インタビュー
「FORSPOKEN」はオープンワールドで魔法を体感できるアクションRPG。開発者にコンセプトやゲームの流れを聞いた
最新トレイラーが公開されたタイミングで,Coディレクターを務める寺田武史氏,クリエイティブプロデューサーの光野雷生氏にメディア合同インタビューが行われたので,その模様をさっそくお届けする。
寺田武史氏 |
光野雷生氏 |
オープンワールドの世界で魔法を体感
──「FORSPOKEN」のトレイラーを初めて観たとき,2012年に公開されたLuminous Studioの技術デモ「Agni's Philosophy」(関連記事)を思い出しました。本作を企画するにあたり,あのデモは何か関係があるものだったのでしょうか。
寺田武史氏(以下,寺田氏):
いえ,「Agni's Philosophy」はあくまでも技術デモなので,ゲームとして直接のつながりはありません。
光野雷生氏(以下,光野氏):
世界観も設定も,まったく別物です。
──それでは,改めて本作のコンセプトを教えてください。
寺田氏:
最初は,「オープンワールドの世界で魔法を体感したい」というところから始まりました。その魔法を使うにあたり,「こういう攻撃があったほうがいい」「こういう移動手段があったほうがいい」といったことを連想しながら,アクションや魔法パルクールを作っていったんです。
──魔法による移動と言えば,「FINAL FANTASY XV」(以下,FFXV)のノクティスが使う「シフト」もそうですよね。
寺田氏:
Luminous Engineを使っていますから,似ている部分はあるかもしれません。FFXVの開発時に活躍したメンバーが,本作でディレクターやリーダーを務めていたりもしますし。けれど,エンジンはさらに進化を遂げたバージョンを使っていますし,ゲームの内容についてFFXVを意識しているかというと,そんなことはありません。
──トレイラーを見ているとアクション性が高く,プレイ難度も高そうに思えるのですがいかがでしょうか。
寺田氏:
アクションに関しては,どんなプレイヤーでも楽しめる方向で作っています。難度の変更もできますし,気軽に遊べると思いますね。イージー,ノーマル,ハードといった感じで選択できるとお考えください。
──本作の大きな特徴である魔法パルクールについて教えてください。例えば「この地形には,この魔法パルクールが最適」,逆に「この地形では,この魔法パルクールは使えない」といったことはあるのでしょうか。
寺田氏:
魔法パルクールが何種類あるかについてはまだお話しできませんが,おっしゃるような地形の違いによる魔法パルクールの使い分けはできるようになっています。
最初から使える魔法パルクールは少ないのですが,ゲームの進行に合わせて増え,新しい地形も登場します。
舞台となるアーシアはファンタジーの世界なので,「あっちはこんな地形だったが,反対側に行ってみたら全然違うことになっていて,移動手段も試行錯誤しなければならなかった」なんてこともあります。そこは開発上,力を入れたポイントですね。
──魔法パルクールは,一度習得すれば無限に使えるのでしょうか。それともスタミナのようなリソースの概念があるのでしょうか。
寺田氏:
プレイヤーがリソースを管理する仕組みを採用しました。やはりゲームですから,そういった要素は必要だろうと考えました。
──魔法パルクールを使った移動中,例えば崖から落ちるといった事態になったとき,落下ダメージなどはあるのでしょうか。
寺田氏:
リソース管理がある以上,そういった失敗もあり得ます。そして失敗した場合には,何かしらのペナルティが発生します。ただ基本的には快適に遊んでほしいと考えていますので,そうしたペナルティが不快さにつながらないよう「少しだけ気を配ってください」というバランスにしています。
──魔法パルクールによる高速移動では,敵とのエンカウントなどに問題が生じたりしないのでしょうか。
寺田氏:
現在,最終ブラッシュアップをしている段階なんですが,まさに「フレイの性能が高すぎて敵が追いつけない」という課題をどうやって乗り越えるか,調整をしているところです。
──魔法パルクールにはワイヤーアクションもあるとのことですが,それは移動だけでなくバトルにも使えるのでしょうか。
寺田氏:
ワイヤーアクションは壁や床だけでなく,敵に対しても使えます。したがってバトルに応用して使いこなすこともできます。
──使い方によっては,かなりアクロバティックなこともできると。
寺田氏:
そうですね。テクニックを磨いて,「こういうこともできる」というところを発見していくと面白いと思います。
多彩な魔法を習得し,プレイスタイルに合わせて使い分ける
──それではバトルについて教えてください。魔法主体のバトルということで,近接戦よりも魔法パルクールで間合いを取って中〜遠距離から攻撃するようなイメージでしょうか。
寺田氏:
最初は確かに中距離くらいで使う魔法が主体になりますが,プレイスタイルに合わせて近接型や設置型などさまざまな魔法を選べるようになっています。具体的な数はまだ言えませんが,「1回のバトルでは使いきれない」ほど,魔法のバリエーションを用意しています。
──武器を使って戦うことはできるのでしょうか。
寺田氏:
基本的に魔法のみで戦います。
光野氏:
魔法のバリエーションの中に,武器の形状を取るものはあります。
──魔法は,MPのようなリソースを使って発動するのでしょうか。
寺田氏:
はい,リソース管理はあります。とはいえ,コンセプトに沿った,魔法をたくさん使えるバランスです。
──ネイルアートで魔法を強化する要素が,現代的で面白いと思いました。このアイデアは何がきっかけで生まれたのでしょうか。
光野氏:
本作ではコンセプトの1つとして,現代とファンタジーの「二面性」を掲げています。ネイルアート自体は,古代バビロニアに文化として存在していたんです。そこからヒントを得て,アーシアでは魔法に関する文化としてネイルアートが根付いているという設定を作りました。一方,ネイルアートは現代人のフレイにも理解できる文化です。
このように,現代とファンタジー双方の世界観に噛み合ったことで,本作に採用しました。
──ほかにも,現代とファンタジーの二面性を感じられる部分はありますか?
光野氏:
ゲーム全体を通して,フレイ自身がプレイヤーの思うことや感じることを体現しています。仮に,我々現代人がまったく文化の違う異世界に飛ばされたらこう思うだろう,こういうアクションを取るだろうというところにフォーカスしているので,ゲームを進めていく随所で,現代とファンタジー双方に噛み合った部分を感じられると思います。
──魔法を習得・強化するために消費する「マナ」は,どういった位置付けなのでしょうか。
光野氏:
マナは,バトルやクエストを通じて得られるスキルポイントです。RPGとして,戦ってリソースを稼ぎ,それを使ってどう成長させるかというシステムの1つとなっています。
──魔法の習得は,例えば1つの属性に特化して覚えたら,ほかの属性を覚えるのは難しいといったような制限があるのでしょうか。それとも最終的には,ほぼすべての魔法を習得できるのでしょうか。
寺田氏:
どれを優先して習得していくかという選択はありますが,いろんな魔法を使ってほしいですから,最終的にはすべての魔法を習得して,実際にどれを使うのか選ぶという形が近いです。取得する魔法でキャラクターの役割を迫るようなバランスではありません。
等身大の現代人・フレイが遭遇する異世界「アーシア」
──先日のメディア向けプレビューでは,ゲームプレイ動画と同じくらい,フレイの紹介に時間をかけていたのが印象的でした。それだけフレイのキャラクター作りにこだわったということでしょうか。
光野氏:
はい。今回は,等身大の女性を描くことをテーマの1つとして掲げました。フレイは,完璧な人間で常に正しいといった王道の主人公ではなく,不完全な人間です。間違えたり,失言したり,運が悪かったりと人間らしい部分がたくさんあります。どのような体験をして,どのように試練を乗り越え,人間的に成長していくのか。その過程を描き,共感を持ってプレイヤーに受け入れてもらえるよう,こだわってフレイのキャラクターを作りました。
──フレイは,現代のニューヨークで苦境に立たされているとのことですが。
光野氏:
ストーリーに関わってくるので詳しく話せないんですが,彼女がさまざまなトラブルに巻き込まれているところからゲームがスタートします。
──フレイのゲーム的な成長要素について教えてください。プレビューでは,魔法や装備の強化が紹介されましたが,一般的なRPGのようにレベルやステータスなどの概念はあるのでしょうか。
寺田氏:
ゲームシステムの詳細は後日改めて公開しますが,成長は魔法や装備で行います。基本的には,オープンワールドの世界を探索すればするほど新しい魔法や装備を獲得でき,それらを強化したり,カスタマイズしたりしていく形です。強化の内容も,攻撃力に特化するなど,プレイヤーの趣向を反映できるようになっています。
──ゲームの進行について教えてください。オープンワールドということで,さまざまな地域があるかと思うのですが,プレイヤーが自由に攻略する順序を決められるのでしょうか。
寺田氏:
攻略の順序は,基本的に決まっています。本作は,プレイヤーにストーリーを体験してもらい,満足してほしいということを主軸に置いています。したがってストーリーをベースにゲームが進行していき,そのうえでサイドストーリーに行ったり,フレイを強化したりといった内容にしています。
とはいえ,メインスト−リーで訪れるのはマップのごく一部になると思うので,それ以外のエリアをどう探索するかはプレイヤーに委ねられています。
──プレイアブルキャラクターはフレイのみになるのでしょうか。
寺田氏:
そうですね。当然さまざまなNPCなどが出て来ますが,基本的にはフレイと相棒の腕輪である「カフ」のストーリーを描いていきます。
──ゲーム内の拠点となるのはシパールという街とのことですが,ここにいるNPCから依頼を受けてクエストをこなし,ストーリーを進めていく進行になるのでしょうか。
寺田氏:
はい。世界は滅んでいるので,街から街へという展開にはなりません。シパールの外にはさまざまな遺跡や廃墟があり,そこを調べていくことで世界の秘密が少しずつ紐解かれていくという要素を入れています。
──シパール以外に街がないとなると,ファストトラベルはどうなるのでしょう。
寺田氏:
オープンワールドでファストトラベルがないのは遊びづらいですから,要素として当然存在しています。街ではありませんが,マップ上の適切な場所にファストトラベルポイントを配置しています。
──世界観についても教えてください。アーシアを統治する「タンタ」とは,どんな存在なのでしょうか。
光野氏:
タンタは,端的に表現すると魔女です。もともとは強力な力でアーシアの平和を保っていた善意の統治者だったのですが,とあるできごとによって狂気に満ちた存在になってしまい,フレイがどうしても向き合わなければならない相手になります。
──「ブレイク」について,改めて教えてください。
寺田氏:
ブレイクはアーシアを覆う瘴気で,触れると人間は死に,ほかの生物はモンスター化します。そしてブレイクが密集している状態を,「ブレイクストーム」と呼びます。なぜブレイクやブレイクストームが発生したのか,そしてそれらを消滅させるにはどうすればいいのか。それが本作のストーリーのコアになっています。
──探索中,ブレイクストームに遭遇して通常より強い敵と戦うことになるとのことですが,これは特定の場所で発生するのでしょうか。それともランダムで発生するのでしょうか。
寺田氏:
ストーリー上で強制的に発生するケースと,探索中に突然発生して戦うかどうか選択するケースの両方があります。
──ゲーム全体のボリュームはどのくらいになりますか。
寺田氏:
マップの広さやプレイ時間などを具体的に話すことはできませんが,魔法パルクールによる高速移動を存分に堪能できるくらいの広さは担保しています。決して狭い,短いと感じることはないだろうと考えています。
──音声に関して,英語ボイスと日本語字幕といった組み合わせは可能でしょうか。
寺田氏:
可能になる予定です。
──UIの表示設定はどうなっていますか。
寺田氏:
プレイヤーの遊び方に合わせて「これを表示させない」という選択はできるようになっています。
──最後に,体験版の配信予定はありますか?
光野氏:
現時点でお話できることはありません。
──今後発表される続報にも期待しています。本日はありがとうございました。
「FORSPOKEN」公式サイト
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