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[GDC 2019]「Oculus Quest」と「Rift S」で,開発者が注意すべきポイントとは
セッション開始の前に,PC向けの新型VR HMD「Oculus Rift S」(以下,Rift S)が発表となったこともあって,セッションタイトルには赤字で「And Rift S!」と書き加えてあり,QuestだけでなくRift Sについての言及もあったので,合わせてレポートしたい。
Oculus Quest向けVRコンテンツ開発で注意すべきこと
Pruett氏は初めに,Questと,2018年に発売となったスタンドアロン型VR HMD「Oculus Go」(以下,Go)の違いを簡単に説明した。どちらもOculusのVRプラットフォームに対応し,スタンドアロン型VR HMDという点に違いはない。しかしPruett氏によると,GoはVRビデオを体験するのにベストなプラットフォームであり,QuestはVRゲームを楽しむために作ったHMDだという点で明確に異なるという。
とくにQuestを特徴付けているのは,インサイドアウト方式のセンサー4基を使って,付属するモーションコントローラTouchの位置および動きを認識し,奥行きを含めた周囲の環境情報をトラッキングできるというところだ。
Questでは,外部にセンサーユニットを設置する必要がなく,ゲームに耐えうる程度には高精度の位置や動き検出をVR HMD単体で行えるという手軽さが大きな利点である。
スタンドアロン型のVR HMDなので,Questはゴーグル内部にVRコンテンツを動かすためのコンピュータ部分も内蔵している。プロセッサには,Qualcomm製のハイエンドSoC(System-on-a-Chip)「Snapdragon
以上のスペックでPruett氏が,とくに賞賛していたのがSnapdragon 835の高性能ぶりである。Snapdragonシリーズは,動作状況に応じてCPUコアやGPUコアの動作クロックが変動するのだが,Questの場合,フレームレートを一定水準に維持する用途として動作クロック変動機能を活用しているそうだ。
また,GPUコアである「Adreno 540」が持つタイルベースレンダリングで,映像を細かいタイルに分割したうえで同時並行で複数のタイルを描画できることや,アンチエイリアシング処理の「4x MSAA」を1.25〜1.54msでかけられる点も,高性能の一因であるという。
そのほかにPruett氏は,視野の中心は高解像度でレンダリングを行い,視野から離れたところは低解像度でレンダリングする「フォビエイテッドレンダリング」を利用することも推奨していた。これはOculus Goの開発でも推奨されているものだが,モバイルプラットフォームの性能を上げるには重要な手法となるようだ。
演算負荷を軽減するグラフィックスのテクニックとして,Pruett氏は可能な限りドローコールを減らすべきであると強調した。漫然とステートチェンジを繰り返す描画は,同じシェーダでできる処理を可能な限りまとめた描画と比較して,倍以上の処理時間を要することもあるのだそうだ。
同じシェーダで処理可能なものをまとめるテクニックとして,Pruett氏は,個別のテクスチャを1枚のテクスチャにまとめてから処理するといった手法を提案していた。
高性能なGPUとCPUを使えるRiftの場合よりも,処理の最適化に気を配れというのが,Pruett氏の主張であるようだ。
Rift Sの液晶パネルはRiftよりも高解像度
Rift Sについては簡単な説明があっただけだが,注意点を紹介しておこう
後発の製品だけに,Rift SはRiftやQuestよりも部分的に高いスペックを有する。片眼あたりの解像度がその1つで,Rift Sは1280×1440ドットに解像度が上がっているそうだ。一方で,「解像度が向上した分だけ,Rift Sでは描画負荷も高くなるので,80fpsのフレームレートを維持できるように配慮せよ」とPruett氏は注意していた。
※90Hz動作のRiftに必要な描画ピクセル数は116.6Mピクセル/sだが,80Hz動作のRift Sでは147.5Mピクセル/sとなり,26%ほど負荷が上がっている
また,付属のモーションコントローラのTouchは,Questと同じものだが,VR HMD側のインサイドアウト方式センサーのトラッキング範囲が広がったので,Questよりも広い範囲で手の動きを認識できるようになったと,Pruett氏は述べていた。
Pruett氏は,Rift Sを「PC向けVRをさらに前進させるものである」と述べて,開発者による対応が広がることに期待を示していた。2019年春に4万9800円で登場するということなので,新たにVR HMDを導入してみようと考えていた人に,Rift Sは魅力的な選択肢となるのではないだろうか。
Oculus公式Webサイト
- 関連タイトル:
Meta Quest(旧称:Oculus Quest)
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Rift
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