プレイレポート
[プレイレポ]「Scars Above」はソウルライクなトライ&エラーをコンパクトに楽しめるTPS。色を使って対処法を示す手法も秀逸
今回,リリースに先駆けて本作をプレイできたので,ゲームの内容やプレイを通して得られた所感などをまとめてお届けする。クリアまでにかかった時間は9時間弱とややコンパクトな印象だが,ソウルライクに近いトライ&エラーの緊張感,ビジュアルとストーリーで描かれるSFの世界が楽しめる作品になっている。
ストーリーはストレートなSF
まずは本作の導入部分について簡単に紹介しよう。技術が発達した未来,地球の軌道上に突如として巨大な建造物・メタヘドロンが出現し,科学者やエンジニアで構成されたSCARチームがその調査に送り込まれる。しかし調査は思わぬ事態に発展し,チームは未知の惑星に転送されてしまう。
主人公であるケイト・ワード博士は,ほかのメンバーとはぐれた状態で目覚め,ホログラムのような姿で現れた謎の幻影に導かれながら探索を開始する。墜落したと思われる自分たちの船から武器を調達し,謎のクリーチャーがひしめく惑星を探索しながら墜落の原因やメタヘドロンの正体などを探っていくこととなる。
SF作品の導入としては王道とも言える展開だが,そのぶん話の筋は理解しやすく,謎として提示される部分はしっかり謎になっているので,十分に興味を引いてくれる。
主人公のケイトは(プレイヤーの腕次第ではあるが)複数回の死と再生を迎えることになるのだが,そのあたりも含め,物語内で提示される謎の大部分は作品内で説明されている。プレイ後に「あれは結局何だったの?」となる部分もとくになく,広げた風呂敷はきちんと畳まれている印象だ。SFの雰囲気が好きならストーリー面も素直に楽しめるだろう。
ソウルライクなトライ&エラーと色による誘導
本作は章立てで進行し,各章で異なるステージを舞台に仲間の探索や現地に潜むクリーチャーとの戦いが展開する。各ステージには死亡時のリトライポイントとなる石柱が点在しており,これを探しながら攻略を進めていくことになる。
それなりの頻度で死亡しながら対策を身に着けるトライ&エラー性や,回復アイテムの使用回数や残弾数がリスタート時に回復する仕様など,戦闘システムこそ異なるもののプレイ感はソウルライクに近い印象だ。また,道中に生えている植物や物資を消費するなどして弾薬を補給できるので,弾切れはあまり心配しなくてもいい。
個人的に弾などの有限リソースはケチってしまいがちなので,弾数をそこまで気にする必要がない設計になっているのは非常にありがたい。リトライ以外の補給手段も複数用意されており,エイムアシストをつけられるので,シューティングに慣れていない人でもプレイはしやすいだろう。
戦闘では近接攻撃も可能だが,メインとなる攻撃手段は銃による射撃だ。ストーリー進行に沿って開放されていく弾薬は電撃や炎,凍結といった特性を持っており,これらを使い分けて戦うのが戦闘の肝となる。
敵となるクリーチャーはそれぞれ弱点部位や有効な弾薬が異なり,適した戦いかたをしないと苦戦させられるが,逆に対処法さえ押さえてしまえば少ない弾薬で手早く処理できる。それぞれの突破法を探り,その知識を活かしてテキパキと敵を処理する爽快感が本作の魅力と言えるだろう。
本作の特徴として併せて挙げておきたいのが,色によるヒントだ。敵の弱点やステージ内のギミックは,赤なら炎,青なら電撃といった具合に色で有効な属性が示されており,使うべき武器はパッと見で判断できる。
すべての敵が分かりやすく弱点をアピールしているわけではないが,弱点探しに頭を使うよりは,敵に合わせて武器を切り換えながら戦うという遊びに集中できる作りになっている印象だ。
環境やガジェットを使った立ち回りの工夫
戦闘で使えるテクニックは弱点に合わせた武器の切り換えだけでなく,属性の組み合わせや環境の利用といったものも存在する。敵を凍らせれば電撃ダメージが増加する,水場にいる相手はより凍りやすくなるうえに電撃ダメージが拡散する,といった具合だ。
そのほかにも,適した属性の攻撃を行うことで爆発して周囲にダメージを与えるオブジェクトが登場し,有利な場所に敵を誘い込んで一網打尽にする快感も味わえる。弱点に限らず,利用できるものを把握して戦うという意味でも,知識や経験が武器になるのだ。
ただし環境はプレイヤーの味方になるばかりではなく,寒い場所では低体温症のゲージが溜まっていき,ゲージが最大になると数秒で死ぬレベルのダメージを受けてしまう。特定のオブジェクトに火をつければ暖を取れるが,その火も一定時間で消えてしまうので,極寒環境下での戦闘はなかなかの難度だ。
しかし凍った水面に炎を撃ち込んで穴を空け,敵を落とせば体力に関係なく一撃で倒すことができる。ハイリスクハイリターンな戦闘となり,立ち回りもほかのステージとは変わってくるため,この環境での戦闘はとくに印象に残った。
ステージ内の植物が弾薬になるのは先に述べたとおりだが,ほかにも繊維と呼ばれる物資が落ちており,これを消費することで回復や弾薬補充,状態異常の治癒を行うことができる。繊維はリトライ時の回復対象に含まれないため,どのタイミングで使うか絶妙に悩まされる。
また,ゲームを進めると防御や攻撃の補助に使えるガジェットも登場。こちらはリトライ時に補充されるバッテリーを消費して使用する。一定回数ダメージを防いだり,油を撒いて炎属性の弾薬であたり一面を炎上させたり,あるいは一定範囲内の敵の動きを遅くしたりと,さまざまな形で戦いを有利に運ぶことができる。
シンプルに銃を撃つだけでも戦えるが,周囲の環境を利用したり,ガジェットを活用したりして動きに幅を持たせられるのが本作の面白いところだ。一部のガジェットは使いかた次第でボスを完封できることもあり,圧倒されていたボスをボコボコにできたときは,なかなかの快感が味わえる。
アビリティシステムは付け外しにやや不便あり
ソウルライク的なプレイ感があるとは言ったが,本作にパラメータの概念はなく,武器のアップデートもストーリー進行に応じて固定で行われる。いわゆる成長要素として用意されているのは“アビリティ”だ。
アビリティの開放にはアビリティポイントが必要となり,ポイントは経験値にあたる知識を一定量貯めることで獲得できる。知識は道中に落ちているキューブや初めて倒した敵の死体を調べることで増加していく。同じ敵から重複して知識を得ることはできないので,進行度に応じてある程度成長にも制限がかかることになる。
キューブは横道にそれると発見できることが多く,順路ではない道がむしろアタリ,とRPG的に探索を楽しめる要因になっている。プレイ時にはある程度しっかり探索を行っていたが,最終的にはアビリティポイントが余ったので,そこまで神経質になる必要もなさそうだ。
アビリティはレベル1から4までが用意されており,レベルに応じたアビリティポイントを使うことで開放できる。また,レベル2を開放するにはレベル1を3つ開放している必要があり,下位のものから順次取得していくことになる。
開放したアビリティは自由にリセットできる。状況に応じて付け替えられるのは便利なのだが,個別解除がなく一括で外すしかない。開放する際には2秒弱ボタンを押し続ける必要があるため,ひとつだけ外して別のアビリティにしたい場合も地味に手間がかかってしまう。
気になる部分もあるがプレイ中はしっかり楽しめる
冒頭でも述べたとおり,本作のクリアにかかった時間は9時間弱。寄り道的なクエストや収集要素もないので,コンパクトに遊べる作品と言えるだろう。クリアしてタイトル画面に戻るとニューゲームしか選べず,クリア後の要素や周回要素がないといった部分はやや残念だが,プレイそのものは楽しめた。
敵の多くは地中に隠れており,出現位置やタイミングが読めないのもいい意味で驚きを提供してくれる。場所によっては敵が時間差で登場することもあり,敵を倒して落ち着いたと思った矢先に襲われて思わず声が出てしまったことも少なくはない。自分で驚くのも面白いが,人のプレイを見るのも楽しそうだ。
演出面でツッコミどころがないわけではないが,全体を通してSFの雰囲気も楽しめる一本と言えるだろう。
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