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印刷2019/01/28 00:00

イベント

eスポーツの未来はアジアにあり。アジアeスポーツ連盟会長のビジョンが語られた,JeSU記者会見レポートを掲載

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 2019年1月26日と27日の2日間,日本eスポーツ連盟(以下,JeSU)主催によるeスポーツイベント「eSPORTS 国際チャレンジカップ 〜日本選抜 vs アジア選抜〜」(以下,チャレンジカップ)が,千葉の幕張メッセにて開催された。
 アーケードゲームの展示会である「JAEPO2019」と,Gzブレインとniconicoの主催で開催されている「闘会議2019」との共催となるこのイベントでは,「ウイニングイレブン 2019」「ストリートファイターV アーケードエディション」PC / PS4 / AC),「鉄拳7」PC / PS4 / Xbox One / AC),そして「Overwatch」PC / PS4 / Xbox One)の4種目で,日本代表チームとアジア選抜チームによる戦いが繰り広げられた。

 その模様についても後日記事を掲載する予定だが,本稿ではこのチャレンジカップに合わせて開催された,JeSUによる記者会見発表の模様を紹介しよう。登壇したのはJeSUの会長であり,またセガホールディングスの代表取締役社長を務める岡村秀樹氏と,アジアオリンピック評議会(以下,OCA)の唯一の認可団体であり,45の国や地域が加盟するアジアeスポーツ連盟(以下,AESF)の会長 ケネス フォック氏だ。

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「日本eスポーツ連盟(JeSU)」公式サイト



eスポーツでアジアを一つに


JeSU会長 岡村秀樹氏
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 岡村氏による挨拶から始まった記者発表では,まず今回のチャレンジカップの意義を語るとともに,この後にスピーチを行うフォック氏の紹介が行われた。岡村氏は,この大会が日本で行われる,初のeスポーツの国際大会と述べ,日本のeスポーツシーンにとって記念すべきできごとであると強調。今後も参加国を増やしつつ,継続していきたいと抱負を語っていた。

 またフォック氏が会長を務めるAESFは,2018年8月に開催されたアジア版オリンピック「アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン」で,初の公開種目となったeスポーツ部門のオーガナイザーを務めた団体でもある。同大会に選手団を派遣したJeSUとしても,この1年間はフォック氏とかなりのやりとりがあったそうで,そうした中で実現したのがこのチャレンジカップなのだという。

 続いて登壇したフォック氏は,この場を実現したJeSUおよびその関係者への挨拶から始まり,また選手を派遣した香港,チャイニーズタイペイ,韓国,タイ,フィリピン,サウジアラビアのeスポーツ団体へ感謝の言葉を述べた。
 またフォック氏は岡村氏のスピーチを受け,2018年のアジア競技会はeスポーツの歴史における重要な一歩であると語る。さらに「eスポーツに関してアジアは精神的な大陸である」として,今回のチャレンジカップなどの取り組みを通して,アジア全体のプレイヤーの能力の底上げ,また競争を通じた相互理解の促進を推し進めたいと今後の目標を明らかにした。

eスポーツにおけるアジアの優位性を語る根拠して,氏はアジアには12億人のアクティブゲーマーがおり,トッププレイヤーの多くがアジア出身であること,またUBSの調査によると,ゲーム市場が2030年までに2000億ドル規模となり,その原動力はeスポーツになるだろうという予測などを挙げていた
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 また日本のことは,ゲーム産業における長い歴史とIPを持つ,リーダー的な国の1つであると捉えているという。また包括的なインフラと最先端の技術,さらには多くのゲーム開発者を抱えていることから,日本の社会はeスポーツのような新しい概念を受け入れる用意ができているので,eスポーツの普及については楽観視しているとの意見を述べた。

両氏のスピーチ後は,今回のアジア選抜チームに選手を送ったeスポーツ団体の代表者が登壇し,短いコメントが述べられた
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写真はチャイニーズタイペイeスポーツ協会(CTESA)のチェン ピンロン氏。2012年に設立された同協会は政府や学校などとも連携し,eスポーツの普及に務めているという
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香港eスポーツ協会(ESAHK)のユン チュンシング氏。香港においてもeスポーツは大きな可能性を秘めた産業との認識とのこと。振興のため,政府が1200万米ドルの投資を行ったというエピソードも
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韓国eスポーツ協会(KeSPA)のキム ジョンション氏。eスポーツにおける日本との交流は2007年から続いているという。今後も日本を含めたアジア諸国と,関係を強化していきたいとのこと
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サウジアラビアeスポーツ連盟(SAFEIS)のアブドルアジズ アルハッザ氏。選手達を激励するとともに,eスポーツの発展のため,今回のような取り組みが続いてほしいと語っていた
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日本やアジア諸国のeスポーツ関係者と良い関係を築ける機会であると語った,タイeスポーツ連盟(TESF)のチャナット シーチャンワンペン氏
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フィリピン東南アジアeスポーツ連盟のラモン スザーラ氏は残念ながら欠席ということで,MCを務めたアナウンサーの田口尚平氏がコメントを代読した。同団体は2019年末に開催される「東南アジア競技大会」において,初のメダル種目となるeスポーツ部門を主催する予定だ

 フォトセッションを挟んだ記者会見の第2部では,2019年のJeSUの活動予定の報告が行われた。まず1月21日より活動を開始した,JeSU地方支部の紹介が行われた。

ステージでは2018年の活動報告も行われたが,内容は概ね2018年12月に掲載した記事と同じなので,ここでは割愛する
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 各地方支部は,その地方の関連イベントを統括し,地域に根ざした活動によるeスポーツの振興を目的としている。JeSUとしては47のすべての都道府県に設置したい考えだがいきなりは難しく,現時点では,JeSUの前身となった団体の一つである,JeSPAの支部および支部候補を継承した形で展開しているという。

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 また地方支部との連携については,JeSU側から大会の運営ノウハウやメーカーとの折衝,また各支部の成功事例の共有などで協力を行うほか,今後も活動方針のすりあわせを行いながら,足並みを揃えていく方針だそうだ。
 さらに新たな支部の開設にあたっては,公式サイトにて,後日応募要件などを公開する予定だが,今のところ慎重路線を取っており,認可は実績と志を持った団体に限るとのことである。

ステージ上では,活動を開始した11の支部のうち,6つの支部の代表者が登壇。挨拶を行った
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北海道eスポーツ連合の金子 淳氏。かつてゲーミングチーム「Naturals北海道」を運営していた株式会社e-スポーツ北海道が支部を手がけるとのこと
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静岡県eスポーツ連合の山崎智也氏。イベントを行っていた各タイトルのコミュニティが大きくなったタイプの運営チームだとか
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愛知県eスポーツ連合の片桐正大氏。ゲーミングチーム「名古屋OJA」の運営も手がける。2026年のアジア競技大会の開催地は名古屋とアピール
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富山県eスポーツ連合の堺谷陽平氏。地元のプレイヤーや自治体,企業の支援により,富山を中心に2016年から活動しているという
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兵庫県eスポーツ連合の五島大亮氏。神戸の観光地,有馬温泉を拠点とするゲーミングチーム「トレスコルヴォス有馬」の運営にも関わる
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岡山県eスポーツ連合の本村哲治氏。岡山駅前商店街で,eスポーツイベントを定期的に開催しているとか

そのほかにも,2019年の取り組みとして幾つかの情報が公開された。新たなオフィシャルスポンサーとなったわかさ生活もその一つだ(関連記事
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国体の文化プログラムとして,47都道府県で予選が実施される「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」(関連記事)。エントリー情報などの詳細は2月1日に公開となる。実行委員会も,JeSU側で新たに組成するという
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選手の情報を知りたいというニーズに答えるべく,選手データベースのβ版がJeSU公式サイトで公開中だ。掲載する情報は選手の同意を得たもののみとのこと


eスポーツの未来はアジアにあり――AESF会長 ケネス フォック氏合同インタビュー


 ステージ終了後,AESF会長のフォック氏へのメディア合同インタビューが行われた。最後のその模様を掲載して,記事の結びとしたい。

――オリンピックサミットにて,IOC(国際オリンピック委員会)がeスポーツにネガティブなコメントを出しましたが(関連記事),アジア競技会はこの影響を受けるでしょうか。

AESF会長 ケネス フォック氏
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ケネス フォック氏(以下,フォック氏):
 オリンピックサミットでは,eスポーツについて2度の言及がありました。まず2018年の初頭のサミットと,今ご質問があった11月のサミットですね。ここから2つの重要なことが分かります。
 まず一つは,IOCがeスポーツを非常に重要視しているということです。彼らはもっと議論を深める必要があり,GAISF(国際スポーツ連盟機構)と協力して「eスポーツフォーラム」を立ち上げました。二つ目は,eスポーツが従来型のスポーツに匹敵する競技であると,彼らが認識を改めたことです。これはフィジカルとメンタルの双方に及びます。つまり,ドアは開かれたワケです。
 ただ,確かにドアは開かれましたが,次はそのドアを通り抜けなければなりません。なので,いずれはオリンピックの正式競技になるでしょうが,それがいつかというのは定かではありません。
 しかしいずれにしても,コミュニティは作っておく必要があります。IOCを説得するためには,統一された一つの組織で臨む必要がありますから。なので今回のようなイベントは,その最初のステップと言えるのではないでしょうか。また「オリンピックの価値観」についても,我々はもっと学ぶ必要があります。単に大会というものへの姿勢というだけでなく,もっと根源的なものだからです。

――2022年のアジア競技会では,eスポーツにチャンスがあるでしょうか。

フォック氏:
 OCA(アジアオリンピック評議会)と活発に議論していますが,彼らは非常に前向きです。しかし,最終的にどうなるかはまだ分かりません。ただ2019年末の東南アジア競技会ではすでにオフィシャル競技ですし,そこで世界に対して私達に何ができるのかを示せると考えています。

――IOCをどのように説得するのでしょうか。例えばアメリカや中近東,アフリカといった地域と連携するとか?

フォック氏:
 言えるのは,eスポーツはまだまだ新しいモノだということです。ですからIOCだけでなく,eスポーツへの誤解は社会全体にある。だからこそ,我々はeスポーツとはどのようなものかというのを,今日のこの場のような機会に一つ一つ示し,誤解を解いていく必要があります。ですから,単なる交渉術に留まらない取り組みが必要だと思います。

――具体的にはどんな取り組みを想定されていますか。

フォック氏:
 私の考えでは,例えば研究機関が必要なのではないかと思っています。彼らがどんな懸念を感じているのかをリサーチし,研究するのです。例えばゲーム中毒だとか,暴力だとか。暴力とはなにか――これはとても重要です。例えば私が考える暴力と,あなたの考える暴力は,まったく違うものかもしれない。ゲームの中の暴力が,社会での暴力につながると考える人もいますが,我々はそういったことについて,もっと研究すべきなのかもしれません。

――よく分かるお話です。

フォック氏:
 あとはゲームのカテゴリ分けをするためのシステムとか,そのシステムはどのように運用されるべきかとか。映画もそうですよね。映画にもいろいろなカテゴリがあります。IOCにアプローチをする前に,我々はそうしたシステムについて考えてみるべきではないでしょうか。

――アジア圏以外のeスポーツ組織との交流はいかがでしょうか。

フォック氏:
 他国の組織と手を携えるのは非常に重要です。ただスピーチでも話したように,私としてはeスポーツの未来はアジアにあると感じています。この1年でアジアの内外を含めさまざまな国の方々とお会いましたが,そう思います。もっとも大きな市場がアジアなのですから。そのために,私達は一歩一歩,コミュニティを作り上げていく努力をすべきなのです。

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――オリンピックやアジア競技会などの国際大会では,IPホルダーとの折衝はどのように行っているのでしょうか。

フォック氏:
 今のところ,私どもが立ち会ったIPホルダーとの交渉は,幸いなことにいずれも好意的なものでした。もしかすると,それは我々がNPOだからかもしれませんが。ただ我々としては「あなた方のタイトルを,もっと多くの人に知ってもらうためのお手伝いができる」という話の持ちかけ方をしています。アジア競技大会のような場に採用されるということは,タイトルのイメージアップにもつながりますし,IPホルダーとしても喜ばしいことですよね。
 一方で,むしろ競技タイトルの選び方は,それが相応しいタイトルであるかどうかを判断する我々のほうにも責任があり,先ほどの暴力であるとかの基準を設け,慎重に精査しなくてはならないと考えています。

――アジア競技会では,日本では「ウイニングイレブン2018」しか配信が行われませんでした。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

フォック氏:
 これは面白い質問です。一般のスポーツでは,アジア競技会のような大会の放映権が国毎に分けて販売されるのは普通のことだと思います。しかし,eスポーツの場合はちょっと事情が異なっていますよね。多くの視聴者はテレビでなくネットを介して試合を見ますから,国で分ける意味があまりありません。しかし,ジャカルタのアジア競技会では,我々が関わったときには主催者側がすでに販売を終えてしまっていたので,私達はあらためて,権利を買ったテレビ局に交渉に行かなくてはなりませんでした。多くの人に見てもらうためには,そうするほかなかったからです。
 だから,これは我々にとっても次の課題だと考えています。次回はもっと早いタイミングで話を始める必要があるでしょう。

――では「ウイニングイレブン2018」と同じく,日本代表が本戦に出場した「ハースストーン」の配信がなかったのは,時間がなくて交渉がうまくいかなかったから?

 結局のところ,配信をどうするかを決定するのは権利者なので,我々に決定権はありません。なので,それは権利を持っていたテレビ局側の判断なのだろうと思います。またこれは,間もなくeスポーツだけの問題ではなくなるはずです。これからネット配信でスポーツを楽しむ人はどんどん増えるでしょうし,我々としても,今後対応を考えていかなくてはならない問題だと思います。

――ありがとうございました。

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「日本eスポーツ連盟(JeSU)」公式サイト

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