プレイレポート
「英雄伝説 黎の軌跡」序盤プレイレポート。アクションバトルとコマンド戦闘を融合させた新しい戦闘システムは全RPGファン必見!
新しい主人公を迎え,新たな舞台でシリーズ後半の幕開けを告げるストーリーを描いた本作を遊んでみたので,序盤プレイレポートをお届けしよう。
「英雄伝説 黎の軌跡」公式サイト
「軌跡」シリーズ ポータルサイト
新たな幕開けを告げる「軌跡」シリーズ最新作
爽快で戦略性の高い戦闘システムに要注目!
本作の舞台は,ゼムリア大陸中西部に位置し,主に「閃の軌跡」シリーズの舞台となっていたエレボニア帝国と並ぶ二大国の1つ,カルバード共和国。主人公のヴァン・アークライドは,その首都であるイーディスを拠点に,ワケありの依頼ばかりを専門に請け負う「裏解決屋(スプリガン)」として活動している。そんなヴァンのもとに“ある依頼”が持ち込まれたことから,物語が動き始める。
その依頼主は,名門校「アラミス高等学校」に在籍する1年生の女生徒,アニエス・クローディル。アニエスは何者かに盗まれてしまった曽祖父の遺品である,「ゲネシス」と呼ばれる古い導力器(オーブメント)を見つけ出してほしいのだという。そして,このオーブメントの捜索をきっかけに,ヴァン達は共和国の平和を揺るがす巨大な陰謀に巻き込まれていく……。
基本的なゲームの進め方は,裏解決屋としての業務をこなしながらオーブメントの行方を追い,その背後に隠された謎に迫っていくというもの。ヴァン達,「アークライド解決事務所」への依頼は,事務所に直接持ち込まれるもののほかに,各街区の掲示板に特別な方法で掲示されるものがある。後者の依頼には,ストーリーを進めるために必須のものと,そうでないものがあるが,多くの依頼を達成するほど事務所の評価ランクが上がって報酬がもらえるので,どんどんこなしていこう。
面白いのが,どんな手段や方法で依頼を達成したかによってヴァンの属性が変化する「L.G.C.アライメント」という仕組みだ。これは,ゲーム中の選択肢によって,LAW(ロウ),GRAY(グレイ),CHAOS(カオス)の3つの属性値が変動し,この値に応じてヴァンのステータスの一部や,ストーリー中盤以降で共闘する組織・勢力などが変化するというもの。本作には,おなじみの遊撃士協会のほかにも,さまざまな因縁のある裏の組織が登場するので,どんな価値観に立って物語を進めるのかは慎重に考えたい。
そして本作のもう1つの大きな見どころが,従来のコマンド型AT(アクションタイム)バトルと,フィールド上で敵を直接攻撃できるフィールドバトルをシームレスに切り替えられる,新しい戦闘システムだ。フィールドバトルは完全なアクション型の戦闘になっており,キャラクターごとに固有の武器を使った攻撃や回避アクションで戦っていく。
フィールドバトルではアーツ(導力魔法)やクラフト(戦技)を使用できないが,攻撃をヒットさせることでアクションゲージが蓄積し,ゲージが最大になると敵のスタン値を大きく上昇させる「チャージアタック」を繰り出せる。フィールドバトルからATバトルへの切り替えは□ボタンで即座に行うことができ,敵をスタンさせたうえでATバトルへ移行すると,追加ダメージを与えつつ,敵の行動順を大きく後退させた状態で有利に戦いを展開できる。
ATバトルは,従来と同じコマンド型のバトルとなっており,敵味方の行動順によって戦闘が進んでいく。本作では,ATバトルの新要素として「S.C.L.M.」(スクラム)システムが採用され,味方と隣接することでパートナーが追撃する「S.C.L.M.チェイン」や,クラフトやアーツの威力が強化される「S.C.L.M.サポート」が発動する。基本的には,近くに味方を集めて戦うほうが有利だが,敵の範囲攻撃でまとめて大ダメージを食らってしまう場合もあるので要注意。敵の先制攻撃を受けた場合やボス戦を除き,ATバトルからフィールドバトルへの移行も自由に行える。
この,2つの戦闘システムを使った新しいバトルは非常にテンポがよく,「軌跡」シリーズ的に表現すれば,まさに導力器の発明に並ぶほどのインパクトだと感じられた。弱い敵ならフィールドバトルでそのまま倒してしまえばいいし,強敵を相手にするときもフィールドバトルでスタンを取り,すかさずアーツやクラフトを交えたATバトルで畳みかけることができる。とにかくストレスがなく,爽快なバトルを堪能できるこのシステムは,アクションとコマンドバトルの理想的な融合と言ってもいいだろう。
また,一部のボス戦ではヴァンが異形の外装をまとった「魔装鬼(グレンデル)」の姿に変身し,超強力な専用コマンドを駆使して戦うことになる。ヴァンがなぜこんな力を持っているのか,そもそもグレンデルとは一体何なのかはストーリーに関わる大きな謎となっており,ヴェールに包まれたヴァンの生い立ちと合わせて,どのように描かれていくのか気になるところだ。
「軌跡」シリーズは,2004年に発売された「英雄伝説 空の軌跡FC」から2020年の「英雄伝説 創の軌跡」まで,世界観や一部の登場キャラクターを引き継ぎながら,これまでに10タイトルがリリースされている長寿シリーズだ。それだけに,本作から遊び始めても楽しめるのか不安に思う人もいるかもしれない。結論から言ってしまうと,そうした心配はまったく不要だ。かく言う筆者も,エステルとヨシュアを主人公とした第2作「英雄伝説 空の軌跡SC」以来,およそ10年ぶりに「軌跡」シリーズをプレイしたが,まったく問題なく物語に没入することができた。
その大きな理由は,ヴァンを始めとするメインキャラクターが一新され,舞台も新たにカルバード共和国へと移ったこと。もちろん本作にも,これまでの作品から一部のキャラクターが登場するが,過去の事件や出来事についてはさりげなく触れるだけに留まっており,背景を知らなくても置いてけぼりに感じることはないだろう。ゲームを進めるうちに,何となく人間関係がつかめるようにうまく構成されているので,シリーズ未体験の人も安心してほしい。筆者はと言えば,過去にどんなことがあったのかが気になって,これまで未プレイだった作品を遊んでみたくなってしまった。
ファルコム作品らしい丁寧な作り込みと魅力的なキャラクター,シリーズでおなじみの戦術オーブメントを活用した自由度の高いキャラクターカスタマイズ,そしてゲームを盛り上げる素晴らしい音楽はそのままに,RPGとしての完成度をより高めている「英雄伝説 黎の軌跡」。とくに,アクションとコマンドバトルを融合させた新しい戦闘システムは必見なので,ぜひ一人でも多くの人に体験してほしい。「軌跡」シリーズのファンはもちろん,遊びごたえのあるRPGを探しているすべての人にオススメしたい1本だ。
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