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D&D5eの立役者の参戦で「RuneQuest」に何が起こるのか。Chaosium会長のJeff Richard氏に聞く,これからの20年【読者プレゼントあり】
なおRichard氏へは,2018年の「SPIEL'18」でも再始動した「RuneQuest」について話を聞いているが,それから6年が経過し,いよいよ日本語版の展開が見えてきた。日本語版「ルーンクエスト スターターセット」がFrogGamesから2023年12月に発売され,次はいよいよコア・ルールブックの発売……といったタイミングである。
[SPIEL'18]再始動する「RuneQuest」とグローランサ世界観,あと「クトゥルフ神話TRPG」のことをちょっとだけ,Jeff Richard氏に聞いてみた
日本において最もプレイされているTRPGといえば,やはり「クトゥルフ神話TRPG」だろう。SPIEL'18では,同作のデベロッパであるChaosiumもブース出展しており,Vice PresidentのJeff Richard氏に話を聞くことができたので紹介しよう。なお話題の大半は,2018年に再始動した「RuneQuest」についてなので,前もってご了承いただきたい。
「RuneQuest: Roleplaying in Glorantha」公式サイト
「新クトゥルフ神話TRPG」公式サイト
CoC関連製品で賑わうChaosiumブース。2024年後半にはRuneQuestの新展開も?
4Gamer:
お時間をいただきありがとうございます。まず今年のGen Conについて聞かせてください。手応えはいかがですか?
Jeff Richard氏(以下,Richard氏):
それが,いきなり初日に「財布」が売り切れてしまってね。もう絶好調だよ!
4Gamer:
えっ,財布ですか?
Richard氏:
CoCのWallet(財布)を販売したんだけど,これがとても人気でね。本物の革財布に,いろいろなハンドアウトが詰まった“小道具(プロップ)”なんだけど,すぐに在庫がなくなってしまいました。
4Gamer:
(現物を見て)ああ,これはスゴいですね。まさにCoCならではのアイテムだと思います。
「Arkham Investigator’s Wallet」製品ページ(英語)
Richard氏:
ほかにも「Pendragon」の新作「The Grey Knight」をリリースしたし,RQでは新たにMike Mearlsを雇ったりも……。
4Gamer:
それです! そのことが聞きたかったんです。あのMike Mearls氏がChaosiumに合流したんですよね。最初にそれを知ったときは,とても驚いたものです。
Join us in welcoming six new members to Chaosium!#weareallushttps://t.co/DnPkKksaC9
— Chaosium (@Chaosium_Inc) May 24, 2024
そう。「ダンジョンズ&ドラゴンズ 第5版」(以下,D&D5e)のリード・デザイナーだったMike Mearlsだよ。彼は今,私と一緒にRQに取り組んでいるんです。
4Gamer:
Mearls氏は,RQのプロダクト・ラインに配置されるんですね。D&D5e躍進の立役者である彼がRQに関わるだなんて,胸が熱くなる思いです。Richardさんから見て,彼の仕事ぶりはいかがですか。
Richard氏:
Mikeは驚異的なデザイナーであると同時に,驚異的なプロデューサーでもあるんです。今は彼と私,それにJason Durallの3人で,RQの新しいプロジェクトを進めています。2024年の後半には,この取り組みについてなんらかの発表ができると思いますよ。
4Gamer:
ものすごく楽しみです。一体どんなものになるのでしょうか。
Richard氏:
それはまだ言えません(口にチャックのジェスチャー)。アメリカのファンにさえ,まだ情報を出してないからね(笑)。
4Gamer:
それは残念です……。彼がいったいどんな化学反応をRQにもたらすのか,とても気になります。
Richard氏:
そこを詳しく話せればいいんだけど,実はこの話に触れたのは,この取材が初めてなくらいでね。
4Gamer:
新しいエディションに版上げされるわけではないのですよね。日本では,これからコア・ルールブックが出るところなので,そうなると困ってしまいます。
Richard氏:
そこは心配しなくても大丈夫です。新しいプロジェクトは,既存のすべての製品と完全な後方互換性を保っていますから。しかし“より手軽に”そして“より早く”,つまり新規プレイヤーが複雑に感じないような変化がもたらされることになるでしょう。さらには古き良きワールド設定である「The Big Rubble」を……おっと,話しすぎてしまいました(再び口にチャックのジェスチャー)。
4Gamer:
今おっしゃられた“より手軽に”“より早く”という部分は,まさにMearls氏がD&D5eで実現したことの一つですね。D&Dの伝統を損なうことなく,ルールの革新を実現してみせました。
Richard氏:
そのとおりです。人々が楽しいと感じている中核部分のメカニクスを残し,削れる部分を削ぎ落していく。そうやって軽量化して,“分かりやすく”“遊びやすく”していく。Mikeはそれが本当に得意なんですよ。
4Gamer:
ますます楽しみになりました。
Richard氏:
RQは私のお気に入りのシステムですが,とくに戦闘がエキサイティングだと考えています。すぐに決着がついて……そしてデッドリーです(笑)。だからこそ最高のシステムなんですが,その分ルールが多く,理解が難しい側面があります。
4Gamer:
RQの複雑さは,それこそ1980年代からの伝統ですね。それがRQの魅力であり,そしてハードルの高さでもある。
Richard氏:
そうです。なので我々は考えました。RQの“おもしろさの核心”とはいったい何なのか? そして新しいGMやプレイヤーに,その核心的な魅力を伝えるにはどうすればいいのか。楽しさをより多くの人に知ってもらうにはどうれすばいいのか。
4Gamer:
しかし日本でプレイできるようになるには,まだまだ時間がかかりそうですね。
Richard氏:
いや,むしろ非英語圏のパートナーにとって,この新しい製品はむしろ有利に働くはずですよ。なにせコア・ルールブックに比べて分量が少ないから,翻訳も簡単に行えますからね。今回のプロジェクトには,そういった狙いもあるんですよ。
4Gamer:
しかし,まずはコア・ルールブックが必要なのでは?
Richard氏:
現状では,次の日本語版製品は「RuneQuest - Roleplaying in Glorantha」(基本ルール)になると聞いています。順当にいけば,その次は「RuneQuest - Glorantha Bestiary」のはずですが……日本のパートナー(FrogGames)の戦略次第では,この新しいプロジェクトの製品になるかもしれない。
4Gamer:
Bestiary(モンスター辞典)に優先するほどですか!
Richard氏:
ええ。その意義は十分あると思います。
4Gamer:
分かりました。最後に,日本のファンに向けて何かメッセージをいただけますか。
Richard氏:
日本のファンの皆さんは,サポートのない中でも,根強く活動をされてきました。その意味では,世界でもっとも情熱的で,そしてもっとも重要なファンと言えるでしょう。そうした皆さんのおかげで,こうして今もCoCとRQが続けられているのですから,本当に感謝しています。
ここから先の数年間にリリースされる製品は,今後20年間は楽しめるものになると自負しています。そのぐらいの製品をお届けしますので,ぜひ楽しみにしていてください!
4Gamer:
期待しています。本日はありがとうございました。
読者プレゼントのお知らせ
冒頭でお伝えしたとおり,今回のインタビューに際してChaosiumから読者プレゼントを提供していただいた。記事中にも登場した「Call of Cthulhu」用の小道具(プロップ)から「Arkham Investigator’s Wallet」と,その前作にあたる「Call of Cthulhu Classic Gamer Prop Set」のセットがそれで,この2つをセットにして1名にプレゼントする予定だ。なお応募方法などの詳細は,2024年9月9日掲載の「Weekly 4Gamer」を確認してほしい。
こちらが「Call of Cthulhu Classic Gamer Prop Set」。CoCの40周年を記念して製作されたもので,この製品も2022年にエニー賞の金賞を受賞している。新聞記事や地図,パンフレットや公的機関の書類など,大型のハンドアウトを収録。インタビュー中に触れられた財布は,このコンセプトを発展させたものと言える
「RuneQuest: Roleplaying in Glorantha」公式サイト
「新クトゥルフ神話TRPG」公式サイト
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