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DAEMON X MACHINA公式サイトへ
  • マーベラス
  • 発売日:2019/09/13
  • 価格:パッケージ版:7800円(+税)
    ダウンロード版:8580円(税込)
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マーベラスの「DAEMON X MACHINA」はバンダイナムコスタジオ サウンドチームが音楽を担当。その経緯やコンセプトを音楽制作チームに聞いた
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印刷2019/08/07 12:00

インタビュー

マーベラスの「DAEMON X MACHINA」はバンダイナムコスタジオ サウンドチームが音楽を担当。その経緯やコンセプトを音楽制作チームに聞いた

 2019年9月13日に発売されるNintendo Switch用ソフト「DAEMON X MACHINA」(デモンエクスマキナ)は,2018年6月のE3 2018での発表(関連記事)以降,メカやロボット,SFファンなどさまざまな方面で注目を集めている,マーベラスの完全新作メカアクションゲームだ。

画像集 No.003のサムネイル画像 / マーベラスの「DAEMON X MACHINA」はバンダイナムコスタジオ サウンドチームが音楽を担当。その経緯やコンセプトを音楽制作チームに聞いた

 本作で話題となっているのは,ゲーム内容そのものだけではない。楽曲制作には,「エースコンバット」シリーズ「鉄拳」シリーズなど往年のバンダイナムコタイトルの音楽を手がけてきたバンダイナムコスタジオ サウンドチーム(以下,BNS サウンドチーム)を起用。これまで公開されたムービーや期間限定で配信された体験版などで,すでに高い評価を得ているのだ。

 今回4Gamerでは,BNS サウンドチームの中鶴潤一氏濱本理央氏山内祐介氏と,本作のプロデューサーを務めるマーベラスの佃 健一郎氏の4名に,バンダイナムコスタジオのサウンドチームがなぜ競合他社であるマーベラスの新作ソフトの音楽を手がけることになったのか,「DAEMON X MACHINA」の音楽はどのようなコンセプトで作られていったのかを聞いてみた。

写真左から,本作のプロデューサーを務めるマーベラスの佃 健一郎氏,BNS サウンドチームの中鶴潤一氏,山内祐介氏,濱本理央氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / マーベラスの「DAEMON X MACHINA」はバンダイナムコスタジオ サウンドチームが音楽を担当。その経緯やコンセプトを音楽制作チームに聞いた


プロジェクト立ち上げのときには決まっていた

BNS サウンドチームの起用


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずはBNS サウンドチームの皆さんから,自己紹介を兼ねてこれまでの代表作などを聞かせてもらえますか。

中鶴潤一氏(以下,中鶴氏):
 弊社のタイトルだと,「ソウルキャリバー」シリーズや「エースコンバット」シリーズなどのサウンドを手がけてきました。

山内祐介氏(以下,山内氏):
 2人に対して社歴は浅いのですが,主に「鉄拳7」やリズムゲームの「シンクロニカ」,「アイドルマスター」シリーズなどの楽曲制作を担当しています。

濱本理央氏(以下,濱本氏):
 直近だと「鉄拳」シリーズが多いですね。「ソウルキャリバー」や「エースコンバット」など,いろいろなタイトルを広く浅くやっています(笑)。

4Gamer:
 BNS サウンドチームの皆さんは,いったいどのような経緯でマーベラスのゲームの音楽を手がけることになったのでしょう。
 そもそも,なぜ佃さんは他社にあるバンダイナムコのサウンドチームに声を掛けようと思ったのでしょうか。

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佃 健一郎氏(以下,佃氏):
 自分自身がもともと「エースコンバット」や「鉄拳」,「ソウルキャリバー」が好きだったんです。
 また以前はバンダイナムコさんの社屋が,マーベラスが入っているビルの道を挟んですぐの場所にあったんです。そのころにも「一緒に仕事ができませんか」と中西さん(※)にお声掛けしたことがあったのですが,そのときは実現できなくて。
 今回「DAEMON X MACHINA」のプロジェクトを始めるにあたり,あらためて中西さんと中鶴さんに相談したところ「こういう形ならできそうですね」とお引き受けいただけました。

※バンダイナムコスタジオの中西哲一氏。「エースコンバット」や「リッジレーサー」シリーズなどに携わる

4Gamer:
 過去に一緒にゲームを作った経験があるとか,そういったことは。

佃氏:
 一切ありません(笑)。
 
中鶴氏:
 道を挟んで向こう側にいらっしゃるのは知っていましたが,直接的な関わりはなかったですね。

佃氏:
 いちゲームプレイヤーとして,BNS サウンドチームの皆さんの作る曲が本当に好きなんです。それで「今回のプロジェクトに曲を提供していただけたらいいな」と。ただのファンですね(笑)。

4Gamer:
 正式に作曲を依頼することが決まったのはいつごろですか。

佃氏:
 プロジェクトを立ち上げた時点なので,かなり初期段階から決まっていました。

中鶴氏:
 実際に「こういう企画です」と具体化し始めたのは,2017年の3月ごろですね。

4Gamer:
 最初に依頼があってから具体的な企画の話を聞くまでは,お互いに連絡は取っていたのでしょうか。

中鶴氏:
 いいえ。いつ連絡が来るのかなと楽しみに待っていました。
 佃さんがかつて「アーマード・コア」シリーズを手がけていたことは知っていたので,「もしかしたらそういうメカやロボット系のゲームかな? でもマーベラスさんだし『牧場物語』かも……」みたいなことを考えてドキドキしていました。

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4Gamer:
 とても気になるのですが,お互い競合他社という関係にあって,こういったお話ってすんなり進むものなのでしょうか。

中鶴氏:
 バンダイナムコスタジオはゲーム開発に特化した会社なので,本業であるバンダイナムコのタイトル業務に差し障りのない範囲であれば,デベロッパとして外部にアピールすることを理解してもらえます。むしろ,そういった意識が高くなっていた時期でもあり,実はオファーをいただいたタイミングってすごくよかったんですよ。
 ただ,私達としては,マーベラスさんにもサウンドチームがあるわけですし,「本当に私達でいいんですか?」という思いもありました。

佃氏:
 いえいえ。マーベラスのサウンドチームにも皆さんのファンが多いですから。「BNS サウンドチームに楽曲をお願いするよ」と伝えたら喜んでいました。

中鶴氏:
 それはよかった。「曲を作りたかったのに……」と思われていたらどうしようかと。

佃氏:
 皆さんの曲が仕上がってくると「これカッコいいですよ」って,収録用の機材で聴かせてくれるんです。開発チームは基本ゲーム機で聴いているので,「サウンドチームだけすぐにいい機材で聴けるのはズルい!」みたいな話をしていました(笑)。

中鶴氏:
 (笑)。いい環境で聴いていただけるのは,作った側としてはすごくありがたいです。


現在のゲーム音楽にある“暗黙の了解”を破りたかった


4Gamer:
 「DAEMON X MACHINA」の音楽を作るにあたり,佃さんはサウンドチームにどのようなコンセプトを伝えたのでしょうか。

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佃氏:
 基本的にはディレクターの淡田(※1)と一緒に決めていて,具体的な話は淡田が伝えているのですが,自分からは全体的なイメージとして,「ラムシュタイン(RAMMSTEIN)(※2)のようなメタル調の曲」と伝えました。
 あと,これはコンセプトとはちょっと違うかもしれませんが,ゲーム音楽は“暗黙の了解”ではありませんが,「このジャンルのゲームはこういう音楽」みたいに固定化されつつあるのではないか,という話はしました。

※1 マーベラス 1stスタジオに所属するゲーム制作者の淡田 賢氏。本作で同スタジオの軽部 健氏とともにディレクターを務める
※2 1994年にドイツで結成されたバンド。ヘビィなサウンドや火器を使用した過激なパフォーマンスが特徴


4Gamer:
 ああ,分かります。あるジャンルのゲームに対して「こんな感じの音楽だろうな」というジャンルはだいたい思い浮かぶし,そのイメージどおりということも少なくありません。

佃氏:
 はい。でもプレイヤーは,それぞれゲーム以外で,本当にいろいろなジャンルの音楽を聴いています。それを踏まえた結果,「ゲーム全体の楽曲のイメージは統一しながら,シーンや用途に合ったジャンルの楽曲を使ったら面白いのでは」と考えました。

中鶴氏:
 私達は,使用されるシーンや用途と,そのシーンに合った楽曲のイメージに近い楽曲の名前が一覧になったものをいただきました。先ほど例に出たラムシュタインじゃないですけど,「このシーンにはこのバンドの○○みたいな曲調で」というのがリスト化された資料です。

4Gamer:
 それはバンドやアーティストだけではなく,例えば映画やゲームの音楽もですか。

佃氏:
 はい。それこそ「『エースコンバット』のようなイメージで」とお願いしたものもあります。届いたときは社内で「『エースコンバット』が来たぞ!」と盛り上がりました(笑)。

中鶴氏:
 あるスタッフが担当することになった曲の参考曲がその1曲だったのですが,参考になった曲を作ったのがなんと本人で,「これはセルフアレンジということでいいのでしょうか」みたいなこともありました(笑)。
 あくまで参考曲は「こんな雰囲気で」程度のもので,その曲を真似するということではないのですが,このときは面白かったですね。

佃氏:
 もともとオファーする我々が「エースコンバット」が好きなので,“「エースコンバット」っぽく”というところは全体的なイメージとして伝えていました。

中鶴氏:
 こちらもそこは意識していました。もちろんそのものではなく,「DAEMON X MACHINA」の世界観に合わせて“メカ成分は多め”に見積もって楽曲を制作しています。そのあたりは自然に調整できたと思っています。


4Gamer:
 ゲームの世界観やストーリーは,最初から提示されていたのでしょうか。

中鶴氏:
 どちらかというと段階的でしたね。最初は一部のキャラクターのデッサンや,メカデザインが河森正治さんであるといった断片的な情報しかなくて,正直手探りでした。弊社スタッフの中でも受け取るイメージはさまざまでしたね。

佃氏:
 オファーしておいて申し訳なかったのですが,初期の段階では,まだお渡しできる素材がほとんどなかったんです。

中鶴氏:
 そのあと先ほど話に出た曲のリストをいただいて,まずは「DAEMON X MACHINA」のモチーフになる曲を作ることにしました。
 そこで本作を担当するサウンドチームのメンバーに声を掛けて,“俺の考える『DAEMON X MACHINA』のテーマ”を作ってもらったんです。5〜6人ほどで曲を出し合って,それをコンペみたいな感じでマーベラスさんに提出し,選んでいただいたのが濱本の作った楽曲でした。
 そこから「マーベラスさんが考えているのは,こういう感じなんだ」というのが,少し分かった……。

濱本氏:
 と,思ったんですけどね……。

山内氏:
 (笑)。

中鶴氏:
 淡田さんから「これがいい」と言ってもらえたあとに,佃さんから「気になるところがあるんですよね……」って意見をもらったんです。

佃氏:
 たしか「綺麗すぎるかなあ」みたいなことを伝えたんですよね。

濱本氏:
 はい。そんな感じでした。

中鶴氏:
 そのあと,濱本はかなり悩んでいましたね。

佃氏:
 そうだったんですか……。皆さんは音楽のプロですから,仕上がったときのイメージがあって楽曲を制作していると思うのですが,自分は音楽についてはプロではないので,聴いたものでしか判断できないんです。
 本当に「ちょっと綺麗すぎるかな」くらいで,最初に聴いたときから美しくてすごくいいテーマ曲でした。

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“メカ要素”を意識したサウンドをメインに

枝葉には異なるジャンルの楽曲で“遊び”を入れた


4Gamer:
 「DAEMON X MACHINA」のサウンドチームのメンバーはどのように決めたのですか。

中鶴氏:
 それぞれが本業であるバンダイナムコタイトルの作業を抱えていますから,スケジュールなどを考慮しつつ,興味のある人,やりたい人,やれそうな人をチーム全体から募集して,最終的に10名になりました。

4Gamer:
 1タイトルの音楽に10名だと,かなり多いですよね。

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中鶴氏:
 そうですね。ゲーム音楽には,1人の作家性を重視する場合と,いろいろなシチュエーションを表現するために複数の作曲家を起用する場合があります。
 弊社の場合はチームでやるケースが多いですし,またマーベラスさんからのオファーも「誰か」を指名するのではなく「BNS サウンドチームの作る音楽で」ということだったので,チームとしてのアウトプットを出そうと。結果的に,個人個人が持つ特色を活かしつつ,全体ではBNS サウンドチームの音になるような人選になりました。

4Gamer:
 チームで動くケースが多いとはいえ,やはり10人となると“1つのゲームの音楽”としてまとめるのは大変そうです。

中鶴氏:
 はい。今回は「オムニバスアルバムのようにはしたくない」という部分は注意しましたね。きちんと1本筋があるものにするため,コントラストを調整したり最終的なテイストをそろえたりといったことは,我々が責任を持ってやりました。
 結果,きちんと「DAEMON X MACHINA」の音楽に仕上がったんじゃないかな,と思っています。

4Gamer:
 担当する曲のアサインは,どのように決めていったのでしょう。

中鶴氏:
 私は最初に佃さんと話をしたこともあって,初期のコンセプトを決めるなど,どちらかと言えば「DAEMON X MACHINA」の音楽におけるプロデュース面を担っていました。
 実際のアサインは,現場の音楽ディレクターを務めた宇佐美(※)が,リストを見ながら「こういうイメージやテイストの曲ならこの人かな」というようにピックアップしています。

※BNS サウンドチームの宇佐美十章氏。本作のほかに,「太鼓の達人」「アイドルマスター」シリーズなどの音楽を手掛けている

山内氏:
 あと,リストを見た人が「この曲をやりたい」と立候補することもありましたね。

中鶴氏:
 それで最終的に誰からも手の上がらなかった曲を宇佐美や私が担当するといった感じでした(笑)。
 手が上がらなかったといっても人気がないという意味ではなくて,得意 / 不得意みたいなところで躊躇したり,「このイメージの楽曲ならあの人が手を上げるかな」みたいに出方をうかがったりって話ですが。結果として,それぞれの特徴が出るアサインになったかなと思います。

4Gamer:
 そうしたやり方は,BNS サウンドチームでは普通なのでしょうか。

中鶴氏:
 そうですね。多くのタイトルで,これに近いやり方を取っています。
 今回は音楽のみでしたが,まずはサウンドディレクターがサウンド全体のコンセプトなどを決め,それを音楽セクションや効果音セクションのリーダーに伝えて,各セクションのリーダーがそれぞれのチームのメンバーにアサインしていくといった流れです。

4Gamer:
 なるほど。「DAEMON X MACHINA」の楽曲に話を戻しますが,皆さんは今回どんな楽曲を担当されたのですか。

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濱本氏:
 オーケストラっぽい曲も含めて10曲作りました。過去に手がけたタイトルのイメージが強いのか,ギターを前面に出したヘビィなサウンドやミクスチャー系の楽曲を依頼されることが多かったです。
 自分自身もミクスチャーロックが好きなので,そういう意味でも今回はやりやすかったですね。参考としてホワイト・ゾンビ(White Zombie)(※)の楽曲が挙がっているのを見て「これは懐かしい!」と嬉しくなりました(笑)。

※1980〜90年代に活躍したアメリカのバンド。激しいサウンドだけでなく,グルーヴ感のあるリズムも特徴。フロントマンのロブ・ゾンビは,個人名義での音楽活動以外にクリエイターとしての活動でも知られている

山内氏:
 私はクラブミュージック系が得意なので,今回もそういった曲をメインに5曲担当しました。
 ただ今回は,全体的にメタル系のギターサウンドというコンセプトがあったので,それとダンスミュージックを組み合わせると,ビッグビートやデジタルロックに近くなるだろうと考えて作っていきました。その路線でOKとなってから,さらにダブステップなども採り入れつつ,ダンスミュージック寄りなアプローチも入れています。

中鶴氏:
 先ほどゲームの音楽のコンセプトの話で“「エースコンバット」のようなイメージ”という話が出ましたが,私が担当したのはまさにその部分です。
 「自分が求められているのはそれだ。むしろ自分でなければ誰がやるんだ」と,そこを追求しました。たぶん私が違うことをやると,お客さんも「えっ?」となると思うんですよ。「新境地を開拓しました」となったら「求めていることはそれじゃない」ってなってしまうんじゃないかと。

佃氏:
 そんなことはないですよ(笑)。

中鶴氏:
 まあ,今回の案件に関してはそういうことかなと考えて,そこをメインに徹しましたね。今回は音楽プロデューサーみたいな立ち位置だったこともあり,自身で作曲したのは3曲です。
 ちょっとオーケストラっぽい感じで,「DAEMON X MACHINA」らしい“メカ要素”が入っている曲に仕上がりました。

山内氏:
 中鶴がメインに徹してくれていたおかげで,ほかのメンバーが飛び道具的な曲を作っても大丈夫だろうという安心感はありました。

中鶴氏:
 私や宇佐美がメインの部分を作り,ほかの8人には遊んでもらったかなと。全体としてはメインを押さえつつ,枝葉の部分で遊べたと思います。
 あと,これは偶然ですが,同時期に「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」の音楽も作っていたので,無意識のうちにその成分を補充できていたかなと思います(笑)。

4Gamer:
 佃さんは,上がってきた曲に対して,どのようなチェックをしていたのでしょうか。

佃氏:
 音楽に関してはディレクターである淡田のほうが詳しいので,細かいやり取りは全部任せました。自分は聴いてみて,例えば似たような曲があったときに「こっちの曲では,もうちょっと遊んでもいいと思う」といった,音楽が分からないなりの提案をしました。

中鶴氏:
 プレイヤー寄りの視点ですよね。「ゲームを遊ぶときは,こういう風に聴く」といった感じの。

佃氏:
 プロデューサーは最初のプレイヤーですから。「このシーンとこのシーンは続いているから,ゴテゴテのメタル系が続くと飽きるかもしれない」みたいな感じですね。

中鶴氏:
 佃さんは,私達のデモを全部聴いていたんですか?

佃氏:
 もちろんです。いつも届くのを楽しみにしていました。“意見した”なんて言いましたけど,基本的には「いいね〜」ばかり言ってる1人のファンでしたよ(笑)。
 淡田が迷ったときなどに意見を求めてきたこともありましたが,「音楽のプロの皆さんがどうしたいのか確認して判断すればいい」と。あとは,ゲームにボイスや効果音を乗せてみたときに,曲と音域が被っていたときくらいでしょうか。ボイスが聴き取りづらくならないように,「これは調整するんだよね?」という確認はしました。楽曲自体についてなにか意見したというのは,ほとんどありません。

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4Gamer:
 効果音と聞いて思い出したのですが,以前のインタビュー(関連記事)で「SEに楽器の音を使う」とおっしゃっていましたね。

佃氏:
 楽器の音を採用できた部分と,できなかった部分があります。
 音楽のライブで,ドラムの音と連動して照明が切り替わるみたいな演出がありますよね。あれに近い演出を取り入れ,マルチプレイ時にプレイヤー同士がセッションしているような感覚を味わえるゲームプレイを実現できればと思ったのですが,残念ながらそこまでは難しかったです。

中鶴氏:
 面白い考え方なので,その試みに音楽のほうも寄り添えればよかったのですが。
 こういった試みをもっと突き詰めていくと,プレイヤーのアクションに応じて音楽が変化するインタラクティブミュージックになっていきます。今後,インタラクティブミュージックはもっと身近なものになっていくはずなので,実現はきっとそんなに遠い未来の話ではないと思いますよ。

4Gamer:
 Nintendo Switchというハードが楽曲制作に影響を与えた部分はありますか。例えば携帯モードでは手元から,TVモードではテレビなどのスピーカーから音が出るので,音楽の聴かせ方も変わるかと思うのですが。

中鶴氏:
 そこは,そのゲームをどう遊ばせたいかによって変わるところだと思います。
 「DAEMON X MACHINA」の場合は,テレビの前でしっかり腰を下ろしてサラウンドでサウンドを聴かせるのか,それとも携帯モードで遊んでもらうことを想定しているのかを最初に確認しました。「どちらも可能性があるけれども,どちらかといえば携帯モードのプレイが多いだろう」という回答だったので,Nintendo Switch本体のスピーカーでも聴けるようにしないといけないと意識しました。

4Gamer:
 それは携帯モード向けに音の鳴る数やアレンジを考えたということですか。

中鶴氏:
 いえ,そこまでのことはやっていないですね。と言うのは,まず音楽単体としてきちんと聴けるものに仕上げたうえでチューニングが必要であれば,それはマーベラスさんのサウンドチームに効果音やボイスとのバランスを見ながら調整していただいたほうが良いと思ったからです。
 音楽のみを私達が調整してしまうと,逆に効果音やボイスとのバランスが取りにくくなってしまう可能性がありますから。会社は違っても同じサウンド制作に関わる者同士ですから,作業工程を想定したうえで「私達はここまでやっておきますから,あとはお任せします」という形でスムーズに進められました。

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“どうすればゲームが盛り上がるか”を何より大事に


4Gamer:
 今回の楽曲制作は,いつごろ終わったのでしょう。

中鶴氏:
 2019年の春にすべての楽曲の納品を終えています。そこから先は「DAEMON X MACHINA」の発売を待つお客さんの1人になりました(笑)。

4Gamer:
 (笑)。期間はどれくらいかかりましたか。

中鶴氏:
 最初の打ち合わせから数えるとかなり長いのですが,実際に制作作業に入ったのはメインテーマのコンペからなので,2017年の秋から2019年春までの1年と数か月くらいですね。

4Gamer:
 期間中,皆さんそれぞれに苦労したことがあるかと思うのですが。

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山内氏:
 私は最初にいただいたボス戦の映像のインスピレーションから,バーッと駆け抜けた感じで,スルッと作れましたよ。
 映像にあった赤い血管みたいなイメージが,メカなのに人間っぽかったんですよね。メカだとクールで抑えたイメージに陥りやすいんですが,“人間らしさ”みたいなものがあったことでいろいろなジャンルを受け止めてくれると感じられて,本当に自由にやれました。

濱本氏:
 私も比較的スムーズでした。開発中のゲーム映像を見せてもらったときに,「やっぱりこの場面の楽曲はもう少し長めのイントロがいるな」という感じで調整した部分はありましたが,曲のイメージが大きく変わることはなかったかなと。

中鶴氏:
 一度実機でのプレイを見ることができたのは大きかったですね。淡田さんから声を掛けていただいたんですが,サウンドチームに「実機プレイを見せてもらえるよ」と声をかけたらみんなが集まって来て(笑)。
 あれで一気に理解が深まって,「こうなるなら,音楽はもっとこうしたほうがいいな」とか「このシーンはもっといろいろアレンジで遊んでもいいな」という目安ができました。

4Gamer:
 それはいつごろのことでしょう。実際にゲームに音楽が乗ったのをみてどう感じましたか。

中鶴氏:
 2018年の年明けぐらいですね。メインテーマのコンペを終えて何曲か作っていた段階で,見せていただいた映像やゲームのビルドROMには実際に音楽も入っていました。
 手前味噌になってしまいますけれど,「うまく馴染んでるな」と感じられました。マーベラスさんのゲームに私達の曲を乗せるのは初めてだったので,合うかどうかはやってみないと分かりませんでしたが,あのときようやく「これなら大丈夫だ」という実感を得られました。

4Gamer:
 中鶴さんが今回苦労した部分はありますか。

中鶴氏:
 私もとくにはないですね。1回リテイクがありましたけれども,それ以外はOKをいただけて。「この曲は参考曲そのまますぎですね」みたいに言われたらどうしようと思っていたんですが,大丈夫でした。

佃氏:
 ゲーム制作側としては,限定体験版「プロトタイプオーダーズ」に完成版の楽曲を使用できなかったのが残念でした。音楽自体はスケジュールどおりに仕上げていただいたんですが,それ以上に早いペースで体験版の制作と配信が決まってしまったんです。
 体験版のマスターアップの前日に完成版の楽曲が届いたのですが,急いで入れ込んで何か不具合が出てはいけないので断念しました。

2月14日から3月11日までの期間限定で配信された体験版「プロトタイプオーダーズ」(関連記事
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中鶴氏:
 プレイヤーの皆さんに完成した楽曲に触れてもらう良い機会だったので,あれは残念でした。

4Gamer:
 仮とのことですが,体験版の楽曲は素晴らしいものばかりでしたよ。

佃氏:
 そうですよね。とくにメインテーマは体験版での反響がすごく大きくて,アンケートでは「スタート画面のままにして,メインテーマをずっと聴いている」という回答もあったくらいです。「気持ちはよく分かる!」と思っちゃいました(笑)。
 全体の流れもよかったんですよね。メインテーマが静かに始まり,あとから心に届く感じになって,いざゲームを始めてみるといろいろな曲がある。テストプレイをしていても楽しかったです。

4Gamer:
 Nintendo Direct: E3 2018での発表ではメタル系のサウンドでしたね。映像と相まってかなりのインパクトでした。

佃氏:
 あの曲を選んだのは,音楽のコンセプトにメタルがあることを印象づけたかったのと,最初に話した「こういうゲームの音楽はこんな感じだろう」というものになっていないところを示したかったからです。
 最初は勢いのある映像と楽曲で「なんかよく分からないモノがやってきた」と印象づけて,そこからは,例えば「じっくり聴かせる雰囲気のあるメインテーマは,世界観を伝えるムービーで使おう」みたいに楽曲を公開していきました。

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濱本氏:
 E3 2018のトレイラーで使用されていた楽曲は山内が作曲したものです。

中鶴氏:
 クレジットには私と濱本の名前が出ているので,私達のどちらかの楽曲のように見えてしまって。山内には申し訳ない部分もあるのですが,とても高い評価を受けていて嬉しい限りです。

4Gamer:
 「DAEMON X MACHINA」リリース後の9月25日にオリジナル・サウンドトラックが発売されます。ご自身で作った曲の中で推しの曲はありますか。

濱本氏:
 私は「GRIEF」です。この曲では,ギターのハーモニクスを使って,プチ実験を試みました。音階を左から順番にC・C♯・D・D♯……と半音ずつ重ねていったら効果音になるだろうかと,全部重ねてみたんですよ。
 でも誰からもレスポンスがなくて……効果音として成立しているのか,それとも誰も興味がないのか(笑)。中鶴は絶対音感があるので,違和感を覚えるんじゃないかなとかも。

中鶴氏:
 (実際に聴きながら)うん,気持ち悪いね(笑)。

山内氏:
 たしかに気持ち悪いです。

中鶴氏:
 気持ち悪いといっても褒め言葉ですよ。狙ってやってたんだね。これ。

佃氏:
 さすが音楽のプロですね。私はシンプルに格好いいと思っていました。

濱本氏:
 人によって聴こえ方が違うと思うので,どんな反応があるか楽しみです。

山内氏:
 私は「MERSENARY LIFE」という楽曲です。今回作った中では一番ダンスミュージック的で,だんだん重ねていって,崩して,また重ねていって,最後に一番盛り上がるという構成になっています。
 メカものの格好よさとは違うベクトルに振っていて,もっとも自分らしい曲だと思います。

佃氏:
 実を言うと,もともとの曲名は「MERSENARY ENJOY LIFE」だったんです。「傭兵の楽しい生活」みたいな意味にしたくて。
 そうしたらネイティブスピーカーのスタッフが「何ですか,ENJOYって」って笑い出して,「殺伐としてるけど,どこか楽しそうに戦ってるじゃない。生きるの死ぬのとやっているけど,毎日充実してる,みたいな感じ」と答えたんですけれど……。結局,「MERSENARY LIFE」に落ち着きました。

4Gamer:
 試聴したなかでは「ARTIST」という曲が個人的に気になっているのですが,これは山内さんが作曲されているんですね。ほかとは全然違うテイストで,いい意味で「何だコレ」となる面白い楽曲でした。

山内氏:
 はい。これはアーティストというキャラクターの登場シーンに使われている楽曲です。
 例のリストに1950〜60年代のロカビリーの曲が記載されていて,それを参考にしつつ,もうちょっとフックが欲しくなり,アーティストのイメージに合わせてヒップホップの要素やスクラッチを入れるという,ちょっとした実験をしてみました。マーベラスさんにも好評だったようです。

解放旅団「バレットワークス」所属のアーティスト。その名が表すとおり,有名なグラフィティアーティストでもある
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4Gamer:
 中鶴さんはいかがですか。

中鶴氏:
 「Bravery」でしょうか。抑え目のイントロから入って,ゆっくりだけどビート感がある楽曲で,今回作った自分の曲では,一番「DAEMON X MACHINA」らしさみたいなのが打ち出せた楽曲かもしれないです。

佃氏:
 聴いてみて雄大な曲だったので,その曲名にしました。でも,どの曲もいいですよね。全曲ポータブルオーディオに入れて,ずっと聴いてます。

4Gamer:
 まずは実際にゲームをプレイして,どんなシーンで使われているかが先なのですが,サントラでじっくり聴けるのも楽しみにしています。
 そろそろ時間となりますので,あらためて今回の楽曲制作についてひと言お願いできますか。

佃氏:
 BNS サウンドチームにお願いして本当によかったです。それはマーベラス側のスタッフ全員が思っていることで,きっとゲームをプレイする皆さんにもそう思っていただけるはずです。

中鶴氏:
 一口にゲーム開発と言っても,会社ごとに少しずつやり方が違うんですよね。ずっと同じ会社にいるとなかなかそれを知る機会がないですし,かといって他社さんと一緒に作業するという機会もそうそうないわけです。その意味では,今回は貴重なチャンスでした。
 私達も外部のクリエイターに依頼することがありますが,今回は逆の立場を経験できました。「こうすれば相手も制作しやすいようだ」「この時期にこういう資料があれば,依頼された側も仕事が進めやすくなるだろう」といったことを学ぶいい機会にもなりました。

画像集 No.019のサムネイル画像 / マーベラスの「DAEMON X MACHINA」はバンダイナムコスタジオ サウンドチームが音楽を担当。その経緯やコンセプトを音楽制作チームに聞いた

4Gamer:
 それでは最後に,「DAEMON X MACHINA」とその音楽に注目している人に向けてメッセージをお願いします。

佃氏:
 ゲーム自体はもちろん,音楽もどれを取っても素晴らしい曲に仕上がっています。もちろん会話のボイスや銃撃音などのSEも楽しんでほしいのですが,ときには音量の設定を変更して,楽曲をメインにノリノリでゲームをプレイしてもらえると嬉しいです。

山内氏:
 BNS サウンドチームには,じゃじゃ馬みたいな部分があると思っています。例えるなら四方八方に突出した部分がたくさんある球体のようなものなんですが,「DAEMON X MACHINA」はそれを受け止めてくれる懐の深さがあるゲームで,楽曲制作はとてもやりやすかったですね。
 作曲者で聴いていただいてももちろん構わないんですが,本当にいろいろな曲が入っているので,「このジャンルは聴いたことがない」「このジャンルは,ほかにどんなアーティストがいるんだろう」といった聴き方ができるかと思います。いろいろな音楽ジャンルを聴くきっかけになってくれると嬉しいです。

濱本氏:
 我々はアーティストではないので,ゲームのいろいろな要素が合わさったときに本当の威力を発揮する楽曲を作るということを意識して取り組んでいます。まずはゲームを遊んでいただいて,ゲーム自体の面白さを感じ取ってください。私自身は,音楽の存在を意識していないのに,いつの間にかノリノリで遊んでいる状態が一番いいと考えています。
 また,主張しすぎないというところは意識しつつも,山内が言うようにバラエティに富んだ楽曲がそろっています。その中には必ず「いいな」と思える曲があるはずなので,ぜひそれを見つけていただけると嬉しいですね。

中鶴氏:
 私達は,BNS サウンドチームが手掛けたということよりも,どうやって「DAEMON X MACHINA」を盛り上げるかということを最優先に音楽を作りました。
 ゲームのシーンにより音楽をマッチさせることや,遊んでいて知らず知らず気持ちが高ぶるような音楽を目指したので,まずはゲーム効果音やボイスも含めてサウンドを楽しんでいただきたいです。「DAEMON X MACHINA」の世界観やコンセプトがより伝わると思うので,とにかくデカい音で聴くのもオススメです。
 その一方で,サントラは音楽自体が主役です。ゲームの中では気づかなかった音もたくさんあるかと思いますので,サントラではぜひそこを楽しんでください。

4Gamer:
 ゲーム本編はもちろん,じっくり楽曲を楽しめるサントラの発売も楽しみにしています。本日はありがとうございました。

画像集 No.002のサムネイル画像 / マーベラスの「DAEMON X MACHINA」はバンダイナムコスタジオ サウンドチームが音楽を担当。その経緯やコンセプトを音楽制作チームに聞いた

DAEMON X MACHINA Original Soundtrack

画像集 No.022のサムネイル画像 / マーベラスの「DAEMON X MACHINA」はバンダイナムコスタジオ サウンドチームが音楽を担当。その経緯やコンセプトを音楽制作チームに聞いた
発売日:2019年9月25日
価格:税抜3700円
品番:UMA-1123-1125
仕様:CD3枚組,全45曲収録,初回仕様限定盤のみクリアスリーブケース付き

[収録曲]
Disc.1
01. DAEMON X MACHINA
02. Hangar
03. Testing Ground
04. Lab
05. Ice Cream
06. Distant Memory
07. Briefing
08. Overkill
09. Battle Dance
10. Destiny
11. Grand War
12. Mercenary Life
13. Tears of the Hound
14. Vow
15. Arms of Immortal
16. DAEMON X MACHINA Resolve

Disc.2
01. Open Fire
02. From Beyond
03. Grief
04. Terrors
05. Bulletworks
06. Artist
07. West VII
08. Panzer Crown
09. Messing Around
10. Shell
11. Shell (Vocals)
12. Metalfacer
13. Innocence
14. Solomon
15. Bravery
16. Full-on Assault

Disc.3
01. Fate
02. Move Out
03. The First Day
04. Memories of War
05. Oval Mystery
06. Soldier's Dilemma
07. Burning Sky
08. Hope for Tomorrow
09. Live for Today
10. Brothers in Arms
11. Inherit the Stars
12. Life's Journey
13. Credits

『DAEMON X MACHINA Original Soundtrack』
(C)2019 U/M/A/A Inc.
(C)2019 Marvelous Inc.
(Nintendo Switchは任天堂の商標です)

「DAEMON X MACHINA Original Soundtrack」情報ページ

「DAEMON X MACHINA」公式サイト

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    DAEMON X MACHINA

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