プレイレポート
Switch版「ゼルダの伝説 夢をみる島」プレイレポート。初めてでも久しぶりでも楽しめる,新鮮さと懐かしさの両方が詰まった作品の魅力を紹介
少々余談となるが,筆者にとって「ゼルダの伝説 夢をみる島」は,小学生のころに出会ってから大人になったいまでも,さまざまなシーンやセリフ,そして“小ネタ”までがすぐに浮かぶほど大好きで,そして大きな影響を受けた作品だ。今回プレイしてみて,いままで遊んだことがなかった人にはもちろん,あらためてGB版をプレイした人にオススメしたいと思うほど,“もともとあった空気感”を大事に,そして丁寧に作られた作品になっていたと感じた。
ということで,初めての人に「夢をみる島」で楽しんでほしい点を紹介しつつ,かつてGB版をプレイした人に向けて「何がどう変わったか。何に注目してほしいか」にも触れながら本作の魅力をお伝えしていこう。
「ゼルダの伝説 夢をみる島」公式サイト
舞台は“どこかの海の変な島”コホリント
リンクの冒険が“懐かしくも新しい”形で蘇る
まずは本作のイントロダクションから紹介しよう。物語は,リンクが修行の旅を終えてハイラルに帰る航海の途中,突如嵐に巻き込まれてしまい,とある島に流れ着くところから始まる。
その島の名はコホリント。メーベの村に住む少女マリンに介抱され目覚めたリンクは,島からの脱出方法を探す中で不思議なフクロウと出会う。
フクロウから,この島は普通とは違うことわりで成り立っており,この地を治める神である「かぜのさかな」が眠るかぎり島から出られないことを告げられたリンクは,タマランチ山の頂上のせいなるタマゴで眠るかぜのさかなに目覚めの時を告げるため,全部で8つあるセイレーンの楽器を集める冒険へと旅立つのだ。
冒険の舞台となるコホリントは,絵本や童話の世界にいるかのような温かみが感じられる,独特の雰囲気を持つ3Dグラフィックスで描かれている。視点はGB版と同じく見下ろし型だが,画面は切り替え方式から通常のスクロール方式に変更されている。
画面は“リンクの周りはくっきり,手前や奥がぼんやり”といった感じでリンクにピントが合っており,ジオラマ的でミニマムな世界ながらフィールドに奥行きが感じられる工夫が施されているのが印象的だ。
鬱蒼とした木々が日の光を遮る森,お化けやカラスがうろつく不気味な墓地といった場所は,足を踏み入れると画面が薄暗くなったり,視界の悪さを表現するかのように少しズームになったりする。
このように島の地域性やその土地が持つ雰囲気が,視点や画面の明るさ,演出などによって丁寧に,そして“さりげなく”表現されているのも注目だ。
GB版が好きな者にとって嬉しかったのが,地形の高低差の表現が細かくなったこと。操作している感覚はGB版と変わらないが,「ここってちょっとした坂になっていたんだ」といった発見があるのが面白い。このように,細かいところまで気を配っていることが分かる地形の描かれ方からも,昔GB版をプレイしながら思い浮かべていた風景が再現されたような喜びを感じられたのだ。
基本操作は[L]スティックで移動,[B]ボタンで剣を振る,[R/ZR]ボタンで盾を構える,[A]ボタンで話しかけたり物をつかんだりといった動作を行う,[X][Y]ボタンがそれぞれセットしたアイテムを使用するというもの。[+]ボタンでメニューを開き,アイテムのセットやマップ確認,セーブなどが行える。
GB版から大きく変わったところが,剣と盾を使用するボタンが固定されたという点だ。GB版では剣と盾を含むすべてのアイテムを[A]と[B]ボタンにセットして使用する仕組みで,ボス戦では相手の行動に合わせてその都度アイテムを入れ替える必要があったり,セットしたアイテムによっては攻撃も防御もできなくなったりといったことがあった。それが本作では,剣と盾に加えて,ペガサスの靴を入手すると使用できるダッシュは[L / ZL],パワーブレスレット入手で可能となる物の持ち上げる動作は[A]という風に,ロック鳥の羽根を入手することでできるジャンプ以外の主要アクションは,アイテム入れ替えなしで使えるようになっている。
「あの“手間”自体がゲーム性の一部。忙しさを感じながらも切り替える楽しさがあったのだ」と思うGB版のプレイヤーは少なくないと思うし,そういった人には嬉しさの反面少し寂しさも感じるかもしれない。かくいう筆者もちょっぴりそんな気持ちがあった。
そのほかのアイテムをセットできるのは2か所だが,爆弾や弓矢といった主要な武器,ロック鳥の羽根やフックショットなどマップ移動の際に頻繁に必要となるアイテムなど,常にセットしておきたいものでも4つはある。実際にプレイしてみて,しっかりアイテムマネジメントの“手間”と楽しみは感じられたので安心(?)してプレイしてほしい。
アクションで注目してほしいのが敵とのバトルだ。E3 2019の試遊でもお伝えしたとおり(関連記事),“生き生きとしていて,ちょっとコミカル”な動きの敵たちは魅力的で,戦い自体もテンポよく爽快なものとなっている。
また,ボスを含むいくつかの敵がGB版とはちょっと違った戦い方になっているので,久しぶりにコホリントを冒険するという人も新鮮な気持ちで挑めるだろう。
例えば,ふしぎの森に登場する剣と盾を持ったモリブリン。GB版では突っつき合いながら戦ったが,本作でモリブリンと戦う際は,攻撃を盾で弾き,腕が上がったところを斬りつけることで倒せる。カナレット城に出てくる鎧を着た兵士タートナックとの戦いは,盾がぶつかり合う音が質感を感じさせるものとなっており,実際の騎士の一騎打ちのような緊張感があるので注目してほしいポイントだ。
剣と盾をぶつけ合あったときと同様に,投げ槍を弾いたときの音もいい |
ゾンビは“地面から這い出てくる感”が見事に表現されていた |
アクションとともに謎解きやパズル要素が楽しめるのがダンジョンだ。洞窟,滝つぼ,遺跡,塔など,深部にセイレーンの楽器が置かれているダンジョンは場所によって形状も違い,謎や仕掛け,待ち受ける敵もガラリと変わる。
部屋にいる敵を全部倒す。隠されたボタンを見つけて押す。新しく手に入れたアイテムを活用する……謎の解き方はその場所によってさまざまだ。襲いかかってくる強敵を退けつつ知恵を絞って謎を解きながら奥へと進み,待ち受けるボスを倒してセイレーンの楽器を手に入れよう。
ちょっと変な人たちとの独特の雰囲気ある会話が魅力
物語と演出の両方で重要となる音楽も新アレンジに
島の住人たちはちょっと変な人(?)ばかり。島のあちこちに住む人やいきもの,そして“いきていないもの”……ともかく,本作では彼らとのさまざまな交流をとおして物語を進めていくのだが,独特の雰囲気ある会話が本作の大きな魅力の1つとなっているのだ。
普段は無口だけど電話越しだとごきげんなうるりらじいさん,その奥さんで「イヤッホー!」と元気いっぱいなヤッホーばあさん,ちょっぴり“おませ”な言葉を使うメーベの村の子供たち,そのお父さんで「自分はいずれ山で遭難する」と宣言するお父さんのパパール,「やっぱアレだよな,アレ……」となんだか思わせぶりな口調で話す動物たちなど,好きなキャラクターとその会話を挙げたらきりがない。初めて「夢をみる島」をプレイする人は,変わった世界の不思議な住人たちとの交流を楽しんでほしい。
メタ的な要素もあってやりたい放題の楽しい会話だが,筆者はSwitch版制作の発表を知ったときにちょっと不安を感じていた。「もしかしたら,『今見ると悪ノリしすぎだ』ということで修正されるのでは……」という不安だ。確認したところ,プレイした範囲内では“あのころのまま”のテキストとなっていたのでホッとした。このあたりは安心して楽しめそうだ。
この話題で触れないわけにはいかないのが,ほかの任天堂の作品のキャラクターによく似た(?)住人や敵だろう。冒険の始まりの場所となるメーベの村のマダムニャンニャンの家に大きなワンワンがつながれ,物語を進める上で必要なアイテムとしてヨッシーの人形が登場し,そしてダンジョン内にある横スクロールアクション風の場所にはクリボーとパックンフラワーらしき敵が出てくるのだ。
もっといえば,リンクを介抱したマリンと共に生活するタリンは,大きい鼻と立派な髭,ぽっちゃりした体形でキノコが好きと,なんだかもういろいろ「皆さんご存知ですよね」という雰囲気のおじさんだ。この先も「スーパーマリオ」シリーズを中心にさまざまな見覚えあるキャラクターが,あくまでコホリントに生活する人や生きものとして登場する。
筆者としては,初めてプレイする人がどう受け取るか気になるが……不思議な世界観を持ったゲームであり,ちゃんと“この世界の住人”としても描かれているので,プレイしていて違和感を覚えるということはないはずだ。
そんな島の住人たちとの交流が重要となる本作の物語は,ちょっと間の抜けた空気や思わず笑ってしまう出来事が続くが,物語が進むごとに深みを増し,その雰囲気も変わっていく。とても丁寧に展開していくので,ぜひ最後まで物語を追いかけてほしい。
本作の大事な要素である音楽の前に,本作未プレイの人には「なんだそれは」と言われるかもしれないが,1つ紹介しておきたい。それは,草刈りと穴掘りの感覚だ。
なおさら「なにを言っているんだ」と言われるかもしれないが,「夢をみる島」は,“草刈りゲー”“穴掘りゲー”としての魅力があるゲームだ。剣で草を刈り,スコップで穴を掘る動作に妙なリズム感があり,心地よく,そしてやめられなくなるのだ。
筆者のようにゲームをスタートし,何をするわけでもなく刈れる草を全部刈り,そしてスコップで穴掘りをして一画面すべてを穴ぼこにして遊んでいたという人は多いと断言してもいい。極端な話,この草刈りと穴堀り具合が気になって,購入するか否か考えている人もいるのではないかと思う。
草刈りの爽快さはGB版に近く,穴掘りはちょっと変わって「ザック,ザック」というものからもう少し軽めの「サック,サック」といった感じになっているが,繰り返したくなる感覚や心地よさは変わらない。なにを言っているか分からないという人にも「なんだか分からないがともかくやってみよう」と思ってもらえると嬉しい。きっと止まらなくなるはずだから。
では「音楽」に触れよう。「ゼルダの伝説」シリーズといえばさまざまな楽器が出てくるが,物語のキーが8種類あるセイレーンの楽器であるため,楽器と音楽は本作でとくに重要なものとなっている。
満月のバイオリン,巻き貝のホルン,海ゆりのベルといったセイレーンの楽器が奏でる音とメロディはGB版の音源の時点でもとても情緒あるものだったが,本作では実際の楽器に近い音源となっており,GB版とは違う新たな魅力を打ち出していた。8種類の楽器が揃ったときどのような演奏が楽しめるのか,かなり期待が高まる。
BGMもストーリー展開の演出面で重きを担っている要素だ。例えば冒頭だと,島に流れ着いてから剣を拾うまでは目覚めたばかりのまどろみの中にあるような曲で,剣を拾いあらためて冒険に向かうとなったときに,その心境を表したような勇ましいイントロからおなじみのテーマ曲をアレンジしたフィールド曲が流れる。このように,ドラマチックに音楽が使用されているのだ。
メーベの村やどうぶつ村ののどかな曲,ふしぎの森の怪しげな空気が漂う曲,ダンジョンの緊張感ある曲など,ユーモアあるものからシリアスなものまでさまざまな曲風のBGMが楽しめるのが「夢をみる島」の魅力だ。初めて触れる人は,ぜひ新アレンジの楽曲でそれを堪能してほしい。
また,BGMの新アレンジはかなり大胆なものも多く,GB版のプレイヤーは驚かされることになるだろう。中には想像できないようなジャンルの楽曲があるが,どれもGB版の楽曲が持つ空気感をしっかり持ったものとなっているので,こちらも期待してほしい。
Nintendo Direct E3 2019の映像で流れた「タルタル山脈」の新アレンジ版を聴き,そこにGB版らしき音が入っているのに気づいて震えたという筆者のような人は少なくないだろう。まだすべての曲を聞いたわけではないが,プレイした範囲ではとても楽しく,そして嬉しいアレンジばかりで満足している。
まだまだ紹介しきれない要素は盛りだくさん。パーツを組み合わせてパズルのようにダンジョン作りが楽しめる「パネルダンジョン」のほか,コレクションアイテムのフィギュアが商品に加わった「クレーンゲーム」,アクション性とやり応えが増した「釣り堀」,タイムアタックも楽しめる「急流すべり」と,ミニゲームもより楽しめるものとなっているので,冒険を進めながら立ち寄ってみるといいだろう。
パネルダンジョン |
クレーンゲーム |
釣り堀 |
急流すべり |
なお,本作には,コッコ(ニワトリ)をいじめたり,ショップで商品をレジを通さず店を出ようとしたりといった行動を取ると,さまざまな“小ネタ”が楽しめる。もちろん筆者もいろいろと試したみたが……気になる人にはぜひ自分で確認してほしい。
DXに登場した「ふくのダンジョン」も登場。とある場所にあるダンジョンをクリアすると,いつもの緑の服に加えて,攻撃力が倍になる赤い服とダメージを半減する青い服が着用できるようになる | |
ヒロインであるマリンとのデート(?)も。彼女のさまざまな面が見られるので,一緒にあちこち回ってみよう |
冒頭で触れたとおり,本作は新しいゲームでありながら“もともとあった空気感”を大事に,そして丁寧に作られており,プレイしていて“あのころの気持ちがそのまま蘇る”ような,とても温かみのある素晴らしいアレンジが施された作品となっていた。
もともと個人的に,何度も読み返したくなるような,子供のころに好きだった絵本のような魅力がある作品だと感じ,何度も繰り返しプレイしてきたが,ここにきてまた新鮮な気持ちで「夢をみる島」がプレイできるというのはとても感慨深いものがある。初めて「ゼルダの伝説」シリーズに触れる人はもちろん,GB版をプレイした人にもあらためてこの感覚を味わってほしいと思う。
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