インタビュー
「テイルズ オブ アライズ」インタビュー。シリーズの未来を見据えた挑戦を行い,“テイルズ オブらしさ”を次の時代へとつないでいく
25周年を迎えた「テイルズ オブ」シリーズは,バンダイナムコエンターテインメントの看板RPGだ。かつては1年に数本の新作が発売されることも珍しくなかったが,コンシューマ機向けの新作は,2016年の「テイルズ オブ ベルセリア」(PS4/PS3)以降は発売されておらず,「アライズ」はファン待望の完全新作となる。
そんな「アライズ」は,「継承と進化」をコンセプトにしており,特徴的だったアニメ調のグラフィックスに,独自開発の「アトモスシェーダー」によるイラスト的なテイストが加えられ,雰囲気が一新されている。そのほかにもアクション性を高めた新たなバトルシステムの導入やスキット(キャラクター同士の会話劇)の表現方法の変更など,これまでのシリーズとは違った試みが行われている。
シリーズの伝統を受け継ぐ一方で,一部の要素を大胆に変える試みが目指すものは何なのか,新たなバトルシステムが表現したいプレイフィールとはどんなものか。そして,「テイルズ オブ」の今後はどうなるのか。IP総合プロデューサーの富澤祐介氏と,ディレクターの香川寛和氏へオンラインインタビューを実施した。
「テイルズ オブ」シリーズIP総合プロデューサー / 「テイルズ オブ アライズ」プロデューサー富澤祐介氏(バンダイナムコエンターテインメント) |
「テイルズ オブ アライズ」ディレクター香川寛和氏(バンダイナムコスタジオ) |
シリーズの未来を見据えて,“テイルズ オブらしさ”改めて見つめ直した「アライズ」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「アライズ」はコンシューマ機向けのタイトルとしては,「ベルセリア」から約5年ぶりの完全新作とかなり間が空いたことになります。
富澤祐介氏(以下,富澤氏):
お待たせしてしまった理由はいろいろありますが,開発初期の段階で“テイルズ オブらしさ”とは何かを見つめなおし,コンセプトや世界観を再構築する時間を取っていたのが大きな理由です。ゲームエンジンをUnreal Engine 4に切り替え,絵作りについてもビジュアルを試行錯誤していたので,かなり時間がかかってしまいました。
4Gamer:
「アライズ」の開発には,いつごろから着手しておられたのでしょうか。
富澤氏:
「ベルセリア」の開発終盤あたりですね。そこから「アライズ」に向けたUnreal Engine 4での検証やプリプロダクションを行っていましたから。
開発途中で新型コロナウイルスによる影響もありましたし,今回は,世界同時リリースという試みも行っています。こうした中で,しっかり時間をかけてクオリティアップを進めていった結果,皆さんにお待たせしてしまうことになってしまいました。
4Gamer:
テイルズ オブらしさを見つめなおしたということですが,「アライズ」ではビジュアル刷新のほかに,秘奥義のカットイン廃止やバトルリザルトの簡略化など,シリーズでおなじみだった要素も見直しが図られていますね。
富澤氏:
ファンの皆様のおかげで,シリーズは2020年12月に生誕25周年を迎えられました。ただ,何もせずにシリーズをこれから10年,20年と続けられるかというと,決してそうではないと思っているんです。
今後もIPを長く続けていくために,またさらに大きく成長し続けてていくためには新しい挑戦,そして今まで「テイルズ オブ」に触れたことのない方々にも手に取っていただけるものを作るという気持ちを持って,新作に挑みました。
4Gamer:
新規層の獲得というのがひとつの課題となっていたのですね。
富澤氏:
ブランド継続のためには,部分的な新生を図り,新たな世代のユーザーを呼び込まなければなりません。一方でこれまでとまったく違う作品を作るのであれば,「テイルズ オブ」シリーズの名を冠する意味がありません。
そこで,既存ファンに支持されているテイルズ オブらしさとは何なのか。言葉にするのが難しい部分ではありますが,すべての仕様の各要素にいたるまで,徹底した分析を行ったんです。
4Gamer:
分析の結果,導き出された答えはどのようなものだったのでしょう。
富澤氏:
「キャラクターを愛し,クリア後も彼らのことを応援したくなるような魅力的なキャラクターの構築とゲーム体験」ですね。ゲームを通じて,ユーザーがキャラクターに自然と思い入れを持つことができて,仲間ができたような感覚を抱けるもの,それこそが「テイルズ オブ」なのではないかと。
4Gamer:
キャラクターを愛せるようなゲーム体験というのは納得ですね。「テイルズ オブ」シリーズは,ファンイベント「テイルズ オブ フェスティバル」や,クロスオーバータイトルなど,さまざまな作品のキャラクターたちを共演させる取り組みが盛んですし。
富澤氏:
「テイルズ オブ」シリーズは,キャラクターIPという側面もありますから,ゲームをクリアしてもそこでキャラクターたちの冒険が終わるわけではありません。「テイルズ オブ」ファミリーの仲間に加わり,タイトル間での共演をはじめと新たな展開があるので,そこも含めてシリーズの楽しさではないかと思います。
「アライズ」は「継承と進化」をコンセプトに掲げていますが,このキャラクターを愛せるゲーム体験の部分はまったくブレていません。最後までプレイしていただければ,シリーズの核であるテイルズ オブらしさがしっかりと“継承”されていることが分かっていただけると思います。
4Gamer:
では,“進化”させた部分はどこですか。
富澤氏:
細かい部分は挙げていけばキリがないくらいたくさんありますが,分かりやすい点ですと,独自に開発した「アトモスシェーダー」により,これまでと違うグラフィックスの描画に挑戦しています。今までの延長線上ではない新たな進化をしつつ,テイルズ オブらしさという魅力を改めて世界中のユーザーに提唱することが「アライズ」の真の目標なんです。
香川寛和氏(以下,香川氏):
テイルズ オブらしさについては,開発チームでも原点に立ち返ってかなり細かい部分まで検討し直しました。
例えば,シリーズおなじみの回復アイテム「アップルグミ」1つ取っても,今回は「お約束だから」と考えなしに実装するのではなく,「アライズ」の世界観にマッチしているかを改めて検討したうえで決めています。
シリーズ伝統の「スキット」にしても,これまではアニメ調に描かれたキャラクターたちが会話を繰り広げていましたが,「アライズ」では3Dグラフィックスを使い,キャラクターの衣装やフィールドの時間を反映させています。
4Gamer:
スキットだけでなく,アップルグミの実装すら再検討していたというのは驚きですね。
富澤氏:
今回はそういったシリーズの伝統であった部分も改めて見つめ直しています。テイルズ オブらしさを守りながら,新規層へのアプローチとして検討した要素もあれば,シリーズの枠組みを外したうえで仕様を考え,そこにテイルズ オブらしさを足しながら戻していった要素もあります。
4Gamer:
シリーズの枠組みを外して検討した案といいますと,具体的にはどんなものですか。
富澤氏:
極端な例ですと,オープンワールド化を検討したことが挙げられます。
開発内部でも「テイルズ オブはこのままでいいのか」「世界に向けて,まったく新しいアプローチがあるべきではないか」という問題提起がたびたび行われていました。その一環として,Unreal Engine 4に切り替えるタイミングで,オープンワールド化を試作・検証したんです。
4Gamer:
オープンワールドは大作RPGのトレンドですし,キャッチーな引きがあるのも確かです。
富澤氏:
結果的にテイルズ オブらしさを担保するのが難しいということで,オープンワールドの方向はやめることになりました。ただ,検証で得た知見とUnreal Engine 4の特性は「アライズ」に生かされ,これまでにはない立体的なフィールドを実現しています。
ジャンプや泳ぎといった,キャラクターの実在感を感じられるようなアクションが実装され,よりフィールド探索を楽しめるようになっています。
4Gamer:
確かに,フィールドでもキャラクターに多彩な動きがつけば,実在感が増しますね。
富澤氏:
ゲームエンジンを変えて,きれいになったフィールドを出しただけでは,テイルズ オブらしさは生まれません。
例えば絶景が見えるポイントにたどり着いたときに,キャラクターが「綺麗な景色だ」とつぶやいてくれたり,仲間同士の会話が発生したりすれば,キャラクターの実在感が増します。「アライズ」ではゲームシステムやフィールドの構築まで含めて“キャラクターの実在感”を重視して,そういった細かいポイントに,テイルズ オブらしさを散りばめています。
4Gamer:
キャラクターデザインについても今回アプローチが変わっています。「エクシリア」から「ベルセリア」までは,メインキャラクターを複数のデザイナーの方が描いていましたが,「アライズ」は岩本 稔さん1人が担当しています。
富澤氏:
世界観の統一性とビリーバビリティ(創作物における現実感)をもう一段階押し上げたかったというのが理由です。
あとこれまでは,メインキャラクターデザインと,ゲーム全体の絵作りを担当するアートディレクションを別々の人にお願いしていましたが,「アライズ」では岩本くんが兼任しています。結果,世界観の設定をキャラクターデザインに反映させたうえで,どう3Dモデルに落とし込んでいくかというところまでを一貫して統括できました。
4Gamer:
キャラクターの実在感を増すための取り組みがここでも行われているわけですね。
富澤氏:
そうですね。キャラクターデザインはもちろんのこと,ゲームのあらゆる仕様において,実在感や統一性を意識しています。スキットを3Dモデルで表現したのも,統一性とビリーバビリティを意識し,この世界にキャラクターが実在している感覚を強めるためです。
キャラクターの3Dモデルに2Dの絵に負けない表現力を獲得させたうえで,フィールドやバトルのときと同じ姿のモデルに会話をさせる。こうすることで,スキットとそれ以外の印象が分断されることなく,キャラクターが表現できるんです。
4Gamer:
スキットはほかのRPGと比較してもかなり特殊なシステムですよね。シリアスなストーリーが進行している最中でも,コミカルなスキットが挟まることもあります。一見ミスマッチに思えるんですが,プレイしていると自然と受け入れられてしまう。
富澤氏:
スキットをはじめとした,「テイルズ オブ」シリーズのキャラクター作りはかなり特殊で,私自身も総合プロデューサーになる前から「面白いな」と思っていました。
スキットのポイントは「たとえ脈絡がなくても,キャラクターの日常を描く」こと重視しているところです。メインストーリーの合間に,ユーザーが能動的にキャラクターの行間を見ていくサイクルが成立しているわけで,これはゲームだからこそできるすごい仕組みなんじゃないかと思いますね。ここまでコストとリソースを割いてキャラクターの行間を描いているシリーズもほかにないんじゃないでしょうか。
4Gamer:
では,「アライズ」においてスキットを削るような選択肢はなかったと。
富澤氏:
なかったですね。確かにメインストーリーに関係ないボイス付きの長い会話が突然始まるわけですから,新規の方は驚かれるかもしれません。しかし,スキットを通じてキャラクターたちの多面性が見えてくれば,もっと彼らのことを知りたいと思えるでしょうし,新規の方にとっても,そこがテイルズ オブらしいゲーム体験なんじゃないかと。
4Gamer:
新規層へ作品を届ける大切さを話しておられましたが,全世界同時リリースの試みもそういったアプローチの1つなのでしょうか。
富澤氏:
海外にもファンがいることは分かっていましたし,これから「テイルズ オブ」のブランドを広げていくためには,世界同時発売が絶対条件でした。しかも,単に同時にリリースすればいいというわけではなく,受け入れられる仕様やプレイアビリティの向上によって,海外のJRPG好きにアピールできるようにすることも重要です。
大量のテキストやボイスを多国語対応させるのも手間が掛かりましたし,そうした意味では,開発における最大のチャレンジが世界同時発売だったんじゃないでしょうか。おかげさまで,海外ユーザーからの反応も良く,やって良かったなと思っています。
4Gamer:
若年層向けのアプローチは行われていますか。
富澤氏:
日本の若年層には,コンシューマゲームでのRPG体験に親しみが薄い方も増えつつあると思いますし,「アライズ」単体では,そこへの取り組みは完結しないと考えています。やはり多感な時期の悩みに指針となるような「マイ・ファースト・『テイルズ オブ』」があってほしいとは思うので,この部分はブランド全体で継続的に取り組んでいきたいです。
激しく攻め込み,回避を決めてさらに攻める。仲間との共闘感も楽しめる,新たなバトルシステム
4Gamer:
ここからは,バトルについて聞かせてください。これまでのシリーズでは,「LMBS(リニアモーションバトルシステム)」を基本に,「CNAR-LMBS(コンビネーションエアーリアル リニアモーションバトルシステム)」「FC-LMBS(フュージョニックチェイン リニアモーションバトルシステム)」など,バトルシステムに名前が付けられていました。「アライズ」にこうした決まったシステム名がないのはなぜでしょうか。
富澤氏:
もはやLMBSという名前を付ける情勢ではなくなったということですね。LMBSは,味方と敵が目に見えない仮想のラインで結ばれた「テイルズ オブ」特有のバトルシステムですが,戦闘フィールドが3Dになってしばらくすると,こうした仮想のラインに影響されることなく移動できる「フリーラン」が実装されました。
ゲーム全体のトレンドとしても,3Dフィールドでの自由な移動は当たり前になっていますし,今後シリーズが進化していくうえで,この名称が理解の齟齬になるようでは本末転倒であるという思いも生まれていました。
4Gamer:
すでに前作の「ベルセリア」でも,移動は常時フリーランでしたが,「アライズ」ではフリーランという言葉自体が必要ないくらいに,世間一般的にもデフォルトな仕様になったと。
富澤氏:
「○○LMBS」というシステム名がシリーズの文化になっていて,「今回はどんなLMBSなんだろう?」と,既存ユーザーの興味を惹いていた側面があったのは事実です。
ただ,いざ戦闘システムの話をするときに「『グレイセス』のバトルはいいよね!」と話すことはあっても,「SS-LMBS(スタイルシフト リニアモーションバトルシステム)は最高だよね!」という言い方はほとんどされていないわけです。
そうした中で,新規のユーザーに「○○LMBS」という名前を提示して疑問を抱かせてしまうのではなく,動画や体験版で実際に見てもらうという形にアピール方法を切り替えていくことになりました。
4Gamer:
バトルを構築するにあたって,どこを“継承”してどこを“進化”させるかという意識はありましたか。
香川氏:
バトルについては,「これまでのシステムはすべて踏まえたうえで,毎回新しいものを作ろう」という意気込みで開発しているので,そういった意識を特別抱いていたということはなかったですね。システムを詰めていくうちに自然と,テイルズ オブらしいものになってくるんです。
4Gamer:
「アライズ」のバトルシステムは,どのようなテーマで開発されたのでしょう。
香川氏:
「強大な敵に,仲間とともに立ち向かう」「簡単な操作で爽快感のあるパーティアクションバトル」そして「分かりやすさ」という3つをテーマに開発しています。
まず,1つめの「強大な敵に,仲間とともに立ち向かう」という点ですが,「アライズ」は,自分の星を制圧されたダナ人が,圧政者であるレナ人に立ち向かうというストーリーが展開されるので,これをバトルでも感じられるものにしなければなりませんでした。
レナ人が使役するズーグル(モンスター)も簡単に倒せてしまうようでは,ユーザーが「ダナ人はなんでレナ人をあそこまで恐れているんだ」と,物語そのものに疑問を抱いてしまうことになります。そのため,ズーグルはデザインを今までの枠組みにとらわれない,脅威を感じられるものとし,敵が強大な存在であることをバトルでもきちんと描いています。
4Gamer:
第1章の先行体験プレイ(関連記事)でも,正攻法で戦ってはまず勝てないような,レベルの高い危険なモンスターが徘徊しているという脅威を描くシチュエーションがありましたね。
香川氏:
2つ目の「簡単な操作で爽快感のあるパーティアクションバトル」という点は,シリーズで常に考えられているテーマです。
開発チームでは,パーティメンバーとの“共闘感”を味わえることが,「テイルズ オブ」シリーズの重要な要素であると考えていて,「アライズ」では,仲間と一緒にコンボをつなげて戦う「ブーストアタック」を実装しました。これは,仲間を呼び出して援護攻撃してもらうと同時に,攻撃系の術技に使うリソース「AG(アーツゲージ)」が全回復するもので,そこからさらに術技を使って攻め込めるようにしています。
4Gamer:
ブーストアタックを使えば,これまで以上にコンボをつなげられそうですね。
香川氏:
はい。これまでも「コンボゲー」と言われることの多いシリーズだったものの,誰でもそう簡単にコンボをつなげられるわけでもありませんでした。
「アライズ」では,自分でコンボをつなげていった後に,仲間を呼び出してブーストアタックをすれば,さらにコンボが伸ばせます。動画で見ると「難しいんじゃないの?」と思われるかもしれませんが,アクションゲームが苦手な方でも簡単に派手なコンボがつなげられますので,ご安心ください。
4Gamer:
3つ目のテーマである「分かりやすさ」についてはいかがでしょうか。
香川氏:
これまでのシリーズでは,長年の歴史の積み重ねにより,システムが複雑になっていたため,今回は画面上の情報の扱いを特に見直していきました。バトル中に時間を止めて情報を確認していくのではなく,画面を見ただけで「何をすべきか」かを読み取れるようにするため,敵味方の情報をきちんと整理しています。
4Gamer:
今回は新たな要素として「CP(キュアポイント)」という回復系の術技を使う際に使用するリソースが取り入れられていますが,狙いを教えてください。
香川氏:
「アライズ」では,私が過去に携わったリメイク版「デスティニー」や「グレイセス」の戦闘で感じていた「こうすればいいんじゃないか」といった要素を取り入れているんですが,CPはその最たるものです。
少し過去作の話をすると,シリーズの初期では,術技を使うには「TP(テクニカルポイント)」と呼ばれるリソースを消費する必要がありましたが,雑魚との戦いで術技を出し惜しみしてしまう人も多く,爽快感が損なわれてしまうという問題がありました。
そこで,リメイク版「デスティニー」から「CC(チェイン・キャパ)」と呼ばれる時間経過で回復する無限のリソースが導入され,術技を惜しみなく使えるようになりました。しかし,回復系の術技まで制限なく使えてはバランスが壊れてしまうため,CC制を導入する作品では,「回復系の術技をフィールドで使えなくする」などの制限を付けなければならなかったんです。
4Gamer:
確かに「デスティニー」のリメイク版では,フィールドで回復系の術技を使えなかったので,フードサックを活用したり,回復アイテムのグミを食べまくったりした記憶があります。
香川氏:
バランスを取りつつ,術技を使いまくる爽快な戦いをしてもらうために考えついたのが,今回の攻撃と回復のリソースを別々にするというシステムです。攻撃の術技には,使ってもすぐ元に戻る無限のリソース(AG)を用意する。そして,回復系の術技のために有限のリソース(CP)を設定し,宿に泊まったり,アイテムを使ったりしないと戻らないものとする。こうすれば,攻撃の術技は無限のリソースなので派手に使えますし,回復の術技に制限を付ける必要もないわけです。
4Gamer:
リメイク版「デスティニー」の延長線上にあると考えると興味深いですね。CCの導入により今までの攻撃リソースが一元化され,分かりやすく派手な戦闘が楽しめるようになったので,当時は革命的でした。
香川氏:
「アライズ」は,そこからより攻撃的なバトルを目指しました。これまではリソースが尽きたらいったん回復を待つ必要があり,味方と敵が順番に攻撃するターン制に近いようなところもありました。
「アライズ」では,敵と味方が攻撃を出し合いながら,回避を行ってカウンターを決め,バトルを有利に運ぶというものにしています。今までの作品と比べてアクション性は高くなっていますが,敵の攻撃も前兆を分かりやすくしていて,回避した際の気持ち良さを感じられるようになっています。
4Gamer:
1章のボス「領将ビエゾ」は,そうしたコンセプトが体現された敵でしたね。斧の攻撃は分かりやすい大振りで,慣れるとうまく回避してカウンターをどんどん決められるようになっていました。
香川氏:
あとは,キャラクターごとの性能に特徴を持たせ,操作キャラクターを変えるとプレイフィールがガラリと変わるように意識して作っています。
例えば,キサラは回避が行えませんが,パーティで唯一「防御」ができるキャラクターとなっていますし,シオンは特定の術技でボタンを長押しすると,放り投げた爆弾を銃で撃ち,起爆させられます。スキルもキャラクターの特性に寄せたものを用意していて,成長すると,より個々のキャラクターらしい動きができるようになります。
4Gamer:
個人的に今回のバトルで印象的だったのは,相手をのけぞらせるために,攻撃を何回か当てて「ブレイク」を狙う必要があるという点です。これまでもボスに「鋼体」という似たようなものはありましたが,雑魚にまでアーマーが付いているのは,「アライズ」が初めてですよね。
香川氏:
はい。「ブレイク」という要素は,敵味方のどちらにも適用されるので,味方が攻撃を受けすぎるとブレイクすることもあります。
味方のレベルが上がり,「耐久力」のパラメータが高くなるとブレイクされにくくなり,「貫通力」が高くなると敵をブレイクさせやすくなります。純粋な攻撃力や防御力以外で,強さを表現する新たなパラメータとなっているんです。
4Gamer:
今回通常攻撃が久々に復活していますが,これはどういった狙いがあるのでしょうか。
香川氏:
「アライズ」のバトルは,敵味方が攻撃を出し合うアグレッシブなものですが,どこかで攻撃リソースであるAGを回復するためのタイミングが必要になります。通常攻撃には,リソース消費がなく振りが速いといった特性を付けているため,AGの回復を待つ間に使っていけば,途切れることなく攻撃を繰り出せるわけです。
4Gamer:
“リソースが切れているから何もできない”状態がほとんどないですよね。ボタンを押せば何かしら攻撃を出せますし。
香川氏:
昨今のアクションゲーム事情を鑑みるに,自分が操作できない時間があることは,ストレスなんじゃないかと思ったんです。攻撃を回避でキャンセルできるタイミングもかなり突き詰めて作っていて,ストレスなくプレイできるようにしています。
アクションゲームが得意な人は,連続攻撃からブーストアタックをつないでいき,「HPがどれだけ高い状態から,一気にトドメを刺せるか」にチャレンジしてみるのもいいですね。アクションゲームが苦手な人もレベル上げや強い装備を揃えるなど,バトル以外の部分で強くなれる手段も用意していますし,オートモードを使えばキャラクターが自動で戦ってくれます。オートバトル中にプレイヤーが少し操作して介入することもできるようになっていますので,ぜひ楽しんでいただければと。
ユーザーの疑問には真摯に向き合う。今後の「テイルズ オブ」に向けてのシリーズ全体の取り組み
4Gamer:
富澤さんが総合プロデューサーになられてからプレイヤーとのコミュニケーションのやり方がかなり変わったように感じられます。7月には.富澤さんが生配信でひたすらファンからの質問に答えるという機会も設けられていましたね。
富澤氏:
久々のタイトルですし,皆さんの中にもいろいろな疑問や不安が溜まっていることは分かっていたので,できる限り包み隠さず話していこうと決めていました。
ブランドというものは,ファンと我々でいい意味での共謀関係を築いて初めて成り立つものだと思っています。そのためのコミュニケーションに時間を惜しむつもりはありませんし,ファンの皆さんの方が強いこだわりや愛情を持っておられます。なので,できることは最大限にやっていきたいと考えています。
4Gamer:
事前に用意された質問だけでなく,ファンがリアルタイムにぶつけてくるシビアな質問にも正面から答えていたという印象です。「そんな質問にも答えちゃうの?」「そんなことまで聞くのは失礼でしょ」と,視聴者の方がコメントで心配しているワンシーンもありましたね。
富澤氏:
本当に心配されていることに対して,失礼だなんてことはないですし,オブラートに包んでも仕方がないので,ぶつけられたものにはストレートに答えました。もちろん答えられないような質問もありましたが,そうでないものについては,これからもちゃんと答えていきたいと思います。
4Gamer:
「アライズ」のプロモーション以外でも,歴代開発者たちを集めた座談会や歴代シリーズの紹介ムービーを公開したり,これまでに存在した「マザーシップ」「エスコート」という区分を見直したりということも行われていますね。
富澤氏:
「テイルズ オブ」全体をしっかりブランドとしてまとめていくための取り組みですね。私が総合プロデューサーに就任した5年前は,過去作を知る環境がありませんでしたし,何ならシリーズロゴすらありませんでした。そのため,まずはブランドとしての土台を改めて構築しようと考え,5年間でいろいろな取り組みをしてきました。
「マザーシップ」と「エスコート」の区分を変えたのは,本来なら存在してはいけないキャラクター間の格差があるように見えてしまっていたことが理由です。現在は「オリジナル」と「クロスオーバー」と区分を見直し,そういった格差が生まれないようにしています。
4Gamer:
この5年間で,ブランド全体の基盤も整えておられたと。
富澤氏:
そうですね。こうした取り組みができたのも,5年という期間があったからなので,ある意味プラスに働いたのかもしれません。
4Gamer:
今後の「テイルズ オブ」にも期待しています。「アライズ」が出るまでに5年かかりましたが,これから新作のリリースペースはどのようになっていくのでしょうか。
富澤氏:
コンシューマ機で楽しみたいというご要望があるのは理解していますので,ソフトは継続的に出していきたいですね。ただ,それだけではコンテンツを消費したら終わりになってしまうので,運営を継続するスマートフォンアプリを組み合わせていこうと考えています。
現段階では具体的なことは言えませんが,リメイクやリマスターへのご要望にも応えていこうと考えています。「アライズ」が出て次の完全新作まで何もないというのはブランドとは言えませんし,作品から作品までの間に,「テイルズ オブ フェスティバル」や映像作品などで楽しみ続けられるのも,キャラクターブランドとしての「テイルズ オブ」の魅力ですから。
4Gamer:
ゲームだけでなくイベントやそのほかのコンテンツでも盛り上げていくと。
富澤氏:
「ゲームは遊ぶけれどテイフェスには行かない」というゲーマー属性のファンの方も多いんです。今後は,こうした方にとっても魅力と思えるような展開も模索していきたいと考えており,「こういうグッズなら買ってもいいな」「こういったイベントなら自分でも行けるかも?」と思っていただけるような展開をすることが目標の1つです。
例えばシリーズのバトルなどが好きな方は,攻略や開発秘話などに興味があるなど,テイフェスに来るファンの方とはニーズも異なっています。ゲームの持つ魅力をすべての根幹に置きつつも,そこから派生する楽しみについても,今後さらに多くの方に多角的に楽しんで触れていただけるような企画をしていきたいと思います。
4Gamer:
そちらも楽しみですね。では,最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
香川氏:
「ベルセリア」から長くお待たせしてしまってすみませんでした。「アライズ」は友達や知り合いに勧められる「テイルズ オブ」という思いを込めて作った作品です。プレイすれば,いろいろなことを感じ取っていただけると思いますので,感想を発信されたり,仲間と盛り上がったりしていただければと思います。
富澤氏:
5年かかってやっとここまで来られたので,感慨もひとしおです。「継承と進化」をコンセプトとするということは,シリーズを愛してくださってきたファンの皆様に対し,一見ギャップがあるものを提供することでもありました。皆様からは期待や不安のお声をいただきましたが,そうした中でもブランドの未来を見据えてやるべきことをやったのが「アライズ」で,シリーズの持つ変わらない魅力を新しい形で表現した作品でもあります。
そして,皆様には「アライズ」を全力で楽しんでいただくとともに,率直なご意見をぜひ聞かせていただきたいと思っています。そうした意見を受け止めて,「テイルズ オブ」をさらに良くしていくことが,ブランドの今後につながっていくと信じています。
シリーズはこれからも続いていきますし,すでに30周年を見据えて動き始めていますので,引き続き応援よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
「テイルズ オブ アライズ」公式サイト
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