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緊急事態宣言の解除後,初の“大人数の観客入れ”を行ったゲーム音楽ライブ「ゲースキ!2」。まだ制限のある中で開催に挑んだ出演者達の胸中とは
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印刷2021/10/29 19:00

イベント

緊急事態宣言の解除後,初の“大人数の観客入れ”を行ったゲーム音楽ライブ「ゲースキ!2」。まだ制限のある中で開催に挑んだ出演者達の胸中とは

画像集#045のサムネイル/緊急事態宣言の解除後,初の“大人数の観客入れ”を行ったゲーム音楽ライブ「ゲースキ!2」。まだ制限のある中で開催に挑んだ出演者達の胸中とは
 多くの人が待ちに待った緊急事態宣言の解除。その直後である10月2日,東京・小岩ライブシアターオルフェウスにて,おそらく今年初となる“大人数の観客入れ”を行ったゲーム音楽ライブが開催された。hosplug主催の「ゲースキ!2」である。

 寄せては返すように発令された自粛要請の波に揉まれ,当初の予定から3か月強遅れて,ようやく開催に至ったこのイベント。その内容もさることながら,裏側でどのような努力や工夫が行われたのかについても,興味の持たれるところかもしれない(実際,そこに興味を持ったTOKYO MXによる取材も入ったくらいだ)。そこで,今回のライブレポートはそうした面にもスポットを当て,出演者のコメントも交えながらお送りしたい。

TOKYO MX+「緊急事態宣言が解除 ライブハウス営業再開も…残る不安」


 さて,まず「ゲースキ!」とはどんなイベントかを説明しておこう。これは,「ソニックウイングス」シリーズの作曲で知られる細井そうし氏が率いるHOSOI BAND「雷電」シリーズのアレンジで名を馳せるシューティングメタル界の雄・HEAVY METAL RAIDEN,そして独自の選曲&カバーセンスで異彩を放つO.T.K.という3つのバンドが織りなす,“ゲームとテクノ”を軸とするイベントである。ゲーム音楽にとどまることなく「プレイヤーたちの好きなもの」でも盛り上がろうということから「テクノ」という要素が組み込まれたわけだが,よくあるバンドとフロアテクノの融合的な音作りを志向したものではなく,主体はあくまでも生演奏。いわば味付けの1つとしてテクノという要素が含まれている。

 そんな「ゲースキ!」は,つくづくコロナ禍と因縁が深い。さかのぼれば第1回(当時のイベント名は「ゲームとテクノがスキ!」)もまた,最初の緊急事態宣言が発令される直前,2020年2月16日に開催されていたのだが,その翌週には全国的に感染者数が急増し,日本全体が初めて一斉にイベント自粛へと舵を切る事態になった。結果的に「ゲースキ!」初回は,実質的な“コロナ禍前における最後のゲーム音楽ライブ”となったのである。


 その第2回が“緊急事態宣言明け最初のゲーム音楽ライブ”という形になったのは,半分必然,半分偶然だった。そもそも「ゲースキ!2」は当初,3回目の緊急事態宣言が解除された今年6月に行われるはずだったのだ。解除されればライブを問題なく開催できるのかどうか,まだ予断を許さない状況下だったが,準備は着々と進められた。

 「何もやるな」「外に出るな」,ともすればそう言われてしまいかねない状況の中でも積極的にこうした活動を続けていきたいと思ったのは,ゼロコロナではなく,ウィズコロナという考えにシフトしていくうえで,しっかり対策を講じればみんなが楽しめるライブができるはずだと思っていたからです。
(細井氏)


 細井氏はいち早く,そのように考えていた。しかし緊急事態宣言に代わる「まん延防止等重点措置」の発出を受けて,時期尚早との判断に至る。開催は10月2日まで延期されたが,3か月待機したからといって事態が好転する保証はどこにもなかった。実際,4たび発令された緊急事態宣言は,9月末までという予想外の長期間にわたって続くことになる。

「本当にやれるのか,できるのか,ずっと葛藤はありました」
(細井氏)


 どうにか開催に漕ぎ着けたとはいえ,緊急事態宣言解除からわずか2日後である。もちろん準備万端とはいかなかった。「あまりに直後過ぎて,解除の影響はそれほどないのかなという感じでした。どうせまた(政治が)何か理由をつけて規制してくるだろうとも思っていました」と細井氏は吐露する。

 アルコール提供は最初から諦めていました。誤算だったのは(アルコール抜きでも)営業時間の厳しい制限が残ったことですね。イベントの開催には準備に多くの時間を要します。状況が変わったからと,すぐに「やりましょう」「やめましょう」と簡単に動けるものではありません。そういう部分では直接的なコロナの脅威以外の要因に振り回されたという思いはあります。
(細井氏)


 もちろん感染対策に抜かりはなかった。しかし,そこに関しても「どこまで完璧に対策ができたとしても,100%感染しないと保証することはできません」と細井氏は言う。

 交通事故が起こるかもしれないからと車や電車に乗らない人はいないように,世間にインフルエンザが流行したからといって会社が休みにならないように,何が起こるか分からなくても,少しでも100%の安全に近づけるように最大限努力しながら我々は動いていかなければいけないと思うわけです。
(細井氏)


 ここ最近,店舗への嫌がらせが報道されたこともあったように,ライブハウスを見る世間の目は厳しい。もし開催によってクラスター(感染集団)が発生したりしようものなら,ダメージは関係者だけでなく業界全体に及びかねない。大胆さと慎重さが求められる中だったが,「ゲースキ!2」のステージは,あくまで清く明るいスタートを切った。

画像集#042のサムネイル/緊急事態宣言の解除後,初の“大人数の観客入れ”を行ったゲーム音楽ライブ「ゲースキ!2」。まだ制限のある中で開催に挑んだ出演者達の胸中とは

 オープニングアクトを務めたのは佐藤 豪氏が率いるHEAVY METAL RAIDENである。「アカとブルー」「雷電」のナンバーで初っ端から快走する久々の生演奏。ファンたちは熱い声援を投げかけたくなるのをぐっとこらえて,身振り手振りだけで応援を行った。来場者数がキャパシティの半分以下に抑えられ,かつ声も出せないというのは,傍目にはなかなかもどかしい状況ではある。だが現場にいると不思議にそうと感じさせない。「真剣な表情から,皆の心の中の叫びは伝わってくるからね」と言うイケダミノロック氏のMCそのままに,ファンとバンドの絆による「以心伝心の盛り上がり」ともいうべき風景を,HEAVY METAL RAIDENは見せつけてくれた。

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 お客様の反応は普段と変わらない熱意を感じました。それは目からだけの情報ではない,会場内の空気感や雰囲気で伝わるものなのだということを知る機会でもありました。
(佐藤氏)


 なお今回の選曲は「雷電IV」を中心としたものだった。「バンド結成10周年とSwitch版『雷電IV』の発売を記念して,バンドの原点,『雷電』シリーズの楽曲で構成しました!」(イケダ氏)。中盤からは細井氏(Key)とシティコネクションの松本大輔氏(Dr)をゲストに加えたツインドラム構成で,これまで前例がないほどパワフルなサウンドで盛り上げてくれた。ゲーム音楽ライブにおけるツインドラムは極めて珍しく,恐らく今回が本邦初とのこと。その迫力は圧倒的で,場内が地響きに包まれれるほどであった。

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■セットリスト:Heavy Metal Raiden
01.RED 7029 / アカとブルー
02.Go to Blazes! / 雷電
03. LET'S GET KINETIC AND FRENETIC! 〜 SLASH THROUGH / アカとブルー
04. AKA TO BLUE / アカとブルー
05. Flap toward the hope / 雷電IV ゲスト:細井そうし(Key)
06. MISSION / 雷電IV ゲスト:細井そうし(Key)
07. Tragedy flame / 雷電IV ゲスト:細井そうし(Key),松本大輔(Dr)
08. A stormy front / 雷電IV ゲスト:細井そうし(Key),松本大輔(Dr)
09. FULL METAL FIGHTER / 武者アレスタ ゲスト:細井そうし(Key),松本大輔(Dr)


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 2バンド目は「ゲースキ!」におけるテクノの要,O.T.K.の出番である。東京オリンピックをパロディした入場行進で笑いを取りに来たかと思うと,渋く洒落た「アカとブルー」や「バトルガレッガ」のカバーで序盤を固める。この良い意味でのアンバランスさが彼らの魅力だ。

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 以降の選曲は諸事情で明かせないものが多いため,「過去の忍者が好きですか?現在の忍者が好きですか?」「打って繋げて消すやつ」「虫と果物と私」という仮タイトルだけをここに掲げておこう(ヒント:すべて1980年代のアーケードゲーム)。Kraftwerkを鮮やかにMIXした「打って繋げて消すやつ」や,明らかにバンド向けではない原曲にプログレ仕立ての聴き応えを盛り込んだ「虫と果物と私」などは,その筋の人間なら思わずニヤリとしてしまう出来栄えだった。

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 その後はイエロー・マジック・オーケストラのカバータイムに突入し,ゲストとしてボーカル兼司会のUyu氏と細井氏が参戦。「体操」「過激な淑女」を披露した。最後はHEAVY METAL RAIDENよりWASi303氏とイケダ氏も加わり,大所帯の演奏による某シューティングゲームの楽曲で,思うままに暴れまわった。ステージ終了後,彼らもやはり「ステージ上からお客様の反応は凄く伝わってきました」と語っている。

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 (準備中は)このような状況下で不安を感じたり,どこか後ろめたい感じもあったというのが正直なところです。ただ感染対策もしっかりされていましたし,無事開催まで漕ぎ着け,皆様の前で演奏できたのが本当に幸運でありがたかったです。マスク越しでも皆様ステキな笑顔でした! 逆にお客様側からパワーをもらいました。
(O.T.K.)

■セットリスト:O.T.K.
01. CASSETTE RECORDER Spec-R
02. BATTLE GAREGGA
03. 過去の忍者が好きですか?現在の忍者が好きですか?
04. 打って繋げて消すやつ
05. Intruder
06. エグザイル エグザイラナイ(虫と果物と私)
07. 体操 ゲスト:細井そうし(Key),Uyu(Vo)
08. 過激な淑女 ゲスト:細井そうし(Key),Uyu(Vo)
09. ソニックウイングス2&3メドレー ゲスト:細井そうし(Key)
10. ノンアルコールで乾杯 ゲスト:細井そうし(Key),WASi303(Gt),DJイケダ(Gt)


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 そしてラストを飾るのは真打ち・HOSOI BANDである。1曲目となる「ソニックウイングス リミテッド」のオープニング楽曲からいきなり佐藤氏をベースに迎えるというサプライズ展開。第1回では開催前日に(コロナと何の関係もなく)高熱を発して急遽欠席となった佐藤氏だったが,そこからの復活とでも言うべき快活な姿を見せてくれた。ちなみにこの曲は,今回演奏した中で佐藤氏がもっとも推したい曲で,細井氏が作り出した「奏者を殺しにかかっているベースライン」に闘志を燃やしたとのことである。

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 続いて「ソニックウイングス」シリーズの名物キャラクター・真尾まおに扮した,ボーカル・SUZUKA氏が登場して「音速娘」を披露する。彼女に限らず,今回のHOSOI BANDはコスプレ面でやたら気合が入っていたことを付け加えておかねばなるまい。コウフル・ザ・バイキング,シンシア,ホワイティーといった「ソニックウイングス」勢,そして何より目を惹いたのは「ファイナルロマンスR」より「ケイトのテーマ」という意外すぎる選曲に合わせた,バイオリニスト・MariNa氏によるケイト・ヤマムラのコスプレだろう。そこから続けて「F1グランプリ」の「TRUTH」へと至る過程は,彼女のバイオリンが奏でる力強いメロディがひときわ映える一幕だった。

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 それと前後してゲスト登場した新進ゲーム音楽バンド・Fantom irisの2名,Kyo-Ji氏(Bs)と,ぱっつん氏(Gt)も視覚的なインパクトでは負けていない。ゲーム音楽界きってのヴィジュアル系志向を貫く彼らのテクニカルな演奏も,本ステージの大きな見どころだった。それを経て,最後は三度イケダ氏を招聘し,「ソニックウイングス3」で熱く締めくくった。コロナ感染対策のためアンコールはなしとされたが,そこも含めてホットかつクリーンにイベントが完遂された1日となった。

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 デリケートな時期の開催ということもあり,過剰なほどの制限をお客様に課したにもかかわらず,その中で最大限楽しもう,その喜びをステージの上に届けようという気持ちが伝わってきて,自然とこちらも力が入りました。今回のイベント用に『ゲースキ!のテーマ INSERT COIN(S) 』という曲を作ったのですが,制作時にはみんなで参加できるようコールを入れられるパートを作ったものの,あっそうだ声出せないんだと気付き悲しい思いをした,などということもありました(結局この曲はセトリに入れ込むことができませんでした)。しかし声が出せない中でもこうやって一体感は味わえるのだと感動しました。とはいえ次は声出しOKでやりたいですね。
(細井氏)


■セットリスト:HOSOI BAND
01. オープニング / ソニックウイングスリミテッド ゲスト:佐藤豪(Bs)
02. 音速娘 / ソニックウイングスリミテッド ゲスト:SUZUKA(Vo)
03. CASSETTE RECORDER / アカとブルー
04. RED 7029 / アカとブルー
05. オーストラリア / ソニックウイングス2 ゲスト:Kyo-Ji(Bs),ぱっつん(Gt)
06. Depression[Fantom iris] / 雷電IV ゲスト:Kyo-Ji(Bs),ぱっつん(Gt)
07. ケイトのテーマ / ファイナルロマンスR
08. TRUTH / F1グランプリPart II
09. 市街コース / F1グランプリPart II
10. Spiral Pigment / オリジナル ゲスト:SUZUKA(Vo)/Uyu(Vo)
11. Dirty City / ソニックウイングス3 ゲスト:イケダミノロック(Gt)
12. Boss / ソニックイングス3 ゲスト:イケダミノロック(Gt)


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 ポストコロナ時代におけるゲーム音楽ライブのニュースタンダードはどうあるべきか。その見通しは決して暗いものではないことが,このイベントを通して示されたと言って良いだろう。「ゲースキ!2」を終えての感想と,今後についての心意気を,各バンドの皆様にお寄せいただいたので,最後にそれを紹介して締めくくりとしたい。

 エンターテイメント,サービス業を商いにしている1人として,コロナ禍という苦難に日々向き合っているゲームファン,ゲームミュージックファンに少しでも楽しんでもらいたい,元気になってもらいたいという気持ちでライブに出演させて頂きました。また,観戦対策をしっかり実行していればイベントはコロナ禍においても成立する!という実績になったと考えています。まだまだ,予断許さぬ状況ですが,お客様,演者共に力を合わせて苦難を乗り越えましょう! ご来場ありがとうございました。
(イケダ氏)

 解除とは言え,本ライブが原因によるクラスター発生の可能性はありましたので,ライブ終了後は手放しには喜べず,現在は事後の経過の無事を祈る思いで過ごしてます。今後も油断せず万全を尽くしてイベント開催を楽しみつつ,新型コロナ完全収束に貢献していきたいと思います。
(佐藤氏)

 今後状況がどうなっていくかはわかりませんが,このライブが確実に前に進む一歩になったと思います。ゲースキ2にご来場頂いた皆様,共演・関係スタッフ・会場,主催の細井さんにあらためて感謝です!
(O.T.K.)

 出演者のみなさんやライブハウスのスタッフの方々の熱意と惜しみない力添え,そして何よりお客さんたちの協力のお陰で無事,遂行することができました。緊急事態宣言は明けたものの,感染予防ガイドラインよりもさらに厳しく徹底した対策が行われることになりました。声が出せないのはとても残念ではありましたがその分,拍手や手拍子に熱い魂が宿っており,ステージ上からそのエネルギーを全身で感じました。
 いろいろ制限がありましたが唯一メリットがあったのは,来場数をかなり絞ったお陰でスペース的に来場者全員分の椅子を並べることができたことです。分かりやすくお客さん同士の距離を取れたことに加え,お客さんの足腰を気にかけることなく長丁場のイベントを無理なく終えることができました。ぼくの足腰は壊れました。
 まだまだやりたいことが全部できるわけではありませんが,一人でも多くのお客さんを笑顔にするために,これからもやれることはどんどんやっていきます。できないことを悲観するよりできることを模索していくのもまた我々エンタメ業界の責務です。
(細井氏)

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