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印刷2024/03/18 15:54

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「呪術廻戦 ファントムパレード」における「会話シーンを飽きさせない画作り」に関する解説がなされた,サムザップのセッションをレポート

 サイバーエージェントは2024年3月7日,ゲーム・エンターテイメント事業部の技術やノウハウを紹介する開発者向けカンファレンス「CyberAgent Game Conference 2024」を開催した。本稿では,サムザップでアートディレクターを務める中山祐治氏と,Live2Dアニメーターの安部裕香氏によるセッション「『呪術廻戦 ファントムパレード』ADV制作事例 〜会話シーンを『飽きさせない』画作り術〜」をレポートする。

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セッションの冒頭では,本作のストーリーパートの制作フローが紹介された
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 セッションの序盤では,「呪術廻戦 ファントムパレード」iOS / Android)におけるLive2Dの活用法が紹介された。本作のLive2Dでは用途を分けた多種多様なモーションを作成し,さまざまな感情の表現を可能にしている。また,一部のパーツの表示切り替えなどの細かな表現に対応するため,付け足し用のカスタムモーションも作成し,スクリプト側でバリエーション豊かな設定ができる仕組みとなっている。なお,ここでいうカスタムとは,涙やギャグ顔などを指すそうだ。

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 また各モーションは,設定時に判別しやすいようにモーション名の頭に種類番号が付けられている。例えばベースモーションであれば「00_○○」「05_○○」,まばたきや呼吸など自動で繰り返し動くもの,音声に連動するリップシンクの設定などの自動モーションは「10_Auto_○○」といった次第である。

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 キャラクターの汎用的な動きに関しては,「Pop」「Wild」「Cool」「Fresh」「Smart」などのタイプ別に作成したモーションを流用する。そのうえで,微妙な性格の差を出すために,キャラクター各自の動きの幅を調整していく。

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 同じ「尋ねる」というモーションであっても,Popタイプの虎杖であれば首をかしげる動き,Coolタイプの伏黒であれば少しすました首をかしげる動き,Wildタイプの東堂は手を大きく上げて身体全体でダイナミックな動きとなる。

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 また同じPopタイプの虎杖とパンダは,同じベースモーションを流用し,ポージングや細かなタイミングをキャラクターの性格に合わせて調整している。

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 固有モーションは,文字どおり各キャラクター固有のモーションを指し,虎杖であれば「拳を合わせる」「頭をかく」などがそれにあたる。とくに本作は,多くの固有モーションを扱っているという。

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 さらに,さまざまな表情モーションをベースモーションに組み合わせることで,限りあるリソースからシリアス,ギャグなど,さまざまな感情を表現している。例えば,動きが同じでも表情の組み合わせを変えることにより,シリアスとギャグを使い分けられるとのこと。

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 本作では,リアルな会話を表現するため,母音や音声波形に応じて口の形状も変化する仕様になっている。口の開閉に関しては,キャラごとに細かく口の形状を調整しているという。原作におけるシリアスなシーンやバトル中に叫ぶシーンなどの,さまざまな表現に対応できるそうだ。

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 続いて,本作におけるノーマルマップとライティングに関する解説がなされた。まずノーマルマップに関しては,背景に合わせた環境の光や色味などをLive2Dのキャラクターたちに影響させる仕組みにすれば,臨場感を持たせられ,さらに2D特有の平面感もなくなるため,クオリティアップにつながると考えて採用したとのこと。

 ノーマルマップは,法線のベクトル情報を使って3Dモデルの凹凸を表現するために用いられるが,本作ではその仕組みを2Dに応用し,2D素材に擬似的な凹凸情報を持たせることでライティングの影響を受けさせている。

 本作のノーマルマップの制作手順は,以下のスライドのとおりだ。最後の工程で,担当スタッフ各自が動画で書き出して細かく確認するといったフローだと,後戻りや対応が遅くなる。そのため,キャラクターごとにモーションや背景の位置を変えてどう見えるか確認できるスクリプトを作成し,効率化を図ったという。

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 ノーマルマップの採用にあたっては,以下の2つの課題があったそうだ。

・Live2Dの仕様に合わせたノーマルマップの制作
・理想とするライティング表現にならない

 1つめの課題は,自動生成したノーマルマップはパーツごとに凹凸を付けられてしまうので,レタッチをしないと余計な凹凸が多い絵になってしまうことに起因している。この課題を解決するため,自動生成したノーマルマップを,ライトの当たり具合を確認しながらレタッチして,基本的にシルエットの外側を反応させるような調整を行った。その際,若干のリッチさを出したかったため,少しだけ凹凸は残したという。

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 2つめの課題は,以下のスライドの左図のように赤く強いライトがある部分には,エッジに強いハイライト,淡い光があれば青く反応するといったように,キャラクターの立ち位置に合わせて光の当たり方も変わることを理想とする。しかし実際は,右図のように強いハイライトにならなかったり,全体に光が当たってしまったりと,理想のライティング表現にはほど遠い結果となった。

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 この課題を解決するために,エンジニアと発光の仕組みや計算を見直し,ノーマルマップのレタッチをしつつ,キャラクターの反応を確認して調整したとのこと。その結果,以下のスライドの左図のようにライトを複数配置することで,細かい表現が可能となったそうだ。

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 続いて,ストーリーパートにおけるアニメ再現の工夫と演出効果に関する解説がなされた。本作の開発初期には,リソースの限られた従来のシンプルなストーリーパートだと,テキストの情報が多くなり,迫力のある漫画やアニメと比較したときに,紙芝居のような印象になりがちだという課題があったとのこと。

 そこで,アニメ演出経験のあるシナリオライターを主軸にチームを構成し,原作やアニメにある迫力のあるシーンをストーリーパートでどのように表現するかを日々検討し,シナリオ演出のクオリティアップに注力した。

 ストーリーパートのチェックは,スクリプターのほか,シナリオライター,アートディレクター,アニメーターなど制作に関わるメンバーを集めて確認を行ったとのこと。この体制により,細かなチェックと相談が可能となり,テンポをよくするためのセリフの追加やカットが即座に判断できるという効果を得られたそうだ。

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 セリフのカットについては,気持ちのいいテンポ感を重視して判断をくだしたとのこと。以下のスライドを見ると,実際に上がったシナリオからかなり大胆にカットしていることがうかがえる。また,演出によって省けるセリフやト書きもカットしているという。

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 アニメの演出をストーリーパートならではの手法で反映した事例も紹介された。本作はポストエフェクトを導入することにより,アニメの撮影処理に近づけているそうだ。

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 また,カメラワークについては,「ここぞ」というシーンで通常時のアップよりもさらにキャラクターの顔周りにグッとカメラを寄せ,被写界深度で背景をぼかすことで没入感を高めたり,バトルシーンでダイナミックかつ多めにカメラを動かすことで,臨場感やスピード感を出したりしている。

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 あえて表情を見せない,感情を読ませない演出により,ゲームでは再現が難しいシーンを,原作やアニメの雰囲気を壊さずに表現していることも紹介された。

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