インタビュー
新作FPS「GUNDAM EVOLUTION」はチームシューターファンのガンダムIPへの入口に。高い競技性の“ガンダムFPS”を開発する狙いについて聞いた
ガンダム新作FPS「GUNDAM EVOLUTION」発表。MSを乗り換えながら戦う6対6のチームシューターで,CBTテスター募集が本日開始
バンダイナムコオンラインは本日,ガンダムシリーズに登場するモビルスーツを操縦して戦う新作FPS「GUNDAM EVOLUTION」のサービスを,2022年に開始すると発表した。本作は,MSを乗り換えながら戦うという6対6のチームシューター。本日はPC向けCBTのテスター募集も開始となった。
本作は,6対6の高い競技性を持つ「ガンダムチームシューター」として,日本のみならず海外ユーザーもターゲットに開発しているという。2021年8月8日と9日には,日本でクローズドβテストが実施される予定で,「ガンダム」「ガンタンク」「ザクII」「ジム」「メタス」「アッシマー」「サザビー」「ジム・スナイパーII」「∀ガンダム」「ドムトルーパー」「ペイルライダー」「ガンダム・バルバトス」(原作公開年順)の12機体が登場する予定だ。
ガンダムファンとしては,なぜこれらの機体がピックアップされたのかも気になるところだが,「ガンダム」をチームシューターとして開発することに至った理由や狙い,そしてどのような作品になるのか,本作のプロデューサー丸山和也氏とバトルディレクター穂垣亮多氏に,気になる点を聞いてみた。
チームシューターのファン層へ届くガンダムゲームに
4Gamer:
よろしくお願いします。新作「GUNDAM EVOLUTION」について,いろいろお聞きできればと思いますが,まず初めにお二人が本作の何を担当しているのか自己紹介を兼ねて教えてください。
丸山和也氏(以下,丸山氏):
丸山です。2004年の「ガンダムネットワークオペレーション2」以降,複数のガンダムのオンラインゲームを担当してきましたが,本作でもプロデューサーを担当しています。
穂垣亮多氏(以下,穂垣氏):
バトルディレクターの穂垣です。モビルスーツやマップのコンセプト決定やバランスの調整を行っています。
4Gamer:
では,さっそく「GUNDAM EVOLUTION」の概要を教えてください。
丸山氏:
6人のプレイヤーがチームを組み,個性豊かな能力を持つモビルスーツを操作して戦う,チームシューター系FPSです。対応機種は現時点では未定ですが,サービス形態は基本プレイ無料+アイテム課金モデルを予定しています。また,2021年8月8日と8月9日に,PC版のクローズドβテストを国内で行う予定です。
4Gamer:
チームシューターと言えば,競技性が高く配信映えもするということで,ここ最近のトレンドになっているジャンルですね。「GUNDAM EVOLUTION」の狙いはどういったところにあるのでしょう?
丸山氏:
我々は本作を“ガンダムIP”への入口としたいんです。ガンダムファンの方にプレイしていただきたいのはもちろんなのですが,チームシューター好きの方を含めた広くの方に「GUNDAM EVOLUTION」でガンダムをより身近に感じるようになってほしいと思っています。
4Gamer:
チームシューターのプレイヤー層は,どちらかと言えば若い人が多いと思いますし,そうした層から新規ファン獲得を目指していくわけですね。
丸山氏:
そうですね。1979年の「機動戦士ガンダム」から40年以上経っていますが,シリーズは広がり続けており,新作も続々と登場しています。時代を越えて楽しめる作品だと思いますので,しっかりと新しい層へもアプローチしていきたいです。
4Gamer:
そうすると,チームシューターのファンに刺さるゲームであることが重要になりそうです。ゲームの詳細について,教えてください。
穂垣氏:
ルールに関しては,FPSでスタンダードなものを用意しています。攻撃側と防御側に分かれて2つの地点を制圧・防衛する「Point Capture」。2つの目標物に破壊兵器を仕掛ける側と,これを阻止する側が戦う「Destruction」。両方のチームが3つの目標エリアを制圧する「Domination」となっています。
丸山氏:
モビルスーツはアニメ作品「ガンダム」シリーズからピックアップしていく予定です。それぞれが持つメインウェポンとクールタイム制のサブスキル,そして戦闘中に溜まる「EVOLUTION」ゲージを使っての固有スキル「Gマニューバ」により,個性を活かした戦いができます。クローズドβテストでは12機が登場予定ですが,1機で何でもできるというわけではありません。長所と短所がハッキリしており,お互いに協力し合って勝利を目指していくわけです。
4Gamer:
チームとして,お互いの協力が重視されると。量産機だから弱い,試作機だから強いというような区分はされないということなのでしょうか。
丸山氏:
「GUNDAM EVOLUTION」のモビルスーツはチームシューターにおける“キャラクター”ですから,量産機や試作機といった区分はありませんし,チーム内で同じモビルスーツを複数機使うことはできません。原作にあった,たくさんの量産機がともに戦うといったシーンはないわけですね。ただ,試合中にモビルスーツを乗り換えることは可能ですので,相手のピック(選択)や状況に合わせた選択が重要になります。
4Gamer:
チームの人数が6人に決まった経緯を教えてください。
丸山氏:
テスト段階では人数がもっと多かったり少なかったりしました。さまざまなパターンを試してみたのですが,1人にかかる責任の重さとチームプレイの面白さ,相反する要素のバランスを取って結果的に6対6に落ち着きました。
4Gamer:
なるほど。「ガンダム」の対戦ゲームとしては「ガンダムVS.」シリーズが現在もサービスを続けています。また,FPSだとアーケードで「戦場の絆2」といったゲームが存在していますが,「GUNDAM EVOLUTION」において,これらの作品と差別化したポイントを教えてください。
丸山氏:
「ガンダムVS.」シリーズはコンビでの格闘ゲーム的なプレイ感,「戦場の絆2」ですとモビルスーツの重厚感や搭乗体験などが表現されています。本作「GUNDAM EVOLUTION」は,チームシューターとしての協力要素だけでなく,没入感・モビルスーツの多様性・クイックな操作感といった要素が特徴になります。
4Gamer:
チームシューターとして立脚した作品であり,ほかのゲームとはコンセプトから異なるというわけですね。
穂垣氏:
そうです。原作再現だけではなく,競技性やテンポ感も重視しています。例えば,モビルスーツパイロットのキャラクターについても「GUNDAM EVOLUTION」では対戦中のカットインとして入れたりはせず,コミュニケーション要素のスタンプアイテムとして登場する予定です。
4Gamer:
チームシューターでは,キャラクターに「タンク」(防御役),「オフェンス」(攻撃役),「サポート」(補佐役)といった明確なロール(役割分担)が決められていますが,「GUNDAM EVOLUTION」ではどうなるのでしょう?
穂垣氏:
本作に明確なロール区分はありません。ロールが強調されていると,好きなモビルスーツを選びづらいからです。登場するモビルスーツはすべてダメージを出すことができるため,敵と戦えないような機体はありません。ダメージの出し方がそれぞれ変形からの飛行,接近戦,狙撃などで異なっており,こうした長所をいかにして相手へ押しつけるかが個性であり,重要なポイントとしています。
キャラゲーではなく,チームシューターであることを意識した機体のラインナップ
4Gamer:
クローズドβテストの12機はどのような基準で選定されたのでしょう?
穂垣氏:
ガンダムゲームとしてはけっこう異色なラインナップですね(笑)。これは“シューターとして,どのような遊びが提供できるか”というところを重視しているためです。
長距離狙撃をさせたいので「ジム・スナイパーII」,変形による機動力を表現するために「アッシマー」,接近戦用の機体として「ガンダム・バルバトス」……というように,選定基準は主人公機であることや人気の高さだけではないということですね。
4Gamer:
「機動戦士Zガンダム」のゲームでもないのに,なぜアッシマーがピックアップされているのかと思いましたが,そういった選択だったんですね。どの機体も,徹底的にアクション性を重視した癖の強いものということですか?
穂垣氏:
いえ,比較的FPSゲームに慣れていない方が使いやすいモビルスーツも用意しています。例えば「ガンタンク」は,強力な範囲攻撃に加えてオートロックオンの機能も持っていますし。
丸山氏:
細かい点ですが,SEは原作をそのまま再現するわけではなく,チームシューターとしてのアレンジを加えています。多数の機体が入り乱れる中で,音から情報を把握しやすくするためです。
4Gamer:
「GUNDAM EVOLUTION」におけるモビルスーツ表現について聞かせてください。
近年のガンダムゲームは三人称視点のものがほとんどです。三人称視点だと,自分が操作するモビルスーツの全身が常に映るため,そのデザインを堪能できます。一方,一人称視点だと自分が操作する機体は手元しか映りませんし,交戦距離が遠目になる関係上,相手プレイヤーの機体も小さくなりがちです。モビルスーツの魅力を表現するには少々不利に感じられますが。
丸山氏:
スキルやGマニューバの使用時など,要所要所で三人称視点を取り入れることでモビルスーツの魅力をアピールしています。
例えば,アッシマーがスキルを使うと一定時間モビルアーマー形態に変形できますが,その間は三人称視点での操作になります。また,Gマニューバでは「∀ガンダム」が月光蝶の羽根を広げて飛ぶというように,原作感のある派手な演出で全身を見られるんです。
穂垣氏:
FPSの最中に頻繁に三人称視点になってしまうと操作しづらいですから,どこで切り替えるかはかなり熟慮しています。FPSの没入感と三人称視点で描写できるカッコ良さのバランスを取りました。
4Gamer:
開発において,FPSならではの苦労はありましたか?
穂垣氏:
FPSだと自機の手しか見えませんから,フットミサイルのような足に設置された武装の当て感がうまく表現できなかったりといったことはありました。こうした問題が起きるたびに,デザイナーと相談しながら開発を進めていますね。
4Gamer:
モビルスーツへのリアルな搭乗体験を主眼に置いたゲームなら,足の武装が見えなくても問題は少ないですからね。しかし,競技性があるFPSでは,こうした表現はマイナスになってしまいます。
穂垣氏:
そうした意味では,ガンダム・バルバトスも大変でした。刀やメイスのみで戦う近接特化の機体なんですが,FPS画面での近接兵装の当て感を表現するのには苦労しまして。ゲームバランス的には,FPSにはあまりない上下の動きを得意とすることで接近戦の強みを表現しています。
FPSっぽさをどう取り入れるかについては,サザビーのGマニューバであるファンネル攻撃で試行錯誤したことがありました。ほかの機体がファンネルを撃墜できるべきか否かで議論が起こったんです。
4Gamer:
ファンネルが撃墜できるなら原作再現にもなりますし,狙い撃つ遊びがFPSらしいようには思えます。
穂垣氏:
一度撃墜可能な仕様にしてみましたが,ファンネルの飛行速度が狙い撃てるくらいに遅いと,攻撃としての有効性が下がり,いろいろな機体の範囲攻撃や爆発物で一気に処理できてしまいます。
対策としてファンネルの耐久力を高めたら,壊せなくなって撃墜できる仕様そのものが無意味になってしまって……。最終的には攻撃側の気持ち良さを優先することになり,ファンネルは破壊不可能という現状の仕様に落ち着いています。
4Gamer:
なるほど。では,CBTで注目してほしい機体はありますか?
穂垣氏:
個人的に注目してほしいのはガンダム・バルバトスですね。原作だと滑腔砲で射撃戦もこなしますが,「GUNDAM EVOLUTION」では接近戦オンリーとしています。射撃武器を持つ相手が多い中,接近できなければダメージを与えられませんが,ステップできる回数が多く,いわゆる「ブリンク」(瞬間移動)のスキルもあるため,敵の射撃を回避しながら懐に飛び込む戦法が可能です。マップとルールを把握してキルライン(どのような条件が揃えば,相手を1回の交戦で倒しきれるか)を見極めた上で,「いつ誰にスタンを入れるか」が重要になります。
チームシューターとしての面白さで言うと「メタス」でしょうか。味方と自分をケーブルでつなぐと,継続的にHPを回復できます。その最中でもメタスは射撃できるので,味方と協力しての行動がポイントです。
「ドムトルーパー」はGマニューバ「スクリーミング・ニンバス」を使った連携が楽しい機体ですね。本作のスクリーミング・ニンバスは,機体前面に射撃を無効にするシールドを展開するのに加え,移動の軌跡にスピードアップのバフをかけるフィールドを敷きます。うまく使えば,みんなで並んでトリプル・ドムさながらに突撃できるんです。こうしたチームシューターとしての面白さを随所に散りばめていますので,いろいろと試してみてほしいですね。
4Gamer:
チームシューターとして同じ機体は選べなくても,異なる機体でジェットストリームアタックというのは面白いです。原作再現は優先しないと先ほどおっしゃっていましたが,でもどこかでガンダムであることを出したいといった感じでしょうか。
丸山氏:
それはありますね(笑)。ただ,チームシューターとしてのアレンジはいろいろと大変で。機体に明確すぎるロールを定めると自由に選択できないし,原作を再現した上でチームシューターとしての面白さも表現しないといけないので。
4Gamer:
では,チームシューターとして,バランス調整の上で心がけていることはありますか?
穂垣氏:
1機だけで戦況を何とかするのではなく,お互いに頼って戦っていくゲームである,というコンセプトを重視しています。登場する12機はいずれも尖った性能なので,条件が揃うと結構極端なシチュエーションが生まれたりもしますが,その際も個性を丸めてバランスを取ることはせず,チームとして助け合うことで難局を切り抜けてもらうという形にしているんです。
例えば,アッシマーがスキルで変形して空を飛ぶと,接近戦オンリーのガンダム・バルバトスは手も足も出ません。1対1のゲームならガンダム・バルバトス側は手詰まりですが,「GUNDAM EVOLUTION」では5人の仲間がいるので相性の良い機体に頼ればいいというわけです。
あるいは,アッシマーの変形も無限に使えるわけではなく,時間と回数に制限がありますし,変形と変形の合間にはクールタイムが存在します。周囲に仲間がいなかったとしても,何とか攻撃を凌いでスキルの効果切れを待てば,今度は自分の土俵に引きずり込むことが可能ですね。
丸山氏:
開発のかなり早い段階でプロゲーマーから意見をいただいているので,バランス調整については皆さんが納得いただけるものになっていると思います。スタッフ側にもチームシューターをよく遊ぶ年代の者を起用していますし,同時に私のようなファーストガンダム世代が楽しめるようにもしたいと思っています。
競技性・公平性を重視。マネタイズは外見変化や新機体の早期利用などに
4Gamer:
ゲームバランスもそうですが,ガンダムゲームとしてのバランスを取るにもいろいろと苦労がありそうですね。
丸山氏:
開発段階から競技性・公平性を重視し,FPSやチームシューターのファンに納得していただけるようなものにしています。そのいい例がマネタイズで,本作では能力を上昇させるようなものは販売しない予定です。“能力に影響を与えず機体の外見を変えるスキンやアイテム”“追加された新機体”を販売予定です。
4Gamer:
新機体は課金のみでの入手になるのでしょうか?
丸山氏:
いえ,新機体もプレイを通して解禁されます。あくまで,すぐさま使いたいという場合には,課金していただくということですね。
4Gamer:
機体の外見変更はどのようなものになるのでしょう?
穂垣氏:
原作を知らない方でも魅力を感じるような外見変更のためのオリジナルスキンや,原作設定を再現したスキンなど各種用意していく予定です。
スキンについては,色だけが変わるわけではありません。ザクII[射撃装備]が「シャア専用ザクII」になって頭部にマルチブレードアンテナが付くように,デザインも変化します。ガンダムファンならニヤリとできるものもラインナップしていきますよ。
4Gamer:
シャア専用ザクIIを別機体にしないというのも贅沢ですね。
丸山氏:
少人数対戦のチームシューターですから,モビルスーツ1機を追加するにもバランス調整などでコストがかかります。色とパラメータが少し違うだけのマイナーチェンジを増やすより,しっかりとバランスが取れた上でみなさんの望む体験ができる機体を提供したいということです。
4Gamer:
モビルスーツの能力を決める際も原作再現より,競技性を重視していくのでしょうか。
丸山氏:
そうですね。原作にこだわらないようにしています。原作再現を重視しすぎると最新の機体が有利になりますし,1機がいろいろな武装を使い分けて近距離から遠距離戦まで何でもできてしまうことにもなりますから,メインウェポンは1種類固定としてチームシューターとしての個性を表現しています。
4Gamer:
とくに主人公機は換装やら何やらで遠近全対応という例も多いですし。
丸山氏:
耐久力がゼロになった「中破」状態の仲間を助けられるフィーチャーなどはいい例でしょう。原作を再現するなら母艦に収容しないといけませんが,チームシューターなので,戦術の一環としてその場で回復できます。
4Gamer:
新機体はどれくらいの頻度で追加されますか?
丸山氏:
現時点ではお伝えできませんが,新しい機体を追加するのであれば,新要素も求められていくでしょうし,具体的なスケジュールが確定次第,ご案内していくつもりです。
4Gamer:
チームシューターという性格上,新機体の追加によるバランスの変化はプレイヤーに与える影響も大きいでしょうし,いろいろな意味でサービス開始後の注目ポイントになりそうです。
では,最後にメッセージをお願いします。
穂垣氏:
ガンダム好きの方は,チームシューターというジャンルの面白さを体感してください。FPS好きの方は,モビルスーツの多彩な動きを楽しんでいただければと思います。ほかのガンダムゲームと比べて展開が早いですし,味方との連携で勝利を掴むという部分を楽しんでほしいです。
丸山氏:
長らく開発を続けてきて,やっとクローズドβテストまでこぎ着けました。ガンダム好きの方はもちろん,チームシューター好きの方もぜひプレイしてみてください。ご意見をフィードバックしていただければ幸いです。
4Gamer:
ありがとうございました。
「GUNDAM EVOLUTION」クローズドβテスター募集ページ
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