プレイレポート
1粒で何度もオイシイ「ローグライクゲーム」。Steamで遊べる人気タイトルをピックアップして紹介
ローグライクをどのようなゲームか簡単に説明すると,“ステージやマップに自動生成を取り入れ,遊ぶたびに展開が変わる,ランダム性の高いゲーム”というと分かりやすいだろう。ローグライクの語源は,1980年に登場したターン制RPG「Rogue」。原点とされる同タイトルと同様のシステムを持つ作品がローグライクと呼ばれるようになった。
かつてはどんなジャンルであってもランダム生成機能が備わっていればローグライクに分類されていたが,“ターン制RPGである「ローグ」的ゲーム”という意味合いからは離れてしまうため,特徴の一部だけを持つ作品には「ローグライト」という新語が使われるようになっていった(本稿ではローグライトも含めてローグライクと呼称する)。
本稿では,魅力あふれる同ジャンルの作品群から,Steamで2020年現在遊べる新しめの作品からオススメのものをピックアップして紹介していこう。
「Nova Drift」
四方八方から出現する敵を打ち倒していく1画面シューティングに,ローグライクのランダム性とアクションRPGにおけるビルド構築の戦略性を取り入れたのが「Nova Drift」だ。本作の面白さは,ステージ構成だけでなく成長システムにもランダム要素が取り入れられているところ。遊ぶたびに自機の特徴が変わるため,毎回新鮮な気持ちでゲームを楽しめるようになっている。
本作の自機はボディとメイン武器,シールドの組み合わせで構築されており,敵を倒すことで経験値を獲得し,レベルアップするRPGのような成長システムが備わっている。ゲーム開始直後こそ平凡な機体だが,レベルアップすることで12種のボディと11種のメイン武器,10種のシールドからカスタムできるようになり,さまざまな特徴を持つ機体に換装できる。さらにレベルを上げれば,ステータスを向上させたり,メイン武器に特殊な性質を付与したり,特殊武装を開放するModを付与可能。Modは現時点で163種も存在するため,機体のバリエーションは膨大な数に及んでいる。
バリエーションの多さだけでなく,性質を理解して組み合わせることで自分好みの機体を作れるのも面白い。例えば,メイン武器を撃たない限りステルス状態になるボディ「Spectre」に,周囲の敵に燃焼ダメージを与えるシールド「Halo」を組み合わせれば,“敵に気づかれることなく忍び寄り,弾を一発も撃つことなくHaloで焼き尽くす”という,およそシューティングゲームとは思えないような自機を構築できる。ステルス化した自機を探知できない敵が,あちらこちらと無駄弾を撃つ様が面白く,燃焼ダメージを強化するModがあれば,かなり長く生き残ることが可能だ。
また,自動で艦載機を生み出すボディ「Carrier」に,砲台を設置する「Turret」,味方機や護衛機を作る「Ally」「Drones」といったModを取っていけば,“沢山の味方機を指揮して敵を倒す”というアクションRPGのペットビルドっぽい構築も可能だ。
Modの性質を理解すれば,メイン武器の短所を補ったり,長所を伸ばしたりすることも可能だ。メイン武器「Railgun」は,スナイパーライフルのような性質を持つ武器。高速で飛ぶ貫通弾を撃つが,連射速度が非常に遅く,弾が1発しか飛ばないため,沢山の雑魚の処理には向いていない。ここに,1回の発射弾数を増やす「Volley」と,ヒット時に弾が炸裂する「Splinter」を付ければ,弱点を克服した3Way貫通炸裂弾が完成する。
逆に,発射弾数は1発のままで,タメ撃ちで威力を上げる「Charged Shot」や,敵との距離が遠いほどダメージが上がる「Snipe」を付け,単発火力を上げるような遊びもできる。
もちろん,充分にレベルが上がれば,これらのModを併用したメイン武器も作れる。最初の単射状態はどこへやら,弾を撃つたびに居並ぶ敵が消し飛んでいくようになるので実に爽快だ。また,爆弾を撃つ主武器「Grenade」の爆発サイズをひたすら大きくしたり,敵に体当たりした際のダメージだけを追及するといったネタビルドも作れるのが奥深い。
このように,本作はビルドの構築を考えるのがとても楽しいのだが,常に思い通りの自機を作れるわけではない。レベルアップ時に好きなModを取れるわけではなく,ランダムにピックアップされた7つの中から選ばなければならないからだ。“レベルアップ時,スキルポイントを割り振る候補がランダムで選ばれるRPG”を想像してもらえれば分かりやすいだろうか。例えば,前述したように「Railgunに連射速度アップのModを付けたいな」と思っても,お目当てのModが選択肢に含まれていないという事態が起こったりもする。そんな時は,とりあえず選択肢に出ているModから適当なものを選び,即興でビルドを組み立てるしかないのだが,思ってもいなかった組み合わせを見つけたり,使い物にならない自機が誕生するのがまた面白い。
Modの中には,特定のModを複数個取得することで初めて出現する「Super Mod」や,低確率でしか出現しないが強力な効果を持つ「Wild Mod」も存在し,状況はさらに混沌とする。レベルアップ時にどのModが出てくるか,RPGにおけるレアアイテム探しのような感覚を楽しめるというわけだ。
本作はプレイ時間応じて難度が上がっていき,だいたい30分ほどで敵の物量に押し潰されてしまう。この30分という時間が絶妙で,「次はどんなビルドを作ろうか」とすぐに次のプレイを始めたくなる。「仕事の合間にひと遊びするか!」と始めたら,ハマってしまって夜が明けていた……なんてこともちょいちょい起こるほどに中毒性が高くてヤバい。原稿執筆時点では日本語に対応していないため,少しハードルが高いように思えるが,Modの説明文も基本的にはややこしい英語ではないので,興味を持った人はぜひ遊んでみて欲しい。
「Nova Drift」Steamストア
「Slay the Spire」
ここ数年のローグライクを語るうえで欠かせないのが「Slay the Spire」だ。RPGのターン制戦闘に,トレーディングカードゲームのエッセンスを組み合わせた独特のシステムは,その後に発売された多くのローグライクに影響を与えている。
主人公は,攻撃力に優れた剣士「アイアンクラッド」,毒と短剣を操る暗殺者「サイレント」,攻撃や防御に役立つオーブを生成して戦う「ディフェクト」,そして特殊な効果を持つスタンスを切り替える「ウォッチャー」の4人。彼らは攻撃や防御などあらゆる行動がカード化されており,道中で手に入るカードと合わせてデッキを構築し,行く手を阻むモンスターを倒していく。
戦闘ではデッキから配られたカードを使って行動していくため,たとえ敵のHPが僅かであっても,手札に攻撃のカードがなければトドメを刺せないし,次のターンに猛攻が来ることが分かっていても,防御のカードがなければ守りを固められないのだ。
こうした状況に陥らないようにするために,戦術に合わせたカードを集めてデッキ構築したり,不要なカードを削除してデッキ圧縮をしたりすることが重要となる。ただし,デッキを構築するといっても,本作では自由にデッキを編集することはできず,イベントや商人を介してカードを入手・削除していく。もちろん,どこでイベントが起こるかは分からず,もらえるカードもランダムなため,アドリブでデッキを組んでいくことになるのだが,これが非常に面白い。デッキに制限枚数はないが,多くなりすぎると目当てのカードを引きにくくなるので,ある程度絞って構築していくといいだろう。
本作の面白さを語るうえでカードのコンボは外せない。決められたデッキが組めるカードゲームと異なり,本作のデッキはさまざまな運の要素が絡む。有効な組み合わせを考え,道中でカードを集め,戦闘時に思い描いていたコンボが決まった時の気持ちよさはひとしおで,TCGアニメに出てくる主人公もかくやの大逆転劇が起こることもある。ローグライクの魅力である“戦略と運の融合”が実現されており,大量のフォロワーが生まれたのもうなずけるゲームデザインと言える。
「Slay the Spire」Steamストア
「SYNTHETIK: Legion Rising」
「SYNTHETIK: Legion Rising(以下,SYNTHETIK)」は,ランダムに生成されるステージでスリリングかつシビアな銃撃戦を楽しめるゲームだ。見下ろし型シューティングであるが,FPSにおける「ヘッドショット」「発砲の反動によるレティクル(照準)の拡大と制御」「リロード」といった操作テクニックが導入されており,“運の要素をテクニックで乗りこえていく”というローグライクの醍醐味を楽しめる作品となっている。
プレイヤーはプロトタイプのアンドロイドを操作し,ランダム生成されるフロアに配置された敵ロボット軍に立ち向かう。アンドロイドは,防御面で優れる盾つきの銃を持つ「Riot Guard」,背後からダガーで攻撃することで大ダメージを与えられる「Assassin」,自動砲台を設置できる「Engineer」といった8つのクラスが存在する。それぞれ異なった長所を生かし,フロアを攻略していくのだ。
本作のポイントは,“慎重な立ち回りと正確なエイミングを求められるスリリングな銃撃戦”と“銃器類の存在感”。見下ろし型シューティングと聞くと無数の敵をバリバリ打ち倒していくものを連想するかも知れないが,「SYNTHETIK」でそんな真似をしたら即座にハチの巣にされてしまう。勝つためには,“できるだけ遠くから狙撃する”“敵の背後に回り込んで無防備な背中を撃つ”“障害物の陰に隠れて敵の銃撃を防ぐ”といった,ステルスゲームにも通じる慎重な立ち回りを徹底する必要がある。
本作は見下ろし型シューティングであるにもかかわらず,ヘッドショットの概念が存在する。カーソルを動かしてロボットの頭部を狙い撃てば,ヘッドショットとなってダメージが倍増。すばやく敵を倒せるうえ,有限である弾薬も節約できるといいこと尽くめだ。しかし,銃器には精度がある。発砲すると反動でレティクル(照準)が広がってしまい,次の弾がどこに着弾するか分からなくなってしまうため,発砲を止めてレティクルが戻るのを待つなどして上手く乗り切らなければならない。このあたりは見下ろし型シューティングというよりはミリタリー系FPSやTPSっぽいプレイフィールだ。
本作には98種もの銃器が存在する。速射性に優れたサブマシンガン,近距離に散弾を放つショットガン,爆発で多数の敵を巻き込むランチャー,敵を一気にオーバーヒートさせる火炎放射器などなど……。これだけでも充分にバリエーションは豊富なのだが,本作の銃器には23種の「バリアント(特殊性能)」から1つがランダムで付与される。
バリアントは弾倉の容量が増えるものや,威力が上がる代わりに反動が強くなるもの,一定時間が過ぎると爆発するものなどさまざまで,同じ銃器でもバリアントによって使い心地が変わってくる。“本来なら1マガジン当たりの弾が少ないスナイパーライフルに,装弾数が増えるバリアントが付与されて使い勝手が向上する”というラッキーがあるかと思えば,“ただでさえ反動が大きいマシンガンに,反動が増加するバリアントが付いてしまい,どこに弾が飛ぶか分からないじゃじゃ馬のような銃器になってしまった”なんてハプニングも起こる。
また,フロア内で拾える「アップグレードキット」があれば銃器を改造できるのだが,ここにも運が絡んでくる。連射速度や装弾数,火力アップなど33種の項目から3〜4個がランダムで抽出され,その中から1つ好きなものを選べるようになっている。要するに同じ銃器であっても,バリアントやアップグレードキットにより,毎回異なった性能のものが生まれるということだ。
そして,銃器の存在感を強く表現しているのがリロード(弾の再装填)とジャム(弾詰まり)だ。本作では弾倉の弾を撃ち尽くした後,[E]or[SPACE]で空の弾倉を取り外してから,[SPACE]でリロードを行わなければならない。一般的なFPSやTPSではあまり見られないが,この一手間が加わることで,より融通の利かない機械っぽさが感じられるようになっている。
また,本作にはリロード時間を短縮するうえに攻撃力バフが付与されるジャストリロードシステムが搭載されている。弾倉の取り外しにジャストリロードと,プレイ中はなかなかに忙しく操作をしなければならないのだが,扱いに慣れてくるとこの操作も小気味よく行えるようになり,使っている銃器に段々と愛着がわいてくるのだ。
加えて,銃器は一定確率でジャムが発生してしまい,[SPACE]を連打して弾詰まりを解消するまで次の弾を撃てなくなる。撃ち合いの最中や,障害物の陰を出て勝負に出た時など,「よりによってこのタイミングか!」という瞬間でジャムることも少なくなく,心臓が凍り付いてしまう。
融通の利かない機械という側面が見えること,バリアントやアップグレードキットによる一期一会,これらの要因が混ざりあうことで,銃器への感情移入がより深まるというわけだ。
そんな「SYNTHETIK」は2020年1月のアップデートで日本語に対応し,これまでより遊びやすくなっている。新規プレイヤーはもちろん,かつて英語が壁になって挫折してしまった人もあらためて遊びなおしてほしい。何かにつけて自己主張する銃器の可愛らしさにハマること請け合いだ。
「SYNTHETIK: Legion Rising」Steamストア
「Overdungeon」
RTS(リアルタイムストラテジー)とTCGを組み合わせ,ローグライクの要素を取り入れたゲームが「Overdungeon」だ。フィールドには敵味方の「リーダー」がおり,互いにヒヨコやアルパカ,熊といった「アニマル」を召喚し,迫撃砲やバリア施設といった「建物」を建築して戦う。
RTSと聞くと複雑な操作が必要に思うかもしれないが,本作のフィールドは1画面と狭く,アニマルや建物も配置するだけで操作は完了となるため,身構える必要はない。なお,カード化されたアニマルと建物で構成されるデッキは事前の編集は不可能かつ,ランダムで発生するイベントや商人から新しいカードを入手していく。このあたりは本稿で紹介した「Slay the Spire」とよく似ている。
本作の魅力は,自分で考えたコンボがうまく決まったときの爽快感だ。例えば「ヒヨコパーティ」は30匹のヒヨコを召喚するカードなのだが,アニマルを倍にする「クローン」を使えば,召喚するヒヨコの数が60匹になる。ほかにも,強化することで召喚数が増える「群れアルパカ」と,デッキのアルパカカードをサーチしたうえで,強化して使用する「野生のアルパカがあらわれた!」の組み合わせは,強力なシナジー(相乗効果)を発揮してくれる。思い描いた展開になったときの爽快感は病みつきで,いろいろなコンボを試したくなるのだ。
また,本作には「オーバーロード」システムによる独特の戦略性があり,ゲームの奥深さを演出している。オーバーロードは強力なカードに設定された副作用のようなもので,次のターンに引けるカードが減ってしまう。本作はターン開始時に4枚のカードが配られ,残り2枚になった時点でカードが廃棄され,次のターンに移行するといった流れで進行していく。オーバーロード付きのカードを使用すると配られるカードが減ってしまうため,そのターン中は不利な戦いを強いられてしまうのだ。手札を増やせる建物でカバーしたり,ここぞのターンだけ強力なカードを使用したりする……といった戦略を組み立てるといいだろう。
「Slay the Spire」から影響を受けたゲームは多いが,同作のエッセンスをRTSと組み合わせるというコロンブスの卵的な発想が光る「Overdungeon」。うまくコンボを決めて沢山のアニマルたちを愛でてみよう。
「Overdungeon」Steamストア
「Risk of Rain 2」
ローグライクの定番ともいえる横スクロールアクション「Risk of Rain」の続編が本作。昨年3月に始まったアーリーアクセスより,Steam上でのレビュー評価で「圧倒的に好評」をキープしているうえ,家庭用ゲーム機に移植されていることもあり,本作の話を聞いたことがある人も多いだろう。
本作の目的は,個性豊かなサバイバーたちを操作し,フィールド内にある「テレポーター」(出口)を探し出して脱出すること。プレイヤーは行く手を阻むモンスターを倒してお金を集め,宝箱やカプセルからアイテムを買ってキャラクターをパワーアップさせていく。しかし,本作のモンスターは時間経過に伴ってドンドン強くなっていくため,ノンビリとお金を稼ぐのはあまり賢い行動とはいえない。稼ぎに使う時間とテレポーター探しにかける時間のバランスを考えて行動することが重要となっているのだ。
本作には,80種類ものアイテムがあり,所持しているだけでサバイバーの攻撃にさまざまな特殊効果を付与してくれる。所持できるアイテムの数は制限がないうえに,同じアイテムを複数個所持していても効果がパワーアップしていく。1回の攻撃で,スタン効果,移動速度の低下,ミサイルやダガーなどでの追撃,ゴーストの召喚などなど……,さまざまな効果が付与されるのは爽快の一言に尽きる。
サバイバーたちも弓矢で戦う「ハントレス」,砲台を設置する「エンジニア」,剣で敵を斬りつける「マーセナリー」など個性豊かなキャラクターが揃っている。キャラごとに立ち回りが異なるアクションゲームとしての楽しさに加え,アイテム集めの運要素が加わるのだから面白くないわけがない。まさにローグライクの新定番と言える作品で,アクションゲームが好きな人にはとくに刺さるはずだ。
「Risk of Rain 2」Steamストア
自分好みのローグライクタイトルを遊びつくそう
新しめのローグライク作品から注目作をピックアップした本特集,いかがだったろうか。運の揺らぎを知識とテクニックで乗り越えていくのがローグライクの魅力だが,それぞれのタイトルで運の要素に対するスタンスの違いがあるところが面白い。
今回紹介した作品以外にも,ランダム生成される島を守るRTS「Bad North」や,ベルトスクロールアクションとローグライクが融合した「Lost Castle」,パーツを組み合わせてロボットを作る「NeuroVoider」など,名作と呼ばれるローグライクタイトルは多い。ぜひ自分好みのタイトルを見つけてじっくりと遊んでほしい。
- 関連タイトル:
Nova Drift
- 関連タイトル:
Slay the Spire
- 関連タイトル:
SYNTHETIK: Legion Rising
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- 関連タイトル:
Risk of Rain 2
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