テストレポート
「ELDEN RING」を4K最高画質で快適にプレイできるGPUはどれだ? 14製品のグラフィックスカードでテストしてみた
ELDEN RINGは,同社が手がけた「ダークソウル」シリーズの雰囲気を踏襲しつつ,オープンワールドで構築される広大なマップや,霊体召喚などの新要素を備え,手に汗握るアクションで多くのゲーマーから好評を博している。グラフィックスも,ダークソウルから大幅に向上した半面,システム要件は,最近のゲームとしても高めになった。
では,一体どの程度のスペックを用意すれば,PC版ELDEN RINGを快適に遊べるのだろうか。Ampere世代のGeForce RTX 30シリーズと,RDNA 2世代のRadeon RXシリーズで検証してみた。
自社開発のゲームエンジンを採用
レイトレーシングにはパッチで対応
ELDEN RINGは,ゲームエンジンにフロム・ソフトウェアが独自に開発したものを採用している。ただ,同社が2019年に発売したアクションアドベンチャー「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」はDirectX 11対応だったのに対して,ELDEN RINGは,DirectX 12のみの対応となった。そのため,ELDEN RINGは同じ内製エンジンではあるものの,世代に合わせたカスタマイズを施した新バージョンを採用していると捉えるのが妥当だろう。
ELDEN RINGのグラフィックス設定は,今どきのゲームらしく,テクスチャやシェーダ,それに被写界深度といった比較的多くの設定項目がある。ただ,アンチエイリアシングの設定は「高/低/OFF」だけで,強弱の度合いや処理内容が分かりにくい。また,ライティングや反射表現,グローバルイルミネーションの項目は用意されているものの,2022年4月上旬の時点ではレイトレーシングには対応していない。発売元であるバンダイナムコエンターテインメントは,「パッチでレイトレーシングをサポートする予定」としているが,本稿公開時点では,未対応のままだ。
なお,ELDEN RINGでは,グラフィックス関連の設定として「最高/高/中/低」という4つのプリセットを用意している。
ELDEN RINGのシステム要件を表1に示すが,最低でもCPUは「Core i5-8400」か「Ryzen 3 3300X」と,とくにIntel製CPUで6コア以上のものを指定されているのが驚きだ。Ryzen 3 3300Xが4コア8スレッドタイプのCPUなので,Intel製CPUも同タイプで問題なさそうに思えるが,どういう理由があるのだろうか。
また,GPUの要件は,「GeForce GTX 1060 3GB」または「Radeon RX 580 4GB」以上と,2世代前ながらもミドルクラスのGPUが最低でも必要あり,こちらのハードルも相応に高い。
最低動作環境 | 推奨動作環境 | |
---|---|---|
CPU | Core i5-8400 |
Core i7-8700K |
メモリ | 12GB | 16GB |
GPU | GeForce GTX 1060 3GB |
GeForce GTX 1070 8GB |
DirectX | DirectX 12 | |
ストレージ | 60GB以上 | |
OS | 64bit版Windows 10 | 64bit版 |
GPU計14製品でテストを実施
テストには最高プリセットを使用
さて,これだけシステム要件が高めなELDEN RINGのテストでは,GeForceシリーズはAmpere世代では「GeForce RTX 3090 Ti」(以下,RTX 3090 Ti)から「GeForce RTX 3050」(以下,RTX 3050)までの9製品,RadeonシリーズはRDNA 2アーキテクチャの「Radeon RX 6800X」から「Radeon RX 6600」までの5製品,計14製品を用意した(表2)。ただ,RTX 3090 Ti搭載モデルとして使用したPalit Microsystemsの「GeForce
CPU | Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz, |
---|---|
マザーボード | MSI MEG X570 ACE(AMD X570, |
メインメモリ | G.Skill F4-3200C16D-16GIS |
グラフィックスカード | Palit Microsystems GeForce RTX 3090 Ti GameRock OC |
Palit Microsystems GeForce RTX 3090 GamingPro OC | |
GeForce RTX 3080 Ti Founders Edition |
|
GeForce RTX 3080 Founders Edition |
|
GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition |
|
GeForce RTX 3070 Founders Edition |
|
GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition |
|
ZOTAC Technology ZOTAC GAMING GeForce 3060 Twin Edge OC |
|
Palit Microsystems GeForce RTX 3050 StormX OC |
|
Radeon RX 6800 XTリファレンスカード |
|
Radeon RX 6800リファレンスカード |
|
Radeon RX 6700 XTリファレンスカード |
|
MSI Radeon RX 6600 XT GAMING X 8GB |
|
Sapphire PULSE RX 6600 Gaming |
|
ストレージ | Samsung Electronics SSD 850 |
電源ユニット | Corsair CMPSU |
OS | 64bit版Windows 10 Pro(Build 19043.1586) |
チップセットドライバ | AMD Chipset Drivers 2.13 |
グラフィックスドライバ | GeForce:GeForce 512.16 Driver |
Radeon:AMD Software Adrenalin 22.3.2 |
使用したグラフィックスドライバは,GeForceシリーズは「GeForce
なお,テスト解像度は3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つを選択している。
フルHDの最高プリセットでの快適なプレイには
RTX 3070 TiおよびRX 6800以上のGPUが必要
テスト結果へ進む前に,重要な点を説明しておきたい。
PC版のELDEN RINGは,フレームレート60fpsが上限となっており,垂直同期は無効にできるものの,60fps以上のフレームレートで表示できない※。つまり,一般的なゲームグラフィックスベンチマークテストのように,平均フレームレートの高さを比較するのには適さないわけだ。
そして,実際にプレイしたところ,1パーセンタイルフレームレートが50fpsを切ると,画面のモタツキを感じることがあった。快適にプレイするためには,それ以上のフレームレートが欲しいところだ。より快適なプレイを実現するのであれば,1パーセンタイルフレームレートは55fps以上が望ましい。
※外部ツールを使用してフレームレート上限を解除する,という選択肢は除外している
この前提を踏まえたうえで,テスト結果を見ていこう。
まずは,1920×1080ドットの結果(グラフ1)を見ると,平均フレームレートは,ほぼすべてのGPUが60fpsに張り付いた状態となった。
RTX 3050だけが若干離されてはいるものの,平均フレームレートで57fps以上の結果を残しているので,それほど問題になることはないだろう。しかし,1パーセンタイルフレームレートに目を移すと,RTX 3050だけは50fpsを切ってしまった。つまり,RTX 3050でELDEN RINGを快適にプレイしたいのであれば,グラフィックス設定を下げる必要があるだろう。
また,1パーセンタイルフレームレートが55fps以上に達したのは,GeForceでは「GeForce RTX 3070 Ti」(以下,RTX 3070 Ti)以上,Radeonシリーズでは「Radeon RX 6800」以上となった。「Radeon RX 6700 XT」も55fpsに迫っているので,実プレイでは大差ない結果と言えよう。とはいえ,より快適なプレイを実現するためのハードルは,かなり高い。
グラフ2には2560×1440ドットでの計測結果をまとめた。
ハードルの高さはあまり変わらずといったところで,GeForceシリーズはRTX 3070 Ti以上のGPUが必要だ。「GeForce RTX 3070」も,1パーセンタイルフレームレートが55fps以上となっているが,これは実際にプレイしてテストを行うといった都合上,生じる誤差によるものだろう。
一方,Radeonシリーズは,1パーセンタイルフレームレートが55fpsを超えているものは「Radeon RX 6800 XT」(以下,RX 6800 XT)のみだが,RX 6800でも55fpsに近い性能を発揮しているのでり,ゲームの快適度は大きな差がないと言っていい。1920×1080ドットと2560×1440ドットで,結果にあまり大きな差が見られないのは,フレームレートが60fpsで上限となっているためだろう。ただ,下を見ると,「GeForce RTX 3060」(以下,RTX 3060)や「Radeon RX 6600 XT」は,この解像度でのプレイで快適にやや欠けると言ってよさそうだ。
GPUごとの性能差が顕著に表れたのが,グラフ3に示す3840×2160ドットの結果だ。
1パーセンタイルフレームレートが55fpsを超えたのは,「GeForce RTX 3080 Ti」(以下,RTX 3080 Ti)以上の3製品に限られており,RTX 3070 TiおよびRX 6800以下のGPUでは,50fpsにすら届いていない。3840×2160ドットで快適にプレイできるのは,一部のハイエンドGPUに限られるというわけだ。
CPUは4コアになると8コアから15%低下
SMTはほとんど効果がない
GPUによる性能差は分かったが,CPUによる性能差はどれくらい表れるのだろうか。ELDEN RINGにおけるCPUコア数とゲーム性能についても確認してみたい。
このテストでは,GPUをRTX 3070 Tiに,解像度を1920×1080ドットに固定する。そのうえで,CPUのコア数とスレッド数をマザーボードのUEFIから変化させて先ほどと同じテストを実施し,フレームレートを測定する。つまり,コア数やスレッド数がどの程度あれば,GPU性能どおりのフレームレートを発揮できるのかを見てみようというわけだ。なお,CPUには「Ryzen 9 5950X」を使用しており,以下に示す5パターンでテストを実施している。
- 16コア32スレッド(16C32T)
- 16コア16スレッド(16C16T)
- 8コア8スレッド(8C8T)
- 4コア8スレッド(4C8T)
- 4コア4スレッド(4C4T)
その結果はグラフ4のとおりだ。
平均フレームレートは,4コアになると若干低下するものの,その度合いはそれほど大きくない。しかし,1パーセンタイルフレームレートになると,4C4Tは,8C8Tの85%にまで低下して,50fpsを割ってしまっている。4C8Tにしても1パーセンタイルはほとんど変わらない。つまり,ELDEN RINGにおいてSMT(対称型マルチスレッディング)の効果はほとんどなく,物理コア数が重要だと言える。システム要件の最低動作環境で「Intel製CPUは6コア以上」となっていたのは,4コアでは今回の結果で分かるように,フレームレートが大きく低下してしまうことがあるからだろう。
そうであれば,AMD製CPUは6コア6スレッド仕様の「Ryzen 5 3500」とすべきではないかと思うのだが,それが4コア8スレッド仕様の「Ryzen 3 3300X」となっているのは,本作のシステム要件を定義した時期に,Ryzen 5 3500がまだ発売されていなかったためではないだろうか。
最後に,各GPUでのテストにおけるシステム全体の消費電力を,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」で計測した。その結果はグラフ5のとおりだ。
RTX 3090 Tiが突出した形となったが,それに続く「GeForce RTX 3090」やRTX 3080 Ti,RX 6800 XTも消費電力は高めだ。消費電力とフレームレートのバランスを考えると,RTX 3070 TiやRX 6700 XTあたりがELDEN RINGにおいては優秀と言っても差し支えないだろう。
ボスの隙を見逃さないためにも
より快適なシステム構築を考えたい
ELDEN RINGは,ボスキャラの攻撃を把握して,その攻撃の隙に攻撃を当てていくというのが基本的なプレイスタイルになっている。その隙を逃さないためにも,快適なフレームレートでのプレイが望ましい。これからELDEN RINGを始めたい人や,ELDEN RINGのためにGPUのアップグレードを考えている人に,今回の結果が参考になれば幸いだ。
フロム・ソフトウェアのELDEN RING公式Webページ
- 関連タイトル:
ELDEN RING
- 関連タイトル:
GeForce RTX 30
- 関連タイトル:
Radeon RX 6000
- この記事のURL:
キーワード
(c)BANDAI NAMCO Entertainment Inc. / (c)2021 FromSoftware, Inc.