プレイレポート
Switch版「WRC10 FIA世界ラリー選手権」の協力モードを現役コ・ドライバーの梅本まどかさんとプレイ。プロが語るラリーの面白さとは
タイトル通り,「WRC10」は世界ラリー選手権(WRC)をテーマにしたゲームだ。ラリーはしっかりと舗装されたサーキットを走るF1などとは違い,公道や荒野,山道を舞台に,コ・ドライバーの指示を聞きつつ走るのが特徴だ。
今回4Gamerでは,元SKE48でチームリーダーを務めた経歴を持ち,現役のコ・ドライバーとして活躍するタレントの梅本まどかさんと一緒に,このモードを体験してみた。
「WRC10 FIA世界ラリー選手権」公式サイト
梅本さんとコ・ドライバーモードをプレイ。共にレースを作り上げていく,ラリーの奥深さ
コ・ドライバーとは,ドライバーと共にラリーカーに搭乗し,運転のサポートをする選手のことだ。
一般的なレースゲームとは違い,「WRC10」は,いわゆるコースマップが表示されない。そのため,コース情報は視覚と“これから進む道が,どのような形状をしているのか”を書き記した「ペースノート」が頼りになる。
実際のレースでは,車を運転するドライバーと,ペースノートを読み上げるコ・ドライバーが存在するが,今回プレイするコ・ドライバーモードは,この役割を実際のレースさながらに2人のプレイヤーで分担して遊べるというもの。コ・ドライバーは,指定されたボタンをタイミング良く押すとペースノートが表示されるので,それを読み上げる。そして,ドライバーはその指示に従って運転を行うのだ。
なお,2021年12月に発売されたPS5/PS4版では,本体のボイスチャット機能を使ってプレイできたが,Switch版では,任天堂からスマートフォン向けに配信されている「Nintendo Switch Online」アプリを使う必要があるので,注意しよう。
さっそく,梅本さんにナビゲートしてもらいながらラリーに挑もう……と思ったのだが,「せっかくだから,下見走行(レッキ)もやりませんか?」という梅本さんの提案により,レッキを行い,自身のペースノートを制作してもらうことになった。
実際のレースでもコ・ドライバーは,事前に下見走行(レッキ)を行い,コースの形状をペースノートに記載し,本番に挑むそうだ。
ペースノートでは独特の表記が,例えばカーブなら,左右のどちらにどれくらい曲がっているかをL・Rの文字と数字(小さいほどカーブがキツイ)で表す。これを読み上げることにより,走行中でも簡潔にドライバーへ情報を伝える。まさに文字で表した地図というわけだ。
今回走ったコースは,カーブが複雑に入り組んだスピードの出せない場所だ。本来レッキはゆっくり走ってコースの形状を確認するのだが,当然ズブの素人である筆者はレッキなどやったことがないし,梅本さんのペースも分かっていないため,いきなり飛ばしてしまった。「もう少しゆっくり!」と声を掛けられ,あわてて減速することに。こうしたやりとり自体は実際のレッキでも行われるそうで,ペースノート作りもドライバーとコ・ドライバーの共同作業でもある。
先ほどペースノートの表記には,独特の表記が使われると書いたが,どういったことを書き込んでいくか,どういう言い方をするかはコ・ドライバー次第。ぶっちゃけて言ってしまえば,ドライバーに分かりやすく伝わればいいのだ。
今回のレッキでも,梅本さんは筆者に「曲がる方向は,右・左とL・Rのどちらで言いましょうか」「直角の曲がり角は,『スクエア』と『90』のどっちにしましょう?」という風に筆者の分かりやすい読み方にしてくれていた。
レッキ中に曲がり角でインコースで突っ込んでしまい,曲がりきれずに車をぶつけてしまったが,ここで梅本さんは「じゃあ,曲がり角に入る前にアウトに行くように言いましょう」とペースノートに追記。コ・ドライバーはこのようにドライバーのクセに合わせて,より走りやすいようにペースノートをカスタマイズしていくのだ。
無事にペースノートの作成も終了し,続けて本番の走行を始める。ここまで記事を読んできた人の中には「ナビゲーションがなくても,いつもの運転でやってるように,目で道を確かめて走ればいいんじゃないの?」と思う人もいるかもしれない。
確かにそれで走れなくはないが,ペースノートの読み上げがあると,次に行くべきコースが目視より早くイメージできるので,ややこしい場所に行く前に心の準備が整う。これは本当に大きな違いだ。先ほどインに入ってぶつけた曲がり角も「次は(アウト側の)左から入りましょう」と注意してもらえるので,同じ過ちを繰り返すことはない。
筆者が間抜けな運転をしても,梅本さんは決して叱ったり失望する様子を見せず,“適切に”励ましてくれる。コ・ドライバーという存在を信頼でき,期待に応えたいという向上心が掻き立てられた。
ラリーゲーム,しかもコ・ドライバーとドライバーを分担すると聞くと,ハードルが高いと感じる人もいるだろうが,走り続けることでナビゲーションの内容がよりイメージしやすくなり,コ・ドライバーと息が合っていく際に感じる高揚感は何とも言い難い快感がある。コーナーという課題が次々と提示され,2人で走破しつつ修正を行い,また次のコーナーへと挑んでいく。改善と実践と結果というサイクルを繰り返し,挑戦への意欲と,達成感による満足が次々に感じられる。これは本当に不思議な感覚だった。
梅本まどかさんにインタビュー。友達と一緒にコミュニケーションを取りながらコ・ドライバーモードを楽しんでほしい
ここからは梅本さんへのインタビューをお届けしよう。コ・ドライバーを始めたきっかけやその魅力,そして「WRC10」をプレイした感想などを聞いてみた。
4Gamer:
よろしくお願いします。梅本さんはSKE48を卒業後,ラリーの世界に入られたとのことですが,そのきっかけを聞かせてください。
もともとレースが好きだったんです。以前からグリーンカップを始めとした初心者向けレースには出ていたんですけど,相手と競り合うので,身の危険などのリスクがあると感じるようになりました。そんな時にラリーの存在を知ったんです。
4Gamer:
ラリーのどこに惹かれたのでしょうか。
梅本さん:
ラリーは,ドライバーとコ・ドライバーがタッグを組み,直接競り合うのではなくタイムを通じて競い合うのが,大きな違いです。中でもコ・ドライバーがすごく面白そうだと思って手を挙げました。
初のラリーは,女性だけのチームでベテランのドライバーと組み,1年間を通してチャンピオンになることができました。その後は全日本ラリー選手権へ出場し,現在に至るという感じですね。
4Gamer:
コ・ドライバーの仕事内容をお聞かせください。一般的にはラリー中にペースノートを読み上げていく人という印象があると思いますが。
梅本さん:
下見をしながらドライバーと一緒にペースノートを作り,ラリー中はそれを読み上げながらチームと連携を取り,その上でドライバーに良いドライビングをしてもらうために尽力するのがコ・ドライバーです。ペースノートを読み上げる以外にも,ラリーではいろいろな仕事があり,実はかなり忙しいんですよ。
4Gamer:
いろいろな仕事というのは,具体的にはどういったものでしょう。
梅本さん:
“この場所にはどのくらいまでに着かなければならない”という時間管理やタイヤ交換のほか,ドライバーの判断を助けるためにアドバイスを行います,。
一度ラリーが始まってしまえば,現場判断はすべてコ・ドライバーとドライバーに任されます。走っている最中に監督に判断を仰ぐようなことはできないので,ドライバーに必要な情報を瞬時に伝えるため,相当な決断力や臨機応変に動く能力,とっさの閃きを生かす力を求められることになりますね。
4Gamer:
現場での決断力や臨機応変な対応には,SKE48時代の経験も役に立ったのでしょうか。
梅本さん:
割と役に立っているんじゃないかなとは思います。SKE48ではチームEのリーダーをやらせていただいたので,トークでMCをしたり,メンバーをどうやって生かすかを考えたりする立ち位置でした。コ・ドライバーを始めてからも,ドライバーが求めることや,チームから何を求められているのかも分かりましたし。こうした力は,SKE48時代にやったラジオのお仕事で培われたものかもしれません。
4Gamer:
コ・ドライバーの魅力はどんなところだと思われますか。
梅本さん:
管理能力や相手に合わせる能力といった,人間力が鍛えられるところです。コ・ドライバーは合わせるということが大事な役割で,ドライバーがいかに快適にラリーできるかを考え,その中で自分はどう振る舞うかを考えていきます。
ラリーは一般公道をはじめとして,どんな路面に対しても合わせなければいけないですし,私のチームの監督は「優秀なコ・ドライバーなら,どこに行っても生き残れる」というくらい“合わせる”ということに関してのスぺシャリストなんです。
4Gamer:
ラリー中は現在位置に応じてペースノートを読み上げていくと思いますが,どこを読めばいいのか見失うことはないのでしょうか。
梅本さん:
ありますね,「ロスト」と言います。その場合ドライバーもナビゲートなしの有視界で走ることになりますが,タイムはがくっと落ちます。コ・ドライバーはロストしたことを早めに申告し,そのうえで復帰することに集中するのが大事なんです。
逆に,似たようなコーナーが続くような場所では,ロストしていないのに「もしかして自分はロストしてるんじゃないか?」と疑心暗鬼になることもあるので,自分に自信を持つことも大事ですね。
4Gamer:
気に病むのではなく,立て直す方が大事であると。
梅本さん:
コ・ドライバーに関しては,失敗しても落ち込んでいる暇なんてないんです。ドライバーが通るルートを全部指示するわけですから。途中で車をぶつけていたら,整備を行うサービスパークで何をしてほしいかドライバーから情報をもらい,これをチームの監督に伝える必要がありますし,息つく暇がないんです。反省会をするのはラリーがすべて終わってからですね。
4Gamer:
梅本さんの理想のコ・ドライバー像というものはありますか。
梅本さん:
いろいろなタイプの方に合わせられるコ・ドライバーですね。引っ張って欲しいという人ならリードして,そうでない人には寡黙にこなしていく。ドライバーのタイプもいろいろで,正解というものがないですから,どうしたら合わせられるかを考えるのも楽しいです。
4Gamer:
なるほど。梅本さんは「WRC10」をプレイしておられるそうですが,どんな部分が魅力的だと思われましたか。
梅本さん:
キャリアモードが特に面白いと思いました。ドライバー,コ・ドライバー,監督とどんな立場にもなれるので,いくらでも遊べちゃいますね。
実際の選手の中にも,「WRC」シリーズを練習ツールとして使っている人もいるんです。コ・ドライバーはレッキやペースノート読みの練習をしますし,ドライバーは公道ではできない,ペースノートを聞きながらタイムを意識して走る練習ができます。ラリーはどれだけの経験をしてきたかがタイムに直結するので,その練習が気軽にできるのは大きいと思います。
4Gamer:
プレイしていて,実際のコ・ドライバーの視点から,よくできていると思った部分や驚いた部分はありますか。
梅本さん:
コ・ドライバーモードで,自分が書かなくてもペースノートが揃っている状態が新鮮で驚きました。ペースノートの読み方もオーソドックスな形ですが,実際のラリーでは,ここまでかっちり読みませんし。
4Gamer:
先ほどの体験プレイでもドライバーに合わせて読み方を変えていましたが,実際のラリーでは,ゲームのような決まったペースノートの読み方はないんですか。
梅本さん:
ありません。実際のラリーに出ている人も,最初から用語全部を知っているわけじゃないですし,カーブの方向は“ライト”“レフト”ではなく“右”“左”と言うこともあります。日本人ならそちらの方が伝わりやすいですしね。
要注意の場所も,正式表記だと重要度に応じて!(コーション),!!(ダブルコーション),!!!(トリプルコーション)になるんですけど,コーションの場所は“やばい!”,トリプルコーションの場所は“やばい,やばい,やばい!”と勢いよく言う,みたいな(笑)。
4Gamer:
正式な読み方に固執する必要はないんですね。
梅本さん:
極論,相手に通じるのなら,どういう読み方をしてもいいんですよ。そこもドライバーとコ・ドライバー次第だと思います。正式な読み方だと英語でカッコイイですけど,そこまでちゃんとカッコ良くやってる人はほんの一握りですから。
コ・ドライバーモードなら2人プレイできますから,正式な読み方をするだけでなく,お互いの間で通じる読み方をすりあわせていく遊び方もアリだと思います。それこそ“右・左・やばい!”という感じで(笑)。
4Gamer:
今は何をするにも情報が溢れているので形から入りがちですが,生のコミュニケーションなのでお互いに通じることが重要なんですね。
最後に,ラリーゲーム初心者の方へラリーの面白いところや,こうやって楽しんでほしいといった点をお聞かせください。
梅本さん:
人によって分かりやすい伝え方は違っていて,それを探していく。同じ道でも,ペアによって違ったペースノートが作られて,そこにはこのペアがどう感じたかが記されている。そこがラリーをやっていて面白いところです。
初めてラリーゲームを遊ぶ方は,まずペースノートの表記を直観的に覚えるところから始めてみるといいと思いますし,慣れてきたらコ・ドライバーモードで,友達と一緒にペースノートの読み方からすり合わせて遊んでみると,面白いんじゃないでしょうか。
ラリーは専門用語やルールが多いので,難しそうなイメージがありますけど,そんなに堅く考える必要はないんです。自分たちがどれだけ楽しめるかが大事なので。
今回のコ・ドライバーモードの取材を通して,筆者が強く感じたのは“共同作業の楽しさ”だ。ペースノートを作り,巻き起こるハプニングを乗り越えつつタイムを良くしていく。小さな旅行を計画して実行するのにも似た感覚がそこにはあった。興味のある人はぜひ,友達と一緒に楽しんでみてほしい。
「WRC10 FIA世界ラリー選手権」Switch版販売ページ(ニンテンドーeショップ)
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FIA World Rally Championship(C)2020 Published by Nacon and developed by KT Racing. An official product of the FIA World Rally Championship, under licence of WRC Promoter GmbH and the Fédération Internationale de l‘Automobile. Manufacturers, vehicles, names, brands and associated imagery featured in this game are trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners. All rights reserved. Warning: This is a virtual game and not real life. Be cautious, do not imitate the vehicle movements shown in this game when you are driving a car in real life. Remember: drive safely! Published and distributed by 3goo K.K. in Japan.
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