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「ドラゴンクエストX秋祭り2020」第1部レポート。サウンドチームと運営チームのスタッフがそれぞれの仕事を紹介
本稿では,2部構成で行われた本イベントのうち,第1部で行われた開発者座談会の模様を中心にレポートする。
BGMとSE,ボイスの制作・実装についてサウンドデザイナーが解説
開発者座談会は「サウンド篇」と「運営篇」に分かれており,前者ではサウンドデザイナーの瀬田幸弘氏と後藤譲太氏が解説を行った。
「ドラゴンクエストX」を含め,ゲームのサウンドデータはBGM(楽曲)データ,SE(効果音)データ,ボイス(音声)データという3種類に分類される。BGMデータに関しては,「ドラゴンクエストX」だと作曲家・すぎやまこういち氏の楽曲をデータ化して実装している。それらの楽曲には「ドラゴンクエストX」用に新たに作曲されたものと,既存の「ドラゴンクエスト」シリーズのものがあるので,聴いたときに違和感が出ないよう音量のバランスを調整したり,シーンに応じて楽曲が途切れないようループを組んだりする必要がある。
SEデータは,「現実的な音(リアルな音)」と「非現実的な音(ファンタジーな音)」に分類される。前者は足音やバトル中の打撃音,動物の鳴き声などだが,それらはマイクを使って収録し,PCで編集・加工して制作している。とくに森の中の音や川の音などは,実際にスタッフがロケハンに出向いて収録しているそうだ。そのほかのSEは,主に社内のライブラリにある音源を編集・加工して制作しているという。
非現実的な音の代表は,呪文のSEである。これらは,グラフィックスやモーションを見てどんな音になるか想像し,爆発音や衝撃音にシンセ波形などを加えて制作している。「ドラゴンクエストX」は仕様上,SEの発音数に容量制限があるそうで,なるべく少ない音数になるようSEを作っており,通常は2トラック,ボスの必殺技など派手な技でも4トラック程度に収めているとのこと。
それを受けて「ドラゴンクエスト」の生みの親・堀井雄二氏は,シリーズの呪文について,「火だからメラ,ギラといったように音から名前を付けていった。こうして実際に音にしてもらえて嬉しい」と感想を述べていた。
さらにバトルのSEは,これも仕様上の制限によりプリセット波形を編集・加工して作っている。プリセット波形は全部で256種類あるが,実際にバトルで使えるのは20数種類とのことで,創意工夫が必要だという。会場では,メラミのヒット音と大型モンスターの足音が,同じ波形とノイズを使って作られており,音程や音の長さなどを調整することで変化を出していることが紹介された。
なお新しい呪文のSEは,ディレクターの安西 崇氏やプランナー陣から「こんな感じで」というザックリしたオーダーを受けて,最初に10種類くらいのサンプルを作り,さらに手直ししたのち,堀井氏のチェックを受けて実装しているそうだ。
またSEの制作にあたっては,「ドラゴンクエスト」の世界観を損なわないよう注意を払っている。とくにルーラや階段の上り下り,攻撃ミス時の効果音は,初代「ドラゴンクエスト」から変わっていないように聞こえるが,とくに譜面があるわけではなく,歴代のスタッフが耳コピで作っていることが明かされた。
バージョン5より導入されたボイスのデータ制作は,まず収録した音声から,実際にゲーム内で使う部分を切り出す作業から始まる。「ドラゴンクエストX」ではボイスデータを,テキストボックスに表示される音声データと,キャラクターの動作に合わせるアドリブ音声のデータに分類しているとのこと。
切り出したボイスデータは,そのままでは音量が小さく聞こえないので,BGMやSEに合わせて音圧を上げる必要がある。それなら音圧を上げて収録すれば良いのではないかと思うかもしれないが,それだと音が歪んでしまうリスクがあるのだとか。音質や音圧はコンプレッサーやEQ,ディエッサー,マキシマイザーを使って調整していく。
この段階で,一旦ボイスデータを実装し,洞窟内の反響などシーンに合わせた調整を施す。また唇を動かしたときに出るリップノイズも,耳触りになるようならこの段階で除去する。
キャラクターがモンスターに変身した際のボイスは,コーラスやピッチシフトで揺らぎやピッチを変えたり,通信などスピーカーを通した音はアンプシミュレータを通したりして作っていることなども紹介された。
群衆の音声,いわゆるガヤは「ドラゴンクエストX」の場合,実際に6〜8人をスタジオに呼んで収録している。収録したボイスだけでなく,社内のライブラリにある音源をミックスすることもあるそうだ。とくに昨今のコロナ禍によりガヤも1人ずつ収録せざるを得ず非常に手間がかかるため,バージョン5.3では過去に収録したものを編集して使っている部分もあるという。
プレイヤーやコミュニティと開発スタッフの橋渡しをする運営チームとは
開発座談会の運営篇では,運営プランナーチーフの秋保広毅氏が解説を行った。「ドラゴンクエストX」を含めたオンラインゲームを扱う部署の多くは,ゲームのコンテンツを作る開発サイドと,ゲームのサービスを司る運営サイドに大きく二分される。そのうち運営サイドは,ゲーム内の動向調査やアップデート・イベントの告知,ゲーム内トラブルの対応,ネットワーク障害などの監視,不正行為への対応,継続的なプロモーションなどを手がけている。
そうした運営サイドの中で,秋保氏の所属する運営チームは,コミュニティ調査や緊急対応,告知作成,運営イベントの実施,公式コミュニティサイトの運用など,主に既存のプレイヤーに向けた情報発信を行っている。
その中でもコミュニティ調査では,公式コミュニティサイトの提案広場や外部のSNS,プレイヤー個人のブログなどをチェックし,プレイヤーの動向や反響などを客観的なレポートにまとめてチーム全体と情報を共有しているという。
並行して,アクティブプレイヤーの数やコンテンツ個別の遊ばれている状況なども,具体的な数値として調査している。
緊急対応は,大規模な障害や即座にメンテナンスに入らなければならない不具合などが発生したときの,文字どおり緊急的に必要な対応を指す。こうした障害や不具合が発生したとき,運営チームではまずコミュニティ調査を行い,被害規模などをチェックする。並行して開発サイドの各部門は,テクニカルディレクターの依頼に応じて何が問題になっているのかを調査する。そして,最終的にQA部門が障害や不具合が起きていたかどうか,起きていた場合はどこが問題なのかを検証して明らかにしていく。通常はこの検証が終わって初めて,運営チームは障害や不具合をプレイヤーに告知するのだが,極めて緊急性が高い場合は検証結果を待たずに,「こういう報告が多い」「こういったケースが発生している模様」といった形で告知することもあるそうだ。
検証により何が起きているかが判明したら,次は対応を検討していく。運営チームはサポート部門や監視部門から情報を受け,コミュニティの観点からどのような対応をするべきかを,また開発サイドはゲームやコンテンツをどのように改修すればいいかをそれぞれ検討。そうやって,どのようにどれだけの期間を使って対応するかの案がまとまったら,プロデューサーやディレクターの判断を仰ぐ。案が承認されたら,開発サイドが実対応をし,それが終わったら運営チームがプレイヤーに向けて報告をする。
実対応のあとは,障害や不具合が原因でプレイヤーの所持していたアイテムがなくなったり,クエストの報酬が受け取れなくなっていたりしないかを調査・検証する。その結果,アイテムなどを補填する必要があると判断された場合は,運営チームやプログラマーが適切な対応をする。
会場では,公式コミュニティサイトの提案広場についても言及がなされた。上記のとおり,提案広場に投稿されたプレイヤーの提案は運営チームのレポートによりチーム内の各部門に共有されているが,最近は提案の細分化が目立っているとのこと。これは主にコンテンツやプラットフォームが増えたことが原因で,チームとしても細かい対応をせざるを得なくなっているそうだ。
また投稿された提案に,開発サイドが個別に回答するケースが増える見込みはあまりないという。これは,開発サイドには開発に専念してほしいという運営チームの意向で,とくに繁忙期には優先度を抑えているとのこと。その代わり,公式配信での情報提供やアップデートの告知といった形で提案に応えていく方針であることが語られた。
「聖守護者の闘戦記 第5弾」が,11月中旬よりスタートすることも告知された。今回は「邪蒼鎧デルメゼ」とのバトルに挑むこととなる |
「破界篇 第4〜6話(完結)」も11月下旬からスタート。第6話での「破壊神シドー」との戦いは同盟バトルになるとのこと。堀井氏によると,シドーのデザインには頭を悩ませたという |
「ドラゴンクエストX オンライン」公式サイト
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(C)2012-2020 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
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