インタビュー
新境地を切り拓くダンジョン探索型RPG「世紀末デイズ」。ローグライクゲームへのこだわりも聞けた開発陣へのインタビューを公開
物語の主人公となる少年少女達は,世紀末感漂う東京を舞台に,失われてしまった日常を取り戻すべく,ダンジョン化してしまったエリアを奔走することになる。
今回4Gamerでは,そんな本作の開発キーマンであるプロデューサーの山口 誠氏(DeNA)と,ディレクターの後藤 真氏(スパイク・チュンソフト),不思議のダンジョンチームの要である長畑成一郎氏(スパイク・チュンソフト)の3人にインタビューを行った。開発秘話から今後の展開,さらにはローグライクゲームの面白さと本作の関係性まで,興味深い話を聞くことができたので,ここでまとめてお届けしよう。
「世紀末デイズ」の誕生秘話と開発のこだわり
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。最初に,皆さんがどんな形で世紀末デイズに関わっているのかを教えてください。
山口 誠氏(以下,山口氏):
世紀末デイズではプロデューサーを担当させていただいています。元々コンシューマ系ゲームの開発に携わっていまして,実は前職がスパイク・チュンソフトで,今回同席している2人とも面識があります。
後藤 真氏(以下,後藤氏):
本作では,ディレクターとして開発のとりまとめを行っています。ビジュアルノベル系のタイトルを担当することが多く,山口さんとは,PSPの「TRICK×LOGIC(トリックロジック)」の開発でご一緒しました。
長畑成一郎氏(以下,長畑氏):
チュンソフト時代から,さまざまなローグライクゲームには何らかの形で参加させてもらっています。世紀末デイズでは,主にダンジョンのバランス調整を担当しました。
4Gamer:
そもそも,世紀末デイズが作られることになったきっかけはなんだったのでしょうか。
中学生の頃にスーパーファミコンで「トルネコの大冒険 不思議のダンジョン」を遊んでみたところ,これまで私がプレイしたことのない斬新なシステムに驚くと同時に「何だこの面白いゲームは!?」と完全にハマってしまいまして……。
今のスマホアプリで遊んでいるプレイヤーの多くは,そんなローグライクゲームに触れる機会が少ないんじゃないか,スマホでもちゃんと遊べるローグライクゲームをリリースして,そんな方にローグライクの面白さを届けたい,同じ感動を享受してほしいという想いがありました。
4Gamer:
トルネコの大冒険は,スパイク・チュンソフトの前身,チュンソフトの名作タイトルですし,同作でローグライクゲームの魅力に気づかされた人も多かったと思います。
ということは,きっかけはDeNAで,ローグライクゲームを出すなら,やはりその道のプロフェッショナルであるスパイク・チュンソフトに協力をお願いしたい,という流れになったわけですね。
山口氏:
実は,企画の初期段階では,スパイク・チュンソフトと一緒にやるとは決まっていなかったんですよ。しかし,CEDECというゲーム開発者向け技術交流会でたまたま後藤さんと再会して,そこで世紀末デイズの話をしたところ,タイミング良く開発ラインを空けられそうだと聞き,そこからはトントン拍子で話が進んでいった感じですね。
縁があったんでしょうね。本当にタイミングが良くて,不思議のダンジョンチームのコアになるエンジニアと長谷川(※)の開発ラインを空けることができました。
※スパイク・チュンソフト所属のデザイナー長谷川 薫氏。「風来のシレン」シリーズのキャラクターデザインで知られる
4Gamer:
本当に良いタイミングだったんですね。そんな世紀末デイズですが,どういったコンセプトで開発されたのでしょうか。
山口氏:
世紀末デイズは「新しいローグライクゲームをプレイヤーにどう届けるか」をコンセプトに開発を行ってきました。世界観と操作感はとくにこだわって制作したので,注目してもらいたいですね。
4Gamer:
世界観で言えば,ビジュアルが公開された時点でかなり話題になっていましたよね。自分もそうですが,歴代の不思議のダンジョンシリーズファンとしては,新鮮さと同時に驚きもありました。
山口氏:
現代のプレイヤーを引き込むフックになる要素は何かを熟考し,中二病的アプローチとしては王道になりますが,“世紀末”と“サバイバル”をテーマとし,10代〜20代のプレイヤーに刺さるような世界観を構築しました。
4Gamer:
個人的には,“世紀末”というキーワードが引っかかっています。というのも,本作の舞台はスマホなどが普通にある世界なので,1999年もしくは2000年ではないですよね。ということは,さらに100年後なのか,はたまた現実の常識に当てはまらないのかなど,気になる部分が多いです。
山口氏:
ネタバレになるので詳しくは話せないのですが,世紀末というキーワードは,いわゆる「世界の終わり」的なニュアンスと,“1999”というストーリーに関わる数字にかかっています。
後藤氏:
ただ,この点は裏設定になっており,プレイヤー自らが考えることになるので,分かりやすい形ではないかもしれません。
4Gamer:
なるほど。主人公の妹,天霧黒羽が仲間になるのかも含めて,今後の展開を楽しみにさせてもらいます(笑)。続いて,もうひとつのポイントになっている,操作感へのこだわりについて聞かせてください。
山口氏:
すでにスマホ向けローグライクゲームはいくつかリリースされていますが,プレイヤーの意見を探ってみると,操作に関するものが多かったので,ローグライクゲームの醍醐味をスマホで楽しめることを命題に,オート機能をはじめ,片手でプレイしてもストレスのない操作感を目指しました。
4Gamer:
横画面,両手持ちでの操作は“ゲームをしている感”はあるものの,移動中などの空き時間でプレイするとなると遊びにくい部分がありますからね。
山口氏:
ええ。ローグライクゲームに初めて触れる人を想定していることもあって,できるだけシンプルな操作を目指しました。ローグライクゲームの面白さを引き出すことが前提となりますので,スパイク・チュンソフトのチームと共同で,何度もスクラップ&ビルドを繰り返し,ようやく良い形になったのかなと考えています。
4Gamer:
イメージでは,開発スパイク・チュンソフト,運営DeNAといったようにきっちり線引きがされているのかと思っていましたが,本当の意味で両社による共同開発が行われたんですね。
山口氏:
そうですね。両社のメンバーがひとつのチームとなって,世紀末デイズを作り上げる感覚でした。
企画の立ち上げ当初は,私もある程度こちらで形にしたものをDeNAさんに納めると思っていたのですが,実際はお互い意見を交換しながら作っていくという形でした。もともと山口さんを知っていた,という内情があったからかもしれませんが。
4Gamer:
DeNAとスパイク・チュンソフトの座組みも注目のトピックになっていますが,一緒に開発を進めていくなかで,印象に残ったことなどはありますか。
山口氏:
スパイク・チュンソフトに初めて世紀末デイズの説明をしにいったときのことは印象に残っていますね。
こちらから「ガチャがあると面白さが損なわれないでしょうか」と開発チームに相談をしたところ,「どうやっても面白くできるから,マネタイズはお任せしますよ」と心強い一言をいただきました。正直,最初はガチャというワードを出すだけで怒られるのではないかと思っていたので……。
長畑氏:
そこまで強気だった(笑)?
山口氏:
ええ,すごく心強かったですよ!
4Gamer:
スパイク・チュンソフト側は印象的だったところはありますか。
後藤氏:
不思議のダンジョンの開発は,どうしても物量が多くなってしまうので,基本的にキャラにしろ背景にしろ効率化を考えて開発を進めていくんですね。トコトン作り込むこともできますが,納期の問題もあるのでうまい着地点を見定めていくつもりでした。
ただ,DeNAさんにα版を見せたところ「納期が遅れてもいいので,もっと見た目をしっかり作ってほしい」という要望があがりました。正直,スピード感を重視するかと思っていたので,DeNAさんの「時間をかけてでも良いものを作りたい」という想いを感じたのは,とても印象的でしたね。
4Gamer:
実際にβテストへ参加しましたが,舞台となっている東京をモチーフにした背景は,かなりのこだわりを感じました。キャラクターも個性が出ていますし,見ているだけでも楽しめるような作りになっていますよね。
後藤氏:
最終的には個性を乗せたリッチなものに仕上げることができたかなと。
山口氏:
開発当初は,適切な期間とコストで仕上げる,ということを考えていたのですが,開発からリリースまで1〜2年かかることを考えると市場も変化していますし,そのときの最高品質を目指すべきだろうという考えから,方向転換に至りました。
4Gamer:
なるほど。スマホのアプリを開発するにあたって,こだわりというかルールみたいなものはあったのでしょうか。
山口氏:
スマホアプリ開発の“作法”は一度資料化してお渡ししましたが,それ以上にローグライクゲームの面白さを阻害するものは,できるだけなくそうと考えていました。例えば,装備品はガチャで出ない,などですね。
後藤氏:
我々としても最初から明確なルールを作っていたわけではなく,スクラップ&ビルドを繰り返す中で少しずつ洗練され,形になっていった感じです。
4Gamer:
スパイク・チュンソフトはコンシューマゲームの印象が強いですが,スマホアプリを開発してみた印象はいかがですか。
後藤氏:
ゲームシステムの根幹の開発については,スマホでもコンシューマでもそう大きく変わらないのですが,スマホ独特のタッチ操作と,常時サーバーとの通信が必要という部分は苦労しましたね。
4Gamer:
一手一手考える場面もあるゲームですが,スマホアプリということでサクサク感も必要になりますよね。
後藤氏:
十字ボタンを押した瞬間に反応があるなど,コンシューマゲームのレスポンスの良さに慣れていると,スマホのタッチ操作に違和感を感じる人もいると思うんです。そのため,どんなタイミングでどう演出すると気持ち良いのか,試行錯誤を長い間続けましたね。
タッチしたあとすぐに反応があったほうがいいのか,多少の余韻を残しながら演出をいれたほうがいいのか……。DeNAさんの意見も聞きながら細かくチューニングしていった結果,非常にバランスのとれた操作性になったかと思います。
序盤はカジュアルながら,中盤以降はまさに“シレン”の連続
4Gamer:
世紀末デイズは,“ローグライクゲームの面白さ”にスポットを当てて開発されたとうかがっていますが,みなさんの考えるローグライクゲームとはなんでしょうか。
山口氏:
ではまず私から。専門家の長畑さんより先に言わせてください(笑)。私の見解としては,ローグライクゲームは“リソース管理が重要なゲーム”だと考えています。通常のRPGでも,ボス戦の前にMPを節約して進むなど,少なからずリソース管理はしていると思うのですが,すごく重要視している人はあまり多くないと思うんですよ。それがローグライクゲームになると,1ターンごと,あるいは敵1体ごとに,リソースを意識して管理する必要があります。
4Gamer:
世紀末デイズでもリソース管理は必要不可欠な攻略要素ですよね。
山口氏:
世紀末デイズでは,HPや満腹度,必殺技を使うSP,手持ちのアイテムなどのリソースをいかに上手く使ってダンジョンをクリアするかが大事になります。なので,リソースを上手く節約してボスまでたどり着けたときや,窮地を脱出できる最良の一手を思いついたときに,ローグライクゲームらしい面白さを感じてもらえると思います。
4Gamer:
長畑さんはどうでしょうか。
長畑氏:
山口さんが言ったようなリソース管理は,ローグライクゲームを形成する大事な要素なのは間違いありません。加えて,ゲーム内で起きるハプニングに対し,アイテムを大量に使ったり,武器を強化したりと,人によってそれぞれ違った対処法があるのも面白いところなのかなと考えています。
逆にハプニングに対処できず,戦闘不能になってしまったとしても,その状況をほかの人と共有して楽しめるのが本作の魅力的な部分となっています。
4Gamer:
ランダム生成のダンジョンだけに,想定外のハプニングが起きることが多々ありますが,それを乗り切ったときの満足感はかなりのものですね。
そうしたローグライクゲームの面白さが詰め込まれた世紀末デイズですが,ボス戦でキャラパワーが足りずジリ貧というケースこそあるものの,道中ではなかなか“死ねない”ので,カジュアル寄りな印象を受けています。言うなれば“理不尽不足”と言いますか……。
山口氏:
その点に関しては,プレイヤーが“理不尽具合”を選べるようになっているかなと。例えば,風来のシレンではダンジョンに入るときは必ずレベル1からスタートしますが,世紀末デイズでは,あらかじめレベルの上がったキャラでチャレンジできる。したがって,レベルの上がったキャラクターであれば理不尽な死は少なくなりますし,逆にレベルが低ければ理不尽さが際立ってきます。
4Gamer:
適正なレベルでヒリヒリする緊張感を味わうこともできるし,事前の準備を万全にすれば,その分楽に攻略していけるバランスになっているわけですね。
山口氏:
はい。以前の不思議のダンジョンシリーズを経験したことのある人は,その知見を活かしてどんどん先に進んでいけますし,始めてローグライクゲームに触れる人は,しっかりとキャラクターを育てればゆっくりでも先に進んでいける難易度になっています。
ゲーム序盤は罠も少なく,厄介なモンスターも少ないので,カジュアルな印象を持たれるかもしれませんが,後半からは風来のシレンさながらに高難度となりますので,攻略しがいのあるダンジョンへと様変わりすると思いますよ。
山口氏:
遊んでいるうちに「超ハード」モードをプレイできるようになりますが,ここはクリアそのものが難しいダンジョンになっています。レベルを上げるのは当然として,そこからどうやって攻略していくのか検証を重ねる必要があるほどです。
世紀末デイズでは,複数のキャラクターを動かすシステムになっていますが,場所の入れ替えなど複数人だからこそのテクニックなどもあるので,それらをフル活用してクリアを目指してみてください。
4Gamer:
さきほど山口氏がおっしゃっていたように,ローグライクゲームはダンジョンに入るたびレベル1からスタートという印象があります。不思議のダンジョンの中にはレベルが継続されるものもありますが,多くのローグライクゲームファンはレベル1からというイメージをもっているのではないでしょうか。そんななか,ダンジョンをまたいでレベルが継続されるという仕様にした理由を教えてください。
長畑氏:
RPGですから,当然シナリオがありますよね。主人公が冒険をしていき,最後にボスを倒してエンディング……そうした流れの中で,レベルが1に戻ってしまって本当にいいのか,今なお悩んでいます。死んでレベル1に戻るのは,ゲームバランスを考える上ではやりやすいのですが,シナリオの流れとしてはどうなのか,と。
4Gamer:
キャラクターのレベルは,プレイヤーの財産とも言えますから,その財産を奪うことになるのは確かに悩ましい問題ですね。
長畑氏:
リスクとリターンの管理はゲームとしての面白さとして必要なものですが,レベルやアイテムとは違うものでリスクを負う形にできれば,ゲームの面白さそのものは阻害されないのではないか。そう考えていています。
4Gamer:
なるほど。
長畑氏:
レベルが1に戻る,アイテムがなくなるというのは,刺激的というか,どうしても喪失感が先走ってしまって,ちょっとゲームにつまずいただけで,人によってはスマホを投げて辞めてしまいかねない。開発チームとしては,できるだけスマホを投げずに前を向いてプレイしてもらえるようにしたいんです。
4Gamer:
そのためにも,経験値もアイテムのなくならないほうがいいと判断したわけですね。
長畑氏:
実はこうしてお話しするチャンスがなかなかなくて言えなかったのですが,経験値やアイテムがなくならなくても問題ないと,前々から考えてはいたんです。
4Gamer:
そうなんですか……!?
ありがたいことに,「アイテムや経験値がなくなるスリリングなゲームだ」と喜んでくださる人もいますが,それ以上に「そんな難しいゲームやりたくない」と言って,プレイ自体してくれない人が大勢いますから……。
4Gamer:
ときおり理不尽なイベントが起きつつも,プレイヤーのアイディアと幸運で乗り切れる,レベル1からスタートするからこそ生まれる絶妙なバランス,そこを意識しているんだと思っていました。
長畑氏:
レベル1からスタートするとしても,プレイヤーとしては作業というか,ゲームを進めるためのルーティーンが発生してしまいますよね。レベルが継続すると,そのルーティーンは多少なりとも緩和されますので,一長一短かなとは思います。あと,プレイヤーのモチベーションとして,何も残らないというのは問題ですし,冷静に考えると「時間を返せ」となるのも分かります(笑)。
4Gamer:
レベルを継続する,しないでは,ゲームの本質的な面白さは変わらないということですね。
長畑氏:
そうですね。その先のやり込みという意味では,レベルを上げきって装備も整った状態がスタートラインと言えるようなダンジョンも作っていますので,継続して遊んでガッカリすることはないはずです。
開発としては,どういう難易度でもバランスを取れると思いますが,多くの人に喜んでもらうために,初めて不思議のダンジョンシリーズに触れる人から,既存のタイトルを遊んだことのある人まで,幅広い層が楽しめるように配慮しています。
4Gamer:
既存ファンの期待に応えつつも,新規のプレイヤーも獲得していかなければならないというのは,すごく難しい部分ですよね。
何度かプレイすれば面白さは分かってくるものの,基本プレイ無料のアプリということもあって,序盤でつまずいてしまうとそのままアンインストール,なんてこともザラにありそうです。
長畑氏:
序盤を遊びやすく設計しているのは新規プレイヤーが離脱しないため,というのはありますね。すでにこの手のゲームになれている人であれば,序盤はオートで回しつつ,詰まったところで本格的に遊んでみるのが丁度良いかもしれません。
4Gamer:
ちなみに,最初から高難度になるようなクラシックモードのようなコンテンツは考えていないのでしょうか。
後藤氏:
ダンジョンに潜るたびレベル1からスタートし,キャラクターの死亡=アイテムロストというクラシカルなコンテンツについては,サービス開始前から今まで議論が続いています。ただ,最初はシナリオなどのゲーム本編に集中してもらいたいので,ひとまずは見送っている状態です。
山口氏:
不思議のダンジョンシリーズは歴史もありますし,ファンの方々からしてみれば,歴代タイトルで磨いたスキルを活用できる遊びを求めていることは分かります。しかし,今から始める人は当然スキルが伴っていないため,既存のシリーズタイトルの要素を抽出しただけではダメだと思い,まずは幅広い層へアピールできるような形にしました。
今後,皆さんの望む声が多ければ,高難度のクラシカルモードを導入することは可能ですので,ご意見ご要望を投げていただきつつ,お待ちいただければと思います。
4Gamer:
世紀末デイズでローグライクゲームデビューしたプレイヤーたちが知識を積み重ねたあたりで,高難度モードが登場すると良い流れができそうですよね。
長畑氏:
シリーズ化してきたタイトルは,既存タイトルの延長線で遊びたい層と,新しく始める層に分かれていますが,どちらにも満足してもらえるものにすることが大事だと思っています。不思議のダンジョンシリーズにおいても議論を重ね続けているのですが,なかなか答えは出ずに今に至ります。
物足りないあなたに贈る高難度コンテンツ「デスプロムナード:死の散歩道」
4Gamer:
本作は複数のキャラクターを操作するゲームですが,オートで動くキャラクターのAIが賢くて感動しました。昔からのシリーズファンからすると,頼りになりすぎて戸惑ってしまうかもしれないレベルです。
長畑氏:
ありがとうございます。がんばりました(笑)。過去のAIは,正直なところ,ハードウェアのスペックの問題で少し詰め切れないところがあったんです。スマホはメモリが潤沢にあり,過去作よりも広範囲で状況を見ることができ,結果として賢く動かせるようになりました。
もちろん,ロジックの改良は行ってますが,今回ばかりは,スマホは高機能なコンピュータなんだなと再認識しましたね。古くからのコンシューマハードを見ている我々としては,「ギガ単位でメモリがあるだと……!?」と,驚きました(笑)。
4Gamer:
メモリがあっても,そのほとんどがグラフィックスのほうに回されることもありますしね。もしかしたら,スマホだからこそできた賢いAIなのかもしれません。
長畑氏:
それはありますね。以前のタイトルの中にはメモリや処理速度の関係で周囲1マスくらいしかサーチできないものもあって,それに比べると世紀末デイズでは,AIキャラそれぞれがどこの位置にいるのかまで把握しているので,適切な行動が取れるようになっています。
世紀末デイズでは,ローグライクゲームをやったことのない初心者の人でも,オートプレイの動きを見ていると,ローグライクゲームの遊び方が自然に身に付くはずです。ただ,いくら賢いとはいっても,後半のマップ,とくにモンスターハウスなどはマニュアルで動かさないと厳しいかもしれません。
4Gamer:
オートモードについては,企画段階から盛り込まれていたのでしょうか。
山口氏:
一番最初の企画書からオートモードは入っていましたね。不思議のダンジョンシリーズは,“高難度”という部分がフォーカスされがちなんですが,実は平穏な階層を歩いている時間も結構あるんです。風来のシレンでいえば,テーブルマウンテン以前のダンジョンなんかは,比較的低難度で敵に会うまでずっとダッシュし続けたりしますし。
4Gamer:
ええ。モンスターハウスでもない限りは,罠サーチもせずに走り続けるのが基本ですね。
山口氏:
重要な局面での“一手の重み”を演出するために,その対比として平穏な場面では,なるべく“手軽さ”を感じてもらいたいと思っていまして,スマホアプリとしては,オート機能で手軽さを表現するのが適切だろうと考えました。スマホアプリによくあるフルオートでプレイヤーは見ているだけというよりは,“Bダッシュ”の感覚で使っていただくと良いと思います。
4Gamer:
ああ,分かります。敵が見えるまでサーチもせずに走り続け,その延長で,ザコ敵も自動で殴ってくれる感覚ですね。
山口氏:
オートモードでプレイヤースキルを発揮できる場面がなくなるのではないか,と感じている人もいるかと思いますが,プレイヤースキルに左右されないレベルのところをオートで飛ばせるくらいの感覚になるかと思います。
進んでいった先のボス戦やモンスターハウスではオートでの攻略が難しいので,オートを止め,それこそ詰め将棋のように一手一手に時間を掛けて思考していただくのが,世紀末デイズらしいローグライクゲームの楽しみだと考えています。
4Gamer:
一番引いたカメラアングルは,フロアを上から見下ろす形で,マスをそれぞれタップできたりして,それこそ詰め将棋に近いですよね。
これまでお話を聞いてみて,世紀末デイズは,不思議のダンジョンシリーズに新しい息吹を吹き込む意欲作であると感じますが,既存のシリーズタイトルを遊んでいる人が序盤だけを見て,「俺たちの知っている不思議のダンジョンじゃない」と感じてしまうかもしれません。その点はどうお考えでしょうか。
山口氏:
スマホアプリをよく遊ぶプレイヤーであれば,スマホアプリの“作法”が守られていることに安心してもらえると思いますが,不思議のダンジョンシリーズのファンからすると,おっしゃる通り,違和感を感じることがあるかもしれません。
理想はローグライクゲームとスマホアプリの両軸ですが,スタート地点としては,不思議のダンジョンを初めて遊ぶという人でも楽しめるものにしました。それでも,継続してプレイして先に進めていけば,往年の不思議のダンジョンらしい面白さも感じられるはずです。
長畑氏:
プレイするのは,コンシューマのゲームをがっつり遊びつくした人ばかりではありませんので,難易度的はこのぐらいが丁度いいのかなと考えています。とはいえ,シリーズのファンをないがしろにするつもりはありませんので,リリース後,ファンに楽しんでもらえるコンテンツを見せていきたいですね。
4Gamer:
不思議のダンジョンのファンの一人としては,最初のリリース資料を見たとき,基本プレイ無料のアプリでローグライクのゲーム性が保たれるのか心配でした。しかし,βテスト版をプレイしたうえで今回開発陣のお話を聞いてみると,その不安が解消された気がします。
山口氏:
不思議のダンジョンシリーズの最新作ということで,当然過去のタイトルの良いところは継承していますが,同時に新しいチャレンジもしています。
マネタイズ部分で不安に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,我々としては,ずっと継続して遊んでいただけるコンテンツであることが第一であり,面白いゲームであればニーズは後から必ず付いてくると考えています。遊んでくださるプレイヤーが欲するもの,それが商品になるわけですから。
4Gamer:
リリース後は,運営サービスも重要になると思いますが,運営をする上でのポリシーなどあれば教えてください。
山口氏:
DeNA=マネタイズ重視というイメージを持たれがちなのですが,私自身コンシューマ出身ということもあって,とにかく多くのプレイヤーに楽しくゲームをプレイしてもらいたいという想いが強いです。
マネタイズとしても,お金をかけた人が正義というわけではなく,遊んでいるプレイヤーに「お金を払ってでも欲しいものありませんか」と問いながら,作っていきたいと思っています。
4Gamer:
PvPがないタイトルなので,キャラガチャもシビアにならずに気軽に引けるのが,個人的に嬉しいですね。
さて,現在は正式リリース前のタイミング(2018年7月24日収録)ですが,リリース後の展開について,話せることがあれば教えてください。
山口氏:
そうですね,現在歯ごたえのあるコンテンツを求める人に向け,「デスプロムナード:死の散歩道」という高難度ロングダンジョンを作っていて,できるだけ早期に導入したいと考えています。
4Gamer:
先にお聞きした超ハードも高難度とのことでしたが,それ以上のダンジョンが実装されるんですね。
後藤氏:
上級者や,風来のシレンなどをやり込んだプレイヤーが楽しめるようなエンドコンテンツとしてお届けするつもりです。
山口氏:
デスプロムナードに関連して,「称号」というシステムも用意していて,クリアした階層を別のプレイヤーに“見せびらかせる”仕様となってます。
4Gamer:
SNSで盛り上がりそうですね。シナリオの追加はいかがでしょうか。
山口氏:
ローンチの時点でシナリオは10章までですが,その後は月に1章ずつ追加したいと考えています。13章以降はエピソード2となりまして,舞台が東京から関西に向かうので,背景のグラフィックスを含めて楽しんでいただけけたら嬉しいですね。
後藤氏:
もちろん,新キャラクターも追加します。新しいクラスも入るので,自分だけのチームを作る楽しみ,ダンジョンを攻略する作戦の幅が広がると思います。
4Gamer:
個人的には,狙撃兵など遠距離攻撃ができるクラスが,シナリオの進行で仲間になると嬉しいなと思ったりするのですが(笑)。
山口氏:
新しく実装される関西まで行くと,もしかすると……?
4Gamer:
おお……!? 期待しています。それでは最後に,4Gamerの読者に向けてメッセージをお願いします。
長畑氏:
ようやくリリースまでこじつけた世紀末デイズは,我々が表現したいものを,しっかりと盛り込めたと思いますので,ぜひ遊んでみてください。
後藤氏:
ゲームバランス以外にも,細部までこだわって制作しました。多くのプレイヤーに遊んでいただき,喜んでいただけたら幸いです。
山口氏:
不思議のダンジョンシリーズとしては,まったく新しいチャレンジが含まれたタイトルです。長く遊んでもらえるようなタイトルにするべく,これからアップデートや改修を行ってまいりますので,世紀末デイズをよろしくお願いします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
―――2018年7月24日収録
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