インタビュー
「Déraciné」「SEKIRO」と新体制の成果が見え始めたフロム・ソフトウェア。その目指すところや今後について,宮崎英高氏に聞いた
シングルプレイでの体験に注力したSEKIROならではのアクション
4Gamer:
使えるものをすべて使って戦うというお話ですが,探索要素や成長要素はどうなっているのでしょうか。
宮崎氏:
探索や成長によって,使える武器やスキルが増えていく設計になっています。
また,探索には自由度があり,成長には選択がありますから,どんな武器やスキルを先に使えるようになるかで,ゲームプレイも変化してくると思います。その主たるひとつが義手忍具ですね。
4Gamer:
義手忍具はどのぐらい使い分けられるのでしょう。
宮崎氏:
義手忍具については,同時に3つまで装備でき,リアルタイムで切り替えることができます。
また,義手忍具を強化改造する要素もあり,例えば手裏剣であれば,多弾ヒットや貫通などの特性を付与するほか,最終的により「濃い」ものに改造することもできます。
4Gamer:
強化していくのは,基本的に義手忍具で,ステータス振りはないんですか?
宮崎氏:
主人公の基礎能力の成長はありますが,選択の要素はありません。
今作の成長選択は,先ほどの義手忍具の強化改造と,スキルの修得にフォーカスされています。いわゆるスキルツリーの要素ですね。
4Gamer:
どのツリーのスキルを伸ばしていくかで,正面突破派かステルス派かなどのプレイヤーの好みは出てきそうですね。
デスペナルティはどうでしょう。死んだらソウルや血の遺志みたいなものを落として,リスポーンしたらそれを拾いに行くような要素はあるのでしょうか。
宮崎氏:
SEKIROでは,「死」とそれに伴うやり直し/ペナルティについて,また新しいやり方を採用しています。それは,ゲームプレイのみならず,世界観や物語とも密接な関わりを持つものであり,そのひとつが「回生」です。
「回生」は,死亡してもコストを支払えば,その場で復活できるシステムで,忍びらしい死と隣り合わせのギリギリの戦いの連続を表現しつつ,死に過ぎることでゲームテンポを著しく阻害することのないよう,採用されたものです。同時に今作の世界観,物語の芯のひとつですし,自らの死すら利用して敵を欺くといった,SEKIRO独特の戦術も可能になっていますね。
4Gamer:
DARK SOULSやBloodborneとは違う要素で,ほかにもいくつか驚いた点があるのですが,1つが操作体系の変更です。フロム・ソフトウェアさんの近年のアクションは,だいたい同じフォーマットでの操作を採用していたのに対して,SEKIROではだいぶ変えていますよね。とくに,使用頻度の高い回避ボタンの場所が変更されたのは大きいと思うのですが,どういった意図によるものなのでしょう。
宮崎氏:
操作方法に関しては,海外含めユーザーテストを繰り返した結果ですね。鉤縄や剣戟のスタイルなど,独特なフォーマットのゲームなので,Activisionさんにも協力してもらい,多くのユーザーさんにプレイし易い操作方法を検討しました。
また,操作方法のカスタマイズもできるようになっていますので,ご安心ください。
4Gamer:
もう1つ驚いたのが,近年のフロム・ソフトウェアさんのタイトルで大きな特徴となっていった,緩いつながりのマルチプレイを採用していないことです。別タイトルになったとはいえ,完全にシングルプレイというのは思い切った方向性だなと。
宮崎氏:
そうですね。仰ることは分かります。オンライン要素なし,という選択の理由はいくつかありますが,一言でいえば,SEKIROならではの面白さ,プレイ体験を追求するためには,限られたリソースをシングルプレイに集中させる必要があった,ということになります。
4Gamer:
SEKIROならではの体験を楽しみにしています。とはいえ,あれだけ好評だった要素を使わないという判断に,ActivisionさんもよくOKを出しましたね。
宮崎氏:
もともとお互い協議の上決まったことですし,そこで揉めることはありませんでしたね。
ただ,たまたまDeracine,SEKIROと続いてしまったので,誤解してほしくないのですが,我々が今後オンライン要素ありのゲームを作らない,ということではありません。
“キャラクター”にフォーカスすることで物語の流れが分かりやすくなった
4Gamer:
SEKIROは主人公のキャラクターをきちんと立てているという点も,フロム・ソフトウェアさんのタイトルでは珍しいですよね。今回はストーリーを重視した作りになっているのでしょうか。
宮崎氏:
どう答えるべきか少々難しいのですが……近年の我々のタイトルから,ストーリーテリングのやり方が大きく変わった,ということはありません。 固定された物語がゲームプレイの中心になる,とういことはなく,あくまでもゲームプレイの体験を重視していますし,饒舌に語りすぎるということもなく,プレイヤーさんの発見と解釈の余地は残されていると思います。
4Gamer:
そうなると,あえて主人公を立てた意図は何でしょうか。
まずゲーム的な意図が別にあるとして,ストーリーテリングの側面から言えば,そうすることで語りやすい物語があり,SEKIROにはそれが相応しく感じた,ということになるでしょうか。
また,近年の我々のタイトルでは,物語は世界にフォーカスすることが多く,テキストの多くも世界を語るものでした。それ故に曖昧で分かり難いものになる傾向があったかと思うのですが,SEKIROでは,キャラクターにフォーカスすることで,結果的に物語の主線は分かりやすくなっているとも思います。
4Gamer:
シナリオのテキストは,宮崎さんが手がけているんですか?
宮崎氏:
いいえ。プロットまでは手がけていますが,そこから先は監修ですね。実際のテキストの大半は,別のスタッフに任せています。私のテキストはかなり癖があるので,新鮮さということでは,この点も大きいのではないかと思います。
正直「分かり難さ」の要因のひとつが自分にあることは自覚しておりまして……今作は,少なくとも近年の我々のタイトルより,お話の主線が理解できるようになっているかなあと。
4Gamer:
「話を理解できるようになった」というのも,すごい説明ですが(笑)。
宮崎氏:
まあ,そうですよね(笑)。あくまでも近年の我々のタイトルと比べたときの話で,客観的にはどんぐりの背比べだとは思うので,あまり喧伝する要素でもありませんが。
4Gamer:
ストーリーの説明では「孤独な主従の物語」として,御子(公式サイトでは皇子)中心に語られていますが,物語上の主役は御子のほうなのでしょうか。
宮崎氏:
いいえ。両者とも主役となるイメージですね。
特別な血筋の末裔で,そのために全てを失い,今も宿命に縛られている御子と,唯一の身内であった育ての義父を失い,ただ掟により御子に仕える忍び。SEKIROは,そんな孤独な主従をめぐる,苦難と成長の物語になるとお考えください。
4Gamer:
本作の時代背景は戦国時代末期ですが,ここに設定した理由はなんでしょう。
宮崎氏:
和風で忍者,ということになると,素直な時代設定は江戸か戦国になると思います。
ここで戦国を選んだのは,江戸は近世であり,戦国は中世である,ということが大きいと思います。あまり根拠のある話ではなくて恐縮ですが,中世の方が,古くからの神秘的なものがどこかで生き残っている,生き残っていてもおかしくない感覚があり,そうした感覚が,我々が描こうとする世界,あるいは物語に相応しいと考えたのです。
そして,特に戦国の末期を選んだ理由は,そこに滅びの,何かが滅びようとしている魅力的なニュアンスがあるからです。
ただ,SEKIROの舞台となっているのは架空の地であり,登場するキャラクターも皆同様です。歴史上実在の人物は登場しません。我々なりの解釈により再構築された戦国末期の世界,ということが言えると思います。
4Gamer:
SEKIROは新規IPとなりますが,全体のボリュームについても教えてください。
宮崎氏:
マップの数やサイズ,ボス戦の数など,過去作と大きく変わることはないと思います。
4Gamer:
宮崎さんの作るマップというと,縦方向に入り組んだレベルデザインというイメージがありますが,今回は鉤縄が使えるので,より複雑なマップになっているのでは?
宮崎氏:
単純に複雑になった,ということではありませんが,探索と戦闘の両面において,立体的な移動を意識した設計にはなっています。道なき道を行くことも増えたので,「こんなところに行けたのか!」という驚きもあると思います。鉤縄については,ボス戦などでも駆使できるシチュエーションがありますので,ダイナミックなボス戦闘を楽しんでほしいですね。
4Gamer:
期待が高まります。
話は変わりますが,「Demon's Souls」やDARK SOULS以降,“ソウルライク”と呼ばれるゲームが増えました。宮崎さんはそういったタイトルは遊ばれるのでしょうか。
宮崎氏:
個人的には“ソウルライク”という呼び方に違和感はありますが,遊ばせてもらうことは多いですよ。アプローチに似た部分があると,それ故に参考になることも多いので,半分楽しみ,半分研究となってしまいがちですが(笑)。
4Gamer:
コーエーテクモゲームスさんの「仁王」はプレイしましたか? SEKIROが発表されたとき,フロム・ソフトウェアさんも和風を用意していたのかと驚いた覚えがあるのですが。
宮崎氏:
はい。もちろん遊ばせてもらいました。「仁王」の情報が出てきた頃は,我々ももうSEKIROに着手しておりましたので,とても驚いた記憶があります。
今年のE3では「仁王2」も発表され,SIEさんの「Ghost of Tsushima」もあって,「どう思います?」と聞かれることも多いのですが,SEKIROも含めて「あの時は和風ゲームたちが熱かったな」と言われるようになれば,とても嬉しいですね。
フロム・ソフトウェアらしい未公開のタイトルを2本開発中
4Gamer:
SEKIRO以降の展開も教えてください。以前インタビューをした2016年6月の段階では,2.5本から3.5本のラインが動いているというお話でしたが。
宮崎氏:
そうですね,ラインについて一旦整理してお話しすると,当時から動いていたラインは3.5本あります。0.5本がDéraciné,1.0がSEKIROとして,残りの2.0は未発表のタイトルですね。「DARK SOULS REMASTERED」や「METAL WOLF CHAOS XD」については,外の会社さんにお願いしているもなので,3.5本の中には数えていません。
4Gamer:
つまり,現在も開発を続けている未発表タイトルが2本あるということですか?
宮崎氏:
はい。詳細をお話しするタイミングではありませんが,どちらも我々らしいゲームだと思います。もう少しお時間を頂くことになると思いますが,形になったものから順次皆さんにお伝えすることができると思います。
4Gamer:
楽しみに待っています。
来年発売のタイトルですと,METAL WOLF CHAOS XDも控えていますが,フロム・ソフトウェアさんが昔のタイトルをリマスターで出すのは珍しいですよね。リマスターやリメイクなど,過去タイトルの復活については,どの程度積極的なのでしょうか。
宮崎氏:
状況に応じて都度考える,という感じでしょうか。
例えばMETAL WOLF CHAOS XDであれば,Devolver Digitalさんからの強く,また愛のあるリクエストがあり,我々が,特にオリジナル版のプロデューサーだった竹内(フロム・ソフトウェア 竹内将典氏)が,そこに絆された部分は大きいと思います。
METAL WOLF CHAOSは,当時いちゲームユーザーだった私にとっても幻のゲームでしたし,かなり「濃い」ゲームでもあるので,ユーザーさんの反応がとても楽しみです。ぜひ,ご期待いただければと思います。
4Gamer:
フロム・ソフトウェアさんの過去のタイトルで,また遊んでみたいものはいろいろとあるんですよね。それこそ「キングスフィールド」をまたやりたいというファンも多いでしょうし。
宮崎氏:
「キングスフィールド」については,神(前社長 神 直利氏)次第の部分が大きいですね。彼の個性に依拠する部分が非常に大なタイトルだと思っており,それのない「キングス」は,あまり魅力がないかなあと。
4Gamer:
分かりました。
来年,まずはSEKIROが出ますから,そちらを楽しみにしつつ,残り2本の新作タイトルの発表にも期待しています。
宮崎氏:
はい。まずはSEKIROにご期待いただければと思います。死と隣り合わせとなる,忍びの孤独な戦いを,ダイナミックで手に汗握るアクションと,豊富な選択肢で乗り越え,困難を克服していく楽しさを,ぜひお楽しみいただければと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」公式サイト
「Déraciné」公式サイト
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