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「トゥームレイダー」がボードゲームに。多人数でアーティファクト争奪戦が楽しめる同作を,SPIEL\'19で遊んできた
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印刷2019/11/08 00:00

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「トゥームレイダー」がボードゲームに。多人数でアーティファクト争奪戦が楽しめる同作を,SPIEL'19で遊んできた

 SPIEL'19にはPCゲームが原作のボードゲームも多数出展されており,これは今回の特徴の一つと言ってもいいだろう。“原作付きゲーム”というと,原作のフレーバーを再現するためか,いささかルールが煩雑だったりするケースもかつては見られたが,近年においてはボードゲームとしてキッチリ楽しめる作品も多くなってきた。
 「Tomb Raider Legends: The Board Game」(以下,TRBG)は名前のとおり,「トゥームレイダー」シリーズを原作としたボードゲームだ。発売はスクウェア・エニックスで,ゲームデザインはホビージャパンが担当しているが,現時点で日本語版は販売されていない。3〜4人で40分程度のプレイ時間という,やや軽めの仕上がりの同作を現地で試遊してきたので,ざっくりとレポートしてみたい。

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アーティファクトを奪取して遺跡から脱出せよ!


 TRBGは対戦型のボードゲームだ。協力要素がまったくないわけではないが,勝者はただ1人である。プレイヤーは全員ララ・クロフト的な存在となり,危険な遺跡に眠るアーティファクトを手にし,いち早く脱出しなくてはならない。これがゲームの目的だ。

 コンポーネントにはカードとボードが含まれており,ゲームボードは遺跡を,カードはキャラクターのアクションを示しているが,基本的にはカードプレイで進行するゲームと考えて差し支えはない。各プレイヤーには自キャラの負傷段階などを管理するボードも用意されているが,これも増減するパラメータは負傷段階と経験点のみ――つまり管理ボードの上にワーカーめいたものがプレイスされたりはしないシンプルさだ。

 ゲームボードは8等分に分割された扇形の「エリアタイル」の組み合わせで構成される。スタートとゴールの位置は固定されているが,それ以外の6枚のタイルはランダムに選ばれ,裏返しで配置される。いわゆるプロシージャル生成である。
 なお「ここを突破すれば脱出できる」というタイルはクライマックスタイルと呼ばれ,いくつかあるものの中から1枚がランダムに選ばれる。さらにクライマックスタイルの前3枚のタイルには,裏返しでアーティファクトカードが配置される。これでゲームの準備は完了だ。

ゲームボードの初期配置。4体のララ・クロフトフィギュアが置かれたのがスタートタイルだ。隣にある1枚目のエリアタイルが開いてしまっているのはご愛嬌ということで
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 さて,エリアタイルには大きく分けて4つの効果が存在する。
 1つ目は脅威レベルで,そのエリアから次のエリアに行くためには,まずはそのエリアの脅威レベルを0にまで減少させねばならない。エリアの脅威レベルはプレイヤー全員が共有する数値で,0にしたのがほかのプレイヤーであっても問題なく先に進むことができる。
 2つ目は侵入時効果で,これは「そのエリアタイルを最初に表にして踏み込んだプレイヤーにのみ発生する効果」である。3つ目は脱出時効果で,これは上記とは逆に「そのエリアタイルの脅威度を最初に0にしたプレイヤーにのみ発生する効果」となる。なお2つ目と3つ目に付随する効果は,たいていあまり良くないもの(ダメージを受けるなど)だが,ときには好ましい効果のこともあるようだ。
 4つ目は固定効果で,「このタイルで特定のカードを使うと,特定の効果が起こる」といった永続的な特殊効果が示されている。
 この4つの組み合わせでエリアタイルは構成されているため,ララの道中はなかなかに波乱に富んだものとなるわけだ。

このタイルの場合,脅威レベルは3,侵入時効果は「スタートプレイヤーマーカーを得る」,脱出時効果はなし,固定効果は「アクションカードで『探索』をプレイしたら,このエリアの脅威レベルが1上昇」となる
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 続いてララのパラメータを見てみよう。
 本作において,ララには負傷段階と経験値が設定されている。負傷段階は全部で4段階あり,1段階負傷するごとに手札(後述するレイドカード)の上限が1枚減る。最大で6枚なので,最もダメージを負っている状態では手持ちレイドカードの上限は3枚となるわけだ。プレイしていると,最初は「上限が減ってもそこまで痛くないかな?」と感じるが,最後の詰めに入ってくるとレイドカードの上限枚数は,ゲームの勝敗を大きく左右するようになる。
 続いて経験値は,エリアタイルの脅威レベルを減少させた1点ごとに1点の経験値を獲得できる仕組みだ(最大で9点)。経験点を3点消費するとカードを1枚「ブースト」でき,これによってプレイしたカードの効果を増強できる。

キャラクターのパラメータを管理するボード
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計画的な行動が勝利の鍵


 さて,本作のメインとなるのはカードプレイである。
 本作のカードにはアクションカードレイドカードの2種類が存在する。アクションカードが基本的な行動を司り,レイドカードは使い捨てだが強力な特殊効果を発揮できるカードとなる。
 アクションカードは6種類/計7枚が存在する。それぞれの詳しい効果は説明書に譲るとして,このカードをプレイすることで各プレイヤーは,

  • エリアタイルの脅威レベルを減少させる
  • (もしそのエリアの脅威レベルが0なら)次のエリアタイルに進む
  • レイドカードを引く
  • 他のプレイヤーからレイドカードを奪う
  • 他のプレイヤーからスタートプレイヤーマーカーを奪う
  • 休息して負傷段階を回復させる

 といった行動が行える。なおこれらのカードは経験値を支払って「ブースト」することで,より大きな効果を得ることも可能だ。例えば「ほかのプレイヤーからレイドカードを1枚奪う」であれば,ブーストすれば奪えるカードが2枚になるといった具合に。
 各ターンでプレイヤーはプレイするアクションカードを3枚選び,キャラクターのパラメータを管理するボードの上に順番に伏せて置く(専門用語で言うとプロット式)。しかるにターンプレイヤーから時計回りに1枚目に置いたアクションカードを公開し,解決していく。全員が1枚目の解決を終えたら,次は2枚目,そして3枚目という順番でアクションカードは解決される。

このように1枚ずつプロットしたアクションカードを実行していく
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 このため,うまくほかのプレイヤーの行動が読めれば「他人にエリアの脅威レベルを下げさせて,自分は先のエリアに進む」こともできる。また逆に「どうせ漁夫の利を得ようとしているだろうから,ここは一旦休んでおく」という選択も可能だ。
 そうなると「誰もが脅威レベルを下げようとせず,お見合いになり続けるのではないか?」と思うかもしれない。だが本作では脅威レベルを下げると経験値が獲得できるため,「脅威レベルを下げられる」というのはプレイヤーにとって利益でもある。しかもここぞという場面でのブーストはとても強いので,切羽詰まった状況でもない限りは積極的に脅威レベルを下げに行くという戦術は大いにアリだと言える。

 さて,こんな風に1ターンの行動が終わったら,このターンに使ったアクションカード3枚は捨て札になる。次のターン,プレイヤーは手元に残った4枚のカードから3枚を選んでアクションを決定することになるわけだ。
 このため,ほかのプレイヤーのアクションをしっかり観察しておけば,「少なくとも次のターンにアレは来ないな」ということが推測できる。なにせアクションカードは6種7枚しかないのだから。もちろんこれは,同時に「このターンにアレとアレをしたいのに,できない(片方のカードが捨て札にある)」というジレンマを生む原因にもなるので,計画的な行動を心がけたい。

右側に3枚並んだカードが「このターンのアクションカードのプロット」。左側に1枚だけ置かれているのが「このターンに選ばれなかったアクションカード」。その下にある3枚が「捨て札」である
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 もう一種類のカードであるレイドカードは,1回使い捨ての特殊能力カードだ。これはアクションカードとは別の手札となり,伏せて管理される。レイドカードは毎ターンの終わりに1枚山札からドローできるほか,アクションカードでレイドカードをドローすることもできる。
 レイドカードにはさまざまな種類があるが,基本的に強力な効果を有している。「ほかのプレイヤーが自分を対象として『レイドカードを奪う』アクションを取ったときに,これをキャンセルさせる」といった防御カード,「特定エリアの脅威レベルを上げる」という直接的な妨害カード,「いま行ったアクションをもう一度行う」「捨て札からアクションカードを取ってきて入れ替える」といった行動支援カードなどなど,うまく噛み合うと一撃で状況を激変させ得るだけの力がある。

 ちなみにレイドカードにはさまざまなタイミングで使えるものが(中にはほかのプレイヤーの手番中に使えるものすら)あるが,使用できるタイミングはそれぞれのカードに明示されているので,「これって今使えるの?」という疑問でゲームが止まる心配はない。

さまざまなレイドカード
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疑心暗鬼のアーティファクト争奪戦


 レイドカードが真に劇的な効果を発揮し始めるのは,ゲームが終盤に入り,プレイヤーが「アーティファクト」を入手してからだ。
 本作において勝者は1人であり,勝利のためには必ずアーティファクトカードを手にしていなくてはならない。そしてアーティファクトカードは全部で3枚(裏向きでボードに配置される)あるが,そのうち2枚は偽物であって,勝利条件たる真のアーティファクトカードは1枚しかない。
 しかるにここが本作最大のポイントだが,このアーティファクトカードは本物であろうがなかろうが,レイドカードとして手札に入ってくる。そして真贋にかかわらずアーティファクトカードはディスカードできないので,必ず手札上限を圧迫することになる。これはとても痛い。

 そしてこの状態で「こいつは真のアーティファクトを持っているに違いない」と思われたら,ほかのプレイヤーから積極的に「レイドカードを奪う」アクションの対象として指名されることになる。
 また負傷段階を上げるようなレイドカードによって手札がさらに圧迫され,しまいには「手元にはアーティファクトカード1枚と,レイドカード2枚しかありません」という状況にも簡単に追い込まれる――ライバルプレイヤーが3人いれば,高確率でそのターンのうちに手札は0枚になるだろう。

すべてのアーティファクトカードがプレイヤーの手元に入った。いよいよアーティファクトの奪い合いが本格化する
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 だがそうやって身ぐるみ剥がされ得るような状況になればなったで,ほかのプレイヤーには「もうあのプレイヤーからアーティファクトは奪われたのでは?」という疑念が生まれる。例えばこういう状況を考えてみよう……

  1. プレイヤーAが,アーティファクト保持疑惑のプレイヤーBからレイドカードを1枚奪った
  2. プレイヤーBが,プレイヤーAからレイドカードを1枚奪い返した

 このとき,アーティファクトはプレイヤーABのどちらにあるのか,一概には言えなくなる。プレイヤーBはAにアーティファクトを奪われたから奪い返そうとしたのか? それとも「奪われたから奪い返そうとした」と思ってほしくてAからレイドカードを奪った――つまりまだBの手札にアーティファクトカードはあるのか? という思考になる。「あとはゴールすれば勝ち」な状況でない限り,一般論で言えばBは「アーティファクトが奪われていようがいまいが,Aからレイドカードを奪うべき」なだけに,Bのこの行動を元にアーティファクトの行方を推理するのは極めて困難である。

最後のエリアとなるクライマックスエリアには,赤と青のプレイヤー(この段階で赤のプレイヤーがアーティファクトを持っていた),その1つ前のエリアに黄色と緑にプレイヤーがいる。普通ならこれはもう「赤と青の勝負」になりがちだが……
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 このようにして生まれる疑心暗鬼はなかなか厄介で,最後の最後になるまで勝負の行方はもつれがちとなる。勝利のためには慎重な読みと,ときには大胆なギャンブルが必要となることもあるだろう。
 また,少ない確率とはいえ「来た,盗んだ,勝った」で遅れをとっていたプレイヤーが大逆転する可能性も残されている。経験値ブーストによる「レイドカードを2枚奪う」効果が,この一発逆転を強力にサポートするからだ。そういうシステムなので,最後まで油断は禁物だし,大負けの末に捨てゲーになることもまずないだろう。

遅れて入ってきた緑のプレイヤーがアーティファクト争奪戦を制して勝利!
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 本作は「トゥームレイダー」らしい,わりとえげつない財宝争奪戦をしっかりと描きつつ,勝敗の先が読みきれないスリリングさを持った作品となっている。またレイドカードの使用タイミングがかなり自由なわりに,タイミング問題が起こらないように設計されているのは,さすがホビージャパン開発部と言わざるを得ない。
 一方で「プレイヤー全員がララ・クロフト」というのは,シリーズのファンであればあるほど微妙にしっくりこないかもしれない。このあたりは好みが分かれるところだろう。

 残念ながら日本語版の発売は未定のようだが,もともと日本語で開発されていたこともあり,「要望がたくさん出れば日本語版を作るのは簡単」とのこと。トゥームレイダーファンは,さっそく要望を送ってみてはいかがだろうか。

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