の左腕に「憑く」女性
キャラクターについても触れておきたい。まず主人公の上代真莉亜は,先にも述べたように記憶を失っている。初見プレイヤーはストーリーの全貌を知らないため,持っている情報の少なさは真莉亜に近いものがある。なぜ自分がここにいるのか,そもそもここはどこなのか,千鶴とは何者なのか。そういった空白の記憶を真莉亜と共に埋めていくのだ。
さらに不気味なのは,左腕全体が麻痺していること。ただでさえ不安定な状況なのに,身体の一部に異常をきたしていることによって,よりいっそう不安を覚える。
ただ,これには八木 仁美(やぎ ひとみ)という人物の意識が関係している。どうやら,仁美が真莉亜の左腕に取り憑いているようなのだ。取り憑くと言われるとイメージは悪いが,紙とペンを使って真莉亜と筆談できるなど,物語の要所要所でアドバイスをくれることもあるため,悪意で満たされた人物ではなさそう……?
建物内では真莉亜の同行者として,2人の人物が登場する。そのうちの1人が銀城瑛翔(ぎんじょうえいと)だ。真莉亜と同様に過去の記憶がない。しかし物腰は柔らかく,爽やかな好青年といった雰囲気だ。物語序盤から登場するため,真莉亜にとってもプレイヤーにとっても頼もしい存在に感じられる。
もう1人の同行者である八木 純(やぎ じゅん)は,真莉亜や銀城と違い,記憶を持っている。とはいえ,実験によって建物に閉じ込められているという危機的状況は同じだ。真莉亜のことを仁美と勘違いするなど,引っかかる発言や行動も少なくない。風貌からヤンチャそうな印象を受けるが,芯の強い部分も持ち合わせている。
銀城瑛翔 |
八木 純 |
ほかにも,真莉亜の記憶の中に登場する男性や,フードを被った仮面の男,廊下を徘徊する仮面の男など,謎めいた人物達が登場するのだが,彼らについてはネタバレにならないよう詳しくは紹介しないでおきたい。果たして真莉亜は,無事に脱出できるのだろうか……。
実写+ホラーの表現が気になる人にはオススメ
歯ごたえのある謎解き要素も魅力
実写ということもあり,好みが分かれそうなタイトルではあるが,実写&ホラーが刺さる筆者からすれば,このうえない組み合わせだった。実写でしか出せないキャラクターの生々しさや,CGとは別種の恐怖を生み出すことに成功しており,今後こうしたスタイルのタイトルが出てきても,個人的には歓迎したい。
アドベンチャーの王道システムを組み合わせたスタイルとなっており,とっつきやすい点も好印象だ。アクションシーンはまったくないので,忙しい操作が苦手という人でも落ち着いて,歯ごたえのある謎解きにじっくり取り組める。ただ,謎解きで失敗したり誤った選択肢を選んだりすると即座にバッドエンドになるので,クリアするには多少の忍耐が必要かもしれない。かくいう筆者も,何度もバッドエンドを見ているので,あまり偉そうなことは言えないが。
ホラーゲームで暑い夏をヒンヤリ過ごしたい,一味違う表現のホラーゲームに興味があるという人は,ぜひ遊んでみてほしい。
「クローズド・ナイトメア」公式サイト
- 関連タイトル:
CLOSED NIGHTMARE
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(C)2018 NipponIchi Software,Inc
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