インタビュー
「モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜」メディア合同インタビュー。RPGと「モンスターハンター」の世界観の親和性の高さとは
なお,インタビューはメディア合同+各メディア個別質問の構成で,4Gamerでは「モンスターハンター」をRPG化することへのこだわりについてインタビューを行っている。
「モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜」公式サイト
5年ぶりの続編はストーリーとバトル,そしてオトモンも大幅にパワーアップ
──「モンスターハンターストーリーズ2」がついに完成し,いよいよ発売されます。現在の心境を聞かせてください。
川野隆裕氏(以下,川野氏):
開発期間がかなり長く,前作から時間が経ってしまいました。今は早く本作をプレイした皆さんの反応を見てみたいですね。
大黒健二氏(以下,大黒氏):
とにかく開発期間が長かったですね。本音を言ってしまうとしんどかったです(笑)。コロナ禍を含め開発中はいろいろありましたが,みなさんに本作を届けられることをとてもうれしく思います。
辻本良三氏(以下,辻本氏):
「モンスターハンター」のRPGとして始まったシリーズですが,続編を作るにあたってどのような形にするか,スタッフ一同すごく考えてくれました。そのとき想像した形のまま,「モンスターハンターストーリーズ2」として完成できたと思っていますし,僕自身もプレイして「2」の名に恥じない仕上がりを感じています。
モンスターハンターシリーズを遊んだことのないRPGファンの方にも満足していただける内容になっていますので,ぜひ遊んでいただきたいです。
──実際に製品版の序盤をプレイして,ストーリーや設定がRPGの王道とも言える展開に感じました。ここまで直球のRPGにした理由を教えてください。
大黒氏:
「ここまで直球」と言ってもらえるとうれしいですね(笑)。僕はモンスターハンターの世界とRPGは親和性が高いと,ずっと考えていました。RPGには,冒険していく中で「新しい場所に行く」「新しい人に出会う」「何とかしてこの世界を救う」などの要素があります。だから先に進めたくなるし,レベルアップして強くなっていくと思うんです。僕の中のRPGの定義やRPGに求めているものがそれだったので,設定にこだわった変化球よりも,モンスターハンターの世界でそういった冒険ができるものを描いています。これは前作も同じでした。
──前作とキャラクターは違いますが,本作でも主人公とリオレウスの物語が展開します。これはどういった考えからなんでしょうか。
大黒氏:
前作でレウスライダーを主人公に据えたこともあり,今回はどうするか悩みました。ただ,僕の中でモンスターハンターの顔と言えばやっぱりリオレウスなんですよ。ですので,レウスライダーとリオレウスの物語という軸は変えずに,新しい別の物語を展開することにしました。
──序盤はまさにRPGの王道といった展開でした。物語には意外性も付き物ですが,中盤以降で何か意外な展開は用意していますか。
大黒氏:
ゲームに限らず映画などでも同じだと思いますが,お客さんに楽しんでもらうという意味での予想外の展開は必要だと考えています。当然,本作にも意外な展開は用意していますので楽しみにしていてください。
──本作では「竜人族」がフィーチャーされており,その姿や暮らしぶりがこれまでのモンスターハンターシリーズよりも詳細に描かれています。これには何か理由があるのでしょうか。
大黒氏:
前作では「ライダーとは何か?」ということを表現するために,ライダーとオトモンの絆について描きました。それを分かりやすくするため,主人公とはまったく違うライダーの感覚を持つシュヴァルというキャラクターを立てることで,主人公の正しいライダー像を示したんです。
今回は,ライダーとハンターというまったく異なる世界観を用いて大筋を描こうとしたんですが,ここにモンスターハンターの世界の中で長く生きており,知識の源となっている竜人族を加えました。これは3者の目線で描くことで物語を進めやすくなると考えたからです。
本作にはメインキャラクターとして竜人族の娘・エナが登場しますが,彼女の物語を描くうえで,ライダーの村やハンターの拠点だけでなく,竜人族の村が必要となり,竜人族の暮らしぶりにもフィーチャーすることになったわけです。
──公開されたPV第5弾にて,ネルギガンテの登場が明らかになりました。ネルギガンテと言えば,「MONSTER HUNTER: WORLD」ではストーリーと世界観の双方で重要な役割を果たしていますが,本作ではどのような存在になるのでしょうか。
大黒氏:
ネルギガンテは,本作においても非常に重要な位置付けのモンスターです。古龍を追いかけているなど,「MONSTER HUNTER: WORLD」の設定を生かした形で入れています。
──ティガレックス,ナルガクルガ,ジンオウガ,ブラキディオス,セルレギオスといった歴代モンスターハンターシリーズのメインモンスターがオトモンになることが公開されました。本作には,歴代メインモンスターがすべて登場するのでしょうか。
大黒氏:
歴代メインモンスター全部は出ていないはずです。本作のモンスター選出のコンセプトは,「オトモンになるモンスターをとにかくたくさん出す」でした。まず前作で出したモンスターは,本作にもほぼすべて出ます。今回新たに登場するモンスターは,「モンスターハンタークロス」のタマミツネや4大メインモンスターのように目立った特徴があったり,人気が高かったりといったようなそれぞれの理由で追加しています。「モンスターハンターストーリーズ」シリーズで最終的に目指すゴールは,モンスターハンターシリーズのモンスターを全部出すことですね。
──「MONSTER HUNTER: WORLD」のモンスターがたくさん登場するという事前情報がありましたが,「MONSTER HUNTER WORLD: ICEBORNE」のモンスターはどうでしょうか。
辻本氏:
そこは「お楽しみに」ということで(笑)。
──オトモンの育成要素の「伝承の儀」では,「絆遺伝子」の自由度が前作よりも高まりました。
大黒氏:
伝承の儀は主人公がモンスターをオトモンにするだけでなく,それをどう育成するかという遊びとして前作に組み込みました。しかし前作の伝承は,ストーリークリア後のやり込み要素として用意されていました。
本作ではその反省を生かして,クリア前から伝承を楽しめるよう,「絆遺伝子をどこにでも嵌められる」「全部同じ色にしたら強くなる」といったように,分かりやすく改修しました。
ただ,最終的にはプレイヤー同士の共闘や対戦につなげたいので,ストーリークリア後からが本格的なスタートという点は変わっていません。前作よりも深いやり込み要素になるよう調整を加えているので楽しみにしてください。
──そうなるとストーリーの途中でもオトモンの育成を楽しめるわけですね。
大黒氏:
はい。その一方で,きちんと伝承しないとストーリーを進められないということにならないよう調整を施しました。伝承をすればより深く楽しめる,例えば初期に入手したお気に入りのオトモンでも,きちんと伝承すれば最後まで連れ歩けるといったように,幅のある遊びを提供できていると思います。
──「共闘パートナー」についても教えてください。ストーリーの序盤ではケイナ,アルマと順に共闘パートナーが登場します。この先も主人公1人で冒険するわけではなく,ずっと誰かしら共闘パートナーが同行するのでしょうか。
大黒氏:
そのとおりです。今回続編を作るにあたり,まず「共闘」という部分を広げようと考えました。共闘と言うとシステム面だけで考えがちですが,僕はストーリーの中でもテーマにしようと考えたんです。本作ではケイナやアルマ,そしてその先に出会うさまざまな共闘パートナーとのストーリーが展開されていきますが,そこには先ほど触れたRPGの楽しさの1つであるいろんな人との出会いを表現するという狙いもあります。ストーリーを進めながら「次は誰かな」「このキャラクターだったらいいな」といった感じに楽しんでもらえたらうれしいですね。
──ケイナは主人公やオトモンの体力が減るとすぐ回復してくれるイメージでしたが,アルマはかなりピンチになるまで回復を使わないように感じました。共闘パートナーごとに,「回復優先」「攻撃優先」といったような異なる行動パターンを持たせているのでしょうか。
大黒氏:
全員が「体力が半分以下になったら回復する」といったように同じ行動パターンを取るのも面白くないですから,キャラクターに合わせた個性付けを意識しています。バトル中,共闘パートナーに指示を出すというやり方もあったとは思いますが,本作では個性付けに沿って共闘パートナーが行動するという仕様を採用しました。
──個性付けというのは,例えばケイナなら「面倒見の良いお姉さん」,アルマなら「攻撃に集中」といったイメージでしょうか。
大黒氏:
そのとおりで,ストーリー中の立ち振る舞いから,何となくイメージできるような個性付けをしています。おそらく,僕らの抱くイメージとプレイしてくださる方のイメージに大きなズレはないと思います。
──序盤ですと,ケイナに交代する形でアルマが共闘パートナーになりますよね。一度離脱したキャラクターは,もう共闘パートナーにはならないのでしょうか。
大黒氏:
そこはぜひプレイして確認してほしいところです。
──体験版の配信が発表されました。内容は製品版の序盤を切り取ったものになるとのことですが,どの程度のボリュームを予定していますか。
大黒氏:
序盤と表現していますが,4〜5時間は遊べるボリュームになっています。バトルをしっかり体験できますし,「『モンスターの巣』に入ってタマゴを取る」「レアな巣やタマゴだとうれしい」というゲームのキモとなる部分も体験できます。
また,製品版でまた最初からというのも面白くないので,体験版のセーブデータは製品版に引き継げる仕様にしました。
──体験版で遊べるのは,製品版全体の何%くらいでしょうか。
大黒氏:
人によって感じ方が変わるとは思いますが,初めてのプレイで適度にサブクエストなどの寄り道をした場合に,ストーリーをクリアするまで50時間程度と想定しています。それを踏まえると,製品版の10%前後でしょうか。
──無料タイトルアップデートの実施が発表され,第1弾が「モンスターハンターライズ」に登場するガルクの追加でした。オトモンとしての登場は少々意外にも感じられました。
辻本氏:
まず本作と「モンスターハンターライズ」は,タイミング的に並行して開発されていたという経緯があります。そこで,ぜひ「モンスターハンターライズ」の要素も本作に入れたいと考えたわけです。
また,「モンスターハンターストーリーズ」シリーズのセールスポイントの1つは,「ライドアクション」です。そして「モンスターハンターライズ」のガルクには,ハンターが搭乗できるというシステムがあります。その2つを組み合わせて,ガルクに乗って走る気持ちよさを本作でも体験できるといいのではと考えたんです。あとは,おっしゃるような意外性ですね。
大黒氏:
辻本が話したように,「モンスターハンターライズ」でガルクに乗っていろんなところを駆け回るというのは本当に気持ちいいです。僕の中では,その気持ちよさを「モンスターハンターストーリーズ」でもやりたい,それどころか「モンスターハンターライズ」で先にやられてしまったなという感じでした。だから,「コラボするならもうガルクをオトモンにするしかない!」と考えていました。
開発陣もすごくこだわってくれて,ガルクに乗る気持ちよさ,ライドアクションの使い勝手のよさ,そして絆遺伝子もちょっといいものにしたりと,遊びやすいポイントがいっぱい詰まったオトモンに仕上がっています。
──「モンスターハンターライズ」のガルクは,スタミナを消費しないダッシュが特徴の1つですが,そこは再現されていますか。
大黒氏:
例えば「ボタンを押すと通常のスピードより速くなる」というような仕様は,本作全体を通して入れていません。ただ,ガルクは乗った感じが軽いんです。これは触っていただくと分かるんですが,「乗り心地が軽い」「小気味よい」という表現がしっくりきまして,おそらく遊んでくださる方の多くが探索用のオトモンにはガルクを選ぶんじゃないかと思っています。
──少々気の早い話ですが,前作にあったようなイベントの配信やDLCはあるのでしょうか。
辻本氏:
第1弾のガルクに続いて,数回の無料タイトルアップデートを考えています。そこは今後,お伝えできるタイミングで順次発表していきます。
──それら無料タイトルアップデートで,モンスターは追加されますか。
大黒氏:
続報をぜひお待ちください。
──オトモンの育成およびプレイヤー同士の共闘や対戦以外に,エンドコンテンツはあるのでしょうか。
大黒氏:
前作にあったようなコンテンツは用意しています。シングルプレイでやり込むコンテンツもありますし,共闘を用いたエンドコンテンツもあります。
新たなコンテンツ追加がなくなってしまっても,オンラインにつなげば自分より強い相手と対戦できますから,勝つためにゲーム内で優れた絆遺伝子を集めていくことになるでしょう。モンスターハンターと言えば,ストーリーをクリアしてからが本番ですから,その要素は本作にも継承されています。
モンスターハンターのRPG化と狩猟アクションのコマンドバトル化へのこだわり:4Gamer単独インタビュー
4Gamer:
本作をモンスターハンターのRPGとして組み立てるうえで,とくに意識した部分を聞かせてください。
大黒氏:
RPGの楽しさは,冒険していく中で新しい場所や知らないところに行くところにあります。新しい街に着いたら,どんな武器を売っているのかをチェックして,欲しいけどお金が足りないから稼ぎにいこうと誰もが考えますよね。そこがすごく面白い。ですので,新しいロケーションにたどり着いて,何が待っているんだろうというワクワク感はすごく意識して作っています。
また,「モンハンらしさ」という要素はかならず考えるようにしています。例えば,モンスターハンターと言えば,フィールドにあるアイテムを活用して狩りをするといった自給自足の要素がありますが,これをふつうのRPGに取り入れると,プレイヤーとしては少し面倒だと感じてしまうかもしれません。ただ,これがモンスターハンターのRPGであれば「モンハンらしさ」として受け取ってもらえますよね? こういった要素はおいしいポイントだと思っていて,前作から強く意識しています。
あとはRPGって行けるロケーションが一気に増えて,世界が広がったと感じる瞬間がすごく気持ちいいと思っていて,前作であればレウスが飛んだときにそれを感じられるようにつくりました。本作でもそれに近い演出を組み込んでいるので,ぜひ期待してください。
4Gamer:
バトルでは,「モンスターハンター」シリーズのアクションを,非常にうまくターン制のコマンドバトルに落とし込んでいると感じました。どんな部分に配慮して開発を進めたのか,あらためて教えてください。
大黒氏:
まず僕自身が,アクションのモンスターハンターシリーズをしっかりやり込みました。前作を作る前は,それこそ勉強レベルでやりましたね。そのときモンスターハンターの気持ちよさは,「モンスターの動きをしっかり見て立ち回ればダメージを受けにくくなる」「そこで少し無理をすると手痛い反撃を食らう」という見極めの部分にあるとあらためて認識しました。
それをどうやってコマンドバトルに落とし込むかというところで,前作の3すくみを使ったバトルシステムを考えたんです。同時にただの3すくみではジャンケンと同じですから,相手の出す手が分かったら簡単すぎて面白くないだろうと,多少の揺らぎを入れました。しかしその揺らぎがストレスの原因にもなってしまっていました。
そこで本作では大きく改修を施して,しっかりモンスターの動きを見切れば,「ずっとオレのターン」になるという気持ちよさを出しました。そもそも最初に3すくみを使ったコマンドバトルを企画したときに「そんなことができるのか」という疑問も出たんですが,前作である程度バランスが取れたので,本作では前作のよかったところ,こうしたらもっと気持ちよくなるだろうと考える部分の改修に注力しました。
また,本作では共闘パートナーも活躍しますが,連携することで得られる気持ちよさ,爽快感も強く意識して組み立てていきました。
4Gamer:
最後に体験版の配信と製品版の発売を楽しみにしているファンや読者にメッセージをお願いします。
川野氏:
前作から5年経って,ようやく完成しました。こだわって開発した結果,前作からゲームもシナリオもグラフィックスもすべてパワーアップしているので,ぜひプレイしてみてください。
大黒氏:
アクションでは描ききれない,RPGだからこそ表現できるストーリーやモンスターハンターの世界,そしてRPGなのにモンスターハンターらしい気持ちいいバトルを感じてもらいたいです。また,ストーリーにも当然力を入れており,イベントシーンはとくに感情を込めて描いていますのでこちらにも期待してください。
自信作だと胸を張って言えますので,まずは体験版を遊んで,面白さを感じてもらえればと思います。
辻本氏:
前作の「モンスターハンターストーリーズ」は,リリースされるまで僕と藤岡(「モンスターハンター」シリーズ ディレクター 藤岡 要氏)が8年間ほど温めていた企画の一部です。それを5年前に大黒が形にしてくれて,そして今,その続編を皆さんにお届けできることになりました。
もともとの「幅広い皆さんに遊んでもらうゲーム」というコンセプトを前作以上に実現できていると思います。前作に触れていなくとも遊べますし,モンスターハンターを知らないRPGファンの皆さんも楽しめる内容になっています。本当に多くの皆さんに遊んでいただけるゲームになっていますので,まずは手に取りやすい体験版を触ってもらい,楽しいと感じていただけたらぜひ製品版もプレイしてみてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜」公式サイト
- 関連タイトル:
モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜
- 関連タイトル:
モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜
- この記事のURL:
キーワード
(C)CAPCOM CO., LTD. 2021 ALL RIGHTS RESERVED.
(C)CAPCOM CO., LTD. 2021 ALL RIGHTS RESERVED.